61.タルコス防衛戦の後日談
これにて第2章、終わりです!
(メアリー・ズンダルク・レブラトラ視点)
「やはり、貴女でしたのね。」
バーバとの戦闘を終えた私は、勝利への最後の鍵となった魔力弾の発射位置に来ておりました。
そして、そこに居たのは……
「……先程はどうにかメアリー第二王女殿下のお役に立とうと……出過ぎた真似をいたしましたニャン……」
「キュ~……」
……ナフリーとキャノンビートル、この1人と1匹が私を助けた者達でしたわ。
「ナフリー、顔を上げなさい。……寧ろ、私としては感謝したいくらいですわ。」
「……本当ですニャンか?」
「ええ。……もしあの時、ナフリーがキャノンビートルに攻撃をさせなければ……私は今頃、魔力切れに追い込まれておりましたから。」
悔しいですが、あのまま戦っていても私に勝ち目はありませんでしたもの。
それ程までに、バーバは強敵でしたわ。
「ですが、あの攻撃が決まったのもメアリー第二王女殿下がバーバを挑発して視野を狭くさせてたからですニャンし……」
「……だとしても、ですわ。」
「そうですニャンか……ん?そういえば気になってたんですニャンが、その頭上の小鳥は何ですニャンか?」
……遂に来ましたわね……
まあ、普通は見慣れない小鳥が居たら聞くのが普通でしょうけど……
「この子は……使い魔ですわ!」
「つ、使い魔ですニャンか!?……それって、あの魔術師が従えてる動物の!?」
「そう!その使い魔で、名前はメアですわ!」
うぅ、咄嗟に使い魔って事にしてしまいましたわ……
でも、それも悪くありませんわね。
『……もう、私もそれで良いですわ……』
「あら、簡単に認めますのね?」
『だって、過去の私が考える事ですわよ?……私がどうこう言える立場ではありませんもの……』
「……そうですわね……」
未来の私ことメアは、呆気ないくらい簡単に使い魔としての立場を受け入れましたわ……
「え、使い魔と会話してるんですニャンか!?」
「ナフリーも似た様な事をしているのではなくて?」
「いや、あたしでも何となく思ってる事を読み取れるだけで、会話は流石に厳しいですニャンし……そもそも、それもスキルありきですニャン……」
「そうでしたのね……まあ、この話はここで広げなくても良いですから、そろそろ馬車に戻りますわよ。」
「あ、分かりましたニャン!」
そうして私達は、すぐさまいつもの馬車へと戻ったのでしたわ……
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(浅山 藤四郎視点)
「終わった、か……」
何とか人類側が勝利を掴み取ったタルコス防衛戦。
だが、こちらも無事では済まず……
「え、えへへ……また大怪我負っちゃった……」
「茜……俺が言えた立場じゃねぇから何も言わねぇが、受け止めてくれた司には感謝しとけよ?」
「うん。……司ちゃん、ありがとう……」
「ふむ、今後は無茶をしないでくれると助かるね。」
「ぜ、善処はするよ……」
茜は今、司にお姫様抱っこで運ばれていた。
どうも、茜はまた【雷神の大槌】を使ったらしく、全身に火傷の跡が見られた。
……しかも、落下してきたところを司が受け止めたというからヒヤヒヤさせられる。
「……で、他の功労者は……」
「はっはっはっ!……私め、帰還いたしましたぞ!」
「ロウルさん、無事みたいで何よりだ。」
茜達の次に戻って来たのはロウルさん。
その盾や鎧にはかなり傷が入っていたが、ロウルさん本人は割と平気そうだった。
「……にしてもロウルさん、ミノガルを倒したって情報が回って来たんだが……」
「ええ、私めが倒したのは本当ですが……私めが勝利出来た理由を作ったのはナンドレア殿でしたぞ……」
「……そうなんだな。」
ナンドレアさん、やっぱり凄いな……
「私めはあくまでも、ナンドレア殿がミノガルの腹に作った傷を重点的に攻撃したに過ぎませぬ故。」
「……結構えげつねぇ事してるな……」
「私めに騎士道精神を求められても困りますぞ……」
「いやまあ、そうなんだが……」
何というか、相手が魔王軍幹部じゃなきゃ同情してるだろうな……
「……そうかいな。ナン坊は、ちゃんと役に立ったんやな……」
「はい!……まあ、ナフリー殿と出くわしたくないとの事で、こちらには来られませんでしたが……」
「そこもナン坊らしいわ。……ほんま、どこまでも真面目なんやから……」
……ずっと黙り込んでいたエルリスさんは、ナンドレアさんに対して思うところがあったらしく話し出した。
「えっと、これでまだ戻って来てないのは……」
「ご主人様、ただいま戻りましたニャン!」
「私も戻りましたわ!」
「キュ~!」
「ピピピッ!」
「……何か増えてねぇか?」
ナフリー、メアリー、キャノンビートルのカブお爺さんまでは良い。
だが、メアリーの頭上に居る白い小鳥は何だ?
「ああ、この子はメア。……私の使い魔ですわ!」
「……いや、そんなの居たか?」
「先程、使い魔にいたしましたわ!」
「……詳しく聞かせてくれ……」
何か分からんが、これは詳しく聞かねぇと……
……そう、思っていたのだが……
「……いえ、こればかりは言えませんわ。」
「いや、そんなの流石に……本気なのか?」
「ええ。……この子については、私だけが知っていたいんですわ。」
……メアリーがそこまで言うなら、俺としても追及はしないでおくか。
ただ、どうも不思議な感じがする鳥なんだよな~。
「ほな、怪我が酷いアカネはんは病院確定、メアリーはんとロウルはんも一応診察は受けときよし。」
「あはは……私は確定か~……」
「分かりましたわ。」
「承知しましたぞ!」
そうして、タルコス防衛戦は完全に幕を閉じた。
……後は、ややこしい後処理の時間だな……
そして翌日……
「今回の働き、実に見事であった!」
「はは~、ありがたきお言葉……これで本当に合ってるかな……」
タルコスを治める領主にお褒めの言葉をいただいたのだが、何かもう思い返すのも面倒だし割愛する。
そして、その日の夜には……
「トウシロウ、初めてはその……優しくしてくださいませ……」
「トウシロウ殿、是非お好きにしてくだされ!」
「は、はは……」
まさかのメアリーとロウルさんを同時に相手して……まあ、その……2人の初めてをいただいたりした。
……これ、どんどんこの世界に染まってねぇか?
いや、俺は絶対に元の世界に戻るんだ……
……とまあ、こんな感じで1週間程度は過ごし、茜も退院した。
そして……
「もう、次の都市に出発か?」
「せや。次の目的地は聖都 ラフロンス。……ウチの悪友の墓がある場所や……」
「悪友……」
確か、エルリスさんは先代勇者の1人を親友と言ってた筈だから、また別の人の墓か……
「……悪友っちゅうんは先代勇者パーティーで聖職者やっとった娘でな?それはもう金遣いが荒くて荒くてウチとはよう揉めとったんや……」
「つまり、仲が悪かったのか?」
「いや、それはちゃうねん。……何ちゅうかこう、喧嘩する程仲が良いって他のメンバー2人からは言われとったっけな……」
「……4人パーティーだったんだな。」
何か、聞いてるだけで仲の良いパーティーだったのが分かって来るな……
「ま、もうウチ以外は全員死んでもうてるから関係ないんやけどな……」
「……そうか、先代って事は100年近く前だもんな。」
「勇者、戦士、魔術師、聖職者のバランスのええパーティーやったわ……って、こんな事を話してる時間も惜しいし、出発するで~!」
「あ、ああ……」
こうして、何だかんだありつつも楽しかった城塞都市タルコスを発つ事になった俺達。
だが、後に聖都 ラフロンスでエルリスさんの過去とも関係のある騒動に巻き込まれる事になるとは、この時の俺達は考えもよらなかったのだった……
ご読了ありがとうございます。
第3章では、かつてエルリスの仲間だった聖職者の存在と暗躍する魔王軍幹部が鍵になってきます。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。