54.タルコス防衛戦 開戦
タルコス防衛戦、開始……
なお、主人公の藤四郎は戦闘が出来ないため出番が激減する。
(ラビリンス視点)
「おや?私が出して結界内に入れた筈の魔物がどんどん倒されてますピョンね~。……やっぱり、質が足りなかったですピョンか……」
遂に始まった城塞都市タルコスへの侵攻。
私はひたすら、簡易迷宮にてコドクを生き抜いた魔物達を迷宮から転送していましたピョンが……
……結界内に入った魔物が片っ端から勇者ツカサに撃墜されるのを見て、私は不安が的中したと思いましたピョン。
ですが、悪い事は続くらしく……
ーヒュ~……
「……先手必勝だよ!」
ーブンッ!
「ピョン!?」
ースカッ……
「あ、今のかわしちゃう!?」
「……勇者アカネですピョンか……」
私は飛んで来た斬撃を何とかかわしつつ、その斬撃を飛ばした相手……背中に大きな翼を生やして空を飛ぶ、勇者アカネを見ましたピョン。
「うん、そうだね。」
「……恐らく、今回召喚された勇者の中では最強の筈の貴女が……何故、私の所に来たのですピョン?」
てっきり、ミノガルかバーバの所に行くと思ってましたピョン。
なのに、何故か勇者アカネは私を仕留めに来ましたピョン。
「そんなの、決まってるでしょ。」
「ん~?」
「……君を放置してたら、どんどん敵が投入されちゃうからね。……もしそうなったら、司ちゃんの魔力が保たないんだよ。」
ふむふむ、確かにそうですピョン。
今回は魔力無限とはいきませんピョンが、魔力消費は少なめで済ませられてますピョン。
対する勇者ツカサは、恐らく魔力を垂れ流しにしていますピョンから、勇者ツカサが魔力切れを起こす前に私を倒すのは当然と言えますピョン。
とはいえ、ここで分身体を更に減らされるのは勘弁ですピョンね……
……少し、試してみますピョン。
「そうなんですピョンか~。……てっきり、シトラの時みたいに私に惚れたのかと……」
「ハァ?……自分が何を言ってるか分かってる?」
おや?
何故か勇者アカネの怒りが増しましたピョン。
「勿論、私の分身体はシトラと同じくらい綺麗で美しくて可愛くて……惚れ惚れしますピョンよね?」
「……シトラちゃんを、お前みたいな下衆と一緒にしないで!」
「ピョン?」
ふむふむふむ……怒りが更に増しましたピョン。
「シトラちゃんは優しい女の子だよ。……お前みたいな人の命を何とも思っていない奴とは違うの!」
「……へぇ~、ボコボコにされたのにそんな事が言えるんですピョンか~。……やはり、人間は私より劣ってる生命体ですピョンね~。」
「……もう良い。黙って……って言いたいけど、最後に1つだけ教えて?」
「ピョン?」
勇者アカネを懐柔する事は不可能と改めて理解しつつも、そこまでシトラに惚れてる勇者アカネを私は劣っていると嘲笑いましたピョン。
それで怒りが頂点に達したらしき勇者アカネは、最後に私に1つ聞くと言いましたピョン。
「……その分身体、容姿のモデルって居るの?」
「どうしてですピョンか?」
「さっき、その容姿を自画自賛してた時……何かこう、自分以外の誰かに向けてた気がして……」
……どうも、勇者アカネは思ってたより他人の意思が分かるみたいですピョンね。
しかも、感情のない私の考えすら読み取るとは……只者ではありませんピョン。
「ふふ、鋭いですピョンね~。……これは私がまだ生まれて間もない約500年前に取り込んだ街、夢都 ワンダーランドの管理をしていた妖精の姿を真似て作ったんですピョンよ~。」
「……何で?」
「勿論、私の本体が居る迷都 ラビリンスで今も幽閉されてるその管理人にこの姿を見せて、心を折るためですピョン。」
「……自分に似た姿の下衆が、人間を蹂躙してる姿を見せてるって事?」
「そういう事ですピョン。……かつて魔物に襲われない楽園を作り、他人の幸せを心から願った妖精兎……そいつが未だに夢都のシステムの最後の砦を担っているせいで、私は未だに本体での攻勢に入れないんですピョン!」
あの兎、あいつさえ居なければ……
私はより、強くなれていた筈なのですピョン。
「お前……」
「ふぅ……これまでは迷宮の中から出れませんでしたピョンが、私の能力に目をつけた今代の魔王……ドラグ様が力を貸し与えてくれたお陰で、こうして分身体を作れる様になったんですピョン。」
「……どうして、そんなに詳しく言ったの?」
「別に、私にデメリットが無いからですピョン。……こういう話、勇者アカネは絶対に無視出来ないですピョンよね?」
「……つまり、時間稼ぎをしたんだね。」
「正解ですピョン。……あ、話は嘘をついてバレるリスクを考えて全部本当ですピョン。」
「寧ろ、嘘であって欲しかったよ……」
嘘偽りない本当の情報である程度の時間を稼いだ結果、そこそこ魔物を結界内に入れられましたピョン。
まあ、片っ端から撃墜されましたピョンが、勇者ツカサに魔力を使わせる事には成功しましたピョン。
「さあ、これで私の話は終わりですピョン。……でも、簡単には倒されてあげませんピョン!」
ーフワッ……フワッ……ヒュン!
「逃がさない!……後、その可愛い兎ちゃんはいつか私が絶対に助けるから!」
ーバサッ……バサッ……ヒュン!
逃げる私と追う勇者アカネ……
こうして、城塞都市タルコス上空で地獄の様な追いかけっこが始まりましたピョン……
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(俯瞰視点)
城塞都市タルコスの上空で茜がラビリンスに不意打ちをしたのと時を同じくして……
「……魔物……予想以上に……使えぬ……コドクで……強化しても……この程度か……」
姿を隠して結界内に侵入したバーバは、地上に降り立つ事なく撃墜されていく魔物達に失望していた。
「やはり……こ奴等にも……姿隠しの魔法を……かけるべきだったか?……いや……無意味だろう……さて……どうしたものか……」
バーバは考え、否定し、また考える。
策を考えるのはバーバの得意分野。
あくまでも魔物達は最初から囮でしかない。
「ふむ……では……勇者ツカサを……狙うか……」
バーバが出した結論は、囮の魔物達に集中している勇者ツカサの暗殺。
しかし、それはすぐに叶わぬ策となる。
何故なら……
「【地獄の業火】ですわ!」
「む?」
ーボォォォォォォォォォォォォ!
突然、バーバに放たれた業火。
それは、バーバの肉体を炎で包み込む。
「おっほっほっ!……私にかかればこのとお……へ?」
当然、その魔法を撃ったのはメアリーだった。
彼女は自身を飛行魔法で浮かせながら、バーバに魔法を当てたのだ。
しかし、その攻撃は……
「……なるほど……よく練られている……」
……バーバを討つには至らなかった。
「なっ……この一瞬で結界を張ったのですの!?」
バーバは、自身の周りを球状の結界で覆っていた。
そして……
「では……炎を消そう……」
ードバドバドバ……
「……まさか、詠唱もなしに大量の水を操るなんて信じられませんわ……」
バーバは無詠唱で、大量の水を結界の周囲に生成して炎を消した。
「……さて……本気で……やるか……」
「ええ、かかってきなさいな!」
こうして、バーバとメアリーの勝負が幕を開ける。
そして、時は遡り茜がラビリンスに不意打ちしたのと同時刻……
「ンモォォォォォォォォ!俺様を楽しませる強い奴、出て来いだモォォォォォォォォォ!」
ーガシャ~ン!
手に持った両刃の大斧を振り回し、周囲の建築物を壊す身の丈3mを越す怪物。
その怪物ことミノガルは、シトラに似ている言葉を叫びつつ、弱者も巻き込むといった点ではシトラと異なる行動をとっていた。
と、そこに……
「……ミノガル、お前の相手は小生がしますニャン!」
「ンモォ?」
現れたのは、デルレン商会タルコス支部支部長のナンドレアだった。
「ふぅ……皆さん、小生が殿を務めます故、早く避難してくださいニャン!」
「あ、はい!」
「ナンドレアさん、ありがとう!」
「ナンドレア支部長、どうかご無事で。」
ータッタッタッ……
周囲の人間を避難させつつ、ナンドレアはミノガルと対峙する。
こうして、三者三様の戦場が生まれた。
誰が勝つかは……まさに、神のみぞ知るといったところだろうか……
ご読了ありがとうございます。
なお、ラビリンスとシトラは今後もちょくちょく出て来ますが、2人の在り方は全くの真逆です。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。