5.ナフリー無双と異変
はい、更新です。
この小説を読まれている数少ない方々に改めて感謝いたします。
(浅山 藤四郎視点)
奴隷商を後にした俺達3人は、目的もなく町をぶらぶらと歩いていた。
「さて、奴隷を買ったは良いが……もう周りも暗くなって来たし、今日は適当な宿でも取って休むか。」
「賛成~。」
「ご、ご主人様の考えに従いますニャン。」
……という訳で、近くにあった手頃な宿に入った俺達は、1部屋食事付き金貨2枚で宿泊する事にした。
「じゃ、私は1部屋使うから、そっちはナフリーちゃんが奴隷なんだし2人1部屋で宿泊してね?」
「いや、せめて女性同士の方が……」
「お兄ちゃんの方が、私より安全だと思うけど?」
「……そういやそうだったな。」
すっかり失念していたが、茜はそういう問題があったな……
「ん?……ご主人様、どういう事ですニャン?」
「いや、大した話じゃねぇよ。……ただ、狼なのは男だけじゃねぇってだけだ。」
「……訳が分からないですニャン。」
「世の中には、詳しく知らない方が幸せな事もあるって話だ。」
「そ、そうですかニャン……」
茜のアレコレに関しては、詳しく話さない方が今後のためだろう。
「それじゃあ、食事もいただこ~!」
「茜、テンション高いな……」
「ご主人様、あたしは……」
「ああ、俺の分をたっぷり分けてやるからしっかり食べろよ?」
「あ、ありがとうございますニャン!」
そうして俺達は食事を済ませ、部屋で眠りについたのだった……
なお、余談だがナフリーは早々に床で寝てしまった。
一応、ベッドを譲ろうとしたんだが、その暇すらなかった……後、運ぼうとすると引っ掻こうとして来たのでベッドで寝かせるのは諦めたのだった……
そして翌日の昼前……
「さて、今日も張りきってゴブリン退治と行くか。」
「お兄ちゃん、今日は大丈夫だよね?」
「大丈夫の筈だ。……だよな?」
「ご主人様、あたしにお任せくださいニャン!」
再び片道数時間の道のりを歩き、昨日ゴブリンを虐殺しまくった平野にやって来た俺達は、ナフリーに一縷の望みをかけていた。
「……無理なら遠慮なく言えよ?」
「分かってますニャン!」
「後、本当に武器要らないのか?」
「あたしは素手でぶん殴るタイプですニャン!」
「そ、そうか……じゃ、バフかけするぞ?」
「はいですニャン!」
……俺は少し心配になりながらも、ナフリーにバフをかけまくる。
「【補助全般】!……【体力増強】、【攻撃力上昇】、【魔力上昇】、【HP自動回復】、【MP自動回復】、そして……」
「っ!?力がみなぎって来ますニャン!」
バフかけは成功したようで、ナフリーは自身の変化に驚いていた。
と、ここでようやくゴブリンが気付いたらしく……
「グギャ!」
「グギャギャ!」
「グギャギャギャ!」
「お、来た来た……ナフリー、行けるか?」
前から押し寄せる何体ものゴブリンを見た俺は、ナフリーに行けるかどうかを聞いた。
だが、対するナフリーの様子は少しおかしくて……
「ふぅ……ふぅ……ゴブリン……魔物……魔物は絶対に許さないニャン……【獣化】!」
ーヒュン!
「「……え?」」
魔物に対して怨嗟とも言える言葉を吐いたナフリーは、何やらスキルを発動して一瞬でゴブリンとの間合いを詰めた。
そして……
「死に晒すニャン!」
ーザシュ!……ゴトッ……
「グギャァァァァァァ!?」
ナフリーの爪が思いっきりゴブリンを切り裂き、体内のゴブリン魔石が静かにその場に落ちた。
「グギャ!?」
「遅いニャン!」
ーゴキッ!
「グキャッ……」
次にナフリーは別のゴブリンに対して裏拳を放ち、その首をへし折った。
「グギャァ!」
「うるさいニャン!」
ーブシャッ!……ゴトッ……
「グ、グギャ……」
ナフリーは激昂して襲って来たゴブリンの鳩尾に拳を叩き込んだかと思えば、その拳は鳩尾を貫いて体内のゴブリン魔石を体外に吹き飛ばしていた。
「……えげつないな、ナフリー。」
「……私、てっきり可愛い系の萌え萌え猫耳少女かと思ってたのに……あれじゃあ完全に蛮族だよ……」
早すぎていまいちナフリーを視界に捉えるには行かないものの、何をやっているかは何となく分かった。
その上で、茜から蛮族と言われるレベルには……やる事がえげつなかった。
切り裂き、へし折り、貫き、抉り、捻り、潰し、開き、粉砕し……もう、どっちが魔物か分からねぇな。
「……というか、ゴブリン湧き過ぎじゃねぇか?」
「……確かに。ナフリーちゃんがいっぱい倒してるのに、全然減る気配がない。」
そう、明らかにゴブリンが多過ぎる。
ナフリーが次から次へと殺してるのに、それでもゴブリンが湧いて来るのだ。
と、ここで……
「グギャァァァァァァ!」
「ブヒィィィィィ!」
「「「っ!?」」」
突然、大きな2種類の鳴き声が響いた。
そして……
「グギャギャ……グギャァァァァァ!」
「ブヒブヒ……ブヒィィィィィ!」
「……ご主人様!こいつ等はゴブリンキングとオークですニャン!」
「え、そんなの居るって書いてたか!?」
「いや、私も依頼文にそんな記述見てないよ!?」
現れた2体の魔物は、まさに異様だった。
1体は大剣を持った筋骨粒々な大型ゴブリン……恐らくゴブリンキングだろう。
もう1体はそんなゴブリンキングと肩を並べるサイズの肥え太った人型豚で、大きな棍棒を持っていた……恐らくオークだろう。
少なくとも、こんなのを相手にしたらナフリーが危ないかもしれない、そう感じた俺はナフリーに対して声をかけていた。
「おいナフリー、流石に茜と交た……」
「いえ、大丈夫ですニャン!……あの程度、簡単に捻り潰してやりますニャン。」
ようやく動きを止め、こちらを振り返ったナフリーの姿、それを見た俺達は……
「え、猫!?」
「うん、猫だよね!?」
ナフリーは全身にピンク色の毛が生え、顔も猫のそれに変わっていた。
「あ~、そういや【獣化】って言ってたな。」
「あれがそのスキルの効果って事か~。」
スキル【獣化】の効果で人型の猫と化したナフリーを見た俺達は、結局撤退を言い出せなかった。
そして……
「グギャァァァァァァ!」
ーブン!
「遅いニャン!」
ースカッ……ドゴーン!
「グギャァァ!?」
「隙ありニャン!」
ーガシッ……ゴシャッ!
「グギャァァァァァァ!?」
今、何が起こったか整理しよう。
ナフリーはゴブリンキングの大剣をかわし、その隙にゴブリンキングの頭を掴んで顔面に膝蹴りを食らわせていた。
いや、よく出来るな……
「ブヒィィィィィ!」
「ハァ……2対1であたしが苦戦するとでも思ってるニャンか?……生憎、今はご主人様に超強化されてるんだニャン!」
ーザシュッ!
「ブ、ブヒィ……」
ードスーン!
「え、オークを一撃で殺ったぞ……」
「うん、ナフリーちゃん強いね……」
ゴブリンキングが怯んでる間にナフリーは、オークの喉元を手刀で貫いて討伐した。
更に続けて……
「ゴブリンキング、邪魔なオークを片付けた以上はそっちも一撃ニャン!」
「グギャァァァァァァァァ!」
「……ふぅ~……ふん!」
ーヒュン!
「グギャァ?」
……ナフリーは高く跳躍すると、ちょうどゴブリンキングが真下に来る位置に陣取った。
「これで終わりですニャン!」
ーヒュルヒュルヒュル……ゴシャッ!
「グ……ギャァ……」
ードスーン!
「えっと……マジか……」
「うん、マジだよ……」
ナフリーはゴブリンキングに対して高所からの踵落としを食らわせ、その頭蓋骨を木っ端微塵に粉砕して討伐した。
こうして初のゴブリン退治成功は、ゴブリンキングとオークという大物の討伐で幕を閉じたのだった……
ご読了ありがとうございます。
ゴブリンキング&オークを短くしてしまい申し訳ございません。……いや、こいつ等後で雑魚の如く湧く予定なので下手に苦戦もさせる訳にも行かず、こうなってしまいました。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。