48.ロウルさんの忠誠心
ここからしばらく、ロウル・バルガイアの深掘りをしていきます。
(浅山 藤四郎視点)
「あっはっは!……トウシロウ殿、貴方が居れば鍛練もよりやり甲斐が生まれることでしょうぞ!」
「ああ、そうなのか……」
俺は今、ロウルさんに無理矢理引っ張られて移動していた……
……ロウルさんって、思ってたよりサシで話すのはキツそうだな……
「……メアリー殿下の件、私めは何も言いませぬ。」
「ん?」
「あのお方を、本当に愛するのならば……」
「……分かってる。」
俺は、遊び半分で女性と付き合うみてぇなクズじゃねぇんだ。
……メアリーと交際を始めた以上、最期まで愛するに決まってるだろ。
「……ふむ、本気なのですな。」
「当然だ。……やっぱり、気になるか?」
「当たり前の事を聞きますな。……私めは23歳の時から7年間、メアリー殿下に仕えているのですぞ?」
「ロウルさんが心配するのも納得だな。……って、待てよ?……それが本当ならロウルさんの年齢は……」
「はい!30歳ですぞ!」
「いや、普通はもう少し言うの躊躇しねぇか?」
ロウルさん、まさかのアラサー。
いやまあ、だから何だって話ではあるが……
「ははは……普通の女性なら婚期を気にする年齢なのでしょうが……私めは既に結婚を諦めております。」
「……この世界でも30歳は婚期を気にするような年齢なんだな……いや、何なら元の世界より早いか?」
確か最近は30歳でも結婚しねぇ人が大多数だったな。
だが、こっちの世界では未だに30歳で婚期を逃すとヤバいという考えがあるらしい。
「……そちらの世界の婚期については知りませぬが、この世界ではそうですな。」
「それで、何でロウルさんは結婚しねぇんだ?」
「勿論……メアリー殿下に仕えている以上は、出来る限りお側に居なくてはと思いまして……」
「本当に、ロウルさんはメアリーが大切なんだな。」
明るく振る舞ってはいるが、ロウルさんはメアリーが大切なんだと伝わってくる。
「だからこそ、蟲毒の迷宮でメアリー殿下と離れ離れになった時は内心気が気でありませんでしたな。」
「まあ、何となく分かる。」
「ですが、それを表に出してしまえば不安を煽る事になってしまう。……だからこそ、私めは可能な限り冷静を保ちましたな。」
「……本当に、大人って損な立場だよな……」
自分が動揺したら、同行していたナフリーや茜まで不安にさせかねない……
だから、動揺するのを我慢した。
とても心配だっただろうに。
「あっはっは、そう言っていただけるだけでありがたいですな。」
「……まあ、婚期を逃してまでメアリーに忠誠を誓ってるのは良いと思うが……ロウルさんは、それで本当に幸せなのか?」
「うむ……難しいですな。そもそも、結婚が幸せなのかすら私めには分かりませぬし……」
「確かに、俺達の世界では"人生の墓場"なんて言われる事もあったしな……」
ロウルさんの幸せがどこにあるのか。
それはまさしく"神のみぞ知る"、なのだろう。
「"人生の墓場"、ですか……私めとしては、どうせなら最高の墓場で眠りたいものですな~。」
「……そうなれば良いな。」
「そうですな!」
「いや、声が大きい……」
……ロウルさんの素顔は知らねぇが、こんな良い女性が婚期を逃すとか……よほど、女騎士は出会いが無いんだろうな……
と、俺が少し失礼な事を考えていると……
「お、目的地に着きましたぞ!」
「えっと、ここは……」
「デルレン商会タルコス支部ですな。」
「……うん、もうロウルさんが誰と鍛練してるのか分かっちまったよ……」
デルレン商会タルコス支部に居て、ナフリーが会おうとしない相手。
そんな相手といえば……
「頼も~!……ナンドレア殿は居りますかな~!?」
「あ、はい。……今日も支部長目当てでしょうか?」
「はい!……ロウル・バルガイアが鍛練に来たと言っていただければ伝わりますぞ!」
「あ、分かりました……」
やはり、ナンドレアさんだった。
だが、あの人って鍛練相手としてロウルさんに通用するのか?
そうして俺はナンドレアさんに対して失礼な事を考えながら、ロウルさんと共にナンドレアさんを待つのであった……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ナンドレア視点)
ーコンコン……
「はい、居ますニャンよ。」
ノックされるデルレン商会タルコス支部支部長室の部屋の扉……
ですがここ数日、その用件は1つしかありませんでしたニャン。
「すみません、ナンドレア支部長……ロウル様が、鍛練をしに来たと……」
「ハァ……よくもまあ、飽きずに来ますニャン。」
……本来なら、小生に会うとか思わない筈なんですニャンが……まあ、ロウルさんは脳筋みたいな性格してますニャンから、気にしないのでしょうニャン……
「あ、それと……」
「ニャン?」
「どうも、若い男性も一緒に居まして……」
「……金髪ですニャンか?」
「いえ……」
「では、眼鏡をかけてますニャンか?」
「いえ……」
「……どこにでも居そうな風貌ですニャンか?」
「はい……」
……ふむ、今日は珍しくトウシロウ君も居るみたいですニャンね。
「……良いですニャン。今日も鍛練に付き合ってあげますニャン……」
これが間接的にでもナフリーへの贖罪になるのなら……
小生は、どんな手助けだってしてやりますニャン。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ラビリンス視点)
城塞都市タルコスからかなり離れた森の奥地で……
「ンモォォォォォォォォ!早く俺様に暴れさせるモォォォォォォ!」
「……汝……出番……まだなり……」
ミノガルは自身が戦場に出れない事に憤慨し、対するバーバはすぐにミノガルの言葉を一蹴していましたピョン。
「そうですピョンよ~。……今の時点では、兵力が足りませんピョン。」
まさか、"青鱗大蛇"や"森の主"レベルの大物があまり居ないのは想定外でしたピョン。
ただ、ミノガルはそんな簡単に納得せず……
「ンモォォォォォォォォ!俺様やバーバが居るのに、何で雑魚を放つ必要があるんだモォォォォォォォ!」
「……いくら……汝でも……袋叩きは……マズい……」
「だから、向こうの狙いを分散させる必要があるんですピョンね~。」
「ンモォ……」
敵の狙いを分散させるためにも、程々の強さの雑魚は必要ですピョン。
だというのに……
「……問題は、程々の強さの雑魚があまり集まっていない事ですピョン……」
「……やはり……青鱗大蛇と……森の主を失ったのは……痛手だったか……」
「煩いですピョン!」
今もあちこちで"コドク"は続けてますピョンけど、未だにそこそこの強さの魔物にしか成長しませんピョン。
「……ふむ……こうなるなら……チューグロスも……巻き込むべきだったか……」
「確かに、生物を使った実験ならチューグロスの領分ですピョンが……彼は今、聖都ラフロンスで重要任務に就いてますピョンよ?」
「……だから……巻き込めなかった……」
チューグロスは魔王城に不在。
だからこそ、私しか巻き込めなかったのでしょうピョン。
「ただ、タブルドの王都侵攻が失敗した現状でこちらも失敗はキツいですピョンよ?」
「……肯定……失敗は……許されない……」
10人も居た魔王軍将軍の内の1人を削られている以上、これ以上の失敗は避けたいところですピョン。
……というか、この現状は感情の無い私でも流石に危機感を持ちますピョン。
「じゃ、今後もしばらくは魔物集めに注力するですピョン。」
「……それで良い……」
「ンモォ。」
こうして、このタルコス侵攻作戦の当面の方針は決まりましたピョン。
もっとも、この作戦で上手く行くかは……私にも分からないでしたピョンが。
ご読了ありがとうございます。
着実に、魔王軍幹部の影は近付いています。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。