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44.蟲毒の迷宮 脱出

蟲毒の迷宮編、この話で終わります。

(メアリー・ズンダルク・レブラトラ視点)


「ハァ……ハァ……トウシロウ、貴方は絶対に死なせませんわよ……」


ーザッ……ザッ……ザッ……


あの青鱗大蛇を討伐してから、どれ程の時が経ったでしょうか……


私は未だ気絶したままのトウシロウを背負い、迷宮を歩いておりましたわ……


「これも……【無制限の愛(アンリミテッド・ラブ)】で肉体が強化されているからこそ出来る事……普段の私では……運べなかったでしょう……」


ーザッ……ザッ……ザッ……


……周囲には気絶したトウシロウ以外には誰も居ないのに、私はひたすら言葉を吐き続けましたわ。


「だから……早く目覚めてくださいませ……トウシロウ……」


ーザッ……ザッ……ザッ……


「1人は……寂しいですわ……」


ーザッ……ザッ……ザッ……


「……あ、そうですわ……ここからかなり進んだ先に、ロウル達が居ますわ……」


「グシャァァ!」


「……【地獄の業火(インフェルノ)】ですわ……」


ーボォォォォォォ!


「グシャ……」


ードサッ……


「……邪魔ですが、回収しますわ……」


先程の【解析(アナライズ)】で迷宮内部をくまなく調べた私は、青鱗大蛇が居た空間を過ぎ、急な階段を上り、襲い来る魔物を倒して、何とか迷宮を進んでおりましたの。


だから……


「トウシロウは私を褒めないでしょうが……私は今、とっても頑張ってますのよ?」


……せめて、目覚めたトウシロウに褒められたい。


そんな事を考えていましたわ……


「ゲコォォォォォ!」


「ハァ……【地獄の氷結(コキュートス)】ですわ……」


ーピキピキピキーン!


「……これも回収しますわよ……」


……どんどん魔物の数が多くなりますわね……


「……そういえば……ロウル達は……何かを守ってましたわね……あれは……大きなキャノンビートル……」


なるほど……森の主を守る事を選びましたのね……


「……ハァ……ハァ……今……行きますわよ……ゴフッ!」


ーポタポタポタ……


「ハァ……ハァ……吐血まで……このままでは……私の身が保ちませんわね……」


血を吐いても、私は足を動かし続けましたわ……


少々離れた場所に居る……仲間達と合流するため……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(浅山 茜視点)


「「「「「ゲコォォォォォ!」」」」」


「「「「「グシャァァァァ!」」」」」


ーブンッ!……ドガドガドガーン!


「「「「「キチキチ……」」」」」


「「「「「カチカチ……」」」」」


「ふん!」


ーブチュ!ブチュ!ブチュ!


「「「「「ゲコォォォォォ!」」」」」


「あ~もう、全然減らな~い!」


私達は依然としてキャノンビートルの特殊個体ことカブお爺さんを守るため、防衛戦を続けていた。


とはいえ、魔物達は際限なく何処かからやって来る。


対する私達はというと……


「ハァ……ハァ……私は……体力がもう……」


「あたしも、今はお役に立てませんニャン!」


「……となると、ここから先は私め1人で頑張るしかなさそうですな……」


私は【戦乙女(ワルキューレ)】のデメリットで体力がもう殆んど無い。


ナフリーちゃんはお兄ちゃんからバフをかけられてないから戦えない。


……もう、頼みの綱はロウルさんだけだった。


「ふん!」


ーブチュ!ブチュ!ブチュ!


「ふん!」


ーブチュ!ブチュ!ブチュ!


「ふん!」


ーブチュ!ブチュ!ブチュ!


「……全然減らない……」


「ロウル様は1対1では強いですニャンが、多対1ではあまり実力を発揮出来ないみたいですニャン……」


あくまでもロウルさんは少数を相手にする際に強いのであって、多くの魔物を相手に戦える人じゃない。


それこそ、さっきまでは私が魔物を大量に殲滅してたから何とかなってたけど……もう、限界……


「……お二人とも、ここで諦めてはなりませぬぞ!」


ービクッ!


「ひっ!?」


「ニャン!?」


ロウルさんの突然の大声に、私とナフリーちゃんは思わずビビっちゃった……


「必ずや、メアリー殿下やトウシロウ殿と無事に合流しますぞ!」


「う、うん!」


「分かってますニャン!」


きっと、ナフリーちゃんは今すぐにでもお兄ちゃんに会いたいんだと思う。


……本当に、お兄ちゃんは罪な男で……羨ましいやら妬ましいやら……


「……私もここを出たらシトラちゃんに会いたいよぉぉぉぉぉ!」


「ニャン!?……アカネ様、いきなり叫ばないでくださいニャン!」


……うん、まあそんな反応されるよね……


「……うむ、ではお二人は体力の温存を!」


「え、ロウルさんは?」


「ここで敵を殲滅します!……もっとも、私めが倒れたら終わりですがな!」


「せめてそこは大丈夫って言い切ってよ!」


一抹の不安を感じながらも、私はロウルさんにツッコむ。


……ロウルさんの顔は西洋甲冑の兜に隠れて見えないから、表情も分からない。


でも……多分、笑ってる。


「ハハハッ!……いざ、尋常に……」


「【地獄の炎(インフェルノ)・増量版】……ですわ……」


ーボォォォォォォォォォォォォォォォォ!


「なっ……この魔法は……メアリー殿下ですか!?」


……私達の前に居た魔物達は、突然襲いかかって来た業火に燃やされて炭になっていた。


そして、その業火を出したのは……


「メアリー第二王女ちゃん……って、大丈夫!?」


「血涙に鼻血に吐血……見るからに大丈夫じゃないですニャン!」


やはり、業火を放ったのはメアリー第二王女ちゃん。


でも、その顔は血涙に鼻血に吐血と、殆んど血にまみれていた。


「って、待って。……メアリー第二王女ちゃんが背負ってるのって……」


「……ご、ご主人様……ニャンか?」


「ナフリーちゃん?」


ナフリーちゃんは信じられないといった表情で、メアリー第二王女ちゃんに背負われてるお兄ちゃんを見つめてた。


そして、次の瞬間……


ーヒュン!


「ご主人様ぁぁぁぁぁぁぁ!」


ーガシッ……


「ゴフッ……ナフリー……離すのですわ……」


「ご主人様に、何があったニャンか!?どうしてそんな酷い怪我を負ってるニャンか!?……どうして、こんなに騒いでるのに何の反応も返さないニャンか?」


……ナフリーちゃん、お兄ちゃんが怪我してる理由を聞いてるっぽい。


いや、ナフリーちゃんがとんでもなく焦ってるから1周回って冷静で居られるけど……私もお兄ちゃんがやられて平気な筈はなかった。


「……取り敢えず……生きてはいますわ……」


「っ!……なら、さっさと治療をするニャン!」


「私達のパーティーに……治癒魔術師は……居りませんわよ……」


「……だったら、早く迷宮を脱出するニャン!」


……もはや敬語が完全に崩れたナフリーちゃん。


そこまで、お兄ちゃんを大切に思ってたんだ……


「ハァ……ハァ……ゴフッ!」


ーポタポタポタ……


「っ!メアリー殿下、お体が……」


「私の事は気にしなくてもよろしいですわ!」


「で、ですが……」


「……それと……今の私は……迷宮の出口が……分かりますの……だから……私とトウシロウを……」


「分かりました!担ぎますぞ!」


ロウルさんはそう言うと、右肩にお兄ちゃんを、左肩にメアリー第二王女ちゃんを担ぎ上げた。


と、その直後……


「「「ゲコォォォォォ!」」」


「「「グシャァァァァ!」」」


「チッ、もう後続が来たニャンか!」


「……ゴフッ……あの魔物は私が……倒しますから……ロウル達は……一心不乱に走るのですわ!」


……後続の魔物が来てもなお、メアリー第二王女ちゃんの心は折れてなかった。


いったい、どんな強敵と戦ったのか……私には分からなかった。


「うん、行くよ。」


「行くニャン!」


「行きますぞ!」


「キュウ~!」


そうして私、ナフリーちゃん、ロウルさん、そしてカブお爺さんの3人と1匹は駆けた。


特にロウルさんはお兄ちゃんとメアリー第二王女ちゃんを担いでたのに、全く息切れしてなかった。



そして、数分程ぶっ通しで走った後……


「ゴフッ……目の前の……扉を……思いっきり……ぶち開けるのですわ!」


「承知しましたぞ!……ふん!」


ードゴーン!……シュン……


メアリー第二王女ちゃんの指示を受けたロウルさんが、通路の先に有った扉をぶち開けた。


すると……


「……あれ?」


「ニャン?」


「こ、これは……」


「ゴフッ……出れましたのね……」


「キュウ?」


私達が立っていたのは、ラビリンスによって迷宮に落とされたあの場所だった。


「まさか、ここに戻るとはね……って、お兄ちゃんを早く病院に!」


「分かってますぞ!……私めにお任せを!」


こうして蟲毒の迷宮を脱出した私達は、お兄ちゃんとメアリー第二王女ちゃんを城塞都市タルコスの病院へと運び込むのだった……

ご読了ありがとうございます。


蟲毒の迷宮編、何とも言えない出来になりました。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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