43.蟲毒の迷宮 告白
……誰が何と言おうと、2人目です。
(メアリー・ズンダルク・レブラトラ視点)
「い゛っでぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「なっ……」
……今、何が起こりましたの?
いや、何となく分かりますわ。
トウシロウが私を庇って……
「ハァ……メア……リー……」
「シャァァァァァァ!」
「っ!……いや、何かを吐いた影響で勢いが落ちてますわ!だったら……【地獄の氷結】ですわ!」
ーピキピキピキーン!
「シャァァァ!?」
……本体に効かないなら、その前に氷を設置して壁を作りますわ!
「……俺の……背中……有るか?」
「ええ、有りますわ。……でも……」
……トウシロウの背中は、とても酷く焼け爛れておりましたわ。
それはまるで、強酸性の毒を食らったかの様に……
「……逃げますわよ。」
「シャァァァァァァァァァ!」
ードンッ!ドンッ!ドンッ!
「……ここも、もう長くありませんわね。」
どうにか、トウシロウを逃がさなくては……
……トウシロウも私が関わった罪無き者の1人。
絶対に、死なせてやるものですか!
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(数分後、浅山 藤四郎視点)
「うっ……うぅ……」
背中が……いてぇ……
背中の感覚が……ねぇ……
「……何とか青鱗大蛇から逃げ切りましたわ。」
「そう……か……」
「でも、すぐに見つかりますわよ……本当に、申し訳ございませんわ。」
「メアリーが……謝る事は……何もねぇよ……うっ……」
駄目だ……
意識が……落ちそうだ……
「いえ、もっと早く氷の壁を作っていれば……」
「あれだって……毒だか……酸だかを……吐いて……勢いが……落ちたから……」
「……どうしてそこまで私を擁護するんですの!?」
「だって……メアリーは……悪くねぇだろ?」
メアリーのやり方に……間違いはなかった……
ただ、相手の特性が上手だっただけで……
「っ……本当に、こういう時の貴方は小物とは思えませんわね……」
「ハァ……ハァ……うるせぇよ……」
「……でも、いつもの貴方も私は好きですわよ?」
「……えぇ?」
いつもの俺が好き?
メアリーが?
「トウシロウと一緒なら、私は変に取り繕わなくて済みますもの。……お互いに本音で語れる存在、素敵じゃありません?」
「あはは……そう思ってたのか……」
でも……それは……俺を美化し過ぎだな。
「勿論、トウシロウから見れば美化してるとでも思うでしょう。」
「……エスパー……か?」
「それが何かは知りませんわ。……でも、私にとってトウシロウはそういう大切な存在ですの。」
「……意外……だな……」
てっきり……嫌われてると思ってたが……
……まさかプラスになってたとは……
「まあ、それはそうと馬車での言い争いは未だに怒ってますのでそのつもりでお願いしますわね?」
「……結局、それはそうなのかよ……」
大切なのか……怒ってるのか……どっちだよ……
「大切なのは事実ですわ。……でも、やはり私は理想を貫きますわ。」
「あはは……なら、貫いてみろ……」
「そのためにも、トウシロウは助けますわ。」
「そうか……」
ああ……やっと気付いた……
……俺、メアリーも好きだ……
でも……ナフリーとは違う……
メアリーは……気兼ね無く……喧嘩出来る……関係だ……
「……ん?どうしましたの?」
「メア……リー……好き……だぞ……」
「ファッ!?そ、そそそそそれはどどどどどういう意味ですの!?」
「ハァ……ハァ……何度も……言わせんな……」
あ、駄目だ……
意識が……限界っぽい……
「……あの、あ~……勿論、ナフリーを正妻として扱いますので、私とお付き合い……って、確実に今じゃありませんわ~!」
「脳が……バグってるな……」
意外と……意識って……保つもんだな……
いや……これ限界か?
「ああ……良いぜ……後……普通のバフで……行けるか?」
「……少し、厳しいですわね。」
「なら……ちょっぴり限界を……越えるか……」
「……あれ、行きますの?」
「どうせ……気絶ギリギリ……だからな……でも……メアリーは……」
もう……俺は気絶ギリギリだ……
だが……あれは……メアリーにも……負担が……
「……私も、やりますわ。」
「え?……良い……のか?」
「お~っほっほっ!……私もトウシロウも絶対に死にませんわ!何せ、私はズンダルク王国随一の魔法使いですもの!」
「理屈は……分からんが……やる気は……ありそう……だな……」
ってか……もう限界……
多分……今の会話だって……お互い……正気に戻った時に……どうなるか……分からんしな……
「それと、これだけは言っておきますわ。……私の信念、いつかトウシロウに認めさせてみせますわ!」
「……期待して……るな。」
……多分……後一言……程度が……限界だろう……
……と……その時……
「シャァァァァァ!」
ーニョロニョロニョロ……
「来ましたわね。……頼みましたわ。」
「ああ……分かった……【無制限の……愛】……」
ーズキン!
「うぐっ!?……これはキツいですわね……」
「お、俺は……気絶する……後は……頼んだ……」
それを最後に……俺の意識は……遠のいたのだった……
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(メアリー・ズンダルク・レブラトラ視点)
「……気絶、しましたわね……」
「う……うぅ……」
もっとも、気絶したところでこの痛みから解放はされないようですが……
「私も……何でこんな小物を好きになってしまったのでしょうね……」
思えば、私の信念を理想論だと一蹴され、泣かされたあの日……あの日はまだ、好きじゃありませんでしたわ。
じゃあ、いつ好きになったか……
……やはり、喧嘩を重ねる内にですわね。
「本音をぶつけ合える相手というのは、どこか楽しくて……仮に信念を否定されても、王族でさえなければ言っても良いと言ってくれた……例え小物でも、別に気にしませんわ。」
体は痛い。
骨が軋み、筋肉は悲鳴を上げ、節々は動かす事さえ難しい……
それでも……まだ、平気ですわ。
「シャァァァァァ!」
ーニョロニョロニョロ……
「やはり、ナフリーは何の制御もせずに使ったのですわね……だから、肉体がボロボロになったのでしょう。」
ですが、体内の魔力の流れを上手く調整すれば怪我も軽いもので済みそうですわね。
「シャァァァァァ!……ペッ!」
ーヒュン!……スカッ!
「……私に2度も同じ方法が通じるとは思わない事ですわね。」
タネさえ分かれば、警戒は簡単ですわ。
「シャァァァァァ!」
「さあ、そのまま来るのですわ……【地獄の業火・圧縮版】ですわ!」
ーシュルシュルシュルシュルシュル……
……私は【地獄の業火】を握り拳サイズまで圧縮させると、そのまま口を開いている青鱗大蛇へと狙いを定め……
「シャァァァァァァ!」
「大きな攻撃が来たら口を閉じて体内を守る……先程は気付きませんでしたが、思い返してみれば体内への攻撃は試しておりませんでしたわね。」
もっとも、平時の私に強力な攻撃を圧縮させる程の力はないので無理ですが……今なら行けますわね。
「シャァァァァァァ!」
「……死に晒しすのですわ!」
ーバビュン!……スポッ!
「シャァァァァァァ!?」
自身が何を丸呑みにしたのか、青鱗大蛇は全く理解しておりませんわね。
「まあ、良いですわ。……これで終わりですもの。」
ーパチン!……ボォォォォォォ!
「シャ……シャァァァァァァ……」
突如として体内から爆炎が上がり、全身に炎が燃え上がる青鱗大蛇。
これは、運が良ければ体表の鱗も回収可能ですわね。
「そうして青鱗大蛇を燃やしてる間に……【解析】ですわ!」
ーポタポタポタ……
……血涙と鼻血が出始めましたが、気にはいたしませんわ。
「ふむふむ、この迷宮はこうなってるんですわね……」
やはり、これは普通のバフではここまで精度の高い解析は出来なかったでしょう。
迷宮の全体図、他の皆が何処に居るか、そして出口の位置……これ等は、【無制限の愛】の強化があったからこそ調べられた情報ですわ。
と、その時……
「シャ……シャァァ……」
ードシーン!
「……思ったよりしぶとかったですわね……」
って、こうはしていられませんわ……
私は急いで青鱗大蛇の死体を収納袋の中にも吸い込むと、トウシロウを抱えてロウル達のもとに向かう事にいたしましたわ。
……全身の痛みを、必死に耐えながら……
ご読了ありがとうございます。
メアリーが藤四郎と付き合う理由、何か弱いですかね……いやでも、これ以上は……あぁ……もっと回を重ねるべきだったか……いやもう、これで良いです!
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。