4.猫耳奴隷を購入
前話の所持金の辺り、1万円を10万円に修正いたしました。
(浅山 藤四郎視点)
「……戻って来たぞ冒険者ギルド!」
「……欲しいのマトモな戦力が!」
あのゴブリン大虐殺から数時間後、俺達は長い道のりを歩いて再び冒険者ギルドに戻って来ていた。
……なお、今は冒険者ギルドの外は夕日が照らしているため、逆説的に召喚された当初は午前中だった事が分かる。
と、ここで……
「あ、茜さんに藤四郎さんじゃないですか!」
「ん?……あ、兼人か!」
「え、どうしてここに居るの!?」
突然、俺達に話しかけて来たのは、王城を出た直後に別れた筈の兼人であった。
「いえ、僕も冒険者登録をして身分をはっきりさせておこうと思いまして……」
「あ~、俺達と同じ理由か。」
「でも、戦闘無理なんでしょ?」
「そこはまあ、ドブ掃除とかペット探しみたいな王都内で出来る依頼をこなすつもりです。」
「そうか。」
「ま、元々兼人君は戦力にならないし、私達には関係ない話だね。」
「……それはそうと、お二人とも。先程、戦力が欲しいとか言っていませんでしたか?」
「……ああ、実はだな……」
そうして俺は、事の経緯を兼人に話した。
「なるほど。つまり茜さんが強過ぎて、依頼達成のために必要なドロップ品まで破壊してしまったと……」
「そういう訳で、マトモな基準の戦力を探してるって訳だ。」
「そういう事~。」
とはいえ、これは難しい。
下手に誰か雇うと、当然給料を渡さなきゃいけない。
つまり、最適な相手かどうかを見定めないと、無駄金を払う羽目になりかねない。
そう思っていると……
「……う~ん、それなら奴隷を買うのが一番良いんじゃないですか?」
「「え?」」
奴隷……それが、よりにもよって同じ日本出身の兼人の口から出た事に衝撃を受けた。
いやまあ、確かに元の世界でも奴隷はファンタジー小説で扱われてた。
それでも、やはり思うところはあった。
だが、兼人は俺達が衝撃を受けたのを知らずに言葉を続けていて……
「まず、下手に戦力を雇うとなると、継続して給料を支払う事になります。対して奴隷は、購入費さえ出してしまえば後は衣食住を提供するだけで済みます。」
「確かに、合理的ではあるんだよな。」
「あ、この世界の奴隷には犯罪奴隷、普通奴隷、借金奴隷という区分がありまして、基本的に犯罪奴隷は鉱山等の常時命の危険がある場所で鉱夫を、借金奴隷は借金返済のためにも命は捨てられないので安全な召使い等の職務を、それぞれ担当させられます。……なので、今回は普通奴隷を買うのが良いと思いますよ。」
「……随分と詳しいな。」
「一応、城を出て皆さんと別れてから【図書館】で色々と調べさせて貰いましたから。……あ、僕は奴隷買いませんよ?1人の方が落ち着くので。」
「いや、別に聞いてねぇし……」
「……で、その普通奴隷は何処で買えるの?」
「少しだけ待ってください。確か、近くに国家承認済みの奴隷商があった筈なので……あ、それと1つ注意して欲しいんですけど、基本的にこの国では軽度の犯罪奴隷や普通奴隷、借金奴隷を虐待するのは禁止されてますので、くれぐれも気を付けてください。……重度の犯罪奴隷は基本的に命を使い潰して問題ないですが。」
……どうも、この国は奴隷を認めつつも奴隷に対し一定の安全は保障されてるらしい。
ま、重度の犯罪奴隷に関しては自業自得だな。
とまあ、そんなこんなで奴隷商の場所を兼人から聞いた俺達は、すぐさまその奴隷商へと向かったのだった。
数分後……
「ようこそ、デルレン商会奴隷部門へ。私は奴隷部門担当のルルネンと申しますのねん!」
「あ、よろしく頼む……」
「あ、うん……」
奴隷商へと着いた俺達を待ち受けていたのは、ルルネンと名乗る人の良さそうな小太りの中年男性だった。
「さて、お客様はどんな奴隷をご所望なのねん?」
「えっと、取り敢えずそこそこ戦える普通奴隷が欲しいんだが……」
「でしたら獣人系が良さそうなのねん!」
「獣人……」
「本当に居るんだね~……」
ルルネンさんに奴隷の要望を伝えると、獣人系がおすすめだと返された。
「ささ、こちらねん!」
「じゃあ行くか……」
「そうだね……」
こうしてルルネンさんに言われるがまま、該当奴隷のものへと案内された。
そして、そこで待ち受けていた光景は……
「あ、あたしをご指名お願いしますニャン!」
「いや、俺だワン!」
「いいや、私を……」
大量の奴隷が、客の指名を待ってる状態だった。
「彼・彼女等は魔王軍の侵攻により住み処を失った獣人奴隷達ですのねん。……ただ、この中でお客様方におすすめする奴隷は……うん、この娘ですのねん!」
「え、あたしですニャン!?」
ルルネンさんが指名したのは、ピンク色の長髪と腰から生えたピンク色の尻尾が特徴的な茜と同年代っぽい猫耳少女だった。
「この娘の名前はナフリー。……かつて故郷だった猫人族の里を、欲豚将軍 タブルド率いるオーク部隊に蹂躙された過去を持っていますのねん。」
「……あの強いオークのせいで、あたしの故郷の皆は死んだニャン……」
「そうか……で、ルルネンさん。この娘の何処が俺達におすすめなんだ?」
……確かに過去には同情するが、それとこれとは話が全くの別物だ。
俺達が探してるのは適当な強さの奴隷であって、愛玩用の奴隷じゃねぇ。
だが、それに対するルルネンさんの返答は意外なものだった。
「ああ、さては愛玩用の奴隷だと思われましたのねん?だったらそれは間違いなのねん。この娘は、追手として差し向けられたオーク部隊のオーク3体を殺し終わった所を保護された……強者ですのねん。」
「なっ!?」
「えっ!?」
ルルネンさんの話を聞いた俺達は、開いた口が塞がらなかった。
少なくとも、こんな可愛い娘がオークを3体も倒したって……
「まあ、流石にその直後に意識が無くなって5日程命の危機に瀕しましたので、あれは火事場の馬鹿力だったのでしょうが……少なくとも、ポテンシャルはかなりのものですのねん!」
「なるほど……確かに面白いな。よし、買おう。」
もしかしたら、俺の【補助全般】で大化けするかもしれない……そう思った俺は、ナフリーの購入を決めた。
「ありがとうございますなのね~ん。……では、お代は金貨10枚ですのねん。」
「……1万円か……やっぱり人を買うにしては安い気がするんだが……」
てっきり金貨100枚要求されてもおかしくないと思ったんだが……
……というか、換算したら元の世界の犬や猫の最低価格より安いじゃねぇか!
「……安いと思うねん?それでも、奴隷というのはそういうものなのねん。特に、冒険者が扱う奴隷は魔物との戦闘ですぐ死ぬ事が多いから、効率も考えて安く見積もってるのねん。」
「だが、虐待は禁止されてる筈じゃ……」
「お客様、魔物との戦闘は虐待に当たらないのねん。ただ、私だってそれはどうかと思ってるのねん。」
「……歪だな。」
直接の虐待はアウトでも、魔物と戦闘させて死なせても虐待じゃないって……歪過ぎる。
「ま、お客様方ならそんな事にはならないのねん!」
「だったら良いんだがな。」
「それより、早く奴隷契約を結ぶから、この契約書に血判をお願いするのねん!」
「ああ、契約書の文言は……うん、問題ないな。分かった、契約する。」
こうして奴隷購入の手続きをした俺は、ナフリーを奴隷として正式に購入した。
「よ、よろしくお願いしますニャン……ご主人様。」
「……何かむず痒いな……まあ、良い。行くぞ。」
「は、はいニャン!」
ご主人様という慣れない呼び方にむず痒さを感じながらも、俺達は奴隷商を後にするのだった……
ご読了ありがとうございます。
この世界では、自分1人で生きられなくなった者達が自ら奴隷になります。ナフリーもその1人です。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。