39.蟲毒の迷宮 落下
……読者に読まれようが読まれまいが、書籍化も目指してないただの趣味なので好きに書く!
(浅山 藤四郎視点)
「……という訳で、この中にジャイアントトードの死体と潰れたフォレストタランチュラが入ってるぞ。」
「え、あっ、はい。……ん~?」
ジャイアントトードを倒した俺達は、すぐさま冒険者ギルドに戻って収納袋を受付に提出した。
いや、もっと森で狩りをしても良かったんだが、王都付近の平野と違って森は遭難しかねないので帰って来た形だ。
ただ、それはそうと受付の様子がおかしく……
「何だ?不備でもあったか?」
「いえ、その……ジャイアントトードとフォレストタランチュラ、それぞれ1体ずつとしか遭遇しなかったんですか?」
「おかしいのか?」
「はい。……本来、あの森は虫系魔物やジャイアントトードが大量に居る筈でして……そうした魔物の大群を掻い潜ってジャイアントトードを仕留める実力があるか確認するのがこの試験の本来の目的なんですよ。」
「つまり、今回は……」
「運が良かった、で済めば良かったんですけどね……」
どうも、受付の女性は顔をしかめており、確実に面倒事の予感がした。
「あ~、俺達はこれで……」
「待ってください。……実はここ数日、森の魔物の目撃数が異様に減ってまして……」
「あ~、はい。」
「当初は突然発生した青鱗大蛇に食われたのかと思われたのですが、それにしても減り方が異常としか言えないんですよね……」
「その青鱗大蛇は居るのか?」
「はい。……普段は何処かに潜んでいて、狩りの時だけ出て来るのですが……未だに痕跡が多く残っていますので、そちらはまだ居ると断言出来ます。」
う~ん。
弱い魔物が大量に消えて、強い魔物は未だに残ってると来たか……
しかも、食われたにしちゃ減り方が異常だと。
……確実に面倒事だが、勇者パーティーならやらねぇと駄目なんだろうな~。
「……取り敢えず、明日から動くか。」
「そうだね~。」
「賛成ですニャン。」
「……では、本日はお三方のパーティーを銀ランクに上げるのみといたします。……可能であれば、明日から調査を依頼させていただきます。」
「……分かった。」
こうして、俺達は調査を後回しにする事でその場を切り抜けた。
なお、メアリーとロウルさんはというと……
「あら、やっぱり勝ちましたのね。」
「では、この後は私めとお手合わせを……」
メアリーは何やら不機嫌そうであり、逆にロウルさんは何故か興奮して俺達に手合わせを挑もうとしていた。
……何か薄々思ってたけど、もしかしなくてもロウルさんって脳筋か?
別に気にしないけど。
「まあ明日から忙しくなるし、今日は取り敢えず帰るとするか。」
「賛成~。」
「アカネ様、ご主人様の言葉に賛成って結構返してますニャンね。」
「そりゃ、別に異論もないし面倒だし……」
「……そういうものですかニャン……」
ああ、どんどんナフリーが余計な情報を仕入れてる気がするのは気のせいか?
とまあ、そんなこんなで馬車に戻った俺は、済ませるものを済ませた後はベッドでナフリーとイチャついた後に眠りについたのだった……
そして翌日、魔物が減ってるという森にて……
「……本当にここ、魔物が多かったのか?」
「……虫系魔物、全然出て来ないね。」
「……本当に静かですニャン。」
「……いっそ不気味ですわ。」
「……私めの腕の見せ所かと思ったのですが……」
俺、茜、ナフリー、メアリー、ロウルさんの5人で、森の探索を始めた。
勿論、遭難しないように注意した上でだ。
「とはいえ、この森をくまなく探索するのは苦労するだろうな……」
「ま、粘り強く頑張るしかないよ。」
「……こんな事なら司と正義も連れて来れば良かったな。」
「いや、無理でしょ。……司ちゃんは虫嫌いだし、正義君は魔物相手に単独で戦えないし……」
「まあ、そうだな……ハァ、長くなるぞ……」
これは長くなる。
この場に居た5人がそう思っていただろう。
だが、次の瞬間……
「いや~、今日も大漁大漁ですピョン。……ここらの虫系魔物やジャイアントトード、そして特殊なキングボア……これだけ集めればバーバも納得するピョ……」
「なっ……」
「えっ……」
「ニャン!?」
「これ……夢ではありませんの?」
「あはは……現実ですな。」
……俺の目の前に居たのは、さもルンルン気分かの様にスキップして歩く、バニーガール姿にピエロの仮面を被った女性……ラビリンス分身体だった。
「おや、見つかってしまいましたピョンか~。」
「おまっ……まだ懲りてなかったか!」
「懲りる?そんな感情は知らないですピョン。」
「……だろうな。」
ラビリンス分身体……まさか、この事件に魔王軍幹部が関わってたとは……
「ふ~ん、そっか~。じゃ、遺言……は本体じゃないから意味はないとして、とにかく君の暗躍はこれで……」
「いいえ、終わりませんピョン。」
「おい、この期に及んで何を……」
……何だ?
嫌な予感がする……
「……ハァ、捕まえたのが何体か潰されちゃいますピョンが、取り敢えず足止めしましょうピョン。」
「茜、今すぐ……」
「遅いですピョン。……【迷宮創造・簡易版】ですピョン。」
ーフッ……
「なっ!?」
「えぇっ!?」
「ニャン!?」
「何ですの!?」
「メアリー殿下、私めから離れな……」
ーヒュ~……
ラビリンス分身体が【迷宮創造・簡易版】と唱えた瞬間、俺達の足元の地面が消えて奈落の底に落とされた。
「ハァ……何体殺されちゃうんでしょうピョン。ま、別の所で狩り直して、そっちでコドクをやり直せば良いだけですピョンね……」
「おい、待っ……」
ラビリンスの言葉を最後に、俺の意識は闇に包まれたのだった……
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(数分後、浅山 茜視点)
「う、ううん……【蒼天の翼】を出すのがちょっと遅れちゃった……」
「アカネ様、大丈夫ですニャン!?」
「アカネ殿、大丈夫ですか!?」
「あれ?……ナフリーちゃんとロウルさん?……お兄ちゃんとメアリー第二王女ちゃんは?」
「そ、それが……」
「……落ちてる途中で何処か別の方向に行っちゃいましたニャン……」
……マズいね。
よりにもよってその組み合わせか~……
「……取り敢えず、ここは?」
「恐らく、ラビリンスが作り出した簡易的な迷宮でしょうな。……そして、ラビリンスの言葉を信じるならこの中には消えた筈の魔物がうじゃうじゃと……」
「……でも、こんな所に魔物を閉じ込めてたら共食いを始めますニャ……」
簡易的な迷宮、閉じ込められた魔物達、共食い……ん?何か聞いた事があるような……
「待って!……ねぇ、この世界に蟲毒ってある?」
「蟲毒?……ふ~む、私めは知りませんな~。」
「あたしも知りませんニャン。」
……ロウルさんは脳筋っぽいし、ナフリーちゃんも呪術とか知ってそうにないし……
でも、もし蟲毒だったら本当にマズい!
「蟲毒ってのは、私達の世界で言われてた呪術的なものの1つでね?……あ、一応私達の世界では呪術なんて迷信だったんだけど、この世界でもその限りかは分からない。」
「そうですな。……で、その蟲毒とは?」
「蟲毒っていうのは簡単に言うと、壺の中に毒虫や蛙、蛇なんかを詰めて殺し合いをさせて、その中で生き残った生物を使って相手を呪い殺す呪法だよ。」
「っ!?……それは強いのですか?」
「……少なくとも、死んでいった生物の怨念を背負う訳だからね。……そりゃあ勿論強くなる。」
「となると、マズいやもしれませんね。」
「あたしもそう思いますニャン……」
さしずめ、ここは蟲毒の迷宮って所かな?
まあ、まだ確定はしてないけど……
「お兄ちゃん、メアリー第二王女ちゃん、無事で居てね。……よし、私達も行くよ!」
「はいですニャン!」
「はっ!」
私はお兄ちゃんとメアリー第二王女ちゃんの無事を祈る事しか出来なかった。
でも、それはそれとして私達も無事に出れるか分からないから……早く出口を目指す事にするのだった……
ご読了ありがとうございます。
ラビリンスによる蟲毒の迷宮編、開幕です。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。