37.タルコス到着
何か、ここまで結構ぐだぐだですね……
(浅山 藤四郎視点)
メアリーとの言い争いから7日程経過した。
その間、俺はずっとナフリーとイチャイチャして過ごしていた。
……というか、朝からイチャイチャして、気付いたら夜だったなんてザラであった……
ともかく、そんなこんなで馬車の旅……とは絶対に呼べない旅をしていたものの、それもようやく一時的な終わりを迎える事になった。
『皆、タルコスに着いたで~。』
という訳で、俺達は最初の目的地であったタルコスに到着したのだった。
……物語風にこれまでの経緯を考えてみたが、確実に俺って文才ないよな……
あっただの、なっただの、同じような言葉の言い回しを繰り返して……
「……様……ご主人様!」
「はっ!?……あ、ナフリーか……」
「……何を考え込んでたんですニャンか?」
「いや……俺って絶対に小説家になれないな、と思ってな。」
ほんと、改めて思い返すと絶対に今考えるような事じゃねぇけどな……
「……さて、それじゃあ馬車を降りるか。」
「そうですニャンね。」
こうして俺はいまいち格好つかないまま、ナフリーと共に馬車の出入り口へと向かったのだった……
そして、馬車を降りると……
「うおぉ……」
「す、凄いですニャン……」
「いつか、シトラちゃんとデートしたいな~……」
「……栄えてるって感じですね……」
「ふむ、王都に迫るとも劣らないとは良く言ったものだね。」
「マジ大都市っしょ……」
……俺達が馬車を降りて見たタルコスの街並みは、まさに王都と肩を並べる程の大都市だった。
「……ほな、各自しばらくタルコスで滞在や。」
「え?」
「あ、馬車はこの先の共同馬車置き場に置いとくさかい、夜になったら戻って来よし。」
「ああ、分かった。」
「それとこれ、この馬車の鍵や。……ウチ居らん時はこれ無いと入れへんさかい、気ぃ付けてぇな?」
「……本当に至れり尽くせりだな……」
つまり俺達は今後、宿屋の心配をしなくても良くなったって訳だ。
……そうだよな?
「まあタブルド倒したり、ラビリンスの分身体壊したり、シトラはん協力させたりっちゅう活躍させといて、何の褒美もあげへんのはあかんからな。……いっぱい活用するとええわ。」
確かに、ここ数日間の馬車旅はかなり快適だった。
……あれを馬車旅と呼んで良いかは疑問だが。
「ま、馬車の事は分かった。……それはそれとして、俺達は取り敢えずこの街でも冒険者として稼ぐか。」
「賛成~。」
「あたしもご主人様の意見に賛成ですニャン。」
よし、満場一致で冒険者活動に決まった事だし、さっそくタルコスの冒険者ギルドに……
「お待ちなさい。」
「ん?」
……冒険者ギルドに行こうとしたところで、俺達はメアリーに呼び止められる。
「私も冒険者ギルドに同行しますわ。」
「私めもお供いたします。」
「えぇ……」
「うわっ、お兄ちゃん露骨に嫌そう……」
「まあご主人様、旅の最初の方にメアリー第二王女殿下とは言い争いに発展してますニャンからね……」
……ナフリーの言う通り、俺とメアリーの関係は最悪の一言だった。
それこそ、あれから言い争いこそしていないものの、お互い視線を合わせようとしないぐらいには険悪な雰囲気を漂わせていた。
「……まあ、ここで話し合ってても結論は出ねぇだろうし、取り敢えずは一緒に来ても良いぞ。」
「あら、私相手にタメ口ですの?」
「今更だろ。……何なら罰するか?」
「いえ、大丈夫ですわ。……ですが、その考えは身を滅ぼしますわよ?」
……勿論、タメ口で言うのは本来ならアウトだ。
だが、メアリー自身から敬語は不気味だと言われたので、こうしているのだが……やはり、メアリーも俺に対して怒ってるようだな。
「……ご主人様もメアリー第二王女殿下も、喧嘩は辞めて早く行きますニャンよ!」
「あ、そうだな。」
「そうですわね。」
いつの間にかだいぶ強かになったナフリーの言葉で俺達は冒険者ギルドへと足を進めるも、俺もメアリーもお互いの顔を見る事はなかった。
当然、こんな態度で良い訳がなく……
「……メアリー殿下が申し訳ない……」
「いや、お兄ちゃんの方こそごめんね?」
ロウルさんと茜はお互いに謝っていたのだった……
とまあ、そんなこんなで数分後、城塞都市タルコスの冒険者ギルドに俺達は到着した。
「……受付はここか?」
「基本は王都のと変わらないよね。……あ、私は先に依頼書見とくね。」
「……あんま変なの受けるなよ?」
茜のことだから、珍しい魔物の討伐依頼受けそうなんだよ……
「分かってるって。……あ、青鱗大蛇って異名のキングボアの討伐依頼……って、これ銀以上複数人が推奨の魔物か~……」
「だから変なの見つけるなって言ったばかりだろ……ってか、普通ファンタジーでボアって言ったら猪だろ?何でこの世界では蛇をそう言うんだよ。」
「知らな~い。でも、蛇もボアって言うよね?」
「言いはするが……それじゃあこの世界、猪の魔物は何って呼んでんだ?」
「私が知る訳ないでしょ?……ナフリーちゃんは知ってる?」
「猪の魔物……は居ないですニャンね。」
「え?」
「基本、猪が魔物化してもワイルドオークっていう魔物になるだけですニャンから……」
「わ、ワイルドオーク……」
「へ、へぇ~……」
……何か話がだいぶ脱線したが、とにかく受付に行かないとな。
「あ、受付良いか?」
「はい、どういったご用件でしょうか?」
「今日からこの街で活動するんだが、何か必要な手続きはあるか?」
「……冒険者カードはお持ちでしょうか?」
「あ、はい。」
そんなこんなで、俺達は冒険者カードを見せた。
なお、ナフリーに関しては未だに俺の奴隷って扱いではあるが、ナフリー本人がそれで良さそうなのでそのままにする。
「……確認出来ました。それと、トウシロウ様とアカネ様と奴隷1人のパーティーなのですが、銀ランクへの昇級試験が受けられます。……受けますか?」
「ん?……まあ、受けられるなら受けるが……」
どうも、俺達のパーティーは銀ランクへの昇級試験が受けられるらしい。
勿論、受けられるなら受けるが……急過ぎるだろ。
「これ、とことん王家からのお膳立てが立ってると私は思うんだけど……」
「あたしもそう思いますニャン……」
「まあ、お父様とお姉様ならしますわね。」
「国王陛下とミリセリア第一王女殿下なら確実にしますな。」
茜、ナフリー、メアリー、ロウルさんの4人は、これを王家からのお膳立てと解釈していた。
まあ、確実にそうだろうな。
「ちなみに、試験内容はジャイアントトードの討伐です。……という訳で、早速向かってください。」
「え?」
ここで試験やるとかじゃないの?
「基本的に普通の依頼と変わりません。ジャイアントトードの納品素材を提出いただければ良いだけです。」
「でもそれ、不正し放題じゃ……」
「納品素材を【鑑定】すれば、倒した人物の冒険者カードの情報が表示されるんです。……あ、奴隷が倒した場合はその所有者の情報になりますが。」
「な、なるほどな……」
かなり便利なシステムだ。
……というか、そんなシステムだからナフリーが初めてゴブリンキングやオーク倒した時も冒険者ギルドに信じられたんだろうしな。
とはいえ、【鑑定】か……さぞ便利なんだろうな。
「では、私達はここで待ちますわね。……銀ランクへの昇級試験に、金ランクが同席するのもあれですし……」
「そ、そうだな。」
「とはいえご安心を。皆様が銀ランクになった暁には、メアリー殿下と私めが共に戦わせていただきます故。」
「……ウン、タノシミニシトク……」
「うわ、お兄ちゃん凄いカタコト……」
「絶対に本心ではありませんニャンね……」
いやだって、メアリーと関係悪いんだぞ?
そんなの、絶対にギスギスするに決まってるし……
「あ、皆様にお渡しする物が1つ。」
「ん?」
「こちら、"収納袋"というアイテムになりまして、魔物の死体や魔石等を殆んど無限に入れられる袋となっております。……こちらにジャイアントトードの死体を入れていただけると、私達ギルド側としてもありがたいですね。」
「……分かった、そうする。でも、何で今更?」
「基本、王都付近の魔物は魔石にしか価値が無いものが殆んどです。しかし、タルコス付近の魔物はその全身が素材になりまして……」
「あ~、そういう……」
要は王都付近は魔石だけだから自分達で運ぶ必要があるが、タルコス付近は素材の宝庫だからギルドとしても山程持って来て欲しいと……
「では、頼みます。」
「……釈然としねぇが、行くか。」
「お兄ちゃん、不機嫌だね。」
「ご主人様、不機嫌ですニャン。」
「そりゃ、こんなの有ったら魔石運びがもっと楽だったからな。……って、過去の事はこれぐらいにして、そろそろ行くか。」
「賛成~。」
「承知しましたニャン。」
こうして俺達は少し思うところがありつつも、すぐさまジャイアントトード討伐に向かうのだった……
ご読了ありがとうございます。
タルコスでようやく渡されるアイテムボックス的アイテム……当然、藤四郎からしたらもっと早く渡してくれ、になります。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。