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34.理不尽な八つ当たり

総合評価が100ptを越えました。

(浅山 藤四郎視点)


「うひひ……凍っとってもダークドラゴンフライから採れた素材に変わりはあらへんし、フォレストタランチュラは頭部以外が無事っちゅう高品質……これは高く売れるで~!」


「……エルリスさん、がめついな……」


俺の目の前で喜ぶエルリスさん。


……理由に目を瞑れば……いや、見た目からして商売人が隠せてねぇからな……


「……そりゃ、こんな綺麗な素材がようさん手に入ったら喜ぶに決まっとるやろ?」


「まあ、そうだろうが……それにしても、やけに虫系の魔物が多いな……」


「あ~、それな。……城塞都市タルコスの周辺は、何故かは知らへんけど虫系の魔物が多いんよ。」


「そうなのか……」


まあ、そういう土地って事か……


「ま、もう倒しきったし中に戻っといてぇな。」


「あ、ああ……そうだな。」


ーピクッ……


「ニャン?ご主人様、どうされましたニャン?」


「いや、何でもない……」


何か視線を感じたが……特に気にする程でもないか。


とまあ、俺達はエルリスさんに言われるがままに馬車の中に戻った。


……にしても、この馬車の構造って本当にどうなってんだろうな……


とか、そんな事を考えてると……


「キシャァ!」


「チュ~!」


「お、ヘビーにネズか……ナフリー、2匹は何て言ってるんだ?」


「えっと……『腹減った、飯くれ……』ですニャン。」


「おぉ……可愛げも何もねぇな……」


まあ、元々下水道に住んでた蛇と鼠に可愛げを求めるのが酷なのは分かっているが……


「じゃ、私は部屋に戻ってるね~。」


「……ボクも戻るよ……」


「……司チャン、大丈夫っしょ?」


「いや……虫……気持ち悪い……吐きそう……」


「……俺チャンも一緒に行くっしょ。」


茜は早々に部屋に戻り、司と正義(ジャスティス)も部屋に戻っていった。


後、薄々察してたが司は虫も苦手らしい。


「……あ、あたしも部屋に戻りますニャン。」


「ん?じゃあ俺も……」


「あ、いや……一応エルリス様からはあたし専用の部屋も用意されてますので、そちらに戻りますニャン。」


「……どうしてだ?」


てっきりナフリーは俺と一緒の部屋に戻るかと思ったのだが……1人の部屋に戻るらしい。


「……メアリー第二王女殿下とロウル様を見て、改めてこのままじゃ駄目だと思ったんですニャン。……だから、1人で鍛練しようと思ってますニャン。」


「そ、そうか……」


やはり、ナフリーも2人との実力差は気になるか……


……うん、ここは下手に邪魔しないでおこう。


「……とはいえ、これも良い機会ですニャン。」


「ん?」


「いつまでもご主人様に甘える訳にも行きませんニャンし、この辺で1人でも戦えるようにならないとですニャン。」


「……頑張れよな。」


「分かってますニャン!……じゃ、また後で会いましょうニャン!」


そう言い残し、ナフリーも行ってしまった。


多分、腕立て伏せとかスクワットとか、その辺でもするつもりなのだろう。


ま、そこに関してとやかく言うつもりはない。


だが、それはそうと……


「……で、さっきから俺を見てるのは……メアリー第二王女殿下ですか。」


「別にタメ口で構いませんわ。……少なくとも、この旅では共に魔王を討つ仲間ではありませんの。」


先程から薄々感じつつも無視していた視線の主は、メアリー第二王女殿下だったのだ。


「ですが、俺……いえ、私が不敬罪に……」


「……寧ろ、丁寧にされた方が不気味で怖いですわ。」


「いや、酷い言われようだな!?」


思わずタメ口でツッコミを入れてしまった。


やっぱなし、とか言われたら終わりだぞ?


「何せ……本来、私達王家の人間が貴殿方に敬意を持って貰えるような立場でない事ぐらい分かっておりますから。」


「何で、そう思った?」


「……勇者召喚によって当たり前の日常を崩された皆様の怒り……それが分からない程、私も子供ではありませんわ。」


……腹芸が出来ないタイプという推測は多分間違っていないが、少なくともそこまで考えられる頭はあったという事か……


となれば、俺も本音をぶちまけさせて貰おうか。


「……だったら言わせて貰うが、お前達王家は俺達に何をしてくれた?……いや、この言い方はあんまり良くねぇか。……ちゃんと金の保証はしてくれたし、最低限の不干渉は貫いてくれた。……だが、結局は都合の良い手駒だろ?」


「ち、違いますわ!」


「だったら何だ?言ってみろ。」


「うぐっ……この世界を救ってくださる、救世主様ですわ……」


多分、今から不敬罪を適用されても文句は言えねぇレベルで言いまくってんな、俺……


……にしても、救世主か……


「……メアリー第二王女殿下は、それで俺達が納得すると思ってんだな。」


「え?」


「救世主なんて勝手に決められて、期待されて、崇め奉られて……そんなのを俺達が望んでると?」


「……そ、それは……」


……俺からの返答が予想外だったのか、やけにあたふたするメアリー第二王女殿下。


だが、俺は止まらねぇ。


「勿論、勇者に選ばれた4人は誇りに思うだろうよ。何せ、あいつ等は罪無き民のために命を懸けられる人間だ。……でもな、あいつ等だって元の世界の日常を壊されてんだぞ?」


「うぅ……」


勿論、茜以外が元の世界でどんな生活をしていたかなんて、俺は知らない。


もしかしたら、こっちの世界の方が良いと思ってるかもしれねぇしな。


だとしても……元の日常を崩したかもしれない相手と話す態度じゃねぇだろ、それは。


「……まあ、あいつ等の話は辞めとこう。本人が居ない中で勝手に話を進めるのもどうかと思うしな。」


「……え、えっと……」


「でもな……そんなあいつ等を、お前等王家はどう見てんだ?本当に申し訳ないと思ってんのか?」


「お、思っておりますわ!」


「……なら、ちゃんと態度に示せ。普段の偉そうな態度じゃ分かるもんも分からねぇ。」


「うぐっ……」


俺の言葉に対し、メアリー第二王女殿下は反論も出来ないで居た。


……ああ、これは王家の人間としては駄目だな。


「メアリー第二王女殿下……王家の人間なら、自分の信念を貫いてみせろよ。……何で俺なんかの言葉に簡単に屈してんだよ!」


ービクッ!


「ひぃ!?」


別に、俺達を駒として見るならそれで良いし、救世主として期待されるのも今更だ。


「お前の父親の国王陛下も、姉の第一王女殿下も、お前とは違って自分が悪として見られても良いと思ってる人間の目をしていた。……だが、お前は違う。」


「なっ、私だって……」


「じゃあ聞くが、お前は勇者召喚に関わったのか?」


「いえ……私は関わっておりませんわ……」


……少なくとも、あの国王と第一王女は確固たる信念を持ってやっているのだろう。


あの2人の目は、今思えばそういう人間の目だった。


だというのに、メアリー第二王女殿下の目は違う。


「……なまじ勇者召喚に関わっていないからこそ、お前は俺達召喚された人間に対する罪悪感が薄い。俺達に対して確固たる信念もなく、ただ何となく申し訳ないと思っているだけだ!」


ービクッ……


「ひっ……」


「そもそも、お前が民の事を思っているのは本当だろうが、それで出力されるのが単身魔王城へ攻め込む、って辺りが王家の人間として相応しくない。……それが数多の人間にとって迷惑な事だと理解出来るだろ?」


「で、でも……ぐすん……」


「それが嘘泣きだったら評価してやるんだが……確実に違うだろ?本心からの涙だろ?……王家の人間が、簡単に弱みを見せるな!」


俺も、王家への不満が溜まってたんだろう。


言葉を重ねるごとに荒々しく、そして理不尽になっていく。


そもそも、俺だって褒められた人間じゃねぇし、こんな事を言える程出来た人間でもねぇ。


……要するに、俺のこれはただの理不尽な八つ当たりに過ぎなかったのだ。


「俺から言えるのは、これだけだ……あ、最後に1つだけ言っておいてやる。」


「ぐすん……何ですの!?」


「……メアリー、お前に王家の人間としての確固たる信念はあるのか?」


「えっ……」


俺は最後まで、理不尽な八つ当たりを続けた。


ここまでの言葉が、今後メアリー第二王女殿下やロウルさんとの信頼関係を考えると確実に悪手になると分かっていながら……

ご読了ありがとうございます。


若干、迷走気味です。


後、次回はメアリー視点です。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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