26.魔王軍との初戦闘 雷鳴
どんどん決着させて行きます！
(浅山 茜視点)
「ハァ……ハァ……まだまだ！」
ーブンッ！……グシャ！ゴキャ！ブチュ！
「ハッ！……オレにこてんぱんにされて、他の魔物共からも勝てると判断されちまったガルか……」
今の私を執拗に攻撃しようとしてるのは、シトラちゃんじゃない。
……私がシトラちゃんに力負けしてるのを見て、調子に乗ったゴブリンキングとオークだった。
「グギャァァァァァァ！」
「ブヒィィィィィィィ！」
「だから……邪魔！」
ーブンッ！……グシャ！ゴキャ！ブチュ！
「……もう倒れたっておかしくねぇのに、気合いだけで立ってるガルか……よほど、オレを気に入ったみてぇだガルな……」
「当然だよ。……私、惚れたら失恋するまで一途だからね。」
「本当にテメェは……オレへの正解を選び続けるガルなァ！」
ーゾワッ……
「ふふ、そう来なくっちゃ。」
……もう、私はいつ倒れてもおかしくない……
【戦乙女】のデメリット、燃費の悪さがモロに影響しちゃってる。
でも……私はまだ、シトラちゃんに認めて貰えてない！
「……それはそうとゴブリンキングとオーク共、オレの獲物を横取りたぁ良いご身分になったガルなァ。」
ービクッ……
「グ、グギャ！？」
「ブ、ブヒィ！？」
…シトラちゃん、襲われる私を放置してた割に、獲物を横取りされそうになった事を怒るんだ……
「……アカネは結果次第ガルが、ここに居る魔物共は全員ぶっ殺してやるのが決定したガルァ！」
「グギャァァァァァァァァァァ！？」
「ブヒィィィィィィィィィィィ！？」
ゴブリンキングとオークに合掌。
私とシトラちゃんの勝負に割り込んだりするから……
「ふふ、シトラちゃん……愛してるよ！」
「それはオレに勝ってから言えガルァ！」
ーギーン！
私の大剣と、シトラちゃんの巨大トゲ付きハンマーが衝突する。
……でも、やっぱり……
「う、うぅ……」
「だから弱いんだガルァ！」
ーブンッ！
「うわっ！？」
……私が力負けする。
「グギャ……」
「ブヒィ……」
「……魔物共はぶっ殺すの確定って言った筈だが、まだ逃げねぇガルな？」
「グギャ？」
「ブヒィ？」
「死ねやガルァ！」
ーブン……ブン……ブンッ！
「グギ……」
「ブヒ……」
ーブチュブチュゴキュゴキュグシャグシャ……
「えっ？」
シトラちゃんが魔物に向かってハンマーを投げると、そのハンマーは大きく円上の軌道を描きながら回転してゴブリンキングやオークを潰して……
ーブンブンブンブン……ガシッ！
「ガルァよっと！」
……まるでブーメランの様にシトラちゃんの手元に戻って来た。
「……そんな芸当出来たんだ……」
「ガルァ？……まだテメェはオレが本気で相手する敵でもねぇガルからな。……手加減してやってんだガル。」
「……そっか。」
……悔しかった。
シトラちゃんに、対等な相手として見られていなかった事が。
「……来ないガルか？」
「いや行くよ。……【戦乙女】の神器12番、【蒼天の翼】！」
ーバサッ！……バッサバッサ……ヒュン！
「ほう、飛んで来るガルか……」
【蒼天の翼】で勢いをつけて、【鈍重の大剣】で少しでも削る！
「食らえ～！」
ーギーン！……ギギギ……
「筋は良いガル……でも、経験と実力が足りなさ過ぎるガルァ！」
ーブンッ！
「ぐっ……まだまだ～！」
ーギン！ギン！ギン！
「ガハハ！やっぱそんじょそこらの奴等とはえらい違いガルなァ！……その精神力、見事だガル！」
「精神力だけ褒められても困るよ！」
ーギン！ギン！ギン！
「ガハハ！そうガルなァ！」
「……まだ、余裕なんだね……」
シトラちゃんは、笑ってた。
対する私は……しかめっ面だった。
これだけで、格の違いが分かっちゃうよね。
「ガハハ！やれば出来るじゃねぇガルかァ！」
「ハァ……ハァ……ふん！」
ーギン！ギン！ギン！
「うおっ……ちょっと強くなったガルか？……なら、これを受けられるガルかァ？」
ーブン……ブン……ブンッ！
「いや、無理！」
ースカッ……ブンブンブン！
シトラちゃん、ちょっと私の攻撃が強くなったからって巨大トゲ付きハンマー投げて来た……
しかも、かなり強めで。
ーブチュブチュゴキュゴキュグシャグシャ！
「グギャァァ……」
「ブヒィィィ……」
……私の背後から、ゴブリンキングとオークの悲鳴が聞こえる。
多分、さっきみたいに魔物が潰れてってるのかな。
……とか考えてると……
ーブンブンブン……ガシッ！
「お、戻って来たガルかァ。」
「……シトラちゃん、多分素手でも強いでしょ？」
「ガルァ？……当然だガル。」
「……やっぱり、シトラちゃんは今の私じゃ釣り合わない相手なんだよね……」
戦うのが早かった。
これに尽きる。
でも、このままじゃ終われない。
そう思っていると……
「……ケッ、どうもラビリンスの奴がやられたみたいガルな。」
「え？」
「ガルァ？……テメェのお仲間が、ラビリンスの分身体を倒しやがったガル。……いくら分身体の耐久性が弱かったとはいえ、やっぱり人間は侮れないガルなァ。」
……私が真っ先に飛び出したから、誰がラビリンスの分身体を倒したのかは分からない。
でも、誰かが勝ち星を上げた以上、私が何もしないなんて駄目だよね……
「……うん。そうだよ。」
「ガルァ？」
「私達は……強いよ。」
「でも、タブルドの奴に勝てるかは分からんガル。少なくとも、あいつの防御力はオレでもギリギリ突破出来るかどうか……」
「でも、やるだけだよ。」
「……少し前に、タブルドに理性が無いのを利用して自滅を狙った奴も居たらしいガルが、タブルドは表皮だけじゃなくて消化器官なんかも丈夫ガル。……つまり、自滅させようにも致命傷になる決定打が無いガル！」
「だったら、それを越える攻撃を放てば良いだけでしょ？少なくとも、お兄ちゃんの強化なら……いや、どうかな。」
お兄ちゃんの強化アリでも、シトラちゃんの本気の攻撃力は越えられない。
……でも、お兄ちゃんならやってくれる。
「……笑ってるガルよ？」
「うん、やっぱりお兄ちゃんなら命を懸けて勝つ。」
「よく分からんガル……」
「まあ、よく知らない相手の身内なんて聞かされても困るだけだよね。」
「……なら、何で言うガル？」
でも、お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだ。
きっと……うんと凄い事をしてくれる。
「私さ、別にブラコンじゃないし、お兄ちゃんの事はただの兄としか思ってない。……でも、そんな私だからこそお兄ちゃんを信じてるの。」
「ん？矛盾してないガルか？」
ぶっちゃけ、お兄ちゃんは強くない。
自分の命をベッドする程の度胸もない。
それでも……
「……お兄ちゃんは、誰かを見捨てたりしない！」
必ず、全員が生き残る道を選ぶのがお兄ちゃんだ。
「……だから理由になってないガルし、会話も成り立ってないガル。」
「うん、そりゃ狂人相手にマトモな会話する方がおかしいでしょ？」
「ガハハ！オレを狂人呼ばわりガルかァ？」
「ううん、狂人は私。」
「……そうガルか……」
私の精神は、恋愛対象のアレコレを除いても一般人からは逸脱してる。
そもそも、マトモな人……いや、マトモな同性愛者ですら、敵に惚れるとかしない。
だから、敵に惚れてる私は完全な異常者って訳。
「……うん、命を懸けるとしたらここかな。」
「ガルァ？」
「【戦乙女】の神器２番、【雷神の大槌】！」
ードンガラガッシャーン！……バチバチバチ……
「ガハハ……これまでの武器とは何かがちげぇガル！」
……私が出した武器は、お兄ちゃんの身長より大きく、何故か電気を帯びている巨大ハンマー。
名前からして、多分由来は北欧神話の……いや、余計な詮索は辞めておこう。
「ご丁寧に手袋まで付属してるって……もはやギャグじゃん。」
「おい、やんのかやらねぇのかハッキリしろガル！」
「うん、ごめんね？」
私はそう言うと、手袋を着けて地面に転がってる巨大ハンマーを拾い上げる。
重かったけど、何故か持てた。
「……じゃ、打ち合いと行くガル！」
「……そうだね。」
ーブンッ！
ーブンッ！
お互いに、巨大ハンマーを同時に思いっきり振った。
そして……
ードガァァァァァァァァァァーーーーン！
次の瞬間に辺り数十mはドーム状の光で覆われ、その中に居た魔物は塵も残さず消滅していたのだった……
ご読了ありがとうございます。
王虎戦は、最後の打ち合いで勝敗がつきました。……どちらが勝ったかは、次回です。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。
