2.冒険の始まり
予想以上に読まれていないので、この作品は不定期で更新させていただきます。
(浅山 藤四郎視点)
改めて5人で自己紹介を終えた俺達は、様々な事をミリセリア第一王女殿下から教えて貰った。
まず、言語は勇者召喚の影響で自動翻訳されているという事。
次に、今回の勇者召喚は前回の勇者召喚から丁度100年経過している事。
更に、魔王を倒してもおよそ99年で新たな魔王が誕生してしまうという事。
最後に、魔王は誕生の際に異世界の知識をランダムで吸収する特性を持ち、それによって成長後の姿が変わるという事。
これ等の情報を教えて貰った。
「……最後のがよく分からねぇな。何で魔王が異世界の知識を得てるんだ?」
「すみません。それは私達ですら"そういうもの"としか伝えられておらず……」
「チッ……それじゃあ、今回はどんな知識を得たのかは分かるか?」
「そうですね……ただ、それは私の口から説明するよりも、【図書館】のスキルを利用された方が分かりやすいと思われます。」
「え、僕の能力ですか!?」
ミリセリア第一王女殿下、説明を【図書館】に丸投げしやがった。
とはいえ、それを気にしててもしょうがない。
「おい、確か青谷 兼人だっけか?ちょっと調べてくれねぇか?」
「は、はい!……【図書館】、現在の魔王軍について教えて!」
ーピーッ!
『"現在の魔王軍"で検索した蔵書の内、マスターの権限で見れる蔵書を貸出いたします。』
「「「「「え?」」」」」
え、何だ今の電子音声みたいな声!?
こんなの付いてんの?
後、マスターの権限で……って言ってる辺り、読めない書物も有りそうだな。
……と、そんな事を考えていると兼人の前に1冊の真新しい本が出現した。
「えっと……読みますよ?」
「ああ、頼む。」
「何々……現在の魔王軍は今から1年前に出現。魔王が誕生してすぐ、直属の配下にあたる魔物を生み出したと推測されている。」
「出現してから、たった1年か……」
「魔王軍が猛威を振るった1年間で人間側に出た死者数は数百万人を越えると言われ、死体も残っていない例すらあるので正確な数は不明である。」
「あくまでも【図書館】は全知全能の書って訳じゃないんだな。……いや、そういう書物は権限がもっと厳しい蔵書に有るって感じか。」
正確な死者数も分からない辺り、あくまでもこの本は人間目線で書かれた物なんだろうな。
「なお、現在の魔王軍の主要戦力は下記の通りである。凶龍魔王 ドラグ、毒蛇宰相 スネイラ、悪鼠将軍 チューグロス、猛牛将軍 ミノガル、王虎将軍 シトラ、迷兎将軍 ラビリンス、賢馬将軍 バーバ、老羊将軍 メープシー、白猿将軍 ルササ、炎鳥将軍 フェニルム、黒狼将軍 ルウフ、欲豚将軍 タブルド……内、メープシーのみ先代魔王の時代から魔王軍に所属している古株である。……って書いてます。」
「先代魔王の時代から生きてる奴も居んのかよ。……いや待て、こいつ等……」
「……お兄ちゃんも気付いた?」
「……僕も読んでて気付きました。」
「……ボクもさ。」
「……俺チャンも。」
この動物の種類、完全に見覚えがある。
……何でこの知識を吸収したかは知らんが。
「これ、干支じゃねぇか!」
「干支だよね……」
「干支ですよね……」
「干支だね。」
「干支っしょ。」
そう、干支だった。
魔王が龍で、宰相が蛇。
それに続く将軍が鼠、牛、虎、兎、馬、羊、猿、鳥、犬に近い狼、本来は猪より前に亥に割り振られていた豚と来れば、完全に干支だとしか言えなかった。
と、ここで……
「あの~、すみません。……干支とは何でしょうか?」
今まで俺達のやり取りを黙って見ていたミリセリア第一王女殿下が、干支について聞いて来た。
「あ~、干支ってのは俺達の世界の一部地域で神様の使いって言われてた12種類の動物の事だ。」
実際にはもっと色々と面倒な話があったとは思うが、こっちの世界の人に教える知識としてはこの程度でOKだろう。
「神の使い……そういえば、過去の魔王には天使を模した姿をした者も居たと伝承にはありますし、吸収する知識には一定の基準がありそうですね……」
ん?そうなのか。
……となると、魔王軍は自分達が神の使いとでも言いてぇのか?
「……まあ、これでだいたいこの世界が置かれてる状況は分かった。分かったが……俺達は自由にやらせて貰っても良いか?」
「私もお兄ちゃんに賛成かな。……少なくとも、便利な駒にされるつもりは無いよ。」
「ぼ、僕も出来れば自由にやりたいです。……その、僕って戦えませんし……」
「ボクもかな。……生憎、そういうのは嫌でね。」
「俺チャンも~。」
あれ?案外皆乗ってきたぞ……
「ふぅ……分かりました。ただし、国の危機には招集をかけさせていただきますので、そのおつもりで。」
「……分かった。」
「うん。」
「わ、分かりました……」
「そうか。」
「イエーイ。」
「では私が案内いたしますので、勇者様達は目隠しをして横の人と手を繋いでください。……この部屋は秘匿されておりますので。」
「……罠じゃねぇよな?」
「安心してください。きちんと解放いたします。」
こうして、俺達はようやく解放される事になった。
そして目隠しをし、何処かへと連れられて数分ほど経過した後……
「もう、目隠しを取っていただいて大丈夫です。」
「んんっ……お、本当に解放してくれるんだな。」
目隠しを取った俺達を待っていたのは、豪勢な城門であった。
「これで勇者様達は自由の身です。……ただし、国の危機には……」
「分かってる。……では、これにて失礼いたします。」
「ばいば~い。」
「そ、それでは失礼します!」
「うむ、また会おう。」
「じゃ、チィ~ス。」
こうして俺達5人は、城を出て城下町へと向かう。
その道中……
「じゃ、俺チャンはここでバイナラ決めさせて貰うっしょ。」
「ふむ、それではボクもこの辺り別行動に移らせて貰おうか。」
「ぼ、僕も別行動をさせて貰えたら……」
兼人、司、正義の3人が、別行動を名乗り出たのだ。
「別に構わねぇよ。……ただ、今度会うのは招集かけられた時かもしれねぇから、話したい事が会ったら言ってくれよ?」
「ぼ、僕はありません……」
「ボクもかな。」
「俺チャンも同じくっしょ。」
「そうか……じゃあ、またな。」
「は、はい!」
「そうだね。」
「じゃ、また会う日までっしょ!」
こうして、3人とはここで別れた。
だが、茜は未だに俺の横に居る。
「……茜は行かないのか?」
「ま~、うん。……1人でやりたい事もないし、そもそもお兄ちゃんの能力は私向きだしね。」
「茜向き……ああ、デメリットの体力消費を俺の【補助全般】でどうにかするつもりか。」
「ピンポ~ン、正解で~す!」
茜は俺の能力目当てで残ったらしい。
……本当に強かだよな……
「ったく、しょうがないな……あ、兼人に元の世界への帰り道が書かれた書物はないか聞くの忘れてた!」
「でも、多分駄目だと思うけど?」
「あ~、確かに言われてみれば"権限"に引っかかる可能性があるな。……今度会った時にでも試そうか。」
「そうしよっか。」
……そんなこんなで、俺達の冒険は幕を開けた。
だが、それはとても壮絶で……忘れられない冒険になるのだった……
ご読了ありがとうございます。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。