19.魔王軍との初戦闘 開戦
ここから、3体のボス戦が始まります。
(浅山 藤四郎視点)
……現状を整理しよう。
王都の防壁の一部が欲豚将軍 タブルドと迷兎将軍 ラビリンスの襲撃を受けた。
……かと思えば、何故か王虎将軍 シトラが大量の魔物を潰しながら現れた。
うん、訳が分からねぇな。
と、俺が思っていると……
「なあ、シトラはん。あんたの主張は分かったけど、1つだけ分からへん事があるんや。」
エルリスさんが拡声器のような魔道具を用いて、シトラに話しかけ始めた。
「ガルァ?……何だガル!」
「……何で、味方の魔物を潰してはるん?」
……それは俺も気になっていた。
パフォーマンスだと言われたらそれまでだが、普通に味方の戦力をダウンさせてるよな?
となると、味方を駒としか思ってないタイプか?
「何でって……邪魔だったからガル!」
「「……え?」」
「……というか、こいつ等みてぇな人間を蹂躙する魔物をオレは良く思ってないガル!」
「……そういや、シトラはんって自分より弱い奴をいたぶるんが嫌とかいう理由で、人間を殺した記録がないんやっけ……」
「……そんな奴が居るのかよ!?」
……となると、もしかしたら穏便に帰って貰えるかもしれねぇ……なんて希望を抱いた次の瞬間だった。
「キュン♥️。」
「……茜?」
とても、嫌な予感がした。
「ねえねえ、お兄ちゃん?」
「な、何だ?」
「……シトラちゃんと戦っても……」
「本音は?」
「シトラちゃんに惚れた。……別に人を殺してないなら良いよね?」
「なっ……」
……最悪だ。
何が茜の琴線に触れたのか不明だが、とにかく茜がシトラに一目惚れしやがった……
「ねえねえ、良いでしょ~?」
「ぐぬぬ……まあ、この中で強いのは確かに茜だ。行って来い!」
「は~い!【戦乙女】の神器12番、【蒼天の翼】!」
ーバサッ!
「うおっ!?」
「じゃ、ちょっとバトルして来るね~!」
ーバッサバッサ……ヒュン!
「……行っちまった……」
茜が背中に大きな翼を生やして、シトラの所に行っちまった。
……というか、バフかけてねぇぞ!?
「……トウシロウはん、これどないなってんの?」
「あ~……察してたとは思うが、茜の恋愛対象は女性なんだが……」
「それは知っとる。」
「……で、何故かシトラに一目惚れしやがって……」
「寝返ったりせぇへんよな!?」
「あ、そこは大丈夫だ。……ただ、満足するまで戦い続けるだろうな。」
茜に限って、惚れた女の側に寝返る事はねぇと断言する事は出来る。
……まあ、シトラを寝返らせる可能性は充分にあるが。
「……ま、まあええわ。それより、他の将軍は……」
ードガーン!グシャ!ゴキャ!ブチュ!ドガーン!
「……何か、魔物が潰れたり爆発したりする音が聞こえるんやけど?」
「無視だ!無視無視!」
恐らく、茜とシトラの勝負に巻き込まれた魔物が死んでるんだろう。
茜は言わずもがな、シトラもゴブリンキングやオークを良く思ってなさそうだったしな……
「ふむ……では、ラビリンスはボクと正義君が担当しよう。」
「ハァ!?……行けるのか?」
「ああ、ボクは大丈夫さ。……正義君は?」
「俺チャンも行けるっしょ。……勇者たる者、民の危機に命を張る覚悟は出来てるっしょ!」
「ああ、そう……」
ほんと、司はともかく正義も見た目に反して結構勇者適正高いんだよな……
「それでは、行くよ?……よっと。」
「うおっ!?……普通、逆っしょ……」
……何故か、司は正義をお姫様抱っこで持ち上げた。
「……生憎、ボクは姫って感じでもないしね。」
「俺チャンも違くね?」
「ボクにとっては守るべき対象さ。……さて、無駄話はこれぐらいにしておこう。……【美しき双翼】!」
ーバサッ!
「……何だ?翼生やすの流行ってるのか?」
司は正義をお姫様抱っこしたまま、背中に大きな翼を生やした。
そして……
「では、行ってくるよ。」
ーバッサバッサ……ヒュン!
「……茜と同じ方法で行きやがった……」
勇者は翼を生やして飛ぶ法則でもあるのだろうか?
「……色々とツッコミたい所はあるけど、今はひとまず置いとこか。」
「まあ、そうだな……」
とはいえ、これでラビリンスとシトラと戦う相手は決まった。
問題は、残るタブルドの相手だけだが……
「……ご主人様、タブルドはあたしに行かせて欲しいですニャン。」
「……まあ、ナフリーなら言うと思ってた。」
ナフリーの故郷はタブルドに滅ぼされている。
なので、この反応は想定内だった。
だが、その意見に待ったをかける者が居た。
「いや、あかん!……ナフリーはんの実力やと、タブルドには勝てへんで!?」
「でも、ご主人様の力がありますニャン!」
「そうだ。……エルリスさんには言ってなかったが、俺にはスキルがあって……」
「【補助全般】やろ!?そんくらいは知っとるわ!」
「えぇ!?」
てっきり俺のスキルを知らないと思っていたが……
よく考えたらこの面子を集めたって事は勇者についても知ってると考えるのが自然だし、普通に俺のスキルも知ってるよな……
「【補助全般】を使ってもあかんのや。……ナフリーはんとタブルドには、それだけの実力差があるんやからな。」
「……そんなの、やってみなきゃ分からないじゃないですニャンか!」
「ほな、無駄死にするんか!?」
「う、うぅ……」
「ここは他の皆が戻って来るのを待つか、王城からの援軍を待つかにしよし。……そもそも、今だってウチ等に犠牲を出さへんために遠距離攻撃しかしとらんっていうのに、ここでナフリーはんが死んだら元も子もあらへんやんか!」
そう、先程から魔物の大群が居る場所に、兵士や冒険者の姿は見受けられなかった。
……つまり、エルリスさんとしては今回の侵攻、勇者頼みで犠牲者0を目指しているのだろう。
「だから何ですニャンか!」
「我慢してくれって言っとるんや!」
エルリスさんの目は本気だった。
それでも、ナフリーは諦めず……
「……ご主人様、バフがけ頼みますニャン。」
「えっ……本当に大丈夫か?」
「大丈夫ですニャン!……魔王軍将軍といえど相手はオーク、力でゴリ押ししてやりますニャン!」
「……分かった。ただし、危ないと思ったらすぐに退けよ?」
「分かってますニャン!」
一抹の不安を感じながらも、俺はナフリーにバフがけをする事にした。
「じゃあ、行くぞ?【体力増強】、【攻撃力上昇】、【魔力上昇】、【防御力上昇】、【速度上昇】、【HP自動回復】、【MP自動回復】!」
「ふふふ……タブルド、皆の仇として潔く討ち取られるですニャン!」
ータッ……
そうして、ナフリーは防壁から飛び降りてタブルドへと向かって行った。
「……ナフリーはん、馬鹿やわ。」
「エルリスさん、何もそこまで言う必要は……」
「そりゃ、仇が目の前に居るんやったら倒したいやろ~な。……ウチやって同じ事をするわ。」
「エルリスさん……」
「せやけど、無駄死にはあかんやろ。……それで死んだりしたら、あの世でどんな顔すればええんか分かっとるんか?」
「……俺達は、信じるしかねぇよ。」
ナフリー、必ず生きて帰って来い……
そう思った時だった。
「あっ……ナフリーさん、行っちゃったんですか!?」
「あ、兼人……今まで何してたんだ?」
突然、先程まで黙り込んでいた筈の兼人が話しかけて来た。
なお、その手には1冊の本があって……
「……これは、先程僕が【図書館】を用いて用意した書物なのですが……内容は欲豚将軍 タブルドについて書かれた物になります。」
「……で、それがどないしたん?」
「それがですね……タブルドは、【防護肌】というスキルを持っているそうです!」
「せやな。……やから、ウチは止めたんや……」
タブルドが持っているという【防護肌】を聞いて、俺は微かに不安感を抱いた。
「……【防護肌】は、相手の攻撃を尽く弾くスキルです。そして、タブルドの【防護肌】は並大抵の攻撃では傷1つ付きません!」
「ナフリー、大丈夫だよな?」
……この時の俺は知らなかった。
タブルドのスキル、【防護肌】がナフリーを窮地に追い込む事を……
ご読了ありがとうございます。
という訳で、ラビリンスの分身体vs司&正義、シトラvs茜、タブルドvsナフリーで進めさせていただきます。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。