18.魔王軍との初戦闘 招集
山場、行きます!
(浅山 藤四郎視点)
ナフリーとの交際開始から1週間と数日……
「ナフリー、今日も可愛いぞ。」
「ご主人様、ありがとうございますニャン。」
「……尻尾、撫でても良いか?」
「良いですニャンよ。」
……恋人になった俺とナフリーは、こんな感じで甘々な生活を過ごしていた。
「ふふふ……やっぱり人の恋路は見てて楽しいね。」
「……すっかり茜の機嫌が良くなったようで、俺としては何よりだよ。」
「……でもね、私だって彼女作って甘々な生活したいんだよ?なのに何で彼女が出来ないの?」
「やっぱ、同性と付き合うのは異性と付き合うより難易度高いからだろ。……ま、いつかは茜に相応しい人が現れるだろ。」
「だと良いんだけどね……」
茜はすっかり機嫌が良くなってたが、代わりに自分は彼女が出来ない事を嘆いていた。
と、ここで俺はある事を思い出す。
「……そういえば、俺がナフリーを買ってから丁度1ヶ月になるか?」
「そうですニャンね。……まさか、あの時はご主人様と恋人になるなんて思いもしなかったですニャン。」
「ああ、俺もだ。」
「……もし家族が生きてたら、ご主人様を紹介したかったですニャン。」
「だが、それだとまず俺達が会わねぇよな。」
「あ、そうですニャンね……」
結局、どう足掻いても俺がナフリーの家族に会うのは不可能ってのはやるせねぇな。
まあ、湿っぽい話はこの辺にするか。
「よし、取り敢えず今日もゴブリン退治と行くか。」
「賛成~。」
「あたしも賛成しますニャン。」
「キシャァ!」
「チュ~!」
ちなみに、この2匹も俺達が飼う事にした。
何か愛着湧いちまったんだよな……
……と、俺がネズとヘビーを見ながらそう考えていた時だった。
『敵襲!敵襲!』
「え?」
『魔王軍の襲撃だ!戦えない者は今すぐ王城方面に避難!戦える者は……』
突然、辺りに大音量でそう話す声が流れた。
しかも、聞いた場所は俺達がゴブリン退治をしていた場所との事で、その近くの防壁に戦える者は来いと言われていた。
「……行くか。」
「そうだね。」
「そうですニャンね。」
俺達はすぐさま走った。
……だが、片道数時間なら既に手遅れか?
と、思っていると……
「見つけたで~!」
ーガシッ!
「「「っ!?」」」
突然背後からエルリスさんが来たかと思うと、すぐに俺達を掴んで……
「【次元収納】!……からの【神速】や!」
次の瞬間、俺達3人はエルリスさんの背負ってる木箱に吸い込まれた。
しかも、吸い込まれる直前には、何やら【神速】とか呟いていたのを聞いたが、まさか……
……と思ったところで、俺の意識は途絶えたのだった。
そして、次に目を覚ますと……
「ん?起きたか。……ほな、見て貰おか。」
「え?」
俺は、辺りを見回す。
そこにはエルリスさんと、同じく目を覚ましたらしい茜にナフリー、そして何故か兼人と司と正義が居た。
「え、お兄ちゃん……何が起きたの?」
「あ、あたしも気になりますニャン!」
「ぼ、僕も何が何だか……」
「ボクも同感さ。」
「俺チャンもっしょ。」
全員、状況が分かっていない様子だったが……状況的に、何となく察する事が出来た。
「……ここ、魔王軍の襲撃を受けてる場所か?」
「お、物分かりが良いな~。……せや、ここは今、魔王軍の襲撃を受けとる。」
「そうか……」
やはり、ここは魔王軍の襲撃を受けてる場所、そして周囲の風景から察するに防壁の上にある相手に攻撃を加える場所だろう。
と、その時……
「エルリス様、被害状況が分かりました!」
「……どうや?」
「まず冒険者ですが、これはこの狩り場への立ち入りを7日以上前から勇者様のパーティーのみに限定していたため、被害はありません!」
「ほな、次は商人や旅人や。」
「こちらも、現在確認されておりません!」
「……ほんま、不幸中の幸いばっかやな……」
待て、今狩り場への立ち入りを制限してたって言ったか?
初耳だぞ!?
「おい、それで俺達は……」
「……百聞は一見に如かずや。見てみよし。」
多分、エルリスさんはこっちの世界のことわざを言ったのだろうが、自動翻訳によって上手く俺達の世界の言葉に置き換えられていた。
……"百聞は一見に如かず"ってことわざだったっけ?
「……で、見てみるけど……うわぁ……」
俺達が先日までゴブリン退治に使っていた平野は、大量のゴブリンキングやオークで溢れかえっていた。
「な、何これ……」
「ぼ、僕も同意見です……」
「ボクもさ……」
「お、俺チャンも……」
茜、兼人、司、正義も俺と同意見だった。
だが唯一、ナフリーだけは黙り込んでいて……
「な、ナフリー?」
「……タブルド……」
「え?」
「先頭のオーク……奴が、あたしの故郷を滅ぼしたオーク共を率いていたんですニャン!つまり……」
「……奴が、欲豚将軍 タブルド……」
ナフリーが見ていた先頭のオークは、他のオークとはあまりにも異なっていた。
その肉体は他のオークより遥かに大きく、そして理性が感じられなかったからだ。
その目は常に白目を剥き、口からは涎が常時溢れ、戯言の様に何かを叫んでいた。
そして、その言葉に耳を傾けると……
「オデ……オ゛ドゴ……ゴロズ……オ゛ンナ……オガスゥゥゥゥゥ!」
「……うん、奴は殺さなきゃ駄目だな。」
てっきり"将軍"というからには頭も良いのかと思ったが、少なくともタブルドに理性と呼べるものはないように見えた。
「それだけとちゃう。……この【遠視魔法】を組み込んだ魔道具で遠くを見てみたら、どえらいのが居ったんよ。」
「え?」
そう言ってエルリスさんが見せてくれたのは、大きな丸いレンズだった。
そして、それを覗いて見ると……
「え?……バニーガール姿の女性が浮いてやがる……」
……バニーガール姿でピエロの仮面を被った銀の長髪の女性が、不気味な躍りをしながら魔物の群れの上で浮遊していたのだった。
「あれは迷兎将軍 ラビリンス……の分身体の自動人形や。」
「将軍が2体!?……って、分身体?」
てっきり、あれがラビリンスとやらの本体かと思ったが、どうも違うらしい。
「……ラビリンスの本体は、"迷都 ラビリンス"っちゅう前人未到の迷宮……その核なんや。」
「……マジかよ……」
「へぇ~……」
「確かに、そんな記述が本の何処かにあったような気がします。」
「ふむ、なるほど……」
「激ヤバっしょ。」
「せやから、あれは本体が遠隔操作する人形でしかあらへん。それでも、あれが有る限り配下の魔物は無限に生み出されると思った方がええわ。」
「お、おう……」
ラビリンス、なかなかにヤバい存在だな。
……とはいえ、敵の幹部格は分身含め将軍2体。
茜が頑張れば何とか……
と、俺が楽観視していると……
ーグシャ!ゴシャ!ブチュ!
「……何の音や?」
「……何か、一部のオークやゴブリンキングが一直線に潰れていってますが……」
突然、一部のオークやゴブリンキングが大量に殺され始めた。
そして、その犯人は……
「ガルァ!……おい人間共!その中で1番強ぇ奴を出せガル!」
……俺の身長よりも遥かに巨大なトゲ付きハンマーを振り回してオークやゴブリンキングを潰す、茜と同年代っぽい見た目の虎獣人の女性だった。
なお、服装としては虎の毛皮で出来た布で胸と股間部分を隠しており、顔の上半分には黒い虎を模した仮面を被っていた。
「あれは……王虎将軍 シトラや!」
「更に1体追加!?」
「しかも、シトラは魔王軍将軍の中でも最強格の1人に位置しとる敵や。……ほんまに堪忍して~な。」
将軍が3体、しかも王虎将軍 シトラは魔王軍将軍の中でも最強格に位置する敵……
こうして俺達にとって初めての魔王軍との戦いは、かなりの危険度を誇るものになったのだった……
ご読了ありがとうございます。
将軍3体とのボスバトルです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。