172.スネイラ討伐を終えて
残るは魔王との最終決戦……
(メサイア・エルレンデ視点)
「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ~……………ほへ?」
む?
これは……
「ありゃ?……メサイア様、どうかしましたかい?」
「ああ、それなんじゃが……先程まで絶え間なくこちらの軍にかけられては妾が弾いておったスネイラの呪いが、急に消えよったのじゃ!」
妾と聖歌隊の近くで護衛にあたっておった冒険者の男からの質問に、妾はそう返したのじゃ。
そして、急に呪いがかけられなくなった理由として考えられる事としては……
「……め、メサイア様?」
「ふっ……誰か知らんが、殺りおったのう?」
「はい?」
ったく、何処のどいつが殺ったかは知らぬが……
誰かがスネイラを殺ったのは確実じゃな。
「ま、妾の活躍あってこそじゃがの!……ってか、呪いを防ぐの滅茶苦茶疲れたんじゃが!」
「メサイア様!?」
ハァ~、疲れた疲れた。
全てが終わったら好きな事全部やってやるのじゃ!
「……さ~て、そうなるとこの戦場での戦いもそろそろ終わりじゃな……」
「そ、そうなんですかい?」
「そうじゃそうじゃ。……とはいえ、言わずとも直に分かるがのう?」
妾は口角を上げながらそう言って、戦場を見渡したのじゃ。
……さてさて、そろそろじゃぞ~。
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(ロウル・バルガイア視点)
「む?」
「あれ?……どうしたっすか?」
「どうしマシた?」
最前線にてダレス殿やダルク殿、その他の皆様と共に、変貌した魔物共をどうにかこうにか足止めしていた私め共でしたが……
突如、その魔物共の様子がおかしくなりましたぞ。
何せ……
ーザッ……ザッ……ピタッ……
「「「ブヒィィィ……ブヒャッ!」」」
ーポンッ!……グチャッ!
「「「キシャァァァ……キシュァッ!」」」
ーポンッ!……グチャッ!
「「「グルァァァ!……グブォッ!」」」
ーポンッ!……グチャッ!
……変貌した魔物共が突然足を止めたかと思えば、何故か内部から爆散して死に絶え始めたのですから……
「これはいったい……」
そうして少しの間、訳も分からず途方に暮れて居りますと……
「あ、こっちもこうなってるピョンか!?」
「ふぁ~、やっぱりピョンか~……zzz……」
「おや?……貴女方は……」
と、そこに現れたのは2人の人物。
ラビィネル殿が生み出した分身体、ムーン殿とトータス殿でしたぞ。
「それが、こっちが担当してた戦線も同じ状況になったピョン!」
「zzz……んんっ……何が起こったピョン?」
「う~ん、これはやっぱり……アレっすよね?」
「そうデショうね。……逆に違ったら恐怖デス!」
おや?
ダレス殿とダルク殿は既に予想がついている模様。
となれば……そう、ですかな……
とまあ、私めも結論を出そうとした瞬間でしたぞ。
「あ、やはり魔物達は呪いの力を失った結果、肉体の変化に耐え切れず自壊して死んでいますわね……」
「ウチもこうなるとは思っとったけどな?」
「そ、壮絶ですニャン……」
私め共よりも前方へ進んでいたナフリー殿、エルリス殿、そしてメアリー殿下が、こちらへとやって来て顔をしかめていたのです。
「……いったい、何が起こったのですかな?」
次の瞬間、私めはお三方に何が起こったかを問うて居りました。
そして、その答えは……
「ウチがスネイラ翻弄して、ナフリーはんがカブはん使ってスネイラに致命傷与えて、スネイラが自身に【狂魔獣化の呪い】をかけて肉体を再生させた末に暴走して、それをメアリーはんが燃やしてトドメ刺した結果、呪いが解けてこの惨状になっとるって感じやけど?」
「は、ハァ……」
「そ、そうっすか……」
「スネイラ、食ってみたかったのデス……」
「ピョン!?」
「zzz……」
あまりに簡潔かつ信じられない報告を聞き、私め共は呆気にとられました。
と、そこへ更に……
「……それは本当ガルか?」
「あ、シトラス殿!?」
何故か後方でミリセリア殿下の護衛に就いていた筈のシトラス殿が、こちらへやって来たのですぞ。
なお、シトラス殿は全身に酷い火傷を負っており、とても戦場に立てる状況では……
「……本当ガルかって聞いてるガルァ!」
「あ、本当やで!……その様子やと、シトラスはんもスネイラを倒したかったん?」
「まあ、里の皆を人質にとられた原因の片割れだガルからな……つっても、スネイラが実戦でそこまで戦えねぇのは何となく気付いてたガルが……」
え、そうなのですかな!?
スネイラと言えば、魔王軍の副将とも言える宰相の地位に居る魔物ですぞ!?
「あ、やっぱりそうなん?」
「そうガル。……あくまでもスネイラは指揮役というか何というガルか……毒と呪いが強力なのは予想つくガルが、フィジカルはあんまり……」
「つまり、メサイアはんのせいで毒と呪いを無効化された時点で詰みやったっちゅう訳か……」
「加えてシトラス様も向かっていたとなれば、遅かれ早かれでしたニャンね……」
ほんと、スネイラにしてみれば踏んだり蹴ったりですな……
しかし、シトラス殿は首を横に振り……
「いやいや、オレだってこの怪我であんな魔物の群れを超えるのは大変ガルよ。……流石に買い被り過ぎだガル!」
と、申されました。
「せやろか?……まあええわ……」
「それより、この状況はいったい?……何故、スネイラが死んで呪いが解けると、変貌していた魔物共も死ぬのですかな?」
私めは話が一段落したと判断すると、当初の疑問を他の皆様に問いましたぞ。
いえ、私めも何となく分かってはいるのですが、念のため。
「あ、それはやな……元々、この魔物共は変形した時点で魔物としては死んだも同然やったのを呪いで無理矢理生かされとった訳で……」
「その呪いを発動していたスネイラが死んで呪いが効力を失った結果、魔物の肉体がその変化に耐え切れなくなった、という訳ですわね?」
「多分な?」
あ~、そういう事でしたか……
となると、スネイラは最後まで表舞台に出るべきではありませんでしたな。
まあ、こちらの方が私め共には都合が良かったとはいえ……
「で、スネイラはどんな最期だったガル?……暴走して燃やされたらしいガルが……」
「その言葉通りやよ。……最期は原形すら留めん百足みたいな体になって、意味分からへん言葉を叫びながらメアリーはん向けて突進して燃やされてしもたわ……」
「しかも、あの様子からして理性……というより自我も記憶も消え失せていましたわね。……最早、死んだも同然の有り様でしたもの……」
「……敵ながら苦労人だとは思っていたガルが、とことん報われねぇし救われねぇ最期だガルなァ……」
最期には自我も記憶も消え失せ、介錯同然に燃やし尽くされる……
敵ながら、何とも言えない最期ですな……
「……んな事より、こっからどうするガル?」
「そうですニャンね……魔王との戦いに参加しますニャンか?」
「いえ、それは無理ですわ。……少なくとも、私達の消耗はかなりのものですし……」
「オレも魔王と戦うのは厳しいガル。……左腕は動かせねぇガルし、右腕も酷使し過ぎたガル……」
「さいか……」
ううむ……
見た限り、全員消耗が激しい様ですな……
これはもう、魔王との戦いに参加出来そうにありませんな……
「……こうなると、最後の戦いは勇者の皆様に託すべきですわね……」
「そう、ですな……」
結局、私め共は勇者の皆様に託す事しか出来ない……
その事実に悔しさを感じつつも、私めはトウシロウ殿や他の皆様の勝利を祈るのでしたぞ……
ご読了ありがとうございます。
いよいよ最終決戦、ここまで長かったなぁ……
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。