165.英霊VS邪神 苦難
この邪神は墨による再生と100年に1度の魔王生成、攻撃無効の結界を除けば、殆んど特殊な能力を持っていないに等しい。
ただただ、その力は人間如きが挑める範囲ではないというだけで。
(タイガーラ視点)
あの【万雷】とかいう魔法を放った奴が誰かは知らねぇガル。
ただまあ、知らねぇって事は確実に俺よりも前の時代の英霊だろうガルなァ……
ードンガラガッシャァァァン!……バチバチバチ!
「……おっかねぇガルなァ……」
神界の大海へと放たれた無数の雷は、その海域全体を感電させやがったガル。
当然、あの邪神も漏れなく電撃を食らった筈だガルが……
「縺ュ繧峨ョ繧峨ァ繧縺縺ャ弱縺ゥ縺縺!」
ーバッシャァァァァァァァン!
「何か言葉にならねぇ鳴き声?を叫んでこっちに向かって来てるガルァ!」
名状しがたい鳴き声?を叫びながら、邪神はこちらに突き進んで来たガル。
「うむ、これは我等の出番だろう!」
「……蛸料理は専門外なのだがな……」
狼狽える俺とは反対に、近くに居た"風拳"のゴルマと東洋の料理人らしき男がやる気満々で身構えていたガル。
いや、2人だけじゃねぇガル。
この場に居る俺以外の英霊と死神の全員が、やる気満々になっていたガル。
「あ~こりゃ、俺だけがビビってるガルかァ……」
「……怖いなら今からでも逃げるでヤンスか?」
「馬鹿言うなガルァ!……ここまで来て、それはねぇガルァ!」
俺が逃げるなんて、そんなの許されねぇガルよ。
それこそ、俺自身が許せる訳ねぇガル!
「ハッハッハ!……我の"風拳"を受けてみろ!」
「あの蛸足、刺身にするには大き過ぎるな……」
「ふふ、私の矢を受けなさい……」
「この槍にかけて、お前の墨袋は戴くぜ!」
「へへへ……と、当方も行きます!」
「「「「「「「【冥刃十字斬】!」」」」」」」
無数の英霊と死神が、邪神へと攻撃を放つガル。
近接が主体の奴は跳躍して邪神までひとっ跳びして、遠距離主体の奴は各々の攻撃をぶっ放してやがったガル。
かく言う俺も……
「ガルァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
他の近接英霊と並んで邪神に飛び付いてたガル。
……が、
「縺縺鬟帙∋縺∞縺∞縺∞縺∞縺!」
ーブンッ!……ドンッ!
邪神の巨大な蛸足の内の1つが思いっきり振るわれ、俺達は為す術なくぶっ飛ばさ……
「……れてたまるガルかァァァァァァァァァ!」
ーガシッ!
大多数の近接英霊や遠距離英霊の放った攻撃が蛸足に払い除けられる中、俺や一部の近接英霊は蛸足を掴んだり武器を刺したりして何とか留まる事に成功したガルァ!
「ハッハッハ!……タイガーラ殿も我と同じく留まったか!」
「テメェは……ゴルマ、だったガルなァ?」
「某も居りますぞ?」
「テメェは……誰だガルァ!?」
蛸足を掴んで振るい回されている俺の横には、同じく蛸足を掴んで離さねぇゴルマと、包丁を斜めに突き刺して固定した東洋の料理人らしき男が居たガル。
「失礼、某はムネマサと言う者……東洋の国より料理修行のために渡来し、そこに居るゴルマと共にタツノスケを支えた者……」
「ハッハッハ!……我からしてもムネマサはこう……独特な奴だったが、仲良く出来そうか?」
「こういう時じゃなきゃ、ゆっくり会話も出来たんだろうガルが……今はそんな余裕ねぇガルァ!」
「驍$鬲※斐!」
ーブンッ!ブンッ!ブンッ!
俺に対し友好的に接して来るゴルマとムネマサだったガルが……今はそんな話してる場合じゃねぇガルァ!
事実、邪神は邪魔だと言わんばかりに蛸足を振り回し続けてるガルし……
と、そこへ……
「む?」
ーシュン!……ブチュッ!
「縺ュ繧繧繧ィ繧繧繧繧!」
とんでもねぇ速さで矢が飛んで来て、邪神の目の片方を射抜いたガル。
「っ!……今がチャンスだガルァ!……傷付いたという事は、奴も墨を使って再生させる筈だガルァ!……つまり、その時を狙えば……」
「うむ、なるほどな!……それと、今の矢はやはりムルネ殿が射たらしいぞ!」
「……誰の攻撃か等、気にしている場合ではないだろうに……」
ムルネ……ああ、あの弓持ちエルフだガルな?
やっぱ凄ぇガルなァ……
と、そこへ……
「「「「「「「とりゃぁぁぁぁぁ!」」」」」」」
「「「「「「「【冥刃十字斬】!」」」」」」」
さっき邪神にぶっ飛ばされた近接英霊と死神共が、何とか戻って来るのが見えたガル。
「次こそは当てる!……【悲哀の禍槍】!」
「今度はそっちが吹き飛べ!……【火を噴く炎鎚】!」
「楽しいかな楽しいかな……【狂喜の剣舞】!」
……死神共の一斉攻撃に続く様に、各々の技を出し始める英霊共。
だが、このままじゃジリ貧は確定だガル。
現に……
ーブシュ~!
「なっ!?……墨吐きやがったぞ!」
「さっきの目の傷や、今俺達が付けた傷が癒えていきやがる!」
邪神が墨を傷口に吐くだけで、せっかく付けた傷が癒えちまうガルからなァ!
「ふむ、そろそろ我等も飛んで行くか?」
「いやいや、この中で飛んだら即ぶっ飛ばされるだけだガルァ!」
俺達は霊魂だから飛べるっちゃ飛べるガルが、飛んだところで即ぶっ飛ばされるだけだガル。
かといって、このまま蛸足に付いてても痺れを切らした邪神が結界を張ったら終わりだガル。
……良くも悪くも、邪神が俺達を脅威だと見なしてねぇガルから勝負が成り立っている様なもんだガル。
「ううむ、どうしたものか……」
「……某が墨袋の辺りを捌こうか?」
「だ~か~ら~、まずどうやってそこまで俺達が行くんガルか!」
ぶんぶんと振り回される蛸足に掴まる俺達は、完全ににっちもさっちも行かなくなってたガル。
と、そうこうしている間にも……
「【冥獄の猟犬】!」
「【旋風斬】!」
「【捩れ渦】!」
噛み付く者、切り付ける者、捩り切る者……
色んな英霊が各々の強みを活かした攻撃をするガルが、どれもこれも蛸足やら膨らんだ頭みてぇな腹部?に傷を付けた直後に墨で癒されちまってたガル。
……やっぱり、墨袋の摘出が急務ガルなァ……
そう、脳内で考えた時だったガル。
「ハァ……ハァ……タイガーラさん、やっと見つけたでヤンス……」
「ガルァ?……死神長と……誰だガルァ?」
蛸足に掴まって振り回される俺達のもとに、誰かを小脇に担いだ死神長がやって来たガル。
なお、担がれていた奴は白髪で片目が隠れている気弱そうな女で……
「ひぃっ!?……と、当方はルルリリアです!」
……その女はルルリリアと名乗ったガル。
「ルルリリアさんは凄いんでヤンス!……およそ600年前に召喚された"農耕の勇者"ことヒョウロクさんのもとで荷物持ちとして活躍した……」
「そ、その説明じゃ凄さが皆無ですが!?」
「おっと、これは失礼でヤンス……」
ルルリリアは荷物持ち……
いや、何で来たガルァ!?
「何でそんな非戦闘要員を連れて来たガルァ!」
「いやいや、これが凄くて……」
ーブンッ!ブンッ!
「チィッ!」
「うおっと……で、何が凄いかと言うと……」
ーブンッ!ブンッ!
「ガルァァァァァァァァ!……もういい加減にしろガルァァァァァァァァァ!」
振られる太く大きな蛸足……
俺達がここに掴まっていられるのも、時間の問題だガル……
「さて……ルルリリアさんの凄い点は、何といってもそのスキル!……【採取】というスキルで、どんなに大きな素材でも一瞬で【次元収納】に入れる事が出来る優れものなんでヤンス!」
「つまり、そいつに墨袋を回収させるって事で良いんガルかァ!?」
「そうでヤンス。……ま、その前に墨袋と邪神本体の接続部位を切り離す必要があるでヤンスが……」
「それが出来りゃ苦労しねぇガルァァァァァァァァァ!」
振り回される俺達に対し、尚も厳しい勝利条件を告げる死神長。
……俺達の勝利、本当にあり得る話なんガルか?
ご読了ありがとうございます。
この英霊達は1人1人が一騎当千の猛者揃いです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。