163.王虎VS炎鳥
シトラス、一応炎は効きます。
(シトラス視点)
ーブワッ!
……衝突したオレとフェニルム……
オレはキングクラッシャーを振るい、フェニルムは回し蹴りを放つ……
どちらも相手へのジャブ程度に放った技名もない攻撃だったガルが……
「あはっ!」
ーザシュッ!
「チッ!……結局オレが不利ガルか……」
……オレの攻撃は暴風の様な衝撃波を生み出したガルが、【不死鳥】の効果を発揮するまでもなくフェニルムは屈んでキングクラッシャーの直撃を避けたガル。
対するフェニルムの回し蹴りはオレを掠りつつも、フェニルム本人が衝撃波に巻き込まれて遥か後方へ吹き飛ばされた事で事なきを得たガル。
……いや、正確に言うと全く事なきでは済んでねぇガルな。
「ふぅ……ありゃりゃ、お互い貰っちまったな~?」
ーチリチリチリ……
「ガルゥ………」
吹き飛ばされつつもその先で再生したフェニルムに対し、オレは回し蹴りが掠った場所の毛先が焼けてたガル。
……つまり……
「……普通だと、これは俺っちの勝ちパターンなんだがな~?」
「ガル……」
……このままだと、オレが最終的にジリ貧になって焼かれるガル。
が、フェニルムは首を傾げ……
「う~ん、やっぱりおかしいな~?」
「な、何がおかしいガル?」
「……戦いが始まったってのに俺っちのスキルを封印したり無効化したりしてないだろ~?……さてはその切り札、シトラのスキルも封印か無効化される感じだったりするのか~?」
ーニヤニヤ……
フェニルムはニヤつきながら、自分なりの推察を述べてやがったガル。
……クソが!
もうバレちまったガルか……
「……テメェ……」
「あ、俺っちの推察もしかして図星だった~?……じゃないと、今の一撃で俺っちが殺られてもおかしくなかったからな~?」
「よく言うガル……今の一撃、もし【覇王】がなかったらそもそも避けられて終わりだガル……ってか、前提として【覇王】がなかったら碌にキングクラッシャーを振るう事すら出来ねぇガルし……」
……すぐに察されるとは思ってたガルが、まさかもうガルか……
こうなったら、いくら隠そうとしてもオレじゃ無理だガル……
「し、シトラス……そんなペラペラ喋っちゃって良いピョン!?」
「あ~、良いガル良いガル。……どうせこいつにはすぐにバレるガルから……」
ラビィネルからは当然の如く、ペラペラ喋る事に対して困惑の言葉を受けたガルが……どうせフェニルム相手には無駄ガルよ。
「うんうん、そういう意味じゃあの軽薄そうな勇者は凄かったっけ~。……幻影で誤魔化されたら俺っちも推理しようがないし、上手くサボりの口実に……ごほんごほん、上手く騙されちゃったからな~……」
「ジャスティスの事ガルか……」
あの男みてぇな能力がありゃ、こいつをどうにかすんのも簡単だったんガルかな……
いやいや、考えても無駄だガル。
「さてさて、こっから俺っちはシトラの攻撃を避け続ける。……スキルがあれば衝撃波でぶっ飛ぶけど、逆にスキルを封印か無効化したら俺っちはシトラの攻撃を避け続けてノーダメージだぞ~?」
「くっ……本当に忌まわしいガルなァ……」
オレは【覇王】を封じれねぇガル。
いやまあ、オレは【覇王】を抜きにしたって虎人族の中じゃそれなりに強いガルが……良くも悪くも動きが【覇王】ありきになっちまってるんガルよな……
少なくとも、肉体の動作がぎこちなくなるのは確定だガル。
だからこそ、攻撃をクリーンヒットさせる瞬間にラビィネルがスキルを封印させれれば良いんガルが……
……やっぱり、フェニルムだけじゃなくてオレまでスキル使えなくなるのは不便極まりねぇガル……
「じゃ、そろそろ行こっか~。……【炎羽乱雨】!」
ーシュババババババ!
「あ~もう鬱陶しいガルなァ!」
ーブンブンブンッ!
オレに向けて放たれたのは、燃え盛る無数の羽。
オレはキングクラッシャーを振るいまくってその羽をかき消したガルが……
「シトラ、隙あり~!」
……その隙に近付かれたガル。
「ガルァ!?」
「食らえ、【炎々羽織】~!」
ーバサッ!
「くっ……」
フェニルムは背中から生えてる炎の翼を巨大化させ、それでオレを挟みやがったガル。
当然、オレの全身は炎に包まれて……
「……そろそろかな~?」
「ガルァァァァァ!」
ーブンッ!……ブォォォォォォォォォォォ!
……オレは何とかキングクラッシャーを全力で振るって炎の翼をかき消したガルが、これはマズいガル。
特に、現状としては全然フェニルムの本体に接触出来ねぇガルし……
と、焦りを感じ始めた頃……
「うんうん、そう来るよな~。……じゃ、次はこれの出番だな。……【火之迦具土神】!」
ーゴォォォォォ……
「……もういい加減にするガル……」
ただでさえ幾つもの技を繰り出していたフェニルムが"ヒノ何とか"と唱えた瞬間、その手には光り輝く……七支刀?とかいう武器が現れたガル。
「火之迦具土神……ドラグ様曰く別の世界で信仰されている神の一柱で、自身を産んだ母神が死ぬ原因を作った火の神だとか……」
「それがどうしたガル?」
「ん~?……ま、食らえば分かるよ~!」
ーブンッ!
「っ!?」
ーダンッ!……ジュッ……
フェニルムはどうでも良い説明をした後、七支刀を振るって飛ぶ斬撃を放ったガル。
オレは何とかそれを避けたガルが……着弾地点が焼けるを通り越して1本線に蒸発してたガル。
「これまで発動するのは超絶面倒臭いから嫌なんだよな~。……でもまあ、かつての仲間を殺すって考えたらこれ位は……」
「ケッ!……もう四の五の言ってられねぇガルか……」
下手に近付けば死ぬガルが……フェニルムがここまで強いのは想定が……
……ん?
いやいやいや、おかしいガル!
こんなに強いなら、アカネがオレとラビィネルだけに任せる訳……
……となると、何か穴があるガルな?
「シトラ、時には諦めも大……」
「おかしいガルなァ?……そんなに強い技がありゃ、面倒どころかすぐに相手を倒せて楽チンな筈だガルが……」
「え~、そんな事は……」
「となれば……ここが好機だガルなァ!」
ーダンッ!
……明確な根拠があった訳じゃねぇガル。
でも、あのアカネがこれを言って行かねぇのはおかしいガル。
なら、答えは簡単ガル。
「なっ……どうして俺っちに向かって来れ……」
「強いて言うなら、信じる力だガルァ!」
……ま、言って行かなかった事に変わりはねぇから後でアカネにはお仕置きするガルとして……
うん、やっぱりだガル。
「馬鹿馬鹿しい……【炎々羽織】!」
ーバサッ!
フェニルムは七支刀を振るわなかったガル。
……やっぱり、燃費が悪いんガルかな……
「この程度の炎が何ガルかァァァァァァ!」
ーボォォォォォォォォ!
オレは炎の翼に抱かれたガルが、そんなのお構いなしに進み続けたガル!
全身が熱くなり、皮膚が少しずつ爛れ始めたガルが、そんなのは関係ねぇガル。
「ひぃっ!?」
ーブオッ!
「今度は逃がさねぇガルァ!」
オレはフェニルムの目の前までやって来ると、事前に振りかぶっていたキングクラッシャーを持つ腕に力を込め……
と、その時……
「お、俺っちは死なないぞ~!」
ーブンッ!
フェニルムが、あの七支刀を振るったガル。
すると七支刀から飛ぶ斬撃が放たれて……
ーザシュッ!
「いだっ……でも、さっきの何千倍も威力が落ちてるガル……せめて、腕の1本でも切り落としてみせろガルァァァァァァァァァ!」
飛ぶ斬撃は前面に出していたオレの左腕に当たったガルが、斬れたのは肉まで……骨は断てなかったガル。
「怖っ!?……えっと、空に飛んで逃げようにも高所でスキルを封印か無効化されたら落下は免れないし、かといってこの状況で避けるのも無理があ……」
「ごちゃごちゃ早口で言ってねぇで覚悟決めるガルァァァァァァァァァ!……ラビィネルゥゥゥ!」
ーブンッ!
「は、はいピョン!……【争いなき世界に祝福を】だピョン!」
早口で何かをのたまっていたフェニルムにしっかりと狙いを定め、オレはキングクラッシャーを振るうと同時に遥か後方に居るラビィネルへと声をかけたガル。
その次の瞬間……
ーフッ……
「……へ?」
「死ねガルァァァァァァァァァ!」
ーグッ……
ラビィネルによってオレとフェニルムのスキルが無効化され、お互いに変化が起きたガル。
オレは【覇王獣化】が解けた上に力が抜け、フェニルムはその身から翼や尾羽なんかの意匠や持っていた七支刀が消えたガル。
当然、それでもオレには力が抜ける前の"動き"が残ってるガルから、キングクラッシャーは手から遠心力で抜けそうになったガル。
されど、指の先まで力を込めれば……
「ちょっ、タン……」
「タンマもコンマもねぇガルァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」
ードンッ!グシャァッ!
キングクラッシャーは【覇王】で振り抜いた時そのままの威力で【不死鳥】が無効化されたフェニルムへと思いっきり衝突し、その上半身をミンチへと変えたんだったガル……
ご読了ありがとうございます。
フェニルムは不死身さえ何とかなれば倒せる相手ではあります(※そこまで持っていくのが大変ですが)。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。