159.【凶魔獣化の呪い】
もはや殴り書きです。
(俯瞰視点)
夢都の……永遠に続くかと思われた長い夜も、いつかは明ける。
ある者は覚悟を決め、またある者は帰る目的を明確にし……
ただ、共通する事として……長く楽しい夜を過ごしつつも、全員が必ず一摘まみの未練を残しておいた。
……必ず生きて帰ると、決めていたから……
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(青谷 兼人視点)
「さて……そろそろ夜も明けますかね……」
冒険者のおじさんと共にジュースを飲み交わし、美味しい料理を食べ、面白い書物を読み、充分な睡眠を経て……
僕は、夜明けの直前を迎えていました。
「さて、光枝さんへの伝言もこんな感じで良いですかね。……僕は最終決戦に参加出来ませんが、この命は文字通りの一蓮托生です……」
僕では戦力になり得ない。
だから、光枝さんに体を貸す事しか……
「……僕は勝利を祈っています……だから、全てが終わった後でまた会いましょう……」
そう言って、僕は光枝さんと交代する準備に入りました。
……全てが終わった後に、仲間と再会出来る事を祈りながら……
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(数分後、浅山 藤四郎視点)
「では、段取りを説明するピョン!……勇者4名とオマケ1名の軍勢突破を第1目標とし、他の者達はその付近に転移させるピョン!」
「ちなみに、魔王城に直接は……ラビィネルちゃんも無理だった感じ?」
「……既に魔王軍に対策されて転移不能になってたピョン……」
「あ~、ラビリンス対策でか~……」
俺達は転移前の位置調整として立ち位置を決められつつも、ラビィネルから段取りについて聞いていた。
……にしても、やっぱり魔王城へ直接は無理だったか……
「……ってか、俺も魔王城行きなんだな……」
「あ、オマケ=お兄ちゃんってちゃんと気付けたんだ?」
「ああ、俺だって馬鹿じゃねぇからな……」
……なまじバフが効果的なんだろうが……俺はどう考えたって足手纏いだぞ?
「ま、それはそれとして……皆、準備は良いかな?」
「……あちきは既に交代済みでありんす……」
「ボク達も楽しい夜を過ごさせて貰ったよ……」
「俺チャンもっしょ!」
……何だろうな。
兼人には最後に会えないのかとか、司と正義も怖くねぇのかとか、そんなのはどうでも良い。
……ただただ怖い。
体は恐怖で震えるし、頭だってこういう事を考えてなきゃすぐに真っ白になりそうだ。
「では、行くピョンよ?」
「OK!」
「万全でありんす!」
「ふむ、行こうか……」
「歓迎っしょ!」
「……お、俺も行ける!」
「ピョン!……【灯りは消えて場面は変わる】だピョン!」
……俺は心の中で恐怖を抱きながらも、ラビィネルによって転移させられる。
だが、そこに後悔は一片もなかった……
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(ラビィネル視点)
「……かはっ!」
ーボンッ!ボンッ!ボォォォォォン!
……全員を転移させた直後、夢都のあちこちから上がる爆発と黒煙……
何とか間に合ったピョンね……
「大人数の転移、時間のズラし、おかわりで大人数の転移……こんなにやったら、いくら夢都でもパンクするピョン……」
かつてラビリンスに対してやった処置と同じ、オーバーヒートを起こしちゃったピョン。
でもまぁ……
『ピョン!?……メインシステムがオーバーヒートしたのは伝わって来ましたピョンが、何で私は逃げられないんですピョン!?』
「……ラビリンス用の部分は隔離、つまりメインシステムとは切り離しているピョン……だから、そこはオーバーヒート関係ないピョン……」
『ピョォォォォォォォォォォォン!?』
……限界まで頑張ろうと、ラビリンスは逃がさないピョン。
それに……
「……分身達を総動員しつつ、あたちも行くピョン……それが、あたちの……使命だから……」
休む暇もなく、あたちも向かうピョン……
撤退システムは生きてるピョンし、監視システムも無事に作動してるピョン……
システムを使用用途ごとに区切っておいたのが功を奏したピョン!
「さあ、行くピョンよ!」
あたちは折れないピョン!
……だから、誰も死ぬんじゃないピョンよ!
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(数分後、俯瞰視点)
「ふぅ……総員、突撃するのです!」
「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」」」
軍勢が転移されて数分が経過した頃、ミリセリアが後方で総大将を務める大軍が魔王城へと進軍した。
それを待ち受けるは……
「……ほう、迷都を解放した事で増援を得ましたシュルか……」
「「「「「ブヒィィィィィ!」」」」」
「「「「「キシャァァァァァァ!」」」」」
「「「「「グルルルル……」」」」」
……毒蛇宰相 スネイラが率いる、魔物の群れ。
この時点で戦力は五分五分……
と、その時……
「聖歌隊共、妾の支援に徹するのじゃ!」
「「「「「はい!」」」」」
「ふぅ……味方限定ではあるが、【状態異常無効の結界】展開なのじゃ!」
「「「「「~♪……」」」」」
メサイアが聖歌隊なる者達の力を借り、味方限定の【状態異常無効の結界】を展開した。
この結界は毒や呪いが効果を発揮する前に弾き、発動させないというもの。
これでスネイラの強みは消せる……
そう人類側は思っていた。
……が、
「甘いでシュル!……【凶魔獣化の呪い】発動でシュル!」
スネイラは躊躇なく呪いを発動。
その対象は……
「ブヒィ!?」
「キシャァ!?」
「グルァッ!?」
……魔王軍の魔物達であった。
「……この呪いは、寿命の大半と引き換えに身体能力だけでも将軍クラスへと引き上げるもの……とはいえまあ、原形を留める事は叶いませんシュルが……」
ーブシュ!ブシュ!
「「「「「ブヒィィィィィ!」」」」」
「「「「「キシャァァァァァァ!」」」」」
「「「「「グルァァァァァァ!」」」」」
……スネイラによって【凶魔獣化の呪い】を受けた魔王軍の魔物達は、その身を大きく変化させた。
目は血走り、肩や脇腹から腕の様な物が生え、口は大きく裂け、その肉体はあちこちがブヨブヨに肥大化していた。
そして、それを人知れず眺めていた藤四郎はこう静かに呟いた。
「……あんなの、魔物っていうか某バ◯オなゾンビゲーに出て来るクリーチャーじゃねぇか……」
「……藤四郎チャン、それ思ってても言っちゃ駄目っしょ!」
「私も思ったけど!……必死に我慢したのに!」
「でも、あれは納得さ。……あんなの、誰がやっても力を浪費させられる……」
「……見るからに危険でありんすね……」
……軍勢が囮となり、勇者達は魔王城へと隠密行動で進む。
魔王へぶつけるため、可能な限りは力を使わない。
その結果がこの隠密行動だった。
そして、スネイラがそれに気付く事はなく……
「さあ、勇者の皆さん!……この軍勢に精々力を無駄遣いすると良いでシュル!……本来なら敵側にも感染するんでシュルが、あの結界とやらのせいでそれも無理でシュルな……」
……そう呟きながら、次善の策を考えていた。
そうして展開されるのは乱戦。
……勝利が誰にもたらされるかも分からないまま、両軍に衝突する以外の道は残されていなかった……
ご読了ありがとうございます。
今回メサイアが発動した結界は、解呪とかするのが面倒だからそもそも味方に毒や呪いをかけさせないというメサイアの考えから作られました。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。