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155.分かり合えずとも

最終決戦に向けて。

(前話から十数分後、ナフリー視点)


あたしは今、夢都では珍しく人の気配がない場所で1人立っていたニャン。


と、そこへ……


「……ナフリー、小生なんか(・・・)に何か用ですニャン?」


「ナンドレア叔父様……」


……ナンドレア叔父様がやって来たニャン。


まあ、あたしがアカネ様を通じてここに呼んだニャンが……


「……本来なら、小生の顔すら見たくはない筈でしょうニャン?……なのに……」


「……これが、あたしとナンドレア叔父様にとって最後の面会になるかもしれないからですニャン……」


「っ……」


ナンドレア叔父様は言葉に詰まったニャンが、あたしは気にせず言葉を続けるニャン。


「ナンドレア叔父様は、この戦いで死んでも良いと思ってますニャンね?……大方、自分の命を差し出す価値のある作戦だと考えたのでしょうニャンが……」


「……商人たる者、ここぞという時の選択を誤ってはいけませんニャン。……少なくとも小生は、今回の作戦には自分の命を賭け金(チップ)にする価値があると感じましたニャン……」


「そうですニャンか……」


本当に、この人は……


……不器用だニャンね。


「……故郷や同胞の復讐を諦めておきながらこの人は、なんてナフリーは思ってますニャンか?」


「いいえ、思っていないですニャンよ?……ナンドレア叔父様は、勝てない相手に挑むより自分の居場所を守る事を選んだだけですニャンから……」


ナンドレア叔父様には、故郷以外にも自分の居場所があったニャン。


そして、ナンドレア叔父様は故郷のために死ぬより、今の居場所を選んだだけだニャン。


「……あはは……そうバッサリ言われると小生も複雑ですニャンね……」


「……死んだ皆だって、ナンドレア叔父様を責めたりしませんニャン……」


「そうですニャンかね……小生は普通にあの世で罵倒される自信がありますニャン……」


「そりゃ、あたしに対するアレコレは文句言われるかもですニャンが……あたしだって、前に会った時のままだと思ったら大間違いですニャン!」


……あれから数は少ないとはいえ、死地も乗り越えたニャン。


その体験があたしを……以前より強くしたニャン。


「……ナフリー……」


「復讐を諦めた事は何も言いませんニャン!……でも、あたしと一方的に縁を切った事は……ちゃんと直接償って欲しいですニャン!」


「……ええ、ナフリーの言う通りですニャン……」


「でしたら!……再度あたしを姪だと認知する事を要求しますニャン!」


「ニャン!?」


あたしは……ナンドレア叔父様に再度あたしを姪として認知する事を求めたニャン。


「……あたしはもう、ナンドレア叔父様を恨んだりしていませんニャン!……そもそも、最初から恨む理由なんてなかったんですニャンから……」


「……いえ、理由は……」


「縁を切られた事だって怒る程かと言われれば微妙ですニャンし、奴隷の道を歩む事を選んだのはあたし自身の意志ですニャン!」


「……そ、そうだとしても……」


ああもう!


面倒臭い人だニャン!


「それに、今のあたしは幸せですニャン!……完全に過去を吹っ切れた訳ではありませんニャンが、それでもあたしは……ご主人様と出会えた今を大切に思っていますニャン!」


「そ、そうですニャンか……」


「ですニャンから!……あたしがナンドレア叔父様を恨む理由なんて、もう残ってないんですニャンよ!」


「っ!」


もう良いんだニャン。


復讐を諦めた事も、あたしと縁を切った事も。


……ナンドレア叔父様なりに最適な選択をしただけニャンから。


「……まだ、答えは聞きませんニャン。……答えは、全てが終わった後に……」


「……そうしますニャン……」


「ああ、そうそう。……並の実力しか持たない者達はラビィネル様によって死ぬ前に待避させて貰えますニャンが……あたしやナンドレア叔父様はそうも行かないでしょうニャン……」


「ええ。……死ぬまで敵に攻撃をするつもりで、小生は挑みますニャン……」


……あたしやナンドレア叔父様といった主力は、最後まで戦うべきですニャン。


だから……


「……生きて帰って来てくださいニャンね?」


「勿論ですニャン……寧ろ、そっちこそ小生の答えをちゃんと聞いてくださいニャンよ?」


「「……ふふふっ……」」


……あたし達はお互いに生きて帰る様に伝え、静かに笑みを溢すのだったニャン……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(メアリー・ズンダルク・レブラトラ視点)


「お姉様!」


「……あら、メアリーじゃないですか……それに、ロウルまで……」


「ご、ご無沙汰しておりますぞ……」


……お姉様が今回の一団の総大将になったと聞いた私は、すぐさまロウルを引き連れてお姉様のもとへとやって来ましたわ。


「……お姉様、今回の件は……」


「単純な話です。……泣いても笑ってもこの戦いで勝てなければ終わりなのですから、私が直々に総大将を務めた方が士気の面から見ても最適解に……」


「……お姉様、自分の命を駒にするのはお辞めになってくれませんの?」


「ええ。……あれだけ他者の命を国家存続のために利用しておいて、いつまでも安全圏に居ては王家の威信に関わります……」


……ああ……


これは、お姉様なりのケジメの取り方なのですわ……


自分のせいで死んだ者達への、せめてもの償い……


「……ですが、第二王女である私が前線に立って来た以上、そんな事は……」


「いいえ。……メアリーは大方、この旅が終われば王家から抜けるつもりでしょう?……その程度ですら、私が察せないとでも?」


「っ!?」


どうしてですの?


どうして、その事を……


「……ああ、流石にエルリス辺りが密告した等ではありませんよ?……罪なき民を切り捨てられないメアリーなら、いずれその結論に至ると分かっていただけです……」


「……お姉様……」


……本当に、敵いませんわね……


私の考えなんて、お姉様からしたら見ただけで丸分かりなんですわ……


「……今回の戦力、兵士や聖職者、冒険者に技術者に一部の商人……挙げ句の果てには聖都周辺に住むヌエやキマイラの皆さんまでいらっしゃいます。……もっとも、噂に聞いていた(ドラゴン)の協力は無理だった様ですが……」


「……あ、あの方達まで……」


ヌエやキマイラ……


……大方、あの方々でしょうが……


それ程までに戦力が必要な理由が私には分かりませんわ。


「……メアリー、何か疑問がありそうですね?」


「えっと……今、私達にはシトラスっていう強い味方が居るのですわ。……その力があれば、雑魚を一掃するのは簡単な話で……」


「それが簡単でない可能性が高いから、こうなっているのでしょう。……特に、魔王軍の宰相は未だに表舞台に出て来ていない未知数の実力者ですし……」


「……そ、それは……」


毒蛇宰相 スネイラ。


未だ表舞台に姿を見せない、魔王軍のNo.2。


……その対処のために、これ程の軍勢が必要ですの?


そう思っていると……


「メアリー、よく聞きなさい。……この私ですら、今回の計画をプルスレゼスから聞かされたのはごく最近……メアリー達がケールを出発した日よりも後になります……」


「っ!?」


「……だというのに、これ程の大人数が協力を申し出て、短期間で準備を整えてくれました……それに応えずして、何が為政者ですか?」


「……お、お姉様の言う通りですわ……」


私達がケールを出た後に通達され、ここまで準備を整えた……


それを見せられたら、私がお姉様の立場だとしても同じ事をしますわ……


「……さて、長話になりましたが……私だって、この戦いで命を捨てるつもりはありませんので安心してください……」


「ど、どうしてそう言い切れますの?」


「どうして?……そんなの、この程度で私が背負った罪を清算出来るなんて思っていないからです。……この罪を清算するには、それこそ生涯の全てを国と民のために捧げなければいけませんから……」


「……お姉様……」


結局、私の予想に反しお姉様はこんな所で死ぬつもりは毛頭ありませんでしたわ。


……寧ろ、寿命か病気で死ぬその日まで、国と民のために尽くすつもりすらあったんですもの。


ですが、それが為政者としての……お姉様なりの罪への向き合い方、なのですわね……


……やはり分かり合う事は出来ませんが、同時にお姉様の在り方を否定する気も起こらなくなりましたわ。


「……では、私はこれから策を弄するので……」


「わ、私も同席しますわ!」


「私めも同じく!」


「あらあら……私の策はそんなに不安ですか?……いえ、それしか道がなかったとはいえ前科がありましたね……」


……そうして、私達は魔王軍に対する策を論じ始めましたわ。


とはいえ、その議論に……以前までの(わだかまり)りは欠片もありませんでしたが……

ご読了ありがとうございます。


ナフリーとメアリーは、それぞれ和解すべき人物と和解しました。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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