154.一気に集合!
最終章、突入!
(俯瞰視点)
勇者パーティーがラビリンスを攻略した日の夕刻、様々な者達が1つの目的を共有していた。
「……散って行った戦友達のためにも、私は……」
とある兵士は、死んだ戦友達に思いを馳せていた。
「……私達の力、ここで使わねばいつ使うというのでしょうか!」
とある聖職者は、ただただ自身を鼓舞していた。
「……いや~、前々から言われてたとはいえ実行タイミングは勇者様達次第だったからな~。……ま、意外に早かったがな!」
とある冒険者は、思いの外早く来た"その時"に興奮していた。
「……いよいよ、小生の命を賭け金へと変えるに相応しい勝機が来ましたニャンか……これで、あの世の皆に顔が立つとは思っていませんニャンが……」
とある商人は、商人らしく自身の命を代価として勘定していた。
「……皆様が命を懸けている中、私だけは安全圏……ですが、今回ばかりは……」
とある王女は、自身の胸に熱い覚悟を刻んでいた。
各々が様々な思惑を抱える中、それは起こった。
「えっと、これをああして……【灯りは消えて場面は変わる】だピョン!」
数多の兵や武器を、一気に包む暗闇。
それが晴れた時、彼・彼女等は夢都 ワンダーランドに降り立っていた。
「うおっ!?」
「まさか本当に転移させられるとは……」
「……本当に安全なんだよな?」
事前に聞いていたとはいえ、彼・彼女等は驚きを隠せなかった。
……こうして面倒な移動行程が一瞬で終わり、後は各々の責任者が何とか皆を落ち着かせるのだった……
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(浅山 藤四郎視点)
「うわぁ……マジで大人数だな……」
……各地でここへの転移を待っていたらしき奴等が急に現れたのを見て、俺はそんなありふれた感想しか出せなかった。
「……それにしても、死神の皆様はご主人様達が迷都を攻略されるのを前提とした作戦を進められていたみたいですニャンが……もし失敗していた時はどうされるおつもりだったのでしょうニャン?」
「その時は根本的に終わりだろ。……魔王が倒せなくなって詰みってオチだろうな……」
そう考えると、死神とやらは俺達に賭けた訳だ。
少し前から水面下で進めて来た作戦を完了させるためには、ここの解放が急務だった筈だからな。
と、その時……
「おや、あそこに居るのは……お姉様ですわ!?」
「ハァ!?」
突然、メアリーが集団の中に姉……つまり、ミリセリアさんの姿を見たと言い出した。
「ど、どうしてお姉様が……」
「あ、そっちで見つけちゃった?」
「茜か。……で、どういう事だ?」
「単純明快だよ。……この大軍勢の総大将が、ミリセリア第一王女殿下ってだけなんだから!」
……え、何つった?
「お、お姉様が総大将……って本当ですの!?」
「本当本当。……泣いても笑ってもこれが最後の戦いだし、ある意味ミリセリア第一王女殿下なりのケジメだろうね~……」
「お姉様……」
……ミリセリアさん。
国の存続のために必要とあらば、部下が死ぬ事すら勘定に入れる為政者の卵……
多分、自分自身の命すら駒として見てる節がありそうな感じだな……
「とはいえ、ここでミリセリアさ……いや、ミリセリア第一王女殿下が死んだら、王位を継ぐ事になるのはメアリーだぞ?……大丈夫か?」
「……私は魔王討伐の旅が終わり次第、王族から抜けるつもりですわよ?」
「だったら尚更駄目だろ。……王家の跡継ぎ居なくなるぞ……」
ここでミリセリアさんが死ねば、間違いなくこの国は終わりだ。
……それこそ、今からでも王様に再度ハッスルして貰えば何とか……
「ま、机上の空論は置いとこ?……ミリセリア第一王女殿下としても、ここで死ぬつもりは……半々ってとこだろうし……」
「半分もある時点で不安だな!」
まあ、気持ちは分かる。
自分のせいで数え切れない数の民が死ぬ事もあるのが為政者って人間の性だ。
そしてミリセリアさんは少しメアリーと歳が離れていそうとはいえまだ若い方だ。
……十中八九、掌から零れ落ちた命を気にし続けているタイプだな。
「あ、それとナフリーちゃんにも言っとくべきかな~?」
「どうしましたニャン?」
「……今回の軍勢の中には、エルリスさんの弟子4人が全員居るの。……ただまあ、プルスレゼスさんについては秘密兵器を何処に転移させるかでラビィネルちゃんと現在進行形で揉めてるからまだ来れてないっぽいけど……」
「待て、情報量が多い!」
まず、エルリスさんの弟子4人が全員今回の軍勢に含まれてて?
プルスレゼスさんに関しては秘密兵器とやらを何処に転移させるかでラビィネルと揉めててまだ来れてねぇと?
……んで、1番厄介なのは……
「……ナンドレア叔父様も居るのですニャンね……」
……これだ。
エルリスさんの弟子の1人かつナフリーの叔父にあたるナンドレアさん。
しかし、ナフリーとナンドレアさんの関係はかなり破綻しちまっている。
復讐の道を選んだナフリーと、復讐に走れず一方的にナフリーとの縁を切ったナンドレアさん。
どちらが悪いかと言われればナンドレアさんだが、ナンドレアさんは商人として選択しただけだろう。
……それこそ、復讐を諦めた自身はナフリーと関わるべきではないという考えの上で。
「……ナフリー、俺はちゃんと話し合っておくべきだと思うぞ?」
「ご主人様……そうですニャンよね……」
復讐を諦めたナンドレアさんがここに来たという事は、今回の作戦はそれだけ自身の命を懸けるに相応しいと考えた訳か。
……杞憂に終われば良いが、ミリセリアさんといいナンドレアさんといい、過去に負い目がある奴は死を恐れてねぇ節があるな……
と、その時……
ードシィィィィィン!
「っ!?……何だ、襲撃か!?」
突如として、謎の轟音と揺れが響いたのだ。
勿論、俺は真っ先に襲撃を予想したが……
「あ、遂にラビィネルちゃんが置き場所を決めたみたいだね!」
「置き場所?……って、何だありゃ!?」
俺が外を見れば、人が集まっていたのとは別方向に巨大な兵器が見えた。
何やら巨大な固定砲台に車輪やら何やらが付いた様なその兵器は、かなり異質だった。
特に、正面を向いた砲台とは別に付いている斜め上向きの砲台に搭載された、これまた大きな返し付きの銛が異質さを強調していた。
「あれは確か……あ、うんうん……何でも、邪神討伐用最終兵器"ゴッドキラー1号"だって!」
「となると、あれが例の兵器か……あんなんで、本当に邪神を殺せるのか?」
「さあね。……私だって未来は見えないから……」
「そ、そうだったな……」
……ああもう、考える事が多い!
ってか、たった一晩しか残されてねぇとかマジかよ!
と、そんな事を考えていると……
ーピンポンパンポ~ン
『皆さん、あたちが管理する"夢都 ワンダーランド"へようこそだピョン!……今からこの地はあたちの能力の1つ、【夜は終わらず宴は続く】で外よりも遥かに遅く時間が流れる様にするピョン!……その時間で、法とモラルに反しない程度にやり残しをなくして貰えると嬉しいピョン!』
「……おいおいマジかよ……」
本当にぶっ壊れだな……
外よりも遥かに遅く時間が流れるって……
『た~だ~し、程々にやりたい事を残しておくのも大事だピョン!……目標は、こちらの犠牲0が望ましいピョンからね!……だから、作戦実行時も死にかけた人からあたちが回収するから大船に乗った気持ちで居ろピョン!』
「……至れり尽くせり極まってんな……」
……理想論かもしれねぇが、ラビィネルが居ると本当にこちらの犠牲0も叶いそうだ。
そんな夢物語に浸りながら、俺は今からどうしたもんかと考えを巡らせるのだった……
ご読了ありがとうございます。
最終決戦は総力戦になります!
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。