153.断れぬ狐の提案
これにて第5章終わりです!
(迷都へと足を踏み入れる前日の晩、浅山 茜視点)
「やあやあアカネ殿、この度は迷都を攻略するために動くと聞いているでござる!」
「うわっ!?……びっくりした~!」
「おや?……流石にそこまでは全知でなかったでござるか?」
「そりゃ、私が知りたいと思わなきゃね?……でも、今知ったよ……」
何というか、いきなり現れるのは心臓に悪いよ……
まだ、ラビィネルちゃんに会えてないのに……
「それは話が早いでござる!……実は……」
「待って!……君達の作戦は分かってるから、その代わりにこっちも手伝ってくれない?……別に、死神とは違って現世のアレコレにも介入出来るでしょ?」
「しかし、拙者は戦闘が得意でなく……」
「大丈夫!……ちょっと暗躍して貰うだけだから!」
「ん?」
よっしゃぁぁぁぁぁぁ!
これでラストピースが揃った!
……でもまあ、この子の作戦もなぁ……
「ハァ……取り敢えず、ラビリンス攻略が終わったら話し合おっか?」
「は、ハァ……」
……後の事は後の私に任せて、今はラビリンス攻略の策を練ろう……
そう意気込んで、この時の私は会話を終わりにしちゃった……
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(前話から30分後、浅山 藤四郎視点)
「は~い、集合~!」
「……ん?……茜、どうした?」
……アカネの無茶苦茶から逃げて来た俺達の所に、シトラスとラビィネルより遅れてやって来た茜。
だが、茜はすぐに俺達に集合する様に促し……
「……アカネ、いったいどうしたガル?」
「ピョン……あたちからは何も言えないピョン……」
どうもシトラスは何も聞かされてなさそうだし……対してラビィネルは何か知ってそうだな……
「えっと、まず順序立てて言ってくね?……今回のラビリンス討伐は皆お疲れ様~!……とはいえ、魔王としてのラビリンスはぶっちゃけ歴代魔王と比べても下の下……ギリギリ魔王としての領域に足を踏み入れられただけの小物だから、あんまり調子には乗らないでね~?」
うおぉ……
一気に言ったな……
……にしても、あれで下の下か……
「まあ、せやよな~……」
「サタゴーラの方が強かったからのう……」
あ、先代魔王経験者のエルリスさんとメサイアさんは普通にそう考えてたらしい。
後、光枝さんはとっくに兼人と交代してるのでここには居ない。
と、そんな中……
「……で、本題は何っしょ?」
「それをボク達に言いたかっただけ……な訳ないんだよね?」
「僕でもその程度の事は分かります……」
正義、司、兼人の3人が茜へと本題は何かと聞き始めた。
いや、3人以外の皆も同じ事を聞きたそうだ。
「うんうん、察しが良くて助かるよ。……じゃ、後はお願い出来る?」
「……まあ、拙者が話すのが筋でござろうからな……」
「「「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」」」
茜が何か話すのかと思えば、そこに現れたのは和風の笠と狐面を着けた女性……
え、さっきまでそこに誰も居なかったよな!?
「……拙者は"旅の狐"、会った事がある者もちらほら居るでござろう?」
「せ、せやな……」
「あの時の狐獣人じゃな!?」
「僕も覚えがあります……」
「……結局、お前は何なんガル!?」
……"旅の狐"……そうか、こいつが例の……
「ああ、本名を言った方が良いでござるか?……拙者の本名は狐塚 穂魂……この世界の東方に存在する小さな島国から流れて来た旅人でござるよ……」
「……前と違ってすんなり言うやんか……」
……"旅の狐"の名前は明らかに日本っぽかった。
恐らく、この世界において日本と似た立ち位置に居る国なのだろう。
「そりゃあ、今回は本格的に協力を申し出たいでござるからな。……とはいえ、拙者はあくまでも死神長様の代理に過ぎないでござるが……」
「それはどういう事じゃ?……妾と同じく、お主もゴースト……という訳ではなさそうじゃし……」
ただの旅人が、死神から代理を任されるとは思えねぇ。
かといって、ゴーストって訳でもなさそうなのが……
「あはは……実を言うと、拙者は勇者様達の世界で言うところの土地神に近い存在でござってな?……まあ、今となっては住処を追われた成れの果てでござるが……」
「……つまり、死神とも近しい関係の存在っちゅう事かいな……」
土地神の成れの果て……
本当に、何というか……
「……そんな訳で色々あって流れ着いたこの国で死神に目をつけられ、現世で色々と動かされる役割を賜った訳でござるが……それは別に良いんでござる!」
「……なら、何の用っしょ?」
「端的に言えば、今回の魔王討伐に乗じて……その大元である邪神も討伐してしまいたいというのが、死神達の考えなんでござる……で、そのために現世の者達と共同戦線を張りたいとも……」
「……ふ~ん、それはまたおかしな話っしょ……死神達は、現世のアレコレに介入出来ないんじゃ……」
そうだろう。
それで光枝さんは罪悪感で苦しんだと聞いている。
「勿論、直接的な武力行使を用いる介入は禁止されているでござるが……少し現世の人間を唆す程度であれば問題ないでござる!」
「ほぉほぉ……で、共同戦線って具体的には何するっしょ?」
「……邪神は神の世界では強大な強さを維持出来るでござるが、現世では陸に上げられた蛸の如く弱体化するでござる。……そのために……」
「…弱体化しているとはいえ邪神を現世に押し付けると?……ボク達にそんな事を言うつもりじゃないだろうね?」
……あ、司がピリピリしてる。
そりゃまあ、共同戦線と言いつつ一方的に押し付けられたら怒って当然か……
「心配ご無用。……ある程度はこちらで弱らせるでござるし、寧ろ今回で負の連鎖を終わらせられると考えれば万々歳でござるよ?」
「……確かに、その通りではあるっしょ……」
正義はギリ納得してるが、他の面々の表情は未だに思うところがありそうだ。
「少なくとも、既にこの件はケールのプルスレゼス殿に動いて貰っているでござるから、現世側もある程度準備が揃っているでござるし……」
「ハァ!?……それは初耳やで!」
「死神長様が直々に口止めを頼んだでござるからね~。……そりゃエルリス殿も知らないでござろう……」
「んな馬鹿な話があるかいな……」
プルスレゼスさんもグルか……
……ここまで来ると、俺みてぇなのは下手に口を挟めねぇ。
「プルスレゼス殿を介し、各主要都市には戦力を集める様に通達を出しているでござる。……後は、その戦力をここに集めれば……」
「どうやってや?……どうやってそんな大人数を一気に移動させるって……」
「そこはまあ、ラビィネル殿に任せれれば。……出来るでござるよね?」
「ピョン……で、出来るピョン……」
各主要都市に集めさせた大人数の戦力を、ここに集合させる……
それを担う鍵となるのが、ラビィネルとの事だった。
「ホンマかいな!」
「ほ、本当だピョン……あたちの能力とラビリンスのアレコレを使えば、今まで皆さんが訪れた4都市から戦力を移動させられるピョン……」
……うん、旅も最終盤とはいえぶっ壊れ確定枠だ。
深く考えるだけ無駄だろう。
「……魔王軍も各地に散らせた魔物を魔王城に集めていると死神様から聞いているでござるし……流石にこの面々だけでそれ等全員を相手にするのは無理があるでござるよ?」
「……それも初耳やけど……まあ、最後の最後やったらそうもなるわな……」
既に将軍クラスがほぼ全滅している以上、そうなってもおかしくはねぇんだよな……
「一応、ラビリンスが抜けたために一気に運搬は出来ていないらしいでござるが……」
「慰めは要らんで!」
「ハァ……とにかく、残りの戦力を考えたら今回の誘いは乗るが確実……というか、もう作戦決行は明日の予定でござるし……」
「……嫌やわ……それ、断らせん常套手段やん……」
……色々と準備が必要な事を準備した上で前日に伝える……
確かに断れねぇな……
「それじゃあ、後は頼んだでござるよ?」
「うん、私の方で何とかしておくよ……」
「では、さらばでござる!」
ーポンッ!
そうして穂魂は言いたい事だけ言い切ったと思うと、煙玉を投げて姿を消した。
「……ラビィネルちゃん、私が手伝うから運搬お願い出来る?」
「お、お任せピョン!」
こうして、俺達はすぐに新たな戦いへと身を投じる事になった。
……魔王との最終決戦という、新たな戦いへと……
ご読了ありがとうございます。
いよいよ最終決戦目前です!
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