150.ラビリンスの悪足掻き
ラビリンスとの決着ももうすぐです。
(ラビリンス視点)
『……オーバーヒートを迎えていない箇所のシステムを隔離した上で稼働、人格の修復を実行します……』
……ピョ……ピョン……
ああ……異常は……消えましたピョンか……
……オーバーヒートの原因は……分かりますピョンか?
『端的に言えば、そもそもここのシステムは魔王化を実行出来る様に設計されていません……それを無理矢理魔王化のために回した挙げ句、多重の並列業務にもう1人の管理者権限持ちであるラビィネルを野放しにするという愚行……馬鹿ですか?』
ピョン!?
いきなりぶっ込みますピョンね!?
『今だって何とか無事だったシステムをフル稼働して人格を修復している状態……当音声の限界も迫りつつあります……』
……そうですピョンか……
ちょっと、今のシステム状態を覗かせて貰いますピョン。
『承認します……』
……う~ん、これは……
人間ですら、自分の肉体スペックを完璧に判断は出来ないと聞きますピョンが……まさか、ここまでとは……
私はどうやら、自分のスペックを過大評価していたらしいですピョンね……
『大人しく迷都として相手を迷わせて餓死なり衰弱死なりさせていればこうは……』
それもそうですピョンが、私は魔王相手に立ち回れるかの判断が……
『その結果がこれですが?』
ピョン……
『前提として、この迷宮のシステムは演算機構に流用出来る物では……』
……それもオーバーヒートの原因ですピョンか……
そもそも、ケールで演算した時に自分の完全なスペックはちゃんと打ち込んで……
……その状態であそこまで戦闘する事までは演算させていませんでしたピョンね……
結局、ケールで辿り着いたのは魔王化まで……
それを維持出来るかは……
……あ~あ、私って馬鹿ですピョンね~。
『同意します……』
同意しないで欲しいですピョン……
『事実なので……』
うぐっ!
……思えば、私はずっと独りでしたピョン。
仮初めの仲間は作れても、本来の目的を相談出来る相手は居ませんでしたピョン………
そうして独りで突っ走った結果がこれとは……
とんだお笑い草ですピョン……
『あっはっはっはっは!』
本当に笑うんじゃありませんピョン!
『……どうせ当音声も最後です。……なら、好き勝手に遊んでも罰は……』
……最後……
好き勝手に遊んでも……
あはは……
もう泣いても笑っても終わりですピョン……
仮に勇者パーティーの皆様を何とか皆殺しに出来ても、この状態で後に続く魔王軍にはどうやっても対抗出来ませんピョン……
特に魔王……
あれには……
『それは……』
だったら、もう好き勝手に遊んでも罰は当たりませんピョンよね?
『え?』
もう死ぬだけ……それなら……
ーウィ~ン……
『え!?……それは今となっては最後とも言える魔王用身体!……あちこちがオーバーヒートした今となっては次はもう作れな……』
……それでも、私は……
どうせ散るなら、無機質なシステムではなく……
"迷兎魔王 ラビリンス"として華々しく散りたいんですピョン!
『……そう、ですか……』
無数の分身体……
数々の罠……
全力を出せずとも、私はやってやりますピョン!
そうして私は身体の歩みを進めますピョン。
……その最期を華々しいものにするために……
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(俯瞰視点)
「ピョォォォォォォォォォン!」
「っ!?……魔王のラビリンス!?」
再び黒マントの身体に入ったラビリンスは、何の躊躇もなく茜へと突っ込んだ。
「せめて、貴女だけでも道連れにしてやりま……」
「それは嫌だね!」
ーブンッ!
茜は咄嗟にラビリンスへと剣を振るう。
だが……
「ピョン!」
ースカッ!
「えっ!?」
ラビリンスは華麗にその剣を避け、茜の懐に入る。
「魔王の能力は身体を壊しますピョン。……それは都合が悪い……【魔力発勁】ですピョン!」
ードンッ!
「ぐっ!」
ラビリンスは茜へと魔力を用いた発勁を放ち、その動きを一瞬だけ止める。
そこへ……
「邪魔をするなでありんす!」
「生き汚いね。……しかし、ボクはそういうのも嫌いじゃない……」
「まだ無事だったんガルか!」
光枝、司、シトラスの3人がラビリンスを囲む様に飛びかかって来た。
が……
「ふぅ……ピョン!」
ータンッ!タンタンタンッ!
「なっ!?」
「ほう……」
「ガルァ!?」
ラビリンスは華麗なステップで3人が攻撃を放つよりも早くその場から駆け抜け、すぐに遠くへと走り去る。
その方向は……
「壊れるのですわ!」
ーボォォォォォォォォォォォォォォ!
「壊れろデス!」
ーブンブンッ!……ギンッ!ギンッ!
「結構硬いっすね~……」
ーガガガガガ!
「うおぉぉぉぉぉぉ!……壊れろですぞ!」
ーギィィィィィン!
「あたちも行くピョン!」
ードシィィィィィン!
メアリーが【地獄の業火】を放ち、ダルクが先端に蟹鋏を付けた巨大な蛸足を振るい、ダレスが掘削機器を使い、ロウルが思いっきり盾を打ち付け、ラビィネル・ストーリー・ムーンが杵をぶつける……そんな攻撃を受け続ける、ラビリンスの核が有る場所だった。
なお、その周囲は……
「メサイアはん、来とるで!」
「分かっておる!……お主等、この先には1歩も行かせんのじゃ!……【光の矢】を食らうのじゃ!」
ーヒュンヒュンヒュン!
「バイン、頼む!」
「頼みますニャン!」
「ヒヒィィィィィン!」
ーダンッ!
「あ、あたち達も行くピョン!」
「「「ピョン!」」」
……メサイアやバイン、ムーン以外のラビィネル分身体達が無数にやって来る自動操縦型のラビリンス分身体を屠っていた。
「……ハァ……ハァ……あれだけは……絶対に……」
「待てガルァァァァァ!」
ーグググ……
「辞めなさいピョン!……その方向で撃ったら仲間にも当たりますピョンよ!」
「チッ!」
そんな核へと急ぐラビリンスは、後ろから追って来るシトラスの余波攻撃をその延長線上に核破壊メンバーが来る軌道に移動する事で発動拒否させた。
「1番の障害たるシトラを何とか出来れば、後はもう恐れるに足らな……」
「甘いでありんす!……【冥刃十字ざ……」
「【反重力・微】ですピョン!」
ードンッ!
「っ!?」
背後へと迫っていた光枝相手には、出力を微弱に抑えて反動をなくした【反重力】を放って攻撃を防いだ。
「次はボク達が……」
「いいや、待つっしょ!……茜チャン、俺チャンの考え分かるっしょ?」
「うん。……その方向で行くね……」
「司チャン。……俺チャンが指示する通りに撃って欲しいっしょ!」
「あ、ああ……」
移動に徹したラビリンスを相手に、正義はこのままではどうにもならないと踏んだのか司に指示を出す。
「じゃあ、教えるっしょ!……こっからは……」
「うんうん。……なるほどね……」
「……ってな訳で、頼むっしょ!」
「承った!……【美しき神弓】50連射さ!」
ーヒュンヒュンヒュン!
司は50発もの【美しき神弓】を放ち、その矢はラビリンスへと迫る。
「これは……こうですピョン!」
ースカスカスカスカスカッ……
ラビリンスは次々と来る矢を極限まで引き付けた上で避け、回避を可能としていた。
「ハァ……ハァ……可能な限りの演算をフル稼働して少し先の未来を予測しますピョン!」
ラビリンスも本気だった。
残された僅かな演算機構を用いて、少し先の未来を予測していたのだ。
……だが、ここでラビリンスの計算に1つのノイズが入る。
「ラビリンス!……私も居るよ!」
「ピョン!?」
ラビリンスの未来予測は、使える演算機構が少ないのもあって完全ではなかった。
故に、矢に紛れた茜の接近を許してしまったのだ。
ーブスッ!
「ピョぶっ!」
茜はすぐにラビリンスの胸へと背後から剣を突き刺し、そのまま語りかける。
「……ラビリンスには言いたい事が山程有る。……でも、それを言うのは私の仕事じゃない……」
「な、何を……」
「……だから、行こっか?」
ーバサッ!
「ピョォォォォォォォォォン!?」
背中の【蒼天の翼】を羽ばたかせ、剣を突き刺したラビリンスごと前へと進む茜。
そして……
「ん?……あれは……」
「皆~!……1回核から離れてぇぇぇぇぇ!」
「っ!?……総員退避や!」
茜の存在に気付いたエルリスが、他のメンバーを退避させる。
そして……
ードゴォォォォォン!バリィィィィィン!
「びょン!?」
茜とラビリンスは核へと高速で突っ込み、金属の破壊に成功してしまうのだった……
ご読了ありがとうございます。
ラビリンス、ほぼほぼ自滅です。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。