148.酷使の果てに……
最初に言っておくと、ラビリンスはギミックボス寄りです。
(エルリス・フルウィール視点)
「【反重力】ですピョン……」
ーゴンッ!
「【反重力】ですピョン……」
ーゴンッ!
「【流星群】ですピョン!」
ーヒュン!ヒュン!ヒュン!……ドゴォォォォォン!
ラビリンスはツカサはん達を仕留めようと、色んな攻撃で周囲を破壊しとった。
そんな中、ウチはというと……
「あかんあかんあかん!……アカネはん、何でラビリンスをその気にさせてしもたんや!」
折角、自分への反動を気にしてぎこちない動きばっかりしとったのに……
あ~もう、アカネはんの考えが読み取れんわ!
「えっと……大丈夫だピョン?」
「ん?……あ、ムーンはんか……」
「普通にラビィネルで良いピョンよ?……ラビリンスのアレとは違って、各々の自我は別個じゃないピョンから……」
ウチに話しかけて来たんは、ラビィネル・ストーリー・ムーンはんやった。
とはいえ、ラビリンスとは違って自我は同一らしいけどな。
と、そこへ……
ーヒュ~……ドゴォォォォォン!
「ハァ……近くに隕石落ちたで?」
「こうして逃げ回るのも限界ピョン……」
「いい加減に核を破壊したいけど、この状況やとな~……」
今、ラビリンスと相対しとるツカサはん、ジャスティスはん、そしてミツエはんの3人は、ジャスティスはんの【幻影】で姿を隠して戦っとった。
その結果、ラビリンスは手当たり次第に攻撃をぶっ放しとる訳やけど……
「流石は魔王、破壊規模がエグいピョン……」
「エグいやって?……笑えへん冗談やな~?」
「ピョン?」
「……ラビィネルはんが対抗措置を発動しとるのを加味しても、ウチが相対した魔王の攻撃はこんなもんやなかった……所詮、ラビリンスは偽りの魔王に過ぎないっちゅう事や!」
確かに元のラビリンスと比べたら格段に強くなっとるし、迷都丸々演算機構にした甲斐はあると思う出力の攻撃もしとる。
……ちゅうても、本物の魔王と比べたらその実力は雲泥の差やけどな!
「……そ、そうピョンか……」
「そもそも、全力で攻撃する度に身体を交換せなあかん時点で終わっとるんよ……実際、今ので何体目の身体か覚えとるか?」
「軽く10は越えてるピョン……」
「そこまでしても、攻撃力は魔王に届かん……防御力も学習出来とらん攻撃には紙装甲やし、耐久も結構終わっとる……」
そんなアレが魔王?
ウチ等を馬鹿にするんもいい加減にしよし!
「【反重力】ですピョン……」
ーゴンッ!
「ピョン!?……ラビリンスの奴、攻撃を適当な場所に発動してるとはいえそろそろヤバいピョン!」
「せやな~。……特に核の前とか攻撃が集中しとる場所やし……後、今のウチって重力がエグいのを【神速】とラビィネルはんの支援で何とかしとる状態なんやよな~……」
ラビリンスが絨毯爆撃をせんのは、それで1番被害を被るんが自分やからってだけの話や。
……ただでさえ半分自暴自棄になっとる現状でこれやのに、完全に自暴自棄になってしもたら安全圏は皆無になってまう。
と、その時……
「……あ、エルリスさんじゃないか……」
「奇遇でありんすね……」
「……これ、かなりヤバいっしょ……」
【幻影】を使って潜伏し、ラビリンスの攻撃から逃げ続けとったツカサはん、ジャスティスはん、ミツエはんの3人と合流してしもた。
ちなみにジャスティスはんやけど、案の定ツカサはんにお姫様抱っこされとったわ。
ま、それはさておき……
「ヤバいって……ジャスティスはんもラビリンスの狙いに気付いたんやな……」
「当たり前っしょ。……ラビリンスは適当に撃ってる様に見せかけて、俺チャン達を1ヶ所に集めてたっしょ。……何せ、俺チャン達が見えなくても攻撃で行き先を誘導する事は可能な訳で……」
「ピョンピョン……この1ヶ所だけなら修復は可能……【流星群】ですピョン……」
ーファンファンファ~ン……
ラビリンスの背後に幾つも出現する魔法陣。
その数はさっきまでの攻撃と比べもんにならん程に多かった。
「司チャン、どうにか出来そう?」
「……無理だ。……さっきまでのを見て確信していたけど、あの数だとボクの【断罪の流星】で相殺するのも厳しそうかな……」
「っ!……マジで?」
「うん、マジさ……」
【流星群】で落とされる隕石は小さいとはいえ、威力はかなりえげつない。
しかも、それが大量。
……仮にロウルはんに頼んだとしても、防ぎ切るんは無理があるわな……
【神速】で逃げるって手もあるけど、多分また同じ様に誘導されるのがオチや。
どないする……
どないすれば……
「……あの~、皆あたちの事忘れてないピョンか?」
「ん?」
ラビィネルはん、どうしたって……
……あっ……
「……ちゃんと回復しててくれてる事を祈りつつ……【灯りは消えて場面は変わる】だピョン!」
ーシュン!
……思えば、ここに来たんもラビィネルはんの転移能力のお陰やったのに、それ以降使いもせんからすっかり忘れてしもてたわ……
せやけど、転移されたんはウチ等やなくて……
「は~い、ストップ!」
ースパッ!
「ピョン!?……勇者アカネ、ラビィネルの能力で戻って来ましたピョンか……でも、既に魔法は発動して……」
「うん、魔法陣から隕石……」
ーヒュン!ヒュン!ヒュン!
「……出ちゃったね……」
ラビィネルはんの能力で戻って来たアカネはんがラビリンスを斬ったけど、発動された魔法はどうにもならんかった。
……っちゅうか、それでどうにかなるならツカサはんがやっとるよな……
と、思っとると……
「……こっちはオレがどうにかするガルァ!」
シトラスはんもラビィネルはんに戻して貰ったんか、ウチ等の前に立っとった。
そっから、手に持ったキングクラッシャーを大きく振りかぶって……
「シトラスちゃん、お願い!」
「アカネ……先に謝っとくガル!」
ーグググッ……ブンッ!
シトラスはんは何故かアカネはんに謝罪すると、そのままキングクラッシャーを思いっきり振るったんや。
すると……
ーブオォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!
……隕石も魔法陣もその後ろに有った何もかもが、シトラスはんがキングクラッシャーを振るった時に発生した……もとい余波で跡形もなく消し飛ばされてしもた。
当然、その範囲内にはアカネはんも居ったんやけど……
「ぎ、ギリギリセーフ!……シトラスちゃん、危うく私ごと吹き飛ばすところだったよ!?」
……まあ、無事やよな。
「今のアカネなら絶対に大丈夫ガルよ。……っと、それはそうと……ラビリンスの核って、今余波を放った方向にあるとかアカネは言ってた気がするんだガルが……」
「うん。……絶対に【流星群】で傷付けない様にそう誘導したっぽいけど……これは裏目に出たかもね……」
「なら、これで終わりだガルか?」
「ううん。……まだだね……」
ラビリンスの核。
今ので破壊されてたら嬉しかったんやけど……
「……あれを他の奴等に任せるって……正気ガル?」
「あはは……だからラビリンスの攻撃力自体は何とかなるレベルな訳だし……」
「……魔王の力を、核の防衛にも回してるなんて予想出来ねぇガル!……知ってたんなら言えガルァ!」
「保身の塊なラビリンスの事だから、シトラスちゃんでも予想出来ると思うんだけどな~……」
……端的に言うと、ラビリンスの核は黒い金属で覆われとった。
そして、その金属は今の余波で傷ひとつ付いとらん。
「……言っとくガルが、今の結構な本気ガルよ?」
「知ってるよ?」
「……それで無傷とか、流石に無理だガル!」
「……後、そんな代物をウチ等に壊させようとしとったん!?」
それは流石に無理があるやろ!
「大丈夫大丈夫!……何せ……」
『学習完りょ……エラー発生!エラー発生!エラー発せ……』
ーウィ~ン……
「ギギギ……ギピィィィ!……勇者……アカネ……いったい何を……しまし……たピョン?」
「ねぇ知ってる?……機械って無理させたら壊れるんだよ?」
「何を……言って……ますピョ……」
鳴り響いとるエラー音。
……替えの身体で現れたラビリンスは、謎の機械音を発しながら震えとった。
その理由は……
「ただでさえ魔王クラスの実力を得るために演算を続けさせてるのに、そこから私達の攻撃を受け切るための障壁や躊躇ない連撃による魔王用身体の使い捨て交換、更にラビィネルちゃんもちゃっかりそのシステムを色んな事に流用してて、並列業務が山程あった訳でね。……そこへ極め付けとばかりに核がシトラスちゃんの範囲攻撃をモロに受けちゃったらまあ……」
「ちゃんと……金属は……機能……してま……」
「機能してるのが問題なんだよ。……どんなに硬い金属でも、あの攻撃はひしゃげる。……ひしゃげてないって事は、それだけ演算機構に無理をさせたって訳でしょ?……加えて、今の攻撃も学習させようとしちゃった。……あの強力な攻撃を……」
酷使に次ぐ酷使……
ウチでも、その果てに何が起こるか分かるわ……
「……な……何を……」
「オーバーヒート、起こしちゃった♪。……てへぺろ♥️!」
ーボンボンボォォォォォォン!
アカネはんのてへぺろ発言の直後、迷都のあちこちで起こる爆発。
この勝負は、訳の分からんフェーズへと突入し始めとった……
ご読了ありがとうございます。
"迷兎魔王 ラビリンス"の推奨攻略方法は、システム酷使によるオーバーヒート誘発です。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。