147.ラビリンスの躊躇
ラビリンスは魔王を名乗っていますが、現魔王のドラグ (全盛期) とは実力に雲泥の差があります。
(ラビリンス視点)
「ふ~ん……勇者ジャスティスの【幻影】で誤魔化しつつ、エルリスに回収させましたピョンか……」
「あはは……結構グダグダしちゃったのはご愛嬌って事で……何せ、私が見れるのは過去と現在の情報であって、未来は見えないからね……」
「ピョン?……え、それ本当ですピョンか!?」
「本当だよ?……ちょっと神器の副作用って言うべきかは悩むけど……ただまあ、情報として知れても私は策士って訳じゃないから結果的にはグダグダになっちゃったんだけどね?」
「……道理で色々知ってそうな動きだった訳ですピョン……」
……過去と現在の情報を見れる……
どれだけ見れるかは分かりませんピョンが、これは厄介ですピョンね……
と、そこへ更なる追い討ちをかけるが如く……
「だから、ラビリンスが今本気で戦えないのも知ってるよ?」
「……な、何を言ってるんですピョン?」
……今の私にとって弱点とも言える事を見抜きやがりましたピョン。
「……ラビリンスが魔王の力を維持するには、この迷都全体を使った演算が必要不可欠……でもでも、その本気に身体は耐えられないし、演算に使ってる関係で下手にそこら辺を大きく壊しただけでも支障が出る……魔王としての本気なんて、出したくても出せない訳だよ……」
……私がこの戦闘で無駄話を多用する理由。
それは単純に身体が魔王の力に耐えられない事に対する時間稼ぎの面が大きいですピョン。
そして、下手に本気を出して大きな被害を迷都に出した場合、それだけで自身の出力も下がりますピョン。
「……ほんと、世の中そう上手くは行かないものですピョンね……」
「皮肉だよね。……誰よりも自由に他者を蹂躙しようと思ってたラビリンスが、誰よりも強い魔王になろうとして逆に不自由になっちゃうなんて。……1周回って哀れに思えて来るよ……」
そう語る勇者アカネの目には、私に対する哀れみが満ちていましたピョン。
……ただし、それで挫ける私じゃありませんピョン。
「……そうやって無駄話をして時間を稼いで、その間に私の核を破壊するつもりですピョンね?」
「ご名答!……勿論、最期まで私と無駄話に興じるなら、何もしないであげるけど……」
「それで、誰も手出しして来ない訳ですピョンか……お断りですピョン!……【流星群】ですピョン!」
ーファ~ン……ヒュン!ヒュン!ヒュン!
「交渉決裂か~……司ちゃん!」
「【美しき神弓】50連射さ!」
ーヒュンヒュンヒュン……ドゴォォォォォン!
……私が魔法陣を介して作り出した【流星群】は、勇者ツカサの攻撃で相殺されてしまいましたピョン。
「おっと、そろそろ本気かな?……これまでの甘ちゃんラビリンスも都合が良かったんだけどね~?」
「甘ちゃん……ですピョンか?」
「そ~そ~♪……敢えて自分が不利な状況になるためにラビィネルちゃんの警備を手薄にしたり、自分への被害を恐れて本気を出さなかったり……本っ当に反吐が出る程に甘かったよ?」
「そ、それは……」
「結局、ラビリンスは中途半端なんだよ。……自分を不利にする割に、命を懸けようともしない……いつも本体は安全圏から高みの見物をしてたんだから当然とも言えるけど……」
「う、煩いですピョン!……【重力】ですピョン!」
「【反重力】だピョン!」
ーゴゴゴッ……
チッ!
ラビィネルが鬱陶しいですピョンね……
「ハァ……魔王の名が聞いて呆れるよ……ラビリンスはそのまま、ゾンビ戦法でもする気なの?」
「な……何が言いたいんですピョン?」
「そのまんまだよ。……私達に倒されてはチマチマとした攻撃を繰り返す……これが魔王の攻撃?……笑わせないで!」
「……わ、笑わせ……」
……自覚はしてましたピョン。
私は自分の命が惜しいですピョンからね……
だから、無意識にセーブをかけていましたピョン。
でも……
「あ~あ……なら、本気を出させちゃう事を言っちゃおっか?」
「ピョン?」
「……エルリスさん達は今、ラビリンスの核へと向かってる……核がこの近くの壁に埋まってるって事ぐらいは分かってるよ?」
「ピョン!?」
……なるほど、それが目的でしたピョンか……
かといって、今は迷都を演算機構として利用している関係で本体を動かす事も困難……
……いいや、主戦力が私に付きっきりな以上、あちらにあの壁を破壊する手段は……
「ああ、念のため言っておくと壁を破壊する手段はあるよ?……さっきラビィネルちゃんが呼び出した5人組が居なくなってるの、気付いてる?」
「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
な、何で私は気付けなかったんですピョン!
視野が狭くなっていたんですピョン!?
「うふふ……魔王の力は相当制御が難しいんだね?……視野が滅茶苦茶狭くなってるよ?」
「煩いですピョン!……【反重……」
「させないよ!」
ースパッ!
「チッ!」
『……学習完了、身体の……』
「交換ですピョン!」
……勇者アカネ、さっきとは違う威力の斬撃で私を斬りやがりましたピョン……
私の学習が技単位ではなく、技と威力の2つがセットになっている事に気付いていたんですピョンね……
ああ、そっちがその気ならこっちだって命懸けてやりますピョン……
「あ、そろそろかな?」
ーウィ~ン……
「殺ってやりますピョン!」
もう自分の被害なんて気にしませんピョン!
こいつらを殺して本体に向かいますピョン!
「……魔王の力を使える1体を出してると、他のラビリンス分身体を動かすリソースが足りなくなるんだよね?」
「ピョォォォォォォォォォォォン!」
「って、なりふり構わなくなったか~……うん、皆も温存はなしで!」
「【覇王獣化】だガル!」
「【美しき王国】さ!」
「【ありきたりな英雄譚】っしょ!」
どいつもこいつも本気に……
ああ、手加減されていたんですピョンか……
舐められたもんですピョンねぇぇぇぇぇぇぇ!
「ラビリンス……どうしてそうなったピョン?」
「ラビィネル、何が言いたいんですピョン!?」
「……戦闘が始まる前のラビリンスからは、油断も慢心も感じられませんでしたピョン。……なのに、今のラビリンスは……」
「ラビィネルちゃん、それだけ魔王の力は燃費が悪いし、正式じゃない使用者を振り回すって事だよ……」
……ああ、これは……
今の私、完全に道化ですピョン……
「私はどうして……こんな事に……自由に弱者を蹂躙するつもりでしたピョンのに……あは……あはは……あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
「く、狂ったピョン!?」
……あはは……
もう嫌ですピョン……
「っ!……皆、こっから先はラビリンスの攻撃は絶対に受けちゃ駄……」
「……【反重力】ですピョン……」
「あっ……」
ードンッ!……ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!
……勇者アカネは、私の【反重力】を受けて壁を幾つも破って吹っ飛んで行きましたピョン。
ただ、代償は大きく……
ーバチバチバチッ!
『身体の損壊が危険水準に……』
「交換ですピョン!」
チッ!
やっぱり身体が保ちませんピョンね……
「アカネ!?……こ、これは……オレはともかく、他3人は絶対に受けたら駄目だガ……」
ああ、煩いですピョン……
ーウィ~ン……
「【反重力】ですピョン……」
「ガルァ!?」
ードンッ!……ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!
身体を交換した私は、すぐにシトラも勇者アカネと同じ様に吹き飛ばしましたピョン……
……2人ともこれで死ぬとは思いませんピョンが、すぐに戻っても来れないでしょうピョン。
「……ボクの目が正常なら、さっきまでと動きが違う様に見えるんだけど……」
「同じくっしょ……」
「……全員、ラビリンスに近付かれない様にするでありんす!」
ーバチバチバチッ!
「……残りの3人も潰して、他の奴等を始末しに行きますピョン……」
もう油断も慢心も躊躇もしませんピョン……
……核さえ無事なら、他はどれだけ傷付いても……
そうして私は、やぶれかぶれの殺戮を始めようとするのでしたピョン……
ご読了ありがとうございます。
魔王の力を使う筈だったラビリンスですが、下手したら以前より厄介度が下がっています。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。