146.真の狙い
ひたすら地味な戦いになります。
(浅山 藤四郎視点)
……にしても、こっからどうするか……
「ご……ご主人様……」
「分かってる……ただ……厳しそうだな……」
俺達の真の狙いには気付かれちゃならねぇ。
その点では……俺達は良くも悪くも……切り札に……なれるかもな……
「……もう1回なら……行けます……ニャン……」
「駄目だ。……あの分身体とは……訳が違う……」
「ん~?……何をコソコソ話してるんですピョン?」
「チッ!……こっちに注意を向けやがった……」
ラビリンスはしばらく4人がぶつかった壁を見続けていたが、反撃の心配がないと分かってこちらに注意を向けやがった……
……が、それも杞憂に終わる。
「……いや、待ちますピョン。……あの4人が、この程度の牽制で戦闘不能になる訳が……」
「ピンポ~ン♪……でも、少し遅かったっしょ!」
「ピョン!?」
ラビリンスの疑問に、謎の正解音で答える正義。
その直後……
「ガルァァァァァァ!」
「取り敢えず一撃!」
「【美しき神弓】10連射さ!」
「【冥刃十字斬】でありんす!」
ードゴォォォォォン!
シトラスのキングクラッシャーによる打撃が。
茜の【破魔の剣】による斬撃が。
司の【美しき神弓】10連射が。
光枝さんの【冥刃十字斬】が。
……全て、ラビリンスに繰り出された。
「……相変わらず……正義の【幻影】は……えげつねぇな……」
「4人の姿を誤魔化すくらいなら余裕っしょ!」
4人が壁に吹き飛ばされた時点で正義は一工夫打っておいた様だが……よくやるな……
「でも、これで終わりとは……」
「思えないっしょ……」
しかし、相手は魔王レベルの実力を得たラビリンス。
この程度で倒れるとは俺達も思っていなかった。
のだが……
ージジジ……バチバチバチ……
「してやられましたピョンね……ですが……この身体で……得られた情報は……大きいですピョン……」
……ラビリンスの身体は火花を散らし、ボロボロになっていた。
そして、その直後……
『学習完了……身体の損壊度が危険水準に達したため、即座に身体の交換を推奨します……』
「分かりました……ピョン……」
ードサッ……バチン!
部屋に流れた電子音声。
それを聞き終えたラビリンスは、静かに活動を停止した。
ただ、これで終わりじゃねぇのは馬鹿でも分かる。
ーウィ~ン……
「さ~て、2回戦の開始ですピョン!」
当然の如く、ラビリンスは新たな身体を地面の下から出現させて復活しやがった。
「う~ん、私達の攻撃を学習してる?」
ーブンッ!……ギィィィィン!
「正確に言えば、その攻撃を防げる障壁を生成してる感じですピョン!」
茜が再び飛ばした斬撃を、新生ラビリンスは障壁で防ぐ。
なるほど……攻撃を受ければ受ける程に、次の身体がその攻撃を防げる障壁を生成出来る様になるって訳か……
「じゃ、いい加減に皆殺しをしますピョンか……」
「いいや、まだだピョン!」
「ピョン?」
いよいよ俺達の皆殺しが近付く中、俺達はひたすら茜の合図を待つ。
……俺達がこの戦いで任せられている役割は、あの4人がひたすらラビリンスに攻撃している間は攻撃を警戒しつつ待機……って事だけだ。
他は知らん事もないが、現状はまだだ。
後、ラビィネルがラビリンスに何か言おうとしてるが、ぶっちゃけ気にしてる余裕もねぇ。
ーゴゴゴッ……
「相変わらず重力はエグいし……俺達はどうすりゃ良いんだよ……」
……ラビィネルのお陰で幾らか楽になっているとはいえ、この状況では身動きもとれねぇ。
と、その時……
「あたちだって、戦えるピョン!」
ラビィネルがラビリンスに対し、そう告げた。
「戦えるって、本気で言ってますピョン?」
「そっちこそ忘れたピョン?……あたちは、お前に取り込まれていた関係上、お前の支配が及んでないシステムを使えるピョン!」
「それがどうし……」
「お前、あの【異世界兎物語】とやらが壊された後は完全に放置してたピョンよね?」
「っ!?……ま、まさか……いいえ、あれ等は完全に機能を停止していた筈ですピョン!」
……えっと、つまりどういう事だ?
あの特殊なラビリンス分身体を、ラビィネルが何かに活用したと?
「……確かに、あの機体達は完全に活動を停止したピョン。……でも、その情報はあたちでも収集出来たピョン!」
「チッ!……そういう事ですピョ……」
「隙あり~!」
あ、ラビリンスが話してる途中で茜がラビリンスに奇襲をかけやがった。
とはいっても……
「【反重力】ですピョン!」
「ぐはっ!」
ードンッ!……ドゴォォォォォン!
「……話の邪魔をするとは、少々大人げないと思いませんピョンか?」
……やっぱりラビリンスに対処されて壁まで吹っ飛ばされたか……
となると……
「お前がそれを言える立場ピョンか?……まあ良いピョン。……これがあたちの【異世界兎物語】だピョン!」
ーファ~ン……
ラビィネルが【異世界兎物語】と唱えた瞬間、ラビィネルの周囲に5つの魔法陣が現れた。
そして……
「ラビィネル・ストーリー・カチカチだピョン!」
「ラビィネル・ストーリー・イナバだピョン!」
「ラビィネル・ストーリー・ムーンだピョン!」
「ラビィネル・ストーリー・トータスだピョン!」
「ラビィネル・ストーリー・クロックだピョン!」
魔法陣から現れたのは、5人のラビィネルだった。
それぞれが赤、青、黄、緑、白銀のビキニアーマーを着用しており、それこそ緑の個体はラビリンスの特徴である仮面を被っていない点以外は俺とナフリーが出会ったラビリンス・ストーリー・トータスとよく似ていた。
「うぐぐ……良くも悪くも情報を元に構成したから、格好が痴女みたいだピョン……」
「……ふん、さっきは狼狽えましたピョンが、それがどうしましたピョン?……どれも大して何も出来なかった試作機の猿真似に過ぎませんピョン!……あっちで重力に押し潰されそうになっている者達同様、さっさと始末して……」
「隙あり~!」
「いい加減にしなさいピョン!……って、少し待ちなさいピョン!」
ーギィィィィィィン!
「ん?……今度は障壁で止めた?」
さっきは茜を吹き飛ばしたラビリンスだったが、今度は障壁でその攻撃を防いだ。
「いくら何でも、邪魔するのが勇者アカネだけってのはおかしいですピョン!」
「あ~、バレちゃった?」
「……私の無駄話を誘発して得に繋がる事なんて、そんな事が……」
「ううん、時間稼ぎは大切だよ?……少なくとも、下の人達にはね?」
……バレたか……
いや、これでも充分か?
「……正義、俺達はもう大丈夫だから……お前達は、茜の手伝いに回ってくれ!」
「そうするしかなさそうっしょ……じゃ、ここまで移動させた後は任せたっしょ!」
「ふむ、ボク達としてはもう少し進ませたかったところだけど……」
……そう。
俺達は少しずつ、とある場所へと歩みを進めていた。
もっとも、シトラスや司、光枝さんの協力を得ながらだったが……
「……という訳で、後は頼んだでありんす!」
「任せときよし!」
その場所とは、エルリスさんの立っている場所。
攻撃役が茜だけになったタイミングで、戦闘メンバー以外はエルリスさんが背負う木箱に【次元収納】で入れられる事になっていたのだ。
……最初からこれで良かった気もするのだが、茜としてはあの特殊なラビリンス分身体共を先に倒しておきたかったのだとか。
その結果がアレじゃあ笑えねぇがな。
「……後は、エルリスさんがラビリンスの核まで辿り着けるかどうかだな……」
「せやな~……」
そう。
俺達の真の狙いは、ラビリンスの本体とも言える核を破壊する事。
そのために俺達は……
いや、何も考えねぇでおこう。
「じゃあ、頼む……」
「分かったわ~……」
そうして俺達は、エルリスさんに収納される。
次に外に出た時、どうなっているか……
それは神のみぞ知るというところだろう……
ご読了ありがとうございます。
ラビリンスの残機は核を壊されない限り無限です。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。