145.ラビリンスの狙い
ふぅ……これから始まる勝負は滅茶苦茶チマチマしたものになりますが、どうか離れないでください……
(ラビィネル視点)
……ま、それはそれとして……
ラビリンス、何を考えてるピョン?
『ピョン?……何の話ですピョン?』
知らばっくれるんじゃないピョン!
あんな分身体でシトラを倒せるとも、ダークトレント程度でアカネを倒せるとも、最初から思ってなかったピョンよな?
『……ええ、ラビィネルがダークトレントから解放されるのも、【異世界兎物語】が全員倒されるのも想定通りですピョン……』
何で、そんな無駄な事をしたピョン?
『無駄と言いますピョンか……』
言うピョン!
『ふむ、では教えてあげますピョン!……まず、今回の【異世界兎物語】達は全員ただの試作機で、先程までの戦いはどれもその実力を見定めるための試験運用でしかありませんピョン!』
……試験運用?
つまり、本命ではなかったと言うつもりピョン?
『当然ですピョン!……にしても、どれも期待外れの結果に終わりましたピョン……今後は改良が必要ですピョンかね~?』
知らんピョン!
……って、今後?
『……少なくとも、勇者パーティーの皆様を全滅させた後にやるつもりですピョンから、気にしても仕方のない事ですピョンよ?……で、次にラビィネルをダークトレントから解放される事を危機とも思ってない理由ですピョンが……これはいわゆるハンデに過ぎませんピョン!』
ハンデ!?
あ、あの相手を苦しめるためなら何だってするラビリンスがそんなものを!?
『……だって、私が不利になるハンデ込みとはいえ勇者パーティーに勝てないなら……今代の魔王に対抗するなんて夢のまた夢ですピョンから……』
……ああ……
なるほど、そういう事ピョンか……
確かに、アカネ達は今まで何体も魔王軍の将軍を討ち取って来たピョン……
でも、所詮は将軍だピョン。
その頂点たる魔王の実力は、そんな将軍クラスとは比べ物にならないピョン……
『……だから、私が不利になるハンデ込みで勇者パーティーと戦って打ち勝つために、ここまで盤面を揃えましたピョン……本音を言えば、【異世界兎物語】にはもう少し頑張って貰いたかったですピョンが……最初から能力が分かっていたかの様な対応で処理されてしまいましたピョン……』
えっと……
ラビリンス、まさかの一か八かの賭けに出てたピョン……
自分をここまで不利にしてでも、魔王に打ち勝つための実力を身につけたいからって……
『……私は何処まで行っても下衆で醜悪な完全悪ですピョンし、その自覚もありますピョン……そんな私でも、絶対に譲れないものの1つや2つはあるんですピョンよ?』
……それが、"魔王の座"ピョンか?
『正確には、魔王よりも上……"邪神"を目指したいですピョンが、現状だとまずは"魔王"ですピョン!』
……そうピョンか……
お前も、そういう熱い気持ちは持ち合わせていたピョンか……
『……さあ、ラビィネルもそれなりにこの地の支配権を持ち合わせている事ですピョンし……お互いの誇りを懸けて、因縁の勝負を始めましょうピョン!』
……望むところだピョン……
お前との勝負に勝って、あたちは……
『じゃあ、待ってますピョン!』
チッ……自分だけ話したい事を喋ったらトンズラとは良いご身分だピョンな……
「……アカネ、シトラ、突然だピョンがラビリンスとの最終決戦に行けるピョンか?」
「あれ?……私段取り説明したっけ?」
「いいや、してねぇガルよ?」
あ、そっちもそのつもりだったピョンか……
……考えれば、それも当然ピョンか。
「ま、私は準備万端だよ?」
「オレもだガル!」
「なら、行くと……いや、ちょっとだけ戦力の確保もしとくピョンか……」
そうしてあたちは少しだけ時間をかけ、自身の最適化兼戦力拡充をしたピョン。
そして……
「……そろそろ大丈夫そ?」
「待たせたピョンな!……じゃ、行くピョンよ!」
「OKだよ!」
「こっちもガル!」
「だったら……【灯りは消えて場面は変わる】だピョン!」
ーフッ……
あたちが【灯りは消えて場面は変わる】と唱えた瞬間、あたちの視界は暗転したピョン。
でも、これで良いピョン。
何せ、視界が明るくなった時は……ラビリンスの前に居るのだから……
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(浅山 藤四郎視点)
大量のラビリンス分身体から逃げている途中、俺の視界は突如として暗闇に包まれた。
そして、その暗闇がなくなった瞬間……
「ピョ~ンピョンピョン!……勇者パーティーの皆々様、よく来られましたピョンね~!」
聞こえて来たのは、そう語るラビリンスの声だった。
すぐにそちらを向くと、そこには黒いマントを羽織ったラビリンスが居た。
「あはは、これは誰か……多分茜チャンが成功した感じかな?」
「ふむふむ、ボクも突然の事で混乱しているが……」
「やる事は決まっているでありんす!」
……呆気にとられていた俺をよそに、近くから聞こえて来た声で正義、司、光枝さんの3人が居る事は分かった。
いや、正確に言えば俺だって事態は何となく把握出来ていた。
恐らく誰か……多分茜がラビィネルの救出に成功したのだろう。
それを物語るかの如く、この場には迷都に足を踏み入れた味方が全員揃っており、茜の近くにはラビリンス似の兎耳少女が立っていた。
「ピョンピョンピョン!……ここでハメ殺しにする事も出来ましたピョンが、そうはしませんピョン!」
「へぇ……何でな訳?」
「それをしてしまえば、あの魔王……ドラグに今の私の力が通じるかどうかの指標になりませんピョンからね!」
「それで、こんな回りくどい事をした訳?」
「そうですピョン!……正確に言えば、貴殿方と戦った【異世界兎物語】もただ試作機の試験運用をしただけに過ぎませんピョンし……」
「っ……」
……あ、あのヤバかったラビリンス分身体が試験運用段階の試作機!?
茜は言ってくれなかったが、ある意味では聞かなくて良かったかもな……
「さ~て、泣いても笑ってもこの戦いで終わりですピョン。……だったら、一瞬で皆殺しにしてあげますピョン!」
「そんなの、あたちがさせないピョン!」
「ラビィネル……貴女に出来ますピョンか?」
「やってやるピョン!」
やっぱり、あの兎耳少女がラビィネル……
茜が助けたがってたここの元管理者か……
……って、皆殺しにするって言ったか!?
「なら、抗うと良いですピョン。……【重力】ですピョン!」
「【反重力】だピョン!」
ーゴゴゴッ!
「うぐっ!」
何か……ラビリンスとラビィネルがあ互い何かを唱えた瞬間……俺の体が一気に重くなった……
……横を見れば……全員がそんな……感じっぽい……
「チッ!……全員纏めて圧殺するつもりでしたピョンのに……」
「くっ……本当なら……【争いなき世界に祝福を】でスキルを封じたかったピョンが……ここはまだお前の支配地……そう簡単には行かないピョン……」
「それで咄嗟に重力を軽減するのもなかなかですピョンけどね?……いくらラビィネルにここの支配権が微妙に存在しているとはいえ、まさかここまでとは思いませんでしたピョン……」
「……無駄話をしてあたちの体力を削ろうとしても無駄だピョン……」
「ピョン?」
……その言葉に……俺はハッとする……
この重力は……肉体が一般人の……俺でさえ……耐えられている……
つまり……
「死ねガルァ!」
「夢を諦めてラビィネルちゃんにここを返して!」
「ボクの美しさに酔いしれると良いさ!」
「一撃で仕留めるでありんす!」
シトラス、茜、司、光枝さんの4人が、ラビリンスの前に迫っていた。
「ふぅ……今度は【反重力】ですピョン!」
ードンッ!
「ガルッ!」
「うっ!」
「おっと……」
「うぐっ!」
だが、ラビリンス分身体は【反重力】とやらで4人を押し返し、俺達の背後の壁まで吹き飛ばしてしまった。
「ピョンピョンピョン!……私は今までの"迷兎将軍 ラビリンス"ではありませんピョン!……迷兎機神を経て覚醒した、"迷兎魔王 ラビリンス"なのですピョンから!」
そう仰々しく名乗りを上げ、手を広げるラビリンス。
この迷都における最後の戦いが、こうして遂に幕を開けたのだった……
ご読了ありがとうございます。
"迷兎魔王 ラビリンス"戦、開幕です。
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