142.餅つき兎とダークトレント
ラビリンス本体との戦い、多分しょっぱくなる。
(ラビリンス視点)
「う~ん……怨嗟の炎は呆気なく鎮火され、傲慢な鮫使いは慢心から足を掬われ、怠けて眠る者は相手の速度を見誤り、不思議の国の案内人は稚拙な命令で自らの首を絞める始末と……期待していた割に悉くハズレばっかりですピョンね~……」
いくら最初から倒される前提だったとはいえ、このザマでは満足に情報すら収集出来ませんでしたピョン……
……にしても、この結果……
「……まるで、最初からこちらの能力がバレていたとしか思えませんピョン……元の物語を知っているであろう勇者の皆様ならともかく、こちらの世界の皆様まで……いえ、そもそも元の物語を知っていたとしても完全に予想するのは困難な筈ですピョン……ならば何故、この様な結果に……」
対処されるにしても、早過ぎますピョン……
……というか、シトラが同行してる時点でかなりアレですピョンね!?
「……あの2人だけは、まだムーンと会わせていませんピョン……勇者アカネとシトラ、この者達には全力で挑まなければ勝てませんピョンから……」
勇者アカネとシトラは、ムーンとラビィネルが居る場所からかなり離れた場所に転移させましたピョン。
勿論、転移先からそこへ辿り着く事は出来ますピョンが……道中には無数の分身体と演算に入る前に生成しておいた魔物達を配置していますピョン。
……って、もうすぐ辿り着きそうですピョン!?
「やっぱり、これは知ってる側の動きですピョン……別世界でチートだの何だのと呼ばれていた、遊戯における禁忌の技術……こんなのズルですピョン!」
何て面白味がない……
……とはいえ、この2人を相手にする予定のムーンは他の4体とは違いますピョン。
既に倒された4体はいずれも、無駄な部分にリソースを割き過ぎたんですピョンから。
……カチカチは業火の火力に。
……イナバは地面を泳ぐ鮫型魔物の生成に。
……トータスはあの理不尽な能力そのものに。
……クロックは雑兵召喚その他諸々に。
それぞれリソースを無駄遣いしたのですピョン。
そうして限られたリソースを使い過ぎた結果、肝心の物理攻撃力が疎かに……
しかし、ムーンは違いますピョン。
「特殊能力は一切なし、完全な筋力全振り……それがムーンの強みですピョン!」
ただまあ、代償として耐久が紙装甲になっちゃいましたピョンが……あの2人を相手にする上では誤差の範囲内ですピョン。
「さて、これでどれだけあの2人を削れるか……お手並み拝見ですピョン!」
最初からムーンの勝利は期待していませんピョン。
強いて言えば、あの2人の体力を少しでも削ってくれれば御の字……
……そんな淡い期待を抱きながら、私はムーンの様子を観察するのでしたピョン……
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(シトラス視点)
「ガルァァァァ!」
ーブンッ!……ドシィィィィィン!
「お、シトラスちゃんナイスアタック!」
「……ハァ……やっぱりと言うべきガルか、どうも雑魚が多いガルな……」
……アカネと共に迷都の何処かへと転移させられたオレは、襲い来る大量のラビリンス分身体やら雑魚の魔物共やらをアカネと共に皆殺しにしていたガル。
「あはは……他の皆は転移させられてすぐに特殊なラビリンス分身体との戦いに入ってたんだけど、私達には消耗狙いの策をぶつけて来たっぽいね……」
ーポリポリ……
アカネは頭をポリポリと掻きながら、そう困った様に呟いてたガル。
なお、そんなアカネは強い神器を出せない上に魔力と体力を出来る限り消耗させないためと称して、武装は【破魔の剣】と【蒼天の翼】だけに留めていたガル。
「消耗狙いガルか?……これで?」
「微々たる量でも消耗は消耗だよ。……でもまあ、それももうすぐで終わりだけど……」
「……どういう事ガル?」
「進んでみれば分かるかな?」
……ったく、焦らすんじゃねぇガルよ!
ただまあ、下手に聞くよりはそっちの方が確実ではあるガルが……
そう考えたオレは、アカネと共に少し進んだガル。
すると、かなり開けた空間に出て……
「……チッ、そういう事ガルか……」
「うんうん。……目的地に到着だね!」
開けた空間……
そこには、オレとアカネ以外に2人の人物が居たガル。
「……アカネ、来たピョンか……」
1人は、巨大なダークトレントによって囚われの身になっているラビリンス似で燕尾服を着た兎耳の小娘。
「ピョンピョン♪……シトラ、私の獲物として不足はないですピョン!」
もう1人は、大きな木製の打撃武器……アカネ曰く杵とかいうのを担ぎ、黄色いビキニアーマーを着用したラビリンス分身体。
「……シトラスちゃん、ラビリンスの方をお願い!」
「分かってるガルよ!」
……あのラビリンス分身体、多分単純な筋力はオレと同等ガル。
なら、今のアカネじゃ不利ガルな……
「ピョンピョン♪……私の名前はラビリンス・ストーリー・ムーン!……他の【異世界兎物語】共とは違って特殊な能力は一切なしの攻撃特化型ですピョン!」
ーダンッ!
ラビリンス・ストーリー・ムーンと名乗ったラビリンス分身体は、直後にとてつもない勢いでこちらへと跳躍したガル。
「チッ……全身の筋力が高レベルだからか動きも素早いガルな……でも、オレの敵じゃねぇガル!」
ラビリンス・ストーリー・ムーン……略してムーンの奴は跳躍した後に杵を振りかぶりやがったガルが、ここはひとまず受けてみるガル。
「ピョンピョン♪……一撃入魂、【餅つき大車輪】ですピョン!」
ーブンッ!……ドシィィィィィン!
「くっ!」
オレはキングクラッシャーを構えて相手の攻撃を受けたガルが……
どうも、ただの杵とは思わねぇ方が良いガルな……
「だったら次はオレの番ガル!」
「それでも私がやる事は変わりませんピョン!……一撃入魂、【餅つき大車輪】ですピョン!」
ーブンッ!……ドゴォォォォォン!
こ、こいつ……
オレの振りかぶり攻撃に合わせて杵をぶつけて来やがったガル……
そして、結果は互角……
いくら特殊な能力が一切ないとしても、信じられねぇガルな……
……それはそうとして、アカネの方はどうなってるガルか?
「あはははは♥️!……ラビィネルちゃん、絶対に助けてあげるからね♥️!」
「grrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!」
ーメキメキメキ……ブンッ!ブンッ!ブンッ!
「……そういえば、あたちの名前は何処から知ったピョン?……って、そんなの気にしてる場合じゃないピョン!……アカネ、とにかく避け続けるピョン!」
……アカネの方を見てみれば、大きなダークトレントが振り回す無数の根を縦横無尽に飛んで避けつつ、囚われのラビィネルとやらを助ける隙を伺ってたガル。
「あ~、あっちもあっちで大変そうですピョンね?」
「ふん!……ダークトレントなんてアカネの相手には役不足だガル!」
「いやいや、それがそうでもないんですピョン!……っと隙ありですピョン!」
ーブンッ!
「その程度で仕留められる程ヤワじゃねぇガル!」
ーブンッ!……ドシィィィィィン!
アカネはともかく、オレとムーンは会話を交わしつつも何度か攻撃のやり取りを行っていたガル。
もっとも、お互い決定打は出せてなかったガルが。
「さて、話の続きですピョンが……本体様曰く、あのダークトレントは本来ならこの"迷都 ラビリンス"という迷宮におけるダンジョンボスに相当する魔物なのだとか……ただ、何から何まで本体様が管理しているこのダンジョンでは、ダンジョンボスもラビィネルの拘束にしか使われていませんピョンが……」
「……ふ~ん、そうなんガルか~……」
「ほへ?……普通、もっと驚きませんピョン?」
「ガル?……たかがダンジョンボス程度がアカネを追い詰められるなんて、本気で思ってるガルか?」
ラビリンスはそこまで阿呆じゃなかったと思ってたんガルが……オレの勘違いだったみてぇだガルな。
「ピョン!?」
「……後、オレを倒してぇなら精神攻撃中心にするべきだったガル。……もし、お前の手札がこれだけだったらの話だガルが……」
「い、言ってくれますピョンね!」
アカネはダークトレントを、オレはムーンを、それぞれ倒すのが最適解だガル。
だからムーン……オレの事、恨むんじゃねぇガルよ?
ご読了ありがとうございます。
もう物語も終わりが見えて来たので、さっさと進みます。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。