14.下水道探索 中
下水道探索編、思ったより筆が乗ってます。
(浅山 藤四郎視点)
「ふぅ……そこそこ討伐出来たか?」
「そうですニャンね。……でも、まだ大物が居るそうですニャン。」
「そうか……」
「ええ、ネズさんとヘビーさんがそう伝えたがってますニャン。」
「チューチュー!」
「キシャァァァァァ!」
俺達が下水道に入って1時間後、ナフリーは従魔にしたレッサーマウスとレッサーボアの伝えたい事が分かって来たらしく、2匹の鳴き声を翻訳していた。
「……とはいえ、大物っつてもビッグスライムだろ?それなら他の冒険者でも……」
「おい逃げろ!あれは無理だ!」
「キャー!私だって無理よ!」
「こっちも無理!」
「……何か聞こえねぇか?」
「……これ、ビッグスライムじゃ済まないかもしれませんニャン……」
他の冒険者が逃げ惑う声が聞こえ、俺達は不安になり始めるであった……
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(エルリス・フルウィール視点)
「……ほな、言い訳があるなら聞くで?」
「ぐっ……ぐぬぬ……し、仕方がなかったんだ!」
今、ウチの目の前に居るんは王都でもあまり売れとらん商人ことグズマル・ドンド。
こいつが何か知っとるんは確実や。
……せやけど、こんな事する理由が分からへん。
「ウチがあんたに辿り着いたんは、この騒動でやけに動揺しとったっちゅう目撃情報からや。……もし平静を装おっとったら分からへんくらい、証拠もあらへん。」
「だったら……」
「せやけど、会ったら分かる。……あんた、何か知っとるな?」
ービクッ……
「そ、そそそそそれは!」
「そもそも、さっき自分で認めとったからな?大方ウチが証拠固めて来たとでも思ったんやろ。」
「う、うぅぅ……」
よくこんなんで商人やれとったな。
……いや、やれとらんかったから売れとらんのか。
「……で、何したん?」
「し、知らない!……俺はラビリンスに言われて、下水道に石を投げ込んだだけだ!」
ーピクッ……
「ラビリンスっちゅうんは……迷兎将軍かいな!?」
「ああ、王都の外で襲われて……生き延びつつ今後も王都の外で商売がしたかったら、とある石を王都の下水道に投げ込むように言われたんだ!」
「……これは予想外やで……」
まさか、魔王軍まで絡んどるとは……ちょい待ち、石やって?
「ど、どうかご慈悲を……」
「……石って何や?」
「え?」
「どんな石やったんか聞いとるんや!」
ービクッ!
「あ、あああ青く光る石で、ティアラみたいな模様があって……」
「……よりにもよって"女王の忘れ形見"かいな……」
これは大変な事になってもうたな……
「く、女王の忘れ形見?」
「とあるモンスターの魔石をそう呼ぶんやけど、これがまた厄介でな~。……クイーンスライムの魔石や。」
「クイーンスライム……何でその魔石でスライムが増えてんだ!俺はてっきりもっとヤバい代物かと……」
「充分ヤバい代物や!……あれをスライムが吸収してもうたら、その魔石の元になったクイーンスライムまで一気に進化してまうんやからな!」
「そ、そんな……」
あかん、コイツと話しててもこれ以上の情報は見込めへんな……
「……となると、冒険者だけやと不安やな……ウチも急いで向かわへんと……」
手遅れになる前に、発生したであろうクイーンスライムを倒さへんと……
そう考えつつウチは走った。
全ては、あの娘が守った街を壊させへんために……
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(浅山 藤四郎視点)
「な、何だコイツ……」
「……何でクイーンスライムが居るんですニャン!?」
下水道の奥に進んだ俺達は、かなり上下左右に広い空間に出た。
その空間には他の通路からも繋がっていたらしく、先程の冒険者の声もここから聞こえたのだろう。
そして、その中心には下水道の天井を仰ぐ程に大きなスライムが居たのだった……
「クイーンスライム?」
「キングスライムの更に上位種で、キングスライムより大きな体と、大量のビッグスライムを産み出す繁殖能力が驚異の魔物ですニャン。」
「……分裂とは違うのか?」
こう、スライムって分裂して増えるイメージがあるんだけど……
「スライムが分裂したところで、増えるのはレッサースライムだけですニャン。……対してクイーンスライムはビッグスライムを増やすので危険なんですニャン。」
「そ、そうか……とはいえ、動かないな。」
「ええ……ですが、それでもここに来るような冒険者はこれが勝てない相手だと悟ったのでしょうニャン。」
「え?」
「……幸いにも、ここで死んだ冒険者は居ないようですニャン。」
「そ、それは良かった……」
だが、全く動かないのは何でだ?
「……ご主人様は、奴が動かない理由が分かりますニャンか?」
「……いや、分からねぇ。」
「恐らく、体力を温存しているのですニャン。」
「体力を……温存?」
スライムがわざわざそんな事をするのか?
「……ええ、この広大な空間も奴が作り出したものと思われますニャン。少なくとも、壁面が掘られてからまだ新しいですニャン。」
「それで、体力を消費したと?」
「可能性は高いですニャン。……それに、あの巨体では動くだけでも体力消費が大きいので、基本的には産んだビッグスライムに餌を運ばせているのでしょうニャン。」
「な、なるほど……」
……やはり、ナフリーは物知りだ。
だが、それがクイーンスライムを倒せる理由にはならない。
「ご主人様……大変申し訳ございませんが、一気にバフをかけてくださいニャン……」
「……分かった。それじゃあ行くぞ!」
「はいですニャン!」
今、ナフリーにかけてるバフは【体力増強】、【攻撃力上昇】、【魔力上昇】、【防御力上昇】、【MP自動回復】の5つだ。
なら……
「【HP自動回復】、【速度上昇】!」
「……では、行ってきますニャン!」
ービュン!
「お、相変わらず早いな……」
この時、俺はナフリーの勝ちを疑ってなかった。
ーぷるぷる……ニョロニョロニョロ……
「チッ、触手状になって襲って来ますニャンか!」
クイーンスライムは自身の表面の一部を触手状にして、ナフリーに襲いかかる。
「【飛斬】!【飛斬】!【飛斬】ですニャン!」
ースパッ!スパッ!スパッ!
「……うん、やっぱ問題ねぇな。」
クイーンスライムの触手を斬り飛ばして行くナフリーを見て、俺はいつも通りになると楽観視していた。
それが間違いだと知らずに……
「さて、それじゃあ本体を叩くとしますニャン!【飛斬】ですニャン!」
ーブンッ!……ポヨン……
「ニャン!?」
「ハァ!?」
ナフリーの【飛斬】が……弾かれた!?
「……【飛斬】!【飛斬】!【飛斬】ですニャン!」
ーポヨン……ポヨン……ポヨン……
「おいおい、嘘だろ……」
その後も弾かれ続けるナフリーの攻撃に対し、クイーンスライムは再び触手を出して来て……
ーニョロニョロニョロ……ギュルギュルギュル~!
……触手の先端を、ドリルの様に鋭く回転させ始めた。
「【飛斬】!【飛斬】!【飛斬】ですニャン!」
ースパッ!スパッ!スパッ!
「やっぱり、本体から生成された触手は斬れるけど、当の本体は斬れねぇのか。」
やはり核を守ってる以上は防御力もあるという訳か……
「うぅ……これはどうするべきニャンか……」
「……ナフリー!一時退却だ!」
「っ!?ご主人様!?」
「悔しいが、これ以上は無理だ!」
「っ……分かりましたニャン!」
ナフリーは俺の指示に従い、すぐに俺の居る場所まで後退してくれた。
「キシャァ!」
「チュー!」
「よしよし……やはり、あたしが一定距離離れると攻撃を中止するようですニャン……」
「つまり、今のところは防御に徹してるって訳か。」
「ただ、体力が充分になれば普通に動き出すと思われますニャン。もしそうなったら、それこそ王都の終わりですニャン……」
「うう~ん……」
多分、ここに来て逃げ帰った冒険者が茜辺りに伝えてくれればどうにかなりそうだが……そいつ等が茜を知ってる訳もないし、こりゃ無理か……
「……ご主人様?」
「ハァ、俺達も逃げるべきか?」
俺達が茜を連れて来る、もうそれしか俺の頭は思いつかなくなっていたのだった……
ご読了ありがとうございます。
王都の結界、魔物は通れないものの魔石は通せる仕様なので、ラビリンスはそれを利用しました。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。