138.鮫と兎
作者はこの物語の面白さが分からなくなったので、良ければ感想ください!
(笹﨑 光枝視点)
"因幡の白兎"……
確か、海を渡りたい白兎が、鰐……いえ、鮫を騙してその背を渡るといった話でありんしたか?
とはいえ……
ードシャァァァ!
「シャァァァァァク!」
「これ、本当に鮫でありんすか!?」
いくら魔物だとしても、鮫って鳴く生物だったでありんすか!?
……いや、地面を泳いでる時点で常識は通用しないでありんすね……
「ほれほ~れ、逃げ惑うと良いですピョン!」
ーピョン……ピョン……ピョン……
「「「シャァァァァァク!」」」
……あのラビリンス分身体……確か、ラビリンス・ストーリー・イナバと名乗ったでありんすか?
とにかくそいつが地面を跳ねる度に、新たな鮫が誕生してるでありんすね……
「ふぅ……【冥刃十字斬】でありんす!」
ーザシュ!ザシュ!
「シャァァァァァ!?」
ードサッ!
襲いかかって来た鮫型魔物自体は簡単に倒せたでありんすが、それが次から次へと補充されるのが問題でありんすね……
しかも、元となった"因幡の白兎"という物語では鮫の具体的な数が示されていないというのも……ほぼ無限に湧き出ると思って良いでありんすね……
「食らいよし!……"毒爆弾"や!」
ーポイッ……ドカ~ン!
「シャ……シャァァ……」
ードサッー
……エルリスは"毒爆弾"という爆弾を【次元収納】から取り出しては、鮫型魔物の口へと放り込んで倒してたでありんす。
「【光の矢】じゃ!」
ーヒュンヒュンヒュン!……ブス!ブス!ブス!
「シャァッ!?」
ードサッ……
うん、メサイアも楽勝そうでありんすね。
となると……
「エルリス、メサイア、そろそろ仕掛けるでありんすよ!」
「ん?……様子見はもう終わりなんか?……もう少し試作品の品質確認もしたかったんやけど……」
「いや、さっきまで使っておった爆弾は試作品じゃったのか!……あ、妾は問題ないのじゃ!」
「……ウチも問題ないで?」
……念には念をと様子見をしていたでありんすが、やはり茜さんから聞いていた以上の手札はなさそうでありんすね……
「……ラビリンス・ストーリー・イナバ……でありんしたか?……そちらの言う通り、確かにあちき達は前時代の英雄でありんす。……でも、それに勝てるって根拠は何処から出て来るんでありんすか?」
「ピョン?……そ、それは……」
ほら、答えられないでありんす。
結局、前時代の英雄という事を馬鹿にするのが先行して、肝心の根拠はおざなり……
ラビリンスはもう少し賢かった筈でありんすけど、これって"因幡の白兎"をベースにした影響でありんすか?
あの兎、色々と頭が足りなさそうな描写もあったでありんすし……いや、そもそもあの物語自体が諸説あった気もするでありんすし……
まあ、どうでも良いでありんすか。
「……話にもならないでありんすね……」
「う、煩いですピョン!……【和邇砂目堕苦瘤】を食らうのですピョン!」
ータンッ!タタタッ!
「「「「「シャァァァァァク!」」」」」
派手なステップを踏んだラビリンス・ストーリー・イナバが繰り出したのは、鮫型魔物の大群による濁流でありんした。
それを前にあちき達は……
「「「ハァ……」」」
3人揃って溜め息を吐いたでありんす。
「ピョン!?……何ですピョンか、その反応は……」
「……あちき達が自身の命よりも優先して守るべき一般人が居るならまだしも……」
「ここにはウチ等しか居らへんのに……」
「その程度の数の暴力で妾達を殺そうなんて……」
「片腹痛いでありんす!」
「片腹痛いわ!」
「片腹痛いのじゃ!」
流石にあちき達を舐め過ぎでありんすね?
「「「「「シャァァァァァク!」」」」」
「【冥刃十字斬】でありんす!」
ースパスパスパスパスパッ!
「ピョン!?」
迫り来る鮫型魔物の濁流を、あちきは簡単に細切れにしたでありんす。
「ほな、ウチ等も行くで!」
ーガシッ!
「ふぇ?」
あ、エルリスがメサイアの頬をがっしり掴んでるでありんす。
……いやいや、何ででありんすか?
「……【神速】や!」
ーバビュン!……タッ……タッ……タッ……
「なんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
エルリスはメサイアの頬を掴んだまま【神速】を発動し、鮫型魔物を踏み台にしながらラビリンス・ストーリー・イナバの背後まで一瞬で回り込んだでありんす。
「ピョン!?……早っ……」
「傲慢な割に隙だらけ……本体と違って実戦経験が乏し過ぎるわ!」
「ハァ……ハァ……こほん!……自我を別にした弊害じゃろうな……」
ラビリンス・ストーリー・イナバに対し、各々のダメ出しをぶつけるエルリスとメサイア。
そして……
「もう鮫の中で反省しとき!」
「フルスイングなのじゃ!」
ードンッ!
流れでエルリスによる蹴りとメサイアのゴールデンステッキによる振りかぶりを食らったラビリンス・ストーリー・イナバは、そのまま自身が出現させた鮫型魔物による濁流へと吸い込まれ……
「ぷはっ!?……ちょっ……止まれピョン!」
ーぎちぎち……ぎゅうぎゅう……
「「「「「シャァァァァァク!」」」」」
鮫型魔物の群れに飲み込まれたラビリンス・ストーリー・イナバはどうにか止まる様に鮫型魔物に命令を出してたでありんすが、鮫型魔物は知らぬ存ぜぬと言わんばかりに進み続けていたでありんす。
「さて、これでこの先は進むのみでありんす。……後に退けぬ以上、覚悟は決めるでありんすよ?」
「ピョン!?……と、止まれと言ってるのが聞こえないんですピョンか!……この能無しの鮫共が!」
「本当に救えないでありんすね……まあ、今からその能無しの鮫達と一緒に細切れにされるんでありんすねどね?」
「ひっ!……これじゃあ鮫共が邪魔で何も出来ないですピョン……あ、これマズいですピョ……」
ひたすら進み続ける鮫型魔物の群れにぎゅうぎゅう詰めにされながら、ラビリンス・ストーリー・イナバはこちらへと抵抗も出来ずに流されて来たでありんす。
で、あちきの直前まで群れが辿り着いた瞬間……
「【冥刃十字斬・百連】でありんす……」
ースパスパスパパパパパパパパパパッ!
「ピョッ!?」
ーガシャン!
1度に100回にも及ぶ【冥刃十字斬】を放つ、【冥刃十字斬・百連】。
その内の一撃で十字に斬り裂かれたラビリンス・ストーリー・イナバは、驚きの声を上げたでありんす。
「自我を別にした結果、傲慢な割に隙だらけな失敗作が生まれるとは……思ったよりラビリンスもまだまだでありんすね……」
ーバチバチ……ジジジ……
「こ……んな……終わ……り……なん……て……認……め……ま……せん……ピョ……」
ーバチン!
結局、ラビリンス・ストーリー・イナバの断末魔はよくありふれたもので……自身の敗北をどうしても認められないといったものでありんした。
……っと、これでラビリンス・ストーリー・イナバという小悪党との戦いは終わりを迎えたでありんす。
後は……
「ハァ~……まさかカチカチに続いてイナバまでしょうもない最期を迎えるとか……頭が痛くなって来ますピョン……」
「……ふ~ん、無数の分身体を通じて本体が接触を図ってきたでありんすね?」
「まさかの連戦ってマジで言っとる?」
「雑魚戦は面倒なのじゃ!」
突然、無数のラビリンス分身体がこの場に現れたんでありんす。
どうやら、本体が雑魚のラビリンス分身体を通じてちょっかいをかけに来たみたいでありんす。
しかも、口ぶりからして恐らくあちき達以外にも特殊な分身体を1体殺ったグループがあるみたいでありんす。
「……とはいえ、ここまでは想定内ですピョン。……ここまでで殺られた2体は5体の中でも下位の2体ですピョンから。……本当にヤバいのは残りの3体ですピョン!」
「……その減らず口も、すぐに黙る事になるでありんすよ?」
「どうですピョンかね~。……トータス、クロック、そしてムーン……この3体は強いですピョンよ~?」
「それでも……あちきは仲間を信じるでありんす!」
「お好きにすると良いですピョンよ。……ま、現実は変わらないですピョンけどね!」
その言葉を切っ掛けにし、あちき達とラビリンス分身体の集団は衝突したでありんす。
……そして、そうしている間にも……残り3グループの仲間達は未だに戦い続けているんでありんした……
ご読了ありがとうございます。
ラビリンスが作った5体の【異世界兎物語】は、実戦の経験が乏しく魔王軍の将軍クラスよりも遥かに弱いです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。