134.ラビリンス対策会議
いよいよラビリンスとの決着も近付いています。
(浅山 藤四郎視点)
……時が経つのは早いもので、虎人族の里でのアレコレから数日が経過した。
「……恋人が多いと夜が大変だ……」
「だ、大丈夫ガルか?」
連日恋人とヤる事をヤって疲労困憊な俺に対し、心配の声をかける者が1人居た。
「……ああ、シトラスか……」
「見事に燃え尽きてるガルな……」
声をかけて来た者の正体はシトラス。
あの日からこの馬車に滞在する事になった、茜の恋人だ。
と、その時だった。
「何々~?……お兄ちゃんとシトラスちゃんで何の話をしてるのかな~?」
ーぎゅっ
「ア、アカネ!?……いきなり気配もなく抱き付くんじゃねぇガル!」
シトラスの背後から気配もなく近付いていた茜がシトラスに抱き付き、俺達に話しかけて来た。
「いや、大した話じゃねぇよ……つうか、茜はあの日から毎晩シトラスとヤってる筈なのに、よくそんなに元気だな……」
「へへへ~……ま、これ自体は戦乙女化の恩恵だよ♪……それはそれとして今のお兄ちゃん、常人がハーレム築くとこうなるって良い見本になってるよ?」
「悪かったな、常人で……」
茜は【全能の長槍】の副作用で、肉体が戦乙女のそれへと変化しているらしい。
ぶっちゃけ見た目上の変化は皆無なので分かりづらいが、こうしている今も着々と茜の肉体は人ならざる存在へと変わっているとの事だ。
「う~ん……仮に私からお兄ちゃんに言える事があるとすれば、精々ハーレムを築いた自分を恨むんだねとしか……」
「……茜が俺に嫉妬の視線を向けなくなった事を喜ぶべきか、シトラスを恋人にした余裕からウザくなった事を嘆くべきか……」
「ふふふ……リア充人生万歳!」
「……後者だな……」
何かもう、茜が人ならざる存在に昇華しつつある事とかどうでも良くなった。
普通にウザい……
……話題を変えるか……
と、そのタイミングで……
「お~い、茜チャ~ン!」
「あ、正義君!」
「ボクも居るけどね?」
「分かってるよ、司ちゃん!」
「……後、僕も……」
「兼人君も!」
司と正義、そして兼人の3人が、俺達のもとへとやって来たのだ。
「……そろそろ、次の目的地の対策を打つべきだと思ってここに来たっしょ!」
「次の目的地って確か……」
「"迷都 ラビリンス"……私達と因縁深い、迷兎将軍 ラビリンスの本拠地だよ。……あ、今はもう元将軍だっけ?」
「そうガルな……」
迷兎将軍 ラビリンス……
何度も俺達の前に立ち塞がった因縁深い魔王軍幹部であり、現在は魔王軍に反旗を翻した第3勢力。
俺の記憶が正しければ、奴は魔王へと進化するつもりらしいが……
「……本当に、俺達で勝てる相手なのか?……というかそもそも、"迷都 ラビリンス"に入るってのは奴の腹の内に入るってのと同じじゃ……」
普通に考えたら、勝ち目なんて万に1つもねぇ。
迷都に足を踏み入れた瞬間、何らかの罠が作動して即死してもおかしくねぇ訳だし……
「うんうん、その辺も詳しく話し合おっか?……お兄ちゃん、皆を呼んで?」
「あ、ああ……」
……茜はここに全員を呼ぶように言った。
俺は取り敢えず、それに従うしかなかった……
そして数分後……
「で、ウチ等が呼ばれたって訳かいな……」
「完全にアカネが指揮を担っておるのう……」
「……まあ、これも全知のお陰ではあるけどね?」
皆を集めた直後、エルリスさんとメサイアさんが何やら呟いていた。
……ちなみに、茜は現在強い神器を使えなくなっているものの、未だに欲しい知識を得る事は出来ていた。
「……いやはや、光枝さんからの書き置きで知ってはいましたが……これ、僕のスキルは要らない感じですよね……」
……なので当然、自身の存在意義が半分程消し飛んだ兼人はいじけた。
「いやいや、普通に兼人君のスキルも必要だよ!……というか、こっちの方もやっぱり知識を手に入れる程に戦乙女化が進むみたいで……」
「……茜さん、今ってどの程度戦乙女化が進んでますか?」
「えっと……50パーぐらいは……」
「……そ、そうですか……やはり、僕に残された価値はもう光枝さん関係だけでは?」
あ~……もう駄目だろうな。
兼人は完全に諦めた様子だ。
……あんだけ無茶苦茶やって、かつ現在進行形で集落1つを異空間に飛ばして、その上でラビリンスの知識を引っ張って来ても50%って……
まだ全然余裕あるだろ!
「こほん、話を戻して……ラビリンス対策だけど、ひとまず今から一気に喋っていくよ?」
「……最悪、俺チャンが覚えとけば後で皆に教えれるっしょ!」
「ありがとね。……じゃあ喋ってくけど……まず、迷都内に仕掛けられた罠はそこまで警戒しなくても良いよ。……今のラビリンスは迷都内部のあらゆる仕掛けを自身の魔王化のための演算回路として使っちゃってるから。……でも、その代わりに警備用の分身体はじゃんじゃん製造されちゃってるし、他より強い分身体も5体程作られてるね。……この5体は他の分身体と違って個別の自我を持ち合わせてるし、何より私達の世界に有った兎が登場する童話なんかが能力のベースになってる特殊個体と来た。……ここで私達の世界若しくは私達の世界によく似通った世界を観測出来てるから、ラビリンスの魔王化はだいぶ進んでると見て間違いないかな……あ、5体の分身体については、それぞれ"かちかち山"、"因幡の白兎"、"月の兎"、"ウサギとカメ"、そして"不思議の国のアリス"がベースになってて……各々の能力も今から言っていこうと思うんだけど……」
「ちょ、ちょっと待つっしょ!……俺チャンは何とか追い付けてるけど、他の皆はチンプンカンプンになってるっしょ!」
えっと……何だって?
罠だの分身体だの童話だの……ちょっと情報過多が過ぎるんだが?
「あ、ごめ~ん!……とはいっても、噛み砕いて説明するのも大変だな~……」
結局、この後俺達は茜から詳しい説明を受けつつ、その対策について話し合う事となった。
……ほんと、勝てると良いんだが……
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(ラビリンス視点)
『……演算順調……管理者"ラビリンスー5002"の完全魔王化まで残り……』
鳴り響く機械音声……
それを聞きながら、私は演算を続けますピョン……
「……ようやく、ここまで来ましたピョン……この世界に辿り着いた当初から数えて……何百年になるんですピョンっけ……いや、それも今となってはどうでも良い事ですピョン……」
この世界に降り立ち、夢都を乗っ取って数百年……
ようやく、私が魔王へと進化する道筋が出来ましたピョン……
『同時進行中の平行世界観測率……0.1%……』
「……う~ん、こっちの先は長いですピョンね……」
それはそうと、同時進行で進めている平行世界の観測については思う様に進まないですピョンね~。
現時点で観測出来たのは、あの忌々しい勇者の皆さんが元居た世界を始めとした、特段面白くもない平行世界ばかり……
この世界と少しでも繋がりのある世界を起点にしているとはいえ、碌な世界がないですピョン……
と、そう思っていた瞬間……
ーピピ~ッ!
『報告事案……管理者の直近番号に当たるラビリンスが存在する世界を発見……対象ラビリンスの機体番号は"ラビリンスー5003"……世界の情報は……』
「えっと、何々……お、これは面白そうな世界ですピョンね……」
まさか、私のすぐ後に製造されたラビリンスを見つける事になるとは……しかも、その世界がこれまでに見つけた平行世界に比べて面白いの何の……
何せ、男女比が偏り貞操観念が逆転している上に、異能力が当たり前の様に存在する世界なんですピョンから。
『世界観測実行……"ラビリンスー5003"の座標割り出し中……完了までの時間は……』
「……う~ん、面白そうな割に直接観測するまで時間がかかりそうですピョンね~。……ま、気長に待ちましょうピョン……」
そうして、私は自身の姉妹機がどの様な生活をしているのか観測するため、その場で座標の割り出しが終わるのを待つのでしたピョン……
ご読了ありがとうございます。
最後の別個体ラビリンスについては、作者の別作品にて登場している個体になります。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。