129.精鋭中の精鋭
藤四郎と恋人達とのイチャイチャ描写は、多分本編完結後までありません。
(ロウル・バルガイア視点)
「むむむ……」
虎人族の里付近の岩場にて待機していた私めは、そう呟いて目の前の景色を再確認しておりました。
何せ……
「「「「グガァァァァァァァ!」」」」
……私めの前には、見上げる程に高いサイクロプスの大群が立っていたのですからな。
「単眼の人喰い巨人、サイクロプス……動きが鈍重な代わりに一撃の重みが厳しい魔物だと聞いておりますが……いえ、考えるだけ無駄ですな……」
「グガァァァァァァ!」
見れば、1体のサイクロプスが手に持った棍棒を振り上げてこちらに走って来ておりました。
「ふむ、そう来ますかな……」
「グガァァァァァァ!」
ーブンッ!
そうしてサイクロプスは何の躊躇もなく、私めへと思いっきり棍棒を振り下ろして来ました。
ただまあ……
「私めには効きませぬぞ!」
ードシィィィィィン!
「グガァ!?」
……呆れますな~。
サイクロプスの攻撃は確かにその辺の魔物よりは重いですが、同時に私めがかつて相対したミノガルやルササの攻撃に比べれば軽いの何の。
……ふむ、これは楽勝ですな。
「「「「「グガァァァァァァァ!」」」」」
ードシドシ……
「おっと、それ程の巨体となれば集団戦は苦手でしょうな。……何せ、私めを狙うだけで仲間と体がぶつかるのですからな!」
サイクロプスにとってその巨体は、確かに勝負を有利に進める利点なのでしょうが……これが集団で1つの獲物を狙うとなると仲間同士でぶつかってそれどころではなくなるだけですぞ。
「グガァァァァァァァァァ!」
「そして、巨大な相手は往々にして体を支える部位を攻撃されるのに弱いのが定石ですぞ……という訳で、ふんっ!」
ーブンッ!……ドンッ!ボキボキボキッ!
「グガギャァァァァァ!?」
先程棍棒を振り下ろしたサイクロプスの右足を、私めは思いっきり盾でぶん殴りましたぞ。
すると、殴られたサイクロプスの右足からは骨が折れて粉砕する音が聞こえました。
「まだまだ……ふんっ!」
ーブンッ!……ボキボキボキッ!
「グガギャァァァァァァァァ!?」
「「「グガギャッ!?」」」
ードシィィィィィン!
私めが残る左足も同様に粉砕すると、サイクロプスは絶叫した後に後続の仲間を巻き込んで転倒しました。
「ほれ!ほれ!ほれ!ほれ!」
ーグシャッ!グシャッ!グシャッ!グシャッ!
私めはそのまま転倒したサイクロプスの上に立ち、その頭蓋を盾で潰して回りましたぞ。
「グガギャァァァァァ!」
勿論、未だ倒れていないサイクロプスは私めを排除しようと動きますが……
「ふんっ!」
ーブンッ!……ボキボキボキッ!
「グガギャァァァァァァァァ!?」
「「「グガギャッ!?」」」
ードシィィィィィン!
その足も粉砕してしまえば、サイクロプスは再び仲間を巻き込んで盛大に転倒しました。
「さて、それでは地道に片付けるといたしますか!」
その後、私めはひたすらサイクロプスを転倒させては頭蓋を潰し、また転倒させては潰しを繰り返すのでした……
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(ダレス・ルルペン視点)
「……う~ん、これは何の冗談っすか?」
虎人族の里付近の森の中で待機していた私の前に現れた魔王軍の刺客、それは……
「「「「「キヒヒヒヒ……」」」」」
「……森の中でアルラウネと戦うとか、マジ勘弁っすよ……」
……大量のアルラウネだったっす。
上半身が緑肌の美女で、下半身が大きな花になっているアルラウネ……
例え上半身がただの疑似餌だとしても、並みの男ならホイホイ誘惑されそうっすね……
……っと、余計な事は考えない方が良さそうっすね。
「キヒヒヒヒ……」
ーシュルシュルシュル……
アルラウネは蛸足の様な根を地面に這わせて移動しつつ、細い触手の様なツルをこっちへと伸ばして来たっす。
とはいえ……
「私だって馬鹿じゃないっすよ!」
ービュン!……ぶしゃっ!
「「「「……キ……キヒ?」」」」
私に対してツルを伸ばしていたアルラウネの内の1体の頭が突然吹き飛び、他のアルラウネは動きを止めたっす。
「……うん、この程度なら"自動追尾式荷電粒子砲"で充分っすね!」
アルラウネの頭を吹き飛ばしたのは、私の"自動追尾式荷電粒子砲"による攻撃だったっす。
「「「「キヒィィィ!?」」」」
「……その様子だと、お前達は奇襲担当ってところっすか?……だとしたら愚かっすね~……」
私の実力を見極められないなんて、とんでもなく愚かっす。
後、アルラウネって何故か疑似餌の役割を果たしてる筈の人型部分に脳とかがあって、弱点になってるのも終わってる要素っす。
つまり……
「キ……キヒャァァァァァ!」
「……大方、他の魔物を囮にしつつ、別方向から奇襲を与えるって作戦だったんすかね……ま、もう関係ないっすけど……」
ービュン!ビュン!……ぶしゃっ!ぶしゃっ!
「キヒィ!?」
その後、私はほぼ作業感覚でアルラウネを倒し続けたっす。
……いやマジで、魔王軍の雑兵はこんなのしか残ってないんすか?
そう思いたくなる程、アルラウネ達は弱かったっすけど……将軍クラスと戦ったせいで麻痺してるだけっすよね、きっと……
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(ダルク・ルルペン視点)
「うぅ……沼地の担当とは嫌な役割デスね……」
私が魔王軍の刺客を迎え撃つ担当となった場所には、虎人族の里付近の湿地帯デシた。
一応、湿地帯特有の根が高い樹木こそ幾つか生えていマスが……あまり好ましい場所とは思えマセんね。
……さて、それはさておき……
「キ……ケ……」
「キケ……ケ……」
「キケケ……」
私が迎え撃つ筈の魔王軍の刺客だったアラクネの大群は、私の目の前で底無しの沼地にハマって動けなくなっていマシた。
「ふむ……木々の間に糸を張って渡っていたのを、生成したクラーケンの足で片っ端から落とすだけで行動不能とは……楽勝過ぎマスよ……」
勿論、並みの相手ならこのアラクネ共も余裕で避けたのデショうが……私の蛸足のスピードは並大抵じゃありマセんからね。
加えて、私の体表を擬態が得意な魔物のソレにしてしまえば……例えアラクネの大群が相手でも近付いた上で簡単に落とせマス。
「キケ……ケ……」
「はい、これで貴女方は終わりデス。……自分達の力不足を恨んで死んで貰えマスか?」
ーバクン!
私はそう言いながら、蛸足に生成した幾つもの口を用いてアラクネ共を補食しマシた。
……アラクネ自体はあまり吸収して使えるタイプの魔物ではありマセんが……まあ、一応は取っておきマショう。
そうして私は少しずつ、底なし沼で動けなくなったアラクネを補食していくのデシた……
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(浅山 藤四郎視点)
「えっと、このタイプの呪いには……この魔術式をこうしてああして……こうするのが好ましいかのう?」
「ウチに聞かれてもな~……でも、その線で大丈夫やと思うで?」
「……俺には付いて行けねぇ次元の会話だな……」
俺の前で繰り広げられる、メサイアさんとエルリスさんによる呪いの解析。
その会話はともかく、解析している呪いの内容は俺が理解出来る範囲を越えていた。
「う~ん……なまじ解析される事を警戒してか、わざと魔術式がぐちゃぐちゃになっておるからのう……作動させたり放置させておく分には問題ないのじゃが、下手に解呪しようとすると……」
「流石は魔王軍の宰相っちゅうところやな……せやけど、これで音を上げるメサイアはんやないやろ?」
「当たり前じゃろ!……妾を誰だと思っておる!」
「ウチのたった1人の悪友、メサイアはんやろ?」
……本当に大丈夫なんだよな?
いや、大丈夫なんだろうが……
後、刺客を止めるために行った皆も大丈夫だろうか?
「……トウシロウ、何か心配事でもあるのかのう?」
「え?」
「表情で丸分かりじゃぞ?」
「まあ、大方他の皆の事やろうけど……そんな心配せんでも問題はあらへん。……何せ、あの面子は殆んどが将軍クラスと戦える精鋭中の精鋭や……1番心配なナフリーはんでも、今更雑魚程度に遅れを取ったりはせぇへんやろうし……」
「だと良いんだが……」
精鋭中の精鋭……
そうだよな……俺達は今まで、それだけの修羅場を潜って来た訳だし……
……うん、俺は俺のやれる事をしよう……
「……トウシロウ、それはそうとそろそろスキルによる支援を頼むのじゃ!」
「おう、任せとけ!」
そうして俺は、ひたすらメサイアさんにバフを与え続けた。
それが俺の、やれる事だからこそ……
ご読了ありがとうございます。
別に魔王軍の雑兵も弱くはないんですが、勇者パーティーの面々が強過ぎて霞んでいます。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。