127.千差万別な刺客
もし何か不満点があれば、感想に書いてください。
(金村 正義視点)
……俺チャン達が戦いを始めた相手……そいつは体から不死鳥の翼と尾羽を生やした、上半身裸の色黒男だった。
茜チャンから聞いた情報から察するに、ほぼ確実に炎鳥将軍 フェニルムだろう。
そう、頭で情報を整理していると……
「あ~もう、こういう仕事って怠いし疲れるしで面倒臭いんだよな~……ってな訳で食らえ~、【炎羽乱雨】~!」
ーシュバババババババ!
「「っ!?」」
……フェニルムから俺チャン達に向けて、無数の燃え盛る羽が幾つも放たれた。
ードカドカドカ~ン!
「ちょっ……避けるなよ~……」
「いやいや、避けるに決まってるっしよ!」
「……まあ、やられたからにはやり返すだけさ!……【美しき神弓】10連射!」
ーヒュンヒュンヒュンヒュン!
……俺チャンと司チャンは、何とか燃え盛る羽を回避して次の行動へと移行する。
まず、手始めに司チャンの攻撃で小手調べだ。
すると……
ーバシュ!バシュ!バシュ!
「……チッ……本当に不死身な訳ね……」
司チャンが放った攻撃は、確かにフェニルムに着弾した。
しかし、着弾した光の矢はフェニルムの肉体をいとも簡単に貫通し、やがて消滅するのみだった。
ついでに言うと、フェニルムの肉体を貫通した筈の穴もすぐに再生しやがったし……
これは……当初の予定通り、俺チャン達はフェニルムの足止めが限度っぽい……
「ふむふむ……茜君からフェニルムの足止めを頼まれた時は頭を抱えたが……本当に敵としては嫌なスキルだと言わざるを得ないね……」
「フェニルムって攻撃力はそこまでだけど、不死身のスキルがエグいみたいだし……足止めとはいえ、これの相手は本気で行かなきゃ駄目そうっしょ……」
「そうかそうか……ところで正義君、フェニルムに洗脳って出来そうかい?」
「ん~……生憎、ラビリンスとの初戦と違って洗脳可能範囲に入った瞬間に丸焼きにされる未来しか見えないっしょ……」
俺チャンのスキルで相手を洗脳する場合、ある程度相手の近くに居る必要がある。
こいつに幻を見せて撹乱するって手も考えたけど、下手にあちこち行かれても困るからこの案はナシで。
「……であれば、やはり……」
「ここが勝負どころっしょ!」
いい加減、腹を括るか……
本気でこいつを足止めするしか、道はない訳だし?
「さて、本気で行くか……【美しき王国】……からの【絶対王政】!」
「俺チャンも……【ありきたりな英雄譚】っしょ!」
司チャンは【美しき王国】で姿を変え、俺チャンも【ありきたりな英雄譚】を発動する。
「フェニルム、自らの罪に向き合う時だよ……【断罪の落星】!」
ーヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!
司チャンが持つ細剣の先から発射される無数の光が、フェニルムへと向かって行く。
加えて、今この場は俺チャンがさっき発動したばかりの【ありきたりな英雄譚】の効果範囲内。
……流石に、少しは事態の好転に繋がって欲しいところだ。
「ふぁ~……」
ーバシュ!バシュ!バシュ!バシュ!……
「……ねぇ、正義君……ボクの目が正しければ、フェニルムはボクが放った【断罪の落星】を食らいながら欠伸をしているんだけど……」
「間違ってはないっしょ……にしても、これでも駄目な訳~?」
どうも【断罪の落星】は必中攻撃と攻撃対象以外には無効という特性がある点さえ除けば、普通の攻撃とそう変わらないらしい。
……つまり、いくらこれで攻撃し続けてもフェニルムは殺せないって事か……
「……でもまあ、時間稼ぎにはなったみたいだね……」
「ま、俺チャンとしてはこれでもどうかって感じだけど……物は試し、よろしくお願いするっしょ!」
「ふむ、任されたでありんす!」
ースパッ!
「ふぇ?」
【断罪の落星】を食らっても尚、再生を続けていたフェニルム。
ただし、その背後に突如として現れた光枝さんによって振るわれた大鎌の攻撃を受け、フェニルムの肉体は上半身と下半身で泣き別れになった。
「……あちきの攻撃を受けて、生き残った者は居ないでありんす……って、格好良く言いたかったんでありんすけど……」
「そんな事、俺っちに言われてもな~……あ~あ、面倒臭い……」
ーボォォォォォ!
「これは……」
「はい、復活~……でも面倒臭い~……」
「……炎に包まれて再生って……本当に不死鳥みたいでありんすね……」
光枝さんの攻撃を受け上半身と下半身で真っ二つにされた筈のフェニルムだったが、当の本人は意にも介さずに肉体を炎で包み、やがて元通りに再生させてしまった。
「……俺っちは別に死なない訳じゃない……ただ、死んですぐに再生して蘇生してるだけなんだな~……」
「……これは難敵っしょ……」
どんな攻撃を与えても再生するフェニルム……
これはスキルを封じるしか勝つ道ないのでは?……という無謀な勝ち筋しか思いつかない辺り、もう手詰まりだな……
「……ボクはまだ行けるよ!」
「あちきもでありんす!」
「……俺チャンの心、頼むから折れないで欲しいっしょ!」
俺チャン達の仕事はフェニルムの足止め……
改めてそれを再確認しつつ、俺チャン達は自分達の仕事を全うするために無謀な戦いへと挑むしかなかったのだった……
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(ナフリー視点)
「ブヒィ……ブヒブヒ……ブヒヒヒ……」
「ブヒィィィィ!」
「ブッヒッヒッヒッ……」
……アカネ様に指示された通りの場所に陣取っていたあたしの前に現れたのは、軽く数十体以上は居るであろうオークの群れだったニャン。
とはいえ……
「……これが、虎人族の里に送られて来るという刺客ですニャンか?……にしては、力不足感は否めないですニャンね……」
目の前のオーク達は、お世辞にも特別強いという感じがしなかったニャン。
寧ろ、ここで差し向けられる刺客としては弱い。
そう思っていると……
「ブヒヒヒヒ……オデ……ブヒル……コノサト……ホロボシテ……ショウグン……ナル……」
そこそこ喋れるオークが群れを率いている事に気付いたニャン。
「……う~ん、タブルドに比べれば知能は高そうですニャンが……大方、使い捨ての駒レベルですニャンかね……」
なまじタブルドと相対した経験があるからこそ、ブヒルと名乗るオークが率いるオーク小隊を見ても、そこまで驚異には感じなかったニャン。
「ブヒッ!?……オ……オデタチ……ナメルナ!」
「いやいや……この程度の相手なら、ご主人様の助力がなくても倒せますニャンよ?」
「ブヒィィィィ!……オマエ……コロス!」
「……殺せると良いですニャンね~……」
ああ、あたし……死地を潜り抜けすぎてちょっと余裕が出てるニャンね……
少なくとも、このレベルのオーク程度では怯まない程には……
と、あたしが余裕の態度で居ると……
「ブヒヒヒヒ!……ソウ……イッテラレルノモ……イマノウチダ!……オデタチ……スネイラサマカラ……ヒミツヘイキ……モラッテル!」
「っ!?」
なるほど……
いくら何でもこんな雑魚を刺客として差し向けて来るとは思ってなかったニャンが……秘密兵器を抱えさせているという訳ニャンか……
「オイ!……ツレテコイ!」
「「「「「ブヒィィィィ!」」」」」
そうしてブヒルは、配下のオークに何かを連れてくる様に指示したニャン。
その直後……
「ブヒブヒ!」
「ブッヒッヒッヒ……」
ージャラジャラジャラ……
「ブルルルルル……ブルォ!」
……それは、顔を魔道具らしき物で覆われた1頭の馬らしき生物……
ただし体色は紫、頭にはヤギの様な立派な角が2本生えていて……確か、これはバイコーンという神獣だった気がするニャン。
「スネイラサマ……イッタイダケダガ……シハイカ……オイタ……コノマドウグ……アルカギリ……メイレイ………キキツヅケル……」
「えっと……その魔道具、もう見るからに壊れる寸前ですニャンよ?」
「「「「「「「「「「ブヒ?」」」」」」」」」」
バイコーンの頭部を覆う魔道具は、見るからに壊れる寸前だったニャン。
そして案の定……
ーピキピキピキ……
「ブルルルルル……ヒヒィィィ~ン!」
ーバリィィィィィン!
「「「「「ブヒィィィィ!?」」」」」
……魔道具を内部から破壊し、魔王軍の支配下から逃れたバイコーン。
その目は誰が見ても怒りに支配されていると分かるものだったニャン。
「ブルルルルル……ヒヒィィィ~ン!」
「……多分、ここまで見越して差し向けて来ましたニャンね?……ハァ……あのバイコーンに話が通じると良いのですニャンが……」
逃げ惑うオーク達を蹴散らしながら、暴れまわるバイコーン。
一応協力出来る可能性を考え、あたしは暴れるバイコーンのもとへと足を進めるのだったニャン……
ご読了ありがとうございます。
ナフリーも着実に強さを得ています。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。