126.更なる代償
今の茜はこの作品における勇者の中で最強です。
(シトラス視点)
「じゃ、戦ろっか♪……【戦乙女】の神器12番、【蒼天の翼】!……そして【戦乙女】の神器2番、【雷神の大槌】!」
ードンガラガッシャ~ン!……バチバチバチ……
「ふ~ん……見た感じ、前よりもそのハンマーを出した時に食らう怪我が減ってるガルな~?」
「うん、伊達に何回も死にかけてないからね!」
どうも、アカネは無駄に時間を過ごしてた訳じゃなさそうガルな~。
……でも、そう来なくちゃ困るガル!
「その眼帯についても深くは聞かねぇガルが……オレの攻撃は片目で対処出来る程、甘くねぇガル!」
ーブン……ブン……ブンッ!
オレは軽く自分の得物……キングクラッシャーを数回振り回すと、そのまま勢い良くアカネに向けてぶん投げたガル。
勿論、並みの相手ならこれの直撃で死んでもおかしくねぇガルが……
「おっと、そう来るなら……打ち返すだけだよ!」
ーブンッ!……ガシィィィン!
アカネは自身に飛んで来るキングクラッシャーを、あの"雷神の大槌"とかいう巨大なハンマーで打ち返しやがったガル。
……とはいえ、ここまでは想定内ガル。
「……そうすると思ってたガル!」
ータッタッタ!……ガシッ!
「へぇ~、打ち返したハンマーを走ってキャッチしちゃうか~♥️……やっぱり素敵だね♥️!」
オレは走りつつ打ち返されたキングクラッシャーを回収し、それを見たアカネは頬を紅潮させて恍惚とした表情を浮かべてたガル。
……そして、オレは思いっきりキングクラッシャーを振りかぶり……
「ガルァァァァァ!」
ーブンッ!
「よし来た♥️!」
ーブンッ!
そうしてオレが放ったキングクラッシャーによる振りかぶり攻撃に、アカネは以前と同じく自身の巨大ハンマーによる振りかぶり攻撃を当てたガル。
すると……
ードンガラガッシャァァァァァァァァァ~~~ン!
「ガルァ!?」
「うぐっ!」
巨大ハンマー同士がぶつかった影響で発生した、雷で出来たドーム状の光と激しい雷鳴にオレ達は呑み込まれたガル。
……が、
「……まだまだガルァァァァァ!」
「……私だってぇぇぇぇぇ!」
オレもアカネも、まだ折れてなかったガル。
寧ろ、まだ始まったばかりと言うべきか……
「ガルァァァァァァァァ!」
ーブン……ブン……
「【戦乙女】の神器14番、【最硬の大盾】!」
アカネは【最硬の大盾】とかいう大きな盾を出したガルが、その程度でオレの攻撃を防ごうなんて……片腹痛いガル!
「歯ぁ食い縛れガルァ!」
ーブンッ!
オレは思いっきりキングクラッシャーを振りかぶり、アカネの盾に向かってぶつけたガル。
……しかし、そこで……
「なんちゃって♪……あらよっと!」
ーポイッ……ドゴォォォォォン!……バ~ン!
アカネはいきなり盾を手放し、その場でアクロバティックに真上へと軽く飛んだガル。
当然、オレの攻撃は持ち主が居なくなった大盾のみを遥か遠くにぶっ飛ばすだけの結果に終わり、思いっきり空振りしたも同然なオレのすぐ目前にまでアカネは迫って来ていたガル。
……つっても、これで食らってやる程オレは甘くねぇんガルよ!
「オレを舐めんなガルァァァァァァァァ!」
オレは思いっきり振りかぶった後の隙だらけな体勢を立て直すため、敢えて力を緩めずキングクラッシャーをそのまま振り続けて目前のアカネに再度キングクラッシャーを当て……
「……ほい!」
ードシン!
「ガルァ!?」
……え?
な、何が起こ……
いや、オレはアカネに攻撃を当てようとしたガル。
そしたら、アカネは【雷神の大槌】をキングクラッシャーの側面に真上から軽くぶつけて少しだけ自身の高度を上げ、その直撃を回避しやがったガル。
「う~ん、1回転させちゃうか~♥️……やっぱり惚れ惚れしちゃう♥️!」
「……ふ、ふざけんなガル!」
「ん?」
「今の攻撃への対応、それは攻撃の角度からタイミングまで分かってねぇと出来ねぇ筈だガルァ!」
振られる巨大ハンマーに自身の巨大ハンマーをぶつけて回避する……
そんな芸当、そう簡単に出来る筈が……
「う~ん、説明は後にしても良い?……何かズルしてるみたいで罪悪感が……」
「罪悪感って……まさか、新しい力でも目覚めたんガルか?」
「そうだね~……あはは……」
……新しい力……そうガルか……
だったら、それも正面からぶっ飛ばしてやるガル!
「ハァ……じゃあ、これはどうガルァ!」
ーブン……ブン……ブンッ!……タッタッタ!
「……ま、そう来るよね~♥️……」
どんな力を得たのか分からねぇアカネに対し、オレは再びキングクラッシャーをぶん投げて走り出したガル。
「ガルァ!……何とかしてみろガルァ!」
「……ならお言葉に甘えて~♥️……ふん!」
ーブンッ!……ドシィィィィィン!
さっきとは異なり、アカネは飛んで来たキングクラッシャーに対して【雷神の大槌】を真下へ振りかぶって地面へと埋め込んだガル。
……でも、それだって選択肢に入ってたガルァ!
「すぅ~……武器が駄目なら拳で勝負ガルァァァァァァァ!」
オレは敢えてキングクラッシャーを回収せず、拳での勝負を申し込んだガル。
……オレだって大人げねぇとは思うガルが、いくら何でもちょっと見てねぇ内にアカネが強くなり過ぎてるガル!
「うんうん♥️!……そう来なくちゃ♥️!」
アカネ、どうして拳での勝負でも笑ってるガル?
その余裕は、どこから出るガル?
「ガルァァァァァァァァ!」
「ふふっ……【戦乙女】の神器17番、【砕岩の籠手】!」
ーカチャ……
「ガルァ!?」
その神器、籠手まで有ったんガルか……
だが、関係ねぇガルァ!
「死んでも文句は言うんじゃねぇガルァァァァァァァァ!」
「大丈夫、死なないから♥️!」
ーパシッ!パシッ!パシッ!
「ガルァァァァァァァァ!?」
な、何で……
何でオレの拳をそんな軽くいなせるんガルァァァァァァァ!?
「あ、やっぱりビックリしちゃう♥️?」
「な、何でオレの拳をそんなに軽く……」
「あ~、えっと……実は、この眼帯を着けてる方の眼球を代償に捧げて、最上級の神器と現在進行形で色んな知識を得れる様になったんだけど……」
「こ、この時点で驚く事だらけガル……」
「更に副作用があったっぽくて、左目を代償にしてから時間が経つごとに、肉体が人間から戦乙女のそれになっちゃってるみたいで……あ、スキル名じゃない方の戦乙女って分かる?」
「……一応、そっちの世界の認識と一緒かは知らねぇガルが、似た様な概念はあるガル。……何でも、昔の勇者がもたらした情報に混ざってたとか……」
「あはは……そっかぁ……」
戦乙女……
神に仕え、来るべき戦争のために戦士達の魂を特別な地へと導くとかいう異世界の神性存在……
こっちの世界にも居る、天使や死神とも似た立ち位置の奴等と聞いてるガルが……
「そう、ガルか……」
「うん……そういう訳で、今の私はどんどん人間じゃなくなってる……」
「……そうまでして、この世界とこの世界に住む奴等を救いてぇんガルか?」
「そうだよ?……後、その救う対象の中にはシトラスちゃん……君だって居るんだからね♥️?」
「……本当に、何処までも変な奴ガル……」
オレが今更、許される訳でもねぇガルのに……
いくら直接人類側の奴等を殺してねぇとはいえ、オレが魔王軍に居たという事実は重いガル……
間接的に、オレの存在自体が被害に繋がった事例だってあるかもしれねぇガル……
なのに、こいつは……アカネは、オレすら救う対象にしてるガル……
惚れてるとはいえ、そんな判断を下すなんて……
……愚かとしか思えねぇガル……
「あ~!……どうせ私の事を愚かだとか思ってるでしょ♥️!……そもそもシトラスちゃんは被害者だし、誰も殺してないし……」
「ハァ~……何を言っても無駄ガルな……」
「む~!……私が間違ってるみたいじゃん!」
「……答えは、勝負の後に分かるガルよ……」
魔王軍として罪悪感を抱き続けるか、戦いの中でオレが死ぬか……
そのどちらかしか、オレの結末はないと思ってたガルが……アカネと出会ってから、第3の結末が生まれたガル。
「……後悔はしないようにね♥️?」
ーガシッ!
「それはこっちの台詞ガル!」
ーガシッ!
お互いに示し合わせた訳でもないのに自身の得物であるそれぞれの巨大ハンマーを持つと、再び向かい合ったガル。
……泣いても笑ってもこれが最後……
さあ、オレをアカネの恋人にしてみろガルァ!
……そう心の中で叫んだオレは、再度最後の勝負に挑んだガル……
ご読了ありがとうございます。
ちょっとずつ執筆ペースは落ちて来ています。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。