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121.ケールを発つ日

取り敢えず、この更新を最後にひとまず別の作品の更新に移ります。


少ししか更新せず、申し訳ございません。

(浅山 藤四郎視点)


ケールが魔王軍の襲撃を受けてから、数日が経過した頃……


「ハァ……結局、僕が調べた限りでは元の世界に戻る方法が書かれた書物は見つかりませんでした……」


兼人が思い詰めた様な表情をしながら、そう話しかけて来た。


「そ、そうか……」


「……本当に僕達、帰れるんですかね……」


「よ、弱気になるな!……俺達が元の世界に帰る方法は多分、何かある筈だ!」


兼人はどうも、だいぶ弱気になっている様子だ。


まあ、無理もない。


ここまで来ても、元の世界に帰れる方法が全く見つからないのだから。


「藤四郎さん……僕は今回、元の世界に戻りたい理由が1つ増えたんです。……光枝さんに、今の発展した日本を見せてあげたいって理由が……」


「……良いのか?……ミツエさんがこっちに召喚された時の知り合いはとっくに死んでるだろうに……」


「ええ。……筆談を介して、本人には確認を済ませてますから……」


「なら良いんだが……」


あのケールが侵攻された日、兼人はある方法でミツエさん……いや、光枝さんを人間として蘇らせた。


しかし、その代償として兼人か光枝さんのどちらかしか現世に留まれなくなってしまったのだ。


なので兼人はもう2度と、生きている間に光枝さんと会う事が出来ないとの事らしいのだ。


「……僕は今回、人を好きになる事には楽しかったり嬉しかったり側面がありつつも……同時に、悲しい側面もあるのだと身をもって実感しました……」


「……かける言葉が見つからねぇ、すまん……」


恋を知らなかった兼人がようやく恋を知れたと思ったらこれとか……


運命ってのは残酷だな。


「……とはいえ、筆談では会話が可能なので交換日記等は可能ですが……」


「……その顔、何だかんだ光枝さんとの交流を楽しんでるみてぇだな?」


「はい。……筆談や録音等でしかお互い語り合えませんが、それはそれで楽しいですから……」


「だったら良かったよ……」


さて、心配だったから少し話してみたが、何だかんだ兼人は大丈夫そうだな。


……にしても、やっぱり元の世界に戻る方法が見つからなかったのは痛いな……


と、そんなタイミングだった。


「ハァ……ようやく検査入院も終わってくれたよ……」


「茜か。……寧ろ、全身がボロボロだったのを短期間で治療したんだから、これでも早い方だろ?」


「そうだけど……お兄ちゃんは、気付いたら培養槽みたいな場所に閉じ込められてた私の気持ちなんて分からないでしょ!」


そう。


今回のケール防衛戦で最も怪我の度合いが酷かったのが茜だった。


全身の肌は火傷で爛れ、筋肉はボロボロ、更に骨折も少なくなかったとか……


「……どうしてこう、勇者に選ばれた奴等はそんな無茶が出来るんだか……」


「お兄ちゃんだって、恋人のためなら何でもやってるでしょ!?」


「恋人でも何でもない奴等のために命を投げ捨てようとするから言ってるんだ!……確かに、俺だって罪の無い誰かが殺されるのは胸糞悪く感じるが……それにしたって、限度が……」


「うん、分かるよ?……でも、どうしても見捨てられないんだよ。……今回も何とか死者は出さずに済んだけど、ある意味ケールっていう科学技術がSFレベルの街だったから何とかなった感もあるし……」


……だからって、茜が死んだら元も子もないだろ……


そう言おうとして、言えなかった……


……茜達が守った者達も、誰かにとっての大切な人だと思うと……


そうして俺が思い悩んでいると……


「お、藤四郎チャン達じゃん!……今日ケールを発つってのに、そんな暇そうにしてて良い訳?」


正義(ジャスティス)がそんな風に話しかけて来た。


「あっ……そういや、今日出発するとか昨日の朝には言われてたっけ……」


「思い返してみたら、本当に凄い街だったよね……」


「僕達の異世界観が壊れるかと思いましたよ……」


……思い出したが、今日はケールを発つ日だっけか。


俺は殆んど自室から出なかったから、元の世界へ帰りたいという気持ちを維持出来たが……普通にケールを楽しんでた茜達が未だに元の世界に戻りたいって思えてるのを俺は素直に尊敬する。


「じゃあ、さっさと戻るか……」


……そういや、ダレスさんとダルクさんはどうするんだろうな……



……なんて十数分前まで考えていたんだが……


「あ、遅いっすよ!」


「新しく積み込む荷物は無いデスか?」


「……2人とも、ナチュラルに一緒に来る気満々なんだな……」


ダレスさんもダルクさんも、馬車に荷物を積み込んでいる最中だった。


「そりゃ勿論、同行するっすよ!」


「ついでに、トウシロウ様の第6夫人にして貰えたらと思ったのデスが……」


「ん?……1人足りないっすよ?」


「え?……あ、マスターは数に入れてマセんが?」


「何でっすか!?」


……この感じ、そろそろ答えを出した方が良さそうだな……


「だって、ちゃんと告白してないじゃないデスか!」


「うっ!……だったら今ここでするっす!」


「ほう……なら私もするだけデス……」


「トウシロウ!……私と付き合って欲しいっす!」


「トウシロウ様……私とも是非、お付き合いをしていただけマセんか?」


……ハァ……


分かってはいたが、やっぱりこうなるか……


そんで、俺の答えも決まっている。


「良いぞ。……ただ、他の皆が何って言うか……」


……俺はどうしたって、告白を断れない。


ただ、1つ心配なのは他の皆が賛同してくれるかどうかだが……


「あ、その辺は了承を得てるっす!」


「皆様、快く受け入れてくださいマシた!」


「そ、それなら良かった……」


根回しが早いなぁ……


……とまあ、こんなやり取りを交わしたところで……


「……おっと、吾輩は邪魔者だったであ~るか?」


「「「っ!?」」」


突然、背後から聞き覚えのある声が聞こえて来た。


「あ、プル坊やん!」


声に対し、馬車で物資の積み込みをしていたエルリスさんが反応した。


やはり、声の主はプルスレゼスさんだったか。


「いやはや、(みな)が出発する前に挨拶をしておこうと思ったのであ~る。……この度のケール防衛戦において、(みな)には返せない恩が出来てしまったのであ~るからな!」


「いや……最後まで、私達は何も出来なかったし……」


「面目丸潰れって言われても甘んじて受け入れるレベルだったっしょ……」


プルスレゼスさんからの礼に対し、茜と正義(ジャスティス)はそう返事した。


「いいや。……勇者達のお陰で、吾輩はラビリンスを除去するプログラムを組めたのであ~る!……もし誰かがラビリンスの気を引いていなければ、すぐにプログラムの存在がラビリンスにバレて、対策をとられていたのであ~る!」


「そうかもしれないけど……」


「何か納得いかないっしょ……」


……茜も正義(ジャスティス)も、気持ちは分かるがここは礼を素直に受けるのも大切だと思うぞ?


「……ホンマ、プル坊は凄いわ~。……せやけど、あんまり職場を離れる様やと……」


「ひぃっ!?……こ、今後はちゃんと商会の仕事もするのであ~る!……あ、ダレスもダルクも迷惑はけるんじゃないのであ~るぞ?」


「分かってるっすよ!」


「分かっていマス!」


「ほな、そろそろ行こか~……」


こうして、俺達は馬車に乗った。


「ご主人様、今度来た時は一緒に街を回りましょうニャン!」


「全くですわ!」


「まあまあ、落ち着いてくださいませ!」


「……騒がしいわ~……」


「じゃが、それも悪くないのじゃ!」


正義(ジャスティス)君、今のボクのポーズも良くないかい?」


「うん、まるで絵から出て来たみたいっしょ!」


「……部屋で交換日記の続きでもしましょうか……」


「確か、この先はもう魔王軍の領域(テリトリー)だった筈っす!」


「気を引き締めて行きマショう……」


「……そうだな……」


そんなこんなで、俺達はケールを発った。


……この先で起こるであろう過酷な戦いに、思いを馳せながら……

ご読了ありがとうございます。


次章は、遂にシトラやラビリンスと決着を着ける予定です。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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