120.王女は祈り、魔王は笑う
どなたか、私のなろう作品にコメントで感想ください。
(ミリセリア・ズンダルク・レブラトラ視点)
「……という訳でして、ケールは勇者様達の活躍もあり守られたとの報告が……」
「そうですか……モンデーロ宰相、報告ご苦労様でした」
……窓辺で風に当たっていた私は、背後に居る宰相のモンデーロからケールが侵攻された一件の一部始終を聞かされたのでした。
「……ミリセリア、こうなる事も読んでいたか?」
「お父様……私を予言者か何かとお思いですか?……特にケールの技術力は私にも分からない領域ですので、流石にここまでは読めませんよ……」
お父様は、どうも私を過大評価しがちな傾向があります。
……この国の国王なのですから、他者の力量を正確に推し量れないと駄目だというのに……
「……だが、勇者パーティーを魔王軍に対する囮にしているのは事実なのだろう?」
「それは……そうですが……」
私はこの国の第一王女として、今まで最善の選択をして来たと自負しております。
なので……例え実の妹が勇者パーティーに同行していようと、容赦なく囮として活用します。
「まあ、聖都の一件は完全な偶然だった様だが……」
「しかし、他は勇者が滞在していたから襲われた場所が殆んどでしょう。……いずれも勇者の皆様のお陰で死者は出ておりませんが、1歩間違えば……」
「そうだ。……だが国のトップたる者、時には命の取捨選択もしなければいけないのだ……」
「お父様……」
国のトップとして、清濁併せ呑むのは必然です。
私もお父様も、天国に行けるとは思っていません……
「そもそも……このズンダルク王国自体、魔王軍を押し留めるための国だ。……ズンダルク王国を取り囲む様に展開された対魔物用結界……王都や主要都市を囲む結界なんか比べ物にならない程に強力なこの結界がある限り、この国は常に魔王軍の脅威に脅かされ続ける……」
「ですが、そういった事情があるからこそ……ズンダルク王国は永遠の中立地帯として、他国から攻め込まれずに済んでいるのでしょう……」
ズンダルク王国は、魔王軍が現れる様になった後に建国された国……
当然、そんな面倒な地域を支配下に置きたい国などある筈もなく、この国は1度も他国から攻め込まれた事がありませんでした。
もっとも、今代の魔王が誕生してから今まで、他国はずっとこの国の状況を注視しておりますが……
「それでもなぁ……この国を取り囲む対魔物用結界の核は、儂とその予備として後継者たるミリセリア……お前の心臓が担っている。……もし2人とも死ねば、その瞬間にこの国を取り囲む結界は破壊されてしまうというのは覚えているだろう?」
「それがどうしました?」
お父様の懸念はもっともです。
私達が死ねば、他国も魔王軍に攻め込まれる……
ですが、それを今更掘り返す意味は?
「……勇者を召喚した際、どうして機嫌を損ねかねない事を言ったのだ!……それは儂の役割で、お前には勇者へ親身に接する役割を与えていたというのに……」
ああ、その話ですか……
私としては、予定にない事の様に振る舞ったつもりだったのですが……
「ハァ……結局、私が勇者召喚に協力している時点でその作戦は無理がありました。……ならば、その役割はメアリーに任せるべき……そう思ったのです……」
「なっ!?」
「そのためにわざわざ、秘密裏にメアリーの心臓にもこの国を取り囲む対魔物用結界の核の役割を担わせたのですから……」
「わ、儂も初耳だぞ!」
それはそうでしょう。
「ええ、お父様や他の家臣はおろか、メアリー本人にすら伝えておりませんので。……まあ、一種の保険ですよ」
「……儂が言うのも何だが、もっと自分や他者の命を大事にしろ……」
「他者はともかく、自分の命を大切にする資格など私にはありませんよ。……恋人だった騎士、ラウルを死地に送り込み、みすみす死なせた私には……」
魔王誕生の日、誕生直後の魔王に攻撃を加えようとした騎士部隊を率いていた騎士、ラウル・バルガイア。
ロウルの兄でもある彼と私は、周囲に内緒で恋仲になっておりました。
……それでも、私は彼を死地に向かわせ、死なせ、今現在も魔王をその地に縛り付けさせている……
そんな私に、生きる資格があると?
「……すまん……」
「良いのです。……魔王が死ぬ日まで、私も死ぬ気はありませんので……」
ただまあ、天秤にかけてリターンが大きければ容赦なく自分の命も天秤に乗せますが。
召喚された勇者が怒っていれば、人身御供として……
魔王軍が襲撃して来れば、殿として……
その命を散らす覚悟は出来ておりました。
「ミリセリア……」
「話がかなり逸れましたね。……取り敢えず、今回の報告も問題はなさそうです。……強いて言えば、ラビリンスの動向が気になりますが……こればっかりは予測出来ません……」
「そうだな……」
魔王軍の将軍は、順調に勇者の皆様によって討伐されております。
今や、敵の強者は魔王や宰相を含め5体……
いえ、今のラビリンスが魔王軍に残留しているのかは分かりませんが、存命はしておりますので数に入れても宜しいでしょう。
「……元の世界に戻す魔法が未だに見つかっていないのは私としても心苦しいですが……どうか人類に勝利を……」
勝手に呼んでおいて、何様だと言いたくなるのが普通でしょう。
……にも関わらず、勇者の皆様は承諾なさってくれました。
「……私達も、出来る限りの事をしなくては……」
魔王軍の将軍までであれば何とかなるでしょう。
……ただし、魔王は別です。
それは私も分かっている筈です。
それでも……
「私……勇者の皆様が全員生きて帰って来る事を願ってしまっています。……愛を誓った恋人すら、死地に送った私が……」
……人類としての勝利ではなく、勇者の皆様が生きて帰って来る事を祈ってしまうのは、いったい何故でしょうか……
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(シトラス視点)
「ハァ……結局、ルウフもルササも余の役に立たぬ愚物でしかなかった訳か……」
オレは今、例の如く魔王城の玉座の間に呼び出されていたガル。
……にしても、ルウフもルササも死んだガルか。
やっぱり、ケールを攻め込むのは無謀だったガルな。
「んでんで、俺っち達が呼び出された訳は~?」
フェニルムは前回と同じでやる気を全く見せねぇガルなぁ……
まあ、オレにとっちゃそっちの方が都合が良いガルけど……
と、そんな事を考えてたら、スネイラがフェニルムに返事をしたガル。
「……ルウフさんとルササさんが死んだのは手痛い損害でシュルが、本題は違いまシュル。……実は、ラビリンスさんが魔王軍に反旗を翻したんでシュル!」
「ハァ!?」
「へ~?」
ら、ラビリンスの屑野郎が反旗を翻した……ガル!?
いやまあ確かに、あいつは普通に下衆ガルし、ドラグの野郎への忠誠心なんて欠片もなかったガルが……
このタイミングで反旗を翻す理由が分からんガル!
「……反旗を翻したと言っても、人間の味方になった訳ではないでシュル。……寧ろ、第3勢力として活動し始めたと言いまシュルか……」
「わ、訳が分からんガル……」
「ふん!……後は余が説明してやるから、その耳をかっぽじってよく聞け!」
ドラグの野郎、一瞬怒ってるのかと思ったガルが……寧ろ、興奮してる様に見えるガル。
「な、何ガル?」
「ラビリンスの奴、余に対し魔王になると言い出したのだ!……その上で、次会う時は魔王同士で等と……これが楽しみでなくて何だと言うのだ!」
「……あ、そういや先代魔王の復活すら楽しみの1つにしてた魔王様ならそういう反応にもなるガルか!」
……にしても、魔王になる、ガルか……
そんな事、可能なんガルか?
「ああ、アレは別の世界の神が作った兵器の類いだそうだ。……だからまあ、余に匹敵するかはともかく、魔王と同等の存在になる事に関しては不可能ではなかろう……」
「そ、そうガルか……」
だいぶ面倒になって来たガルな……
……待つガル。
つまりもう、魔王軍の将軍はオレとフェニルムだけガルか?
そして、フェニルムはやる気がない……
「……シトラさん、ラビリンスさんの事はこちらで対応しまシュルから、貴女は勇者パーティーを今度こそ皆殺しに……」
「……分かったガル……」
もう、逃げ場はないガルよな……
……茜との決着、そろそろ着けるガルか。
「くくくっ……シトラは余の役に立てぬ愚物ではないと良いのだがな?」
「……好きに言っとけば良いガル!」
そう吐き捨てたオレは、玉座の間を後にしたガル。
……そう近くない内に訪れる、オレの最期を想像しながら……
ご読了ありがとうございます。
もうすぐケール編も終わります。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。