12.下水道探索 序
はい、更新です。
新キャラ登場します。
(浅山 藤四郎視点)
正義からの勧誘から数日後……
「……かなり人が集まってるな……」
「お兄ちゃん、これは出遅れたかもね。」
「ご主人様、頑張りましょうニャン!」
あの勧誘の翌日、案の定銅ランクに昇格していた俺達のパーティーは、今日になって下水道探索にやって来ていた。
どうも、冒険者ギルドの方で調整した結果、今日大量の冒険者を一気に投入する方針になったらしいのだ。
「……とはいえ、別に何か宝を求めてるんじゃねぇし、出遅れるも何も……」
「素材、手に入らないかもしれないよ?」
「別にスライムの素材なんて要らねぇよ。」
「え~、スライムといえばR18御用達なのに……」
「茜さん、それは無理ですよ。」
「ん?」
茜がスライム関連の話で暴走を始めた瞬間、それを制する者が居た。
「お、兼人じゃねぇか。」
「ええ、そうですよ。皆さんお揃いで何よりです。」
「……で、無理ってどういう意味?」
「言葉通りですよ。……この世界のスライムは、取り込んだ物を何でも溶かす強酸性です。確かに表面は安全ですが、少なくともエロい事には使えません。」
「そんな馬鹿な話ある!?それじゃあ 《ピーーー》 も 《ピーーー》 も 《ピーーー》 も出来ないって事!?」
「はい、出来ないですね。」
「嫌だぁぁぁぁぁぁ!せっかく異世界に来て 《ピーーー》 が出来ないなんてぇぇぇぇぇ!」
「茜、そろそろ放送禁止用語を放つのを辞めろ。」
茜の性癖にドン引きしつつも、俺は茜を宥める。
……というか茜、異世界に来た当初は取り繕えてた本性が剥き出しになって来たな……
「だってぇぇぇぇぇ!……あ~もう、こうなったら下水道のスライムに八つ当たりを……」
「いや、茜さんを今回の下水道探索に参加させるつもりは毛頭ないんですけど……」
「……兼人君、どういう意味かな?」
突然、兼人が茜を下水道探索に参加させないと言って来た……が、俺も理由は薄々察していた。
「普通に考えて、魔物のドロップ品まで破壊する程の攻撃力ですよ?……下水道で使ってもし崩壊したら、王都が滅茶苦茶になるじゃないですか。」
「うぐっ!」
「今回の依頼で必要なのは的確に相手の弱点を潰す繊細さであって、スズメバチ駆除にロケットランチャーを持ち込むような豪快さじゃないんです。」
「そ、そこまで言わなくても……」
なるほど、スズメバチ駆除にロケットランチャーか……
茜の高過ぎる攻撃力をよく言い表してるな。
「……茜、残念だったな。」
「ムキィィィ!」
「あ、アカネ様が乱心してますニャン!」
「放っとけ。……故郷ではいつもの事だったからな。」
「そ、そうなんですニャン?」
寧ろ、よく今まで取り繕えてた方だ。
「……茜はかなりの変態だ。あ、これが同性愛者の一般だって勘違いすんなよ?あくまでも茜が変態なだけだからな?」
「は、はいですニャン……」
「……ただまあ、茜自身それを分かってたから、家族にしかカミングアウトしなかったんだろうな。」
自分の行動が、その性的マイノリティー全体に迷惑をかける……そう考えていた茜は、俺達家族だけに自身が同性愛者だという事を打ち明けた。
ま、俺は薄々察してたし、両親は笑顔で"なら将来、彼女が出来たら紹介してくれるとありがたい"とか言う程呑気だったのだが……
「……そ、そうだったんですニャンね……」
「ま、この話はこの辺にしとこう。……そういう話題は色々とややこしいんでな。」
「はい、承知しましたニャン。」
こういう話はややこしい。
俺も出来る限り深掘りはしないでおこう。
と、ここで……
「お、皆お揃いっしょ!」
「……ああ、藤四郎君に茜君にナフリー君に兼人君、全員揃っているようで何よりだね……」
「正義に司か。」
言い出しっぺの正義と、何故か複雑そうな表情を浮かべた司が合流した。
「さて、それじゃあ張りきって下水道探索に行きまショータイム!」
「待ってくれ!……やはり、ボクは……」
「も~、まだ言ってるっしょ?ちょちょいと勇気を出すっしょ!」
「え、何がどうしたんだ?」
何故か司が待ったをかけ、正義はそれに対して勇気がどうたらと返していた。
「実はボク……下水道の様な不潔な場所に行くのが嫌なのさ……」
「……この前はドブ掃除してたのにか?」
「まだドブは耐えられた。……下水道は無理……」
「ああ、そうなのか……」
至極どうでも良かったが、ここで更に戦力ダウンは避けたいところだ。
「正義君、ボクが下水道を平気になるようにしてくれないかい?」
「駄目っしょ。……勇者たる者、壁は自分で越えるべきっしょ。」
「……正義君の勇者という肩書きに対するこだわりは何なんだい?」
……司は正義に性格の改変まで頼んだが、正義の勇者という肩書きに対する謎のこだわりから断られていた。
つまり、戦力ダウンは決定的になった。
「ま、行けるようになるまで俺チャンも一緒に居てやるから、頑張るっしょ。」
「更に戦力ダウン!」
「えっと……つまり、ご主人様とあたしだけで行かなきゃ行けないって事ですニャンか?」
……いくら冒険者が他にも居るとはいえ、俺のパーティ若しくは協力者が軒並み来れないとなるとキツい。
「……なあ、ナフリーってスライム倒せるか?」
「一応、遠隔攻撃は出来ますから何とか行けるとは思いますニャン。」
「そ、そうか……」
わざわざ魔法ではなく遠隔攻撃という辺り、またえげつない攻撃をしそうだな……
とまあ、俺が一抹の不安を感じていると……
「お、そこに居るんは……こないだからゴブリン魔石をえらい納品しとるっちゅう方々やん。お陰でウチ等もガッポガッポ儲けさせてもろてます~。」
「ん?……いや、誰だ?」
突然、俺達に声をかける者が1人。
そちらを見ると、何やら引き出しが大量に付いている大きな木箱を背負った、黄髪のエルフが居た。
……俺もまさか初めて見る実物エルフが、エセ関西弁かエセ京都弁を喋る奴になるとは思わなかったな。
「ん~?どないしはったん?」
「いや、インパクトが強くてな……」
この世界の言語は自動翻訳されているとの事なので、このエルフも実際にこんな言語を喋ってるのではないのだろうが……どちらにしても、そういう方言を喋ってるのは確実だろう。
「あ、紹介遅れたわ。……ウチの名前はエルリス・フルウィール。……デルレン商会行商人部門担当の商人で、こう見えて先代勇者パーティーの一員やったんやで~。」
「へぇ~……って、えぇぇぇぇぇぇ!?」
「お兄ちゃん、煩いって言いたいところだけど私も同感かな。」
「わ、あたしもですニャン……」
「ぼ、僕もです……」
「ぼ、ボクもさ……」
「お、俺チャンも……」
エセ方言のエルフことエルリスさんは、サラッと自身が先代勇者パーティーの一員だったと話した。
……つまり、軽く見積もっても100歳は越えてる可能性が高い訳だ。
「ち、ちなみに先代勇者って……」
「まあ、正確には何人か召喚された内の1人なんやけどな?……あの娘はウチの親友やったんやけど、先代魔王との最終決戦で死んでしもたわ……」
「あ、すみません……」
あの娘って言ってたし、エルリスさんがパーティーを組んだ勇者は女性だったのだろう。
「……あの頃は商人兼魔術師として頑張っとったけど、先代魔王との戦いで魔術師として生きるんが困難な怪我を負ってしもてな~……今は商人1本で行かせてもろてます。」
「そ、そうか……」
「ま、取り敢えずポーションでも買わへんか?」
「あ、はい……」
エルリスさんの壮絶な過去に圧倒された俺は、話の流れでポーションを数本買った。
……1本銀貨1枚だったので、10本買って金貨1枚で済んだのは安く済んだ気がする。
「ほな、さいなら~。」
「ああ、またな。」
そうして立ち去るエルリスさんを見送りながら、俺は下水道に行く準備を進めるのであった……
ご読了ありがとうございます。
エルリスについての深掘りはまた別のタイミングでします。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。