119.ケール攻防戦 決着
2ヶ月放置した癖に、決着は早かったりします。
(浅山 茜視点)
ラビリンスの……正体を……聞いてから……数分は……経ったかな?
「ハァ……ハァ……これ……いつ終わるの?」
攻撃しても……攻撃しても……ラビリンスは……倒れてくれない……
それどころか……
『ふむ……そろそろこの巨体のダメージも無視出来なくなって来ましたピョンね……という訳で【修復】ですピョン!』
ーガシャン!……ガシャガシャガシャ!
「……こっから修復なんてマジで言ってる訳!?」
……壊れた部位を……自己修復……し始める……始末……
正義君も……思わず……文句を……言っちゃってる……
「……茜さん、このままラビリンスを攻撃し続けていても終わりが見えないと思うのは、あちきだけでありんすか?」
おっと……光枝さんも……戸惑ってる……
「どうして……そう思ったの?」
「……正直に言って、相手を削っている感覚が薄いんでありんすよ。……あのサタゴーラですら、攻撃が当たればそれなりの手応えがあったというのに……このラビリンス相手だと、ただ鉄屑を削っている感覚しかしないんでありんす……」
……うん。
割と……的を得てるね……
「ラビリンスは……ケールの……システムそのものと……一体化……しちゃってるから……外側からの……攻撃だけで……倒そうと……思ったら……ゲホッ!ゲホッ!……ケールの……システムそのものを……破壊しないと……駄目かも……」
「なっ!?……確か、ケールのシステムってこの街のあらゆる物を動かしてるんでありんすよね!?」
「そうだね……だから……このままじゃ……どっちにしても……ケールは……滅んじゃう……」
今のラビリンスは……コンピューターウイルスと……同じ様な……状態……
外側からの……物理攻撃で……どうにか……なるものじゃない……
「……茜君の推測通りだとすれば、かなりマズくないかい?」
あっ……司ちゃんも……聞いちゃったか……
「うん……マズいよ……多分……正義君も……気付いてるんじゃ……ないかな?」
「そんな……」
これだから……教えない方が……良かったんだよね……
……この状況を……打破するには……誰かが……システムの……内部から……ウイルスの……ラビリンスを……除去しないと……いけない……
「だから……私達の……仕事は……ラビリンスを……討伐する事じゃなくて……足止めして……時間を……稼ぐ事なんだよ……」
今は……あのプルスレゼスさんって……人が……ラビリンスの……中で……抵抗してるっぽいし……それに……賭けるしか……なさそう……
「……ボクには分からないけど、正義君もそのつもりなのかな……」
「さぁね……私にも……分からないよ……」
「……あちき達はあちき達のやるべき事をやるだけでありんす!」
皆……頑張ってる……
だから……私達も……頑張らないと!
「ラビリンス……今回も……お前の企み……阻止してあげるから!」
さて……もう一頑張り……しますか!
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(プルスレゼス視点)
「ぐぬぬ……ラビリンス、これ以上お主の好きにはさせないのであ~る!」
今の吾輩は、ひたすらケールの中枢システムにラビリンスへの妨害命令を出していたのであ~る!
いや、これは正確ではないのであ~る。
「もうすぐ……もうすぐであ~る!……もうすぐ完成するのであ~る!」
実は吾輩、妨害命令を出しつつもシステムから切り離されたコンピューターでとあるプログラムを組んでいたのであ~る。
……ラビリンスという異物を除去するための、とっておきのプログラムを……
「このケールという街は、多くの先人達が汗と涙を流して作り上げた街……多くの技術が結集し、誰も見た事がない物を作り続けるための場所であ~る!」
そんなケールを滅ぼしかねないラビリンス……お主の存在は、今すぐにでも消してやるのであ~る!
「……それにしても、今回は勇者達のお陰で何とかなったのであ~る。……この一件が無事に終われば、吾輩から何か礼を……っと、未来の話より現在の対処をどうにかしないといけないのであ~る!」
ここまでラビリンスに邪魔されずにプログラムを組めたのも、全ては勇者達が外でラビリンス達の相手をして時間を稼いでくれたお陰であ~る。
「よし!……完成したのであ~る!」
……だからこそ、今度は吾輩がケールの統括技師長としての実力を見せる番なのであ~る!
「ラビリンス……お主の敗因は、吾輩にトドメを刺さなかった事としか言えないのであ~る。……プログラム実行、ラビリンス除去開始なのであ~る!」
ラビリンス……このケールという街は、お主が好きにして良い場所ではないのであ~る。
今すぐ、出て行くのであ~る!
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(ラビリンス視点)
ーバチッ!
『ピョンッ!?』
不思議な感覚が走りましたピョン……
まるでそう、私の一部が消されたかの様な……
【実行:異物の除去・及び中枢システムの復旧】
『ハァ!?』
な、何ですピョンか……
このプログラムは……
ーバチッ!……バチバチバチッ!
……って、ケールの中枢システムを侵食していた"私"がどんどん消されてますピョン!?
ーガラッ……ガラガラガラ……ドシィィィ~ン!
同時に、巨体を構成していた建築物もどんどんと剥がれ落ちて行きますピョン……
そして、それを見た勇者の皆さんは……
「あっ……上手く……行ったみたい……」
勇者アカネはそう呟いて笑っていましたピョン。
「ふっ……やっぱり天才のやる事は違うっしょ……」
勇者ジャスティスはそう言って安堵していましたピョン。
「ん?……誰か何かしたんでありんすか?」
「多分……ボクはそうだろうとしか……」
勇者ミツエと勇者ツカサはよく分かってなさそうでしたピョンが……
前者2人の反応で何となく分かりましたピョン。
『プルスレゼス……あの時にちゃんとトドメを刺しておくべきでしたピョンね……』
弱い老いぼれと侮ったのが運の尽きでしたピョン……
いくら急いでいたとはいえ、あそこでちゃんとトドメを刺しておけば……
いや、別に問題はありませんピョン。
しっかり本来の目的は達成出来ましたピョンから。
『あは……ははは……ははははははははははははははははははははははははははははははははは!』
「「「っ!?」」」
「負けて自暴自棄になった……って訳じゃなさそうっしょ……」
ああ、勇者ジャスティスは賢いですピョンね~。
普通、負け寸前の敵が笑い出したら、自暴自棄になったと思う筈ですピョンが……
『その通りですピョン!……私にとって、機神になるのは通過点に過ぎませんピョンからね!』
「通過点って……なら、本命は何な訳よ!?」
『魔王……と言ったらどうしますピョン?』
「「「「っ!?」」」」
あははははははははははははははははは!
今更驚いても、もう遅いですピョン!
『私の目的は、最初からケールの中枢システム……に搭載されている優れた演算機能でしたピョン!』
「え、演算機能……確かに、このレベルのシステムなら搭載されててもおかしくないっしょ。……でも、それで何を……」
『私が魔王になる方法を演算していたに決まっていますピョン!』
「ハァ!?……ほ、本気で言ってる訳!?」
本気も本気ですピョン!
「む、無理でありんす!……何せ、魔王は邪神によって作り出される存在で……」
『私は別の平行世界の神によって作り出されましたピョン!……つまり、魔王になる資格は充分にありますピョン!』
「そ、そんな……」
『……現に、演算で方法は見つかりましたピョン。……後は、本体を魔王へと覚醒させるのみ……』
……どうせならケールを滅ぼしてやりたかったですピョンが……ま、してやられた私のミスですピョン。
「ラビリンス……絶対に……お前の企みは……阻止してあげるから!」
『ハァ……だったら、私の本拠地でもある"迷都 ラビリンス"で決着を着けましょうピョン!……もっとも、次に会う私は魔王軍幹部ではなく、魔王ラビリンスへと覚醒した私でしょうピョンが!』
ーガラガラガラガラガラガラ……ドシィィィ~ン!
……勇者の皆さんへ最後の宣戦布告をした私は、その直後にケールでの肉体を失いましたピョン。
多分、除去プログラムのせいでケールに居た分身体が全て機能停止してしまったのでしょうピョン。
でも、今回は素直に負けを認めてあげますピョン。
……次に会った時が、勇者の皆さんにとって負け戦になるのですピョンから……
ご読了ありがとうございます。
ラビリンスが目指した先は、魔王の力でした。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。