118.ケール攻防戦 正体
作者の別作品にも登場していた、"ラビリンス"という概念……その真実が、少しだけ明かされる……
(ラビリンス視点)
私と勇者共の戦いが始まってから、少しの時が経過したでしょうピョンか……
『ぐぬぬ……鬱陶しいですピョンね……』
忌々しい勇者の皆さんは、未だに4人全員が存命でしたピョン……
これでは……機神とはいえ神に至った私が、たかが勇者4人を始末する事すら出来ない事を意味しているとしか言えないですピョン!
「ふん!」
ーブンッ!……ドガァァァァァァァァァァァ~ン!
『ピョンッ!?……やはり、勇者アカネの攻撃は食らうべきではないですピョンね……』
勇者アカネが全身ボロボロの状態で振るった……名前は忘れましたピョンが、とにかくあの大きなハンマーの攻撃……
今の一撃で、この巨体における左の掌が破壊されてしまいましたピョンね……
「【冥刃十字斬】でありんす!」
ーザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
『うっ……勇者ミツエ、貴女も大概ですピョンね……』
勇者アカネ程でないにしても、先程から私の巨体を斬り付け続けている勇者ミツエもとにかく鬱陶しいですピョン……
「【絶対王政】……罪人、"迷兎機神 ラビリンス"の処刑を……執行する……【断罪の落星】!」
ーヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!
『勇者ツカサ……貴女も邪魔ですピョンね……』
ードガドガドガドガドガドガァァァァァ~ン!
恐れ多くも、神に至った私を断罪しようとは……
しかし、技の効果は絶大ですピョンね。
勇者ツカサが持つ細剣の先から放たれた攻撃は、私の巨体を構成する接続パーツを精密に撃ち抜き続けていますピョン……
「ハァ……ハァ……茜君!……光枝さん!……ボクが撃ち抜いた箇所を重点的に攻撃すると良いさ!」
「ハァ……ゲホッ!……わ……分かった!」
「承知したでありんす!」
攻撃を受けて弱くなった接続部分を、勇者アカネと勇者ミツエに重点的に攻撃され続けていますピョン……
本っ当にイライラしますピョン……
『……全員、死ぬと良いですピョン!』
ーシュンシュンシュンシュンシュンシュンシュン!
私は勇者4人に対し、ミサイルによる殲滅を実行しますピョンが……
「うげっ……ミサイル……」
「ふむ……正義君!」
「分かってるっしょ!」
ーフラフラフラ……ドカァァァァ~ン!
……勇者ジャスティスが展開している技により、私が発射したミサイルは訳も分からない方向に飛んだ後に何もない空中で爆発する始末……
勇者ジャスティス本人は無防備な状態で地上に残っているとはいえ、これでは攻撃のしようがありませんピョン……
そして、最も私が鬱陶しく感じるのは……
【命令:ケール住民へ危害を加える事を禁ずる】
【命令:皆殺しにするピョン!】
【命令:ケール住民へ危害を加える事を禁ずる】
【命令:皆殺しにするピョン!】
【命令:ケール住民へ危害を加える事を禁ずる】
……私が分身体やケールのシステムに命令している内容が、あのプルスレゼスとかいう老人によってかき消されている現状……
このせいで、私は未だにケールで人間側の死者を出せていませんでしたピョン!
『……ルウフとルササは何も成せずに死にやがりましたピョンし……本当にどいつもこいつも……どうせなら私の役に立ってから死んで欲しいですピョン!』
ここまで感情を爆発させたのはいつぶりでしょうピョンか……
最後まで私の足を引っ張って……
どいつもこいつも役立たずですピョン!
「ハァ……ハァ……ラビリンスが……ここまで……感情を爆発させたのって……初めてだよね?」
「ボクもさ……何か、様子がおかしくないかい?」
勇者アカネと勇者ミツエは、何も分かっていないからか呑気な事を言っていますピョンね……
『……私はずっと、神になるのを目指して来ましたピョン……そのためにわざわざ魔王に仕え、街を破壊し民を蹂躙したのですピョンから!』
「「「「っ!?」」」」
あんな魔王如きに仕えたのは、この日のため……
ケールの技術力を使い、神に至るため……
そのために、ここまでやって来たのですピョンから!
『……なのに、ここまで来て……本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に!』
「か、神になるためって……お前は所詮、自我を持った迷宮核でしかない訳で……それがどうして、そんな野望を持つに至ったっしょ!」
ん?
勇者ジャスティス、貴方は賢いと思っていたんですピョンけどね~。
『自我を持った迷宮核?……私はそんなチャチな物ではないですピョン!……それはあくまでも、表向きの見せかけに過ぎませんピョン!』
「「「「っ!?」」」」
あくまでも、表向きの見せかけ……
私の真の名前は、他にありますピョン。
『"自律式迷宮発生装置 ラビリンスー5002"……それが、私の真の名ですピョン!』
「それは、お前が5002体目のラビリンス分身体って事な訳?」
ん~?
伝え方が悪かったですピョンかね?
『いいや、私の本体の製造番号ですピョン!……そもそも、私達ラビリンスは数多の平行世界に異なる時期で1体ずつ投入された存在ですピョンから……その5002番目が、私というだけですピョン!』
「つまり、ラビリンスが少なくとも残り5001体は居るって訳?」
折角、ここまで来たんですピョン……
全部語ってやりましょうピョン!
『まあ、何とも言えませんピョン。……私ですら、他のラビリンスがどうなっているかは知りませんピョンから。……とはいえ全員が全員、人間と敵対してるとも限りませんピョンけどね?』
「……ま、マジで?」
「……全員が人間と敵対してるとは限らないってのは良い情報だけど……ボクが思うに、大半はこれと同じな気がするね」
「ハァ……ハァ……全員……ぶっ潰すだけだよ!」
「同じくでありんす!」
やはり、この勇者4人は他のラビリンスもどうにかしようと動くんですピョンね。
なら、もっと絶望的な事実を教えてあげましょうピョン。
『あ、そうそう……他のラビリンスがどうなっているかは分からないと言いましたピョンが……少なくとも私が最終番号じゃないのは確実ですピョン』
「ははは……取り敢えず、今はお前を倒す事に専念するっしょ!」
おやおや……
勇者ジャスティスでさえ、この事実には心を折られかけましたピョンか。
……ただまあ、私を倒す事は諦めていない辺り、流石は勇者ですピョンね~。
『ふふふ、良いでしょうピョン!……お前達を1人残らず皆殺しにした後、本来の目的に専念させて貰いますピョン!』
神はあくまでも通過点に過ぎませんピョン……
本来の目的を叶えるためにも、この勇者の皆さんはここで退場して貰いましょうピョン!
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(金村 正義視点)
まさか、ラビリンスと同じ様な存在が平行世界にわんさか居るとは思ってなかったな……
とはいえ、今の俺チャン達には関係ない。
「全員、今の話は一旦置いておくっしょ!」
「ハァ……ハァ……言われ……なくても!」
「承知したでありんす!」
「正義君、あまり無茶はしないで欲しいね!」
……こんなのが後5000体以上も……
一応、人間に味方する個体も居る可能性はあるらしいが……逆に言えば、こんなのばかりの可能性も残っている。
……って、さっき俺チャン自身が置いておくって言ったばかりなのに……
「……ひとまず、こいつをどうやって倒すか考えないと活路は見いだせないっしょ……」
いくら巨体を壊そうとも、ラビリンス自身にダメージはそこまで入っていない様に見える。
そもそも、あの巨体すら巨大な分身体に過ぎない上、多分核的な物が最奥にある筈っしょ……
「うらぁ!」
ーブンッ!……ドガァァァァァァァァァァァ~ン!
「【冥刃十字斬】でありんす!」
ーザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
「【断罪の落星】!」
ーヒュンヒュンヒュンヒュンヒュン!
3人がこのまま戦い続けても、多分ジリ貧になる……
何せ、今のラビリンスはこのケールそのものと一体化しているといっても過言じゃない。
あの巨体は所詮、神らしく見える様に作られただけの他より大きい分身体というだけの可能性が高い……
……これ、どうやったら勝てる訳?
俺チャンは思わず、そう考えてしまうのだった……
ご読了ありがとうございます。
ラビリンスは機械とはいえ神に至り、更に別の存在を目指す……
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。