115.ケール攻防戦 黒狼
ちょっと雑かもしれません。
(扇羽 司視点)
現在、ボク達は未だに"迷都機神"を名乗る巨大なラビリンス分身体の前に立っていた。
……これは、お互いに出方を伺っている状態だ。
ボク達としても、下手な手は打ちたくないしね。
「……正義君、先に動くのはどっちだと思う?」
「それは……すぐに分かるっしょ……」
……正義君から答えになっていない返答を出された、次の瞬間だった。
『あ~もう、動かないならこっちから行きますピョォォォォォン!』
「やっぱりあっちが動いたっしょ!……じゃ、後は各々好きにしてっしょ!」
正義君はこうなる事が分かっていたのか、ボク達に好きにする様に告げた。
すると……
「【戦乙女】の……神器12番……【蒼天の……翼】!」
「【美しき双翼】!」
「【冥天跳躍】でありんす!」
ーバサッ!バサッ!ヒュッ!
ボク、茜君、光枝さんの3人は、各々の方法で巨大なラビリンス分身体の肩辺りの高さまで飛び上がった。
そして……
「【戦乙女】の……神器2番……【雷神の大槌】!」
「【美しき王国】!」
「【冥刃十字斬】でありんす!」
「【ありきたりな英雄譚】っしょ!」
地上に1人だけ残った正義君も含めたボク達4人が、各々の攻撃や切り札を発動した。
……とはいえ、確実に厳しい戦いになるよね……
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(ダレス・ルルペン視点)
「まだまだっすぅぅぅぅ~!」
「グルァ!」
ーギィィィィィ~ン!
私の雷電剣とルウフの軍用サーベルがぶつかって金属音が鳴り響いたっす。
……ま、私の方が力負けしてるんすけどね。
「……ハァ……ハァ……ちょっと出力上がってもこれっすか……」
「グルァ?……そういえば、先程よりは力が乗っていたグルな……」
力負けこそしたっすけど、どうもさっきから私の力やら速度やらが増してる気がするんすよね……
「……はっ!……これってまさかトウシロウのスキルっすか!?」
「その可能性は高いデスね!」
「おい!……オイラを無視するなッキィィィィ!」
「……何でも良いグルが、結局どうやっても勝ち目はないグルぞ?」
トウシロウのスキル……の可能性がある謎の出力上昇を受けても尚、私とルウフの実力差は残ってたっす。
でも、その実力差は私が瞬殺されない辺りからそこまで大きなものでない事も察せたっす。
「……ルウフ、お前は本来なら一騎打ちなんてするべきじゃない筈っすよね?」
「ほう……何故そう思ったグル?」
「簡単っす!……お前のスキルは、配下の魔物を従わせる事に特化してるっす!……つまり、お前が死ねば簡単に魔物の統率は崩れるっす!」
「それがどうしたグル?……勝てば良いだけではないグルか?」
……こ、こいつ……
自分が死んだ瞬間に配下の統率が崩れるってのに、何て余裕っすか!?
「でもお前、未だに私1人始末出来てないっすよ?」
「ふん!……それがどうしたグル?」
「そんなんじゃ、こっちの主戦力がここに到着した途端……」
「生憎、他の者共は本官の軍団によって足止めされているグル。……そんな状況だからこそ、本官は一騎打ちに挑んだグルァ!」
な、なるほど……
確かに、やけに誰も来ないと思ってたっすけど……
「……足止めっすか……とはいえ、お前が自分から強みを捨ててくれてるのはありがたいっす……」
ルウフの強みは、統率のとれた魔物の軍団による数の暴力っす。
それこそ、こっちの主戦力を軒並み足止め出来る程には手強いみたいっすね……
「さて、無駄話もこれぐらいにして……続きをやるグルァ!」
「チッ!」
ーギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
私とルウフ、お互いの武器が金属音を鳴らしながら何度もぶつかったっす。
でも、このまま勝負を続けても勝ち目は見つからないっすし……
かといって、増援の機械を呼んだりしたら向こうも魔物を総動員しかねないっすし……
この一騎打ちを維持したまま、私が優位になれる方法はないもんすかね~。
とか考えてたら……
ーギン!ギン!ギン!
「ええい!……いい加減にするグルァ!」
ーブンッ!……ザシュ!……ピチャッ!
「うぐっ!」
……遂に、ルウフの袈裟斬りが私を捉えてしまったっす。
もっとも、直前で半歩引いてダメージは軽減したっすけど。
とはいえ、これはマズいっすね……
ーポタ……ポタポタ……
「ハァ……ハァ……ぎ、ギリギリだったっす……」
「むぅ……まさか、あの状態で本官の攻撃によるダメージを軽減させるとは……だが、次はないグルァ!」
「私もそう思うっす!」
いよいよ後がないっす……
ルウフに話しかけて時間を稼ぐのも、もう無理っぽいっすし……
でも、私だってケールの技術者っす……ここで敗走や犬死にするつもりはないっす!
となれば……
「さて、お前の動きも見慣れて来たグル。……次で決めてやるグルァ!」
「で、出来れば優しくお願いするっす……」
私はそう言いながら、ルウフにバレない様に雷電剣のリミッターを外したっす。
「約束は出来んグル。……それにしても、まさか本官とここまで戦える女剣士が居ようとは……」
「いや、実はそれズルなんすよ……」
「何だと?」
「この雷電剣は、使えば素人でも一流の剣士と同じ動きが出来る様になる使い手操縦式の機械剣っす。……つまりまあ、お前は私じゃなくてこの剣と戦ってたって事っすよ!」
「……そういう事だったんグルか……」
雷電剣の機能については事実っす。
ルウフが驚きと失望を混ぜ合わせたみたいな顔を浮かべてるっすけど、この剣を作ったの私っすからね?
ま、それはそうとして……
「……さて、何処かに隙はないっすかね~……」
「隙などないグル。……さあ、今度こそこのサーベルの錆にしてくれるグルァ!」
ーダンッ!……ギン!ギン!ギン!ギン!ギン!
お互いに力強く踏み込み、私達は再度斬り合いを始めたんすけど……
ーザシュ!ザシュ!ザシュ!
「くっ……」
相も変わらず私の劣勢、しかも少しずつ私の肌も浅く切られ始めたっす。
「口ほどにもないとはこの事グル!……ならば、この一撃でトドメと行くグルァ!」
ースッ……
「ハァ……ハァ……」
ルウフは私にトドメを刺そうと、突きの構えに入ったっす。
で、次の瞬間……
「【狼爪突き】グルァ!」
ーシュッ!
勢い良く放たれたルウフの突きは、私の心臓めがけて真っ直ぐ進んだ後……
「……っ!……ここっす!」
ーギィィィィィ~ン!
「なっ……」
……私が一瞬で心臓の前に構えた雷電剣に当たり、ルウフの突きは防がれたっす。
でも、まだまだこれからっすよ!
ーバチバチバチ……
「お、今のが決め手になったっすか」
「い、今の音は……」
これは雷電剣の誤った使い方……
リミッターを外した状態で使い過ぎると起こる、一種の故障……
ーニヤリ
「……【オーバースパーク】っす!」
ーピカッ!……ドンガラガッシャァァァァァ~ン!
「グルァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」
雷電剣から放たれたのは、無数の高圧電流……
それが雷の様に全方位に放たれ、私とルウフは感電したっす。
そうして雷が消えた後、その場に立ってたのは……
「……ケホッ!ケホッ!……あ~……これ……何回か……感電して……死にかけてる……私じゃないと……1発で……あの世行きっすね……」
「グルル……ゲホッ!ゲホッ!……ゴフッ!」
……揃って満身創痍の、私とルウフだったっす。
やっぱり、さっき左肩を撃ち抜いた時みたく、ルウフは攻撃を受ければ普通にダメージが通るタイプの敵だったみたいっす。
「じゃ、そろそろ終わりにするっす……」
「……ゴフッ!……本官はまだ……剣を振れるグ……」
「残念……武器は……自動追尾式荷電粒子砲っす……」
ービュン!……ぶしゃっ!
「なっ……」
私は隠し持っていた"自動追尾式荷電粒子砲" (※事前に絶縁処理済み) を死にかけのルウフに放ち、その胸に風穴を開けたっす。
「……最初に使った……レーザーっす……剣にばかり……気を取られたっすね……」
「……ゴフッ!……ふん、見事だグル……」
ードサッ!
そうして私の卑怯とも言える策で、黒狼将軍 ルウフは息を引き取ったっす……
「でもこれ……普通に私も……死にかけっす……」
ードサッ!
ああ、これダルクが負けたら私も死ぬっすね……
ダルク、頼むから勝ってくれっす……
そう考えながら、私は意識を手放したっす……
ご読了ありがとうございます。
元々、ルウフは1対1で無双出来るタイプのステータスの割り振りではなかったので、ダレスに負けてしまいました。
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。