114.ケール攻防戦 劣勢
久しぶりの更新です。
(ダレス・ルルペン視点)
ーギン!ギン!ギン!……ザザザッ!
「くっ……」
「脆弱……あまりにも脆弱だグルァ!」
私が作った雷電剣……もといゴテゴテした見た目の機械剣をもってしても、ここまで劣勢に陥るんすか……
しかもルウフの武器が何処にでも有りそうな軍用サーベルってのがまたお互いの実力差をハッキリと思い知らせて来るっす。
「……いやはや、これはどう考えても私の実力不足っすね……私如きの実力じゃ、やっぱり魔王軍幹部と戦うのは無理があったっすか……」
さっきから繰り返してるルウフとの鍔迫り合い……
私はずっと、後ろへと押し込まれてたっす。
「グルルルル……どんな実力者と戦えるのかと思っていたグルが、まさかこんな雑魚とは……いや、寧ろこんな雑魚から一撃を貰ってしまった本官もまだまだ未熟だと言わざるを……」
「何をブツブツ呟いてるっすか!」
ーブンッ!……ギン!
「ああ、そろそろ決着をつけようグル……」
こ、こいつ……
左腕が使えない癖に私の攻撃を難なく防いで圧倒するとか……
いや、まだダルクに手伝って貰えれば何とかなるかもしれないっす!
そう思った私が、ダルクとルササの戦いを見るも……
「くっ……まだまだデス!」
「ッキィィィィ~!……お前、いい加減倒れるッキィィィィ!」
そこには巨大な蛸足を引きちぎられて満身創痍になったダルクと、筋骨粒々な体格になったルササが居たっす。
「ハァ……ハァ……どうして押し潰せないんデス!?」
「キッキッキィィ……生憎、今のオイラは【猿真似】ってスキルの効果でタブルドの【防護肌】とミノガルの【筋肉増強】を模倣してるッキィィィィ!……だから、お前程度の力量じゃ潰れないんだッキィィィィ!」
ーブチブチブチ!
う、嘘っすよね……
ルササがダルクの残った蛸足を引きちぎりながら喋った内容……
まさか、あのタブルドとミノガルのスキルを模倣したんすか……
「……事前にそういうスキルだって情報は得てたっすけど、やっぱりキツいっすね……」
「ようやく身の程を知ったグルか……まあ、そんな事は本官の知った事では……」
「そうっすよね……でも、まだ私達の心は折れてないんすよ!」
ーブンッ!……ギィィィィィ~ン!
「愚かグルな。……だが、その根性は嫌いではないグルァ!」
「あ、ルウフの奴……これだから熱血系は嫌いなんだッキィィィィ!」
「隙ありデス!」
ーブンッ!
「ッキィィ!?……今度は蟹ッキィィ!?」
ースカッ……グシャッ!
「うぐっ!?」
ダルクは自身の腕を巨大なメタルクラブの鋏に変えて攻撃したっすけど、難なく避けられて棒みたいな武器で鋏を押し潰されちゃったっす……
「模倣……いや、お前の場合は再現ッキィィ?……ま、その領分でオイラに勝とうなんざ100年早いッキィィィィ!」
「ハァ……ハァ……まだ終わりではないのデス!」
ークネクネクネクネ……ヒュン!ヒュン!ヒュン!
ダルクは再び巨大な蛸足を生やすと、その先端にメタルクラブの鋏を生成してルササに襲いかかったんす。
「ッキィィィィ!?」
「引きちぎられようと、本体が無事なら攻め続けられるのデス!」
ああ、やっぱりダルクは凄いっすね……
あんなの見せられたら、私も頑張るしかないじゃないっすか。
ーブンッ!……ギン!ギン!ギィィィィィ~ン!
「ふん!……あの女もやるではないグルか!」
「そりゃそうっす!……何せ、ダルクは私の最高傑作とも呼ぶべき存在っすから……お前達程度に負けてやれる程、弱くはないんすよ!」
さあ、私もそろそろギアを上げて行くっすよ~!
……自分の故郷くらい、自分で守れなきゃどうするんすか!
そんな事を考えながら、私はルウフとの鍔迫り合いをひたすら繰り返すんだったっす……
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(メアリー・ズンダルク・レブラトラ視点)
「……メア、貴女の生きた世界線でもこの侵攻は起こりましたの?」
『……ええ。……しかも、この世界線よりもマズい状況でしたわ……』
私は違う未来から来た私……メアにケールが侵攻される事が分かっていたのか聞きましたら、やはり知っていたという答えが返って来ましたわ。
「……と、いいますと?」
『……以前も言いましたが、その世界線にトウシロウや勇者ツカサ、勇者ジャスティスはこの時点で死んでいて既に居ませんでしたわ。……それに加えて先代勇者様もその世界線では私達の前に姿を現しておりませんでしたし……』
「……ミツエ様については居ても居なくても変わらない気は……いや、何故か中央の巨大ラビリンスにミツエ様らしき女性が攻撃を加えている事を考える、確かに重要ですわね……」
何故、ミツエ様がラビリンスへと攻撃を加える事が出来ているのか……
それは分かりませんが、恐らく勇者カネヒトが何かしたのですわね。
『……少なくとも、戦える勇者は勇者アカネのみだった私の世界線に比べれば、この世界線の勝率は高いですわ……』
「そうですのね……」
おっと、長話をし過ぎましたわ。
いくら無詠唱魔法で魔物やラビリンスを片付けているとはいえ……反省すべきですわ。
と、その時でしたわ。
「メアリー殿下、向こうよりトウシロウ殿とナフリー殿が……」
「っ!?……トウシロウ!ナフリー!」
「うおっ!?……結構大変そうだな……」
「いえ、小型魔物をロウルが、大型魔物とラビリンス分身体を私が片付ける事で何とか持ちこたえていますわ!」
使い魔のキャノンビートルを連れたナフリーと共にやつて来たトウシロウに対し、私は現状の説明を簡潔に行いましたわ。
「……なあ、メアリー。……ダレスさんとダルクさんが魔王軍幹部と戦闘してるって聞いたんだが……」
「ええ、ここよりも向こうで戦闘中ですわ!」
「なら、早く助太刀に……」
「……いえ、魔物やラビリンス分身体が無数に居る以上、私達がここを離れる訳には行きませんわ!」
私やロウルの前に立ち塞がるのは、大量の魔物とラビリンス分身体。
この状況でここを離れられる程、私は要領良く出来ませんわ……
「なら、ダレスさんとダルクさんは……」
「……こんなのは慰めにもなりませんが、今回の侵攻を率いているとされる黒狼将軍 ルウフは数に物を言わせた勝負に秀でた幹部……まだダレスにも勝率はありますわ!」
「……だと良いんだが……」
「それに、そんなに不安なら遠隔バフを行えば良いのではありませんの?」
「「……あっ……」」
私の言葉に対して、今になって気付いた様子のトウシロウとナフリー。
まあ、緊急事態に人は冷静な考えが出来なくなるとは言いますけど……
「……とはいえ、そうするにしても2人にはどんなバフが効果的なんだ?」
「分かりませんニャン……」
「あ~、それよりもナフリー殿は魔物討伐を手伝っていただけますかな!?」
「ニャッ!?……わ、分かりましたニャン!」
……ナフリーはロウルに言われ、魔物討伐の手伝いに駆り出されましたわ。
これで、残るは……
「ハァ……トウシロウが迷うのであれば、私が助言いたしますわ!」
「っ!?……ほ、本当か!?」
「取り敢えず、2人は魔法を使いませんし……スピードと攻撃力と防御力、それから体力の方も重要になりますわね……」
「わ、分かった。……【補助全般】!……遠隔でダレスさんとダルクさんに【体力増強】、【攻撃力上昇】、【防御力上昇】、【速度上昇】、【HP自動回復】を付与する!」
この支援が勝利に繋がるかは分かりませんわ。
ですが、私達に出来るのは勝利を祈る事と、雑魚の片付けだけでしたわ。
「……さあ、今度は私達にもバフかけをして貰いますわよ!」
「ああ、そのつもりだ!」
そうして、トウシロウにバフかけをして貰った私達は、継続して魔物及びラビリンス分身体の片付けに精を出すのでしたわ……
ご読了ありがとうございます。
次回、ルウフvsダレスです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。