112.ケール攻防戦 再誕
……取り敢えず、この話を書いたら最低1週間はこの作品は更新しません。
(前話の数日前、青谷 兼人視点)
「それじゃあ、あちきは向こうを探してみるでありんすね~?」
「はい、お願いします……」
……なるほど、本を探すのは死神の介入にはならないって感じですか……
いまいち、基準が分からないですね……
「……まあ、それはそれとして何か役立つ本を探すとしましょう。……本当に、このままじゃ僕は役立たずを脱せないですし……」
……僕のスキル、【図書館】は戦闘向きではない上、得られる情報もそこまで重要ではないか既知の情報のみ……
こんなの、何をどうしろと……
「……試しに確かめてみますか……【図書館】、この世界から元の世界に帰還する方法を教えてください!」
ーピ~ッ!
『現在、該当する蔵書の内マスターの権限で読める蔵書はございません……』
「ふむ……」
当初に比べて変わった点とすれば、この音声放送が流暢になった程度ですかね……
やはり、僕のスキルは外れですか?
「……だったら、こちらも確かめてみましょうか。……【図書館】、死者蘇生に関する蔵書はありますか?……出来れば、僕でも実現可能な物を……」
……死者を蘇生出来れば、もしもの時に戦力を立て直せます。
ただ、そんな都合の良い物がある訳……
ーピ~ッ!
『……1件、ございます……』
「……え?……今すぐ見せてください!」
そうして僕は、僕でも可能な死者蘇生に関する書物を読み漁りました。
念には念を入れて、死神のミツエさんにはバレない様にもしました。
そして、その内容を確認し切った僕は……
「……使用者が代償を払う代わりに、1度だけ使用者が愛する者を生者として甦らせる魔術書。……ただし、使用者はスキル、【図書館】の保有者のみとする……って、そんなの無理ですよ……」
どうしてそこで【図書館】保有者のみに限定するんですか?
……好きな人が居ない僕じゃ全く使えない蔵書って感じですね……
「……まあ、一応持っておきますか……」
こうして僕は、"【図書館】のスキル保有者が愛する者を、スキル保有者が代償を払う代わりに生者として蘇生させる"という効果を持つ魔術書を入手したのでした。
……いったい、いつの時点で権限が解除されていたのかは不明ですが……
「……兼人さん、向こうにそれらしい書物はなかったでありんす……」
「そうですか。……では、次はあちらを探すとしましょうか……」
ミツエさんも戻って来た事ですし、引き続き役に立ちそうな書物を探すとしますか。
……多分、この魔術書を使う機会はこの先ある気がしますし……
それから数日後、ミツエさんの消滅直後……
「……あ~あ、ここに配置してた分身体が殆んど破壊されちゃいましたピョン……」
「……まだ残りが居たんですね……」
消滅するミツエさんを見送った僕は、残ったラビリンス分身体と相対していたのでした。
「ま、これでお前を守る者は居なくなりましたピョンよ?……そろそろ、死ぬ覚悟は……」
「……ミツエさんは、死神の掟を捨てて愛する者を守る事を選択しました。……相手である僕からは恋愛感情を持たれておらず、どう頑張っても報われない恋だった筈なのに……」
「まあ、無駄死にでしたピョンね?」
「……ただ、それってとても人間らしいですよね?……あの人は、死神になっても人の心は持ち続けていたんです……」
「……何が言いたいんですピョン?」
まあ、分からないですよね……
何せ、この魔術書は誰にも報告していなかったんですから。
「……ミツエさんが2度目の死を迎え、僕はミツエさんを好きになった……というか、元々僕もミツエさんさんを少しずつ好ましく思えて来てたので、そこにアレをぶつけられたんですから、好きにならない訳がないんですよ……」
「……ピョン?……気でも狂いましたピョンか?」
「ああ、失礼。……僕が言いたかったのはですね……条件は揃ったって事です!」
ーパラッ……
「ピョン!?」
僕が代償として何を払う事になるのかは分からないですが、それで先代の勇者を甦らせる事が出来るのであれば……
僕の命だって、くれてやりますよ!
「……僕が払う代償と引き換えに、愛する者を甦らせてください!」
そう僕は叫び、その直後に意識を失ったのでした……
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(ササザキ ミツエ視点)
「……ん?」
確か、あちきは死神の掟を破って消滅した筈でありんすよね?
なのに、何で……
……というか、服装も何故か黒い振袖になってるでありんすし……
「ど、どうなってるんですピョン!?」
……やっぱり、ラビリンスも驚いてるでありんすか……
「……って、兼人さんは何処に……」
「……しましたピョンよ?」
「……え?」
「お前が出て来る直前、勇者カネヒトは消滅しましたピョンよ!?」
……え?
何を言って……
と、その時でありんした。
『どうも、【図書館】音声放送でございます……』
「ん?……な、何でありんすか!?」
こ、これは確か、兼人さんがスキルを使った時に流れる声でありんしたよね!?
『現状説明のため、現在ミツエ様に接続してお送りしております……』
「わ、分かったでありんす!……それで、どうして兼人さんが消滅したんでありんすか!?……まさか、あちきと立場を入れ換えたとか……」
『半分正解でございます。……というのも、貴女の復活のためにマスターが払う事になった代償は、立場の逆転。……貴女が現世で過ごしている間はマスターが、マスターが現世で過ごしている間は貴女が、それぞれ現世から消滅します……』
「なっ……」
そ、そんなの聞いてないでありんす!
兼人さんは、何でそんな重要な事を言わなかったんでありんすか!?
『なお、代償の内容はマスターも知りませんでしたので、マスターは貴女を人として復活させるために命を捨てる覚悟でございましたが……』
「そ、そんなのって……ん?……人、でありんすか?」
そういえば、この体には生者特有の温もりがあるでありんす……
……つまり、あちきは人として甦ったって事でありんすか!?
『なお、マスターか貴女のどちらかが現世で死なない限りは立場の逆転を何度でも無限に行う事が出来ますので、その点はご安心ください……』
「……という事は、兼人さんを再び現世に呼び出す事は可能なんでありんすね?……まあ、あちきは会えないみたいでありんすが……」
……まあ、それは良かったでありんす。
少なくとも、あちきを甦らせるために兼人さんが犠牲になったとかじゃ、後味が悪過ぎるでありんすし……
と、その時でありんした。
「ふ~ん、そういう事でしたピョンか……」
「……律儀に待ってたんでありんすか!?」
「まあ、私も気にはなってましたピョンしね?……もっとも、謎が解けた今となっては待つ必要もないですピョンが!」
ービュン!
あちきと【図書館】の音声放送のやり取りを聞き終えて謎を払拭させたラビリンスは、あちきへと容赦なく魔力弾を放って来たでありんす。
とはいえ……
ースカッ……
「遅いでありんすね~。……やっぱり、多くの分身体を動かすと精度が落ちるみたいでありんすね!」
ースパッ!
「ピョン!?」
あちきは、何故か手中に残っていた大鎌を振るい、ラビリンス分身体を容赦なく両断したのでありんした。
「ああ、分身体が完全に壊れる前に聞かせておくでありんす。……あちきの名は笹﨑 光枝、かつて先代の魔王を討ち倒した勇者にして……現代に甦った死神擬きでありんす!」
最早、今のあちきを縛り付けるものは何もなく……
ここに、かつての勇者たる笹﨑 光枝は再誕したのでありんした……
ご読了ありがとうございます。
この代償、本来なら折角復活させた相手には会えず、復活させた相手の性格次第では永遠に消滅したままというなかなかエグいものになっております。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。