111.ケール攻防戦 賭け
もう、頭がいっぱいいっぱいなので、割と文章が終わってます。
(浅山 藤四郎視点)
ータッタッタ!
「ハァ……ハァ……どうなってやがる!」
クソッ!
ちょっと外が騒がしいと思ったから、様子を見に出ただけだったのに……
「いい加減、私達に殺されてくださいピョン!」
「貴方を逃がすと後が面倒なんですピョン!」
「……何で大量のラビリンスに追われる羽目になってんだよ!」
ータッタッタ!
外に出た俺を待っていたのは、宙を浮く大量のラビリンス分身体。
俺、前世で何かやらかしたか!?
「ハァ……ちょこまかと鼠みたいにすばしっこいですピョンね~……」
「生憎、俺も死にたくねぇんでな!」
ータッタッタ!
「……あ~もう!……魔力弾も全然当たりませんピョンし、それなら魔物の部隊をけしかけて……」
あ、ラビリンスが物騒な事を言い出しやがった。
流石にこれは厳しいか……
そう、諦めかけた時だった。
「カブお爺様、お願いしますニャン!」
「キュ~!」
ーバビュ~ン!
「っ!?……防御ですピョ……」
ードカ~ン!
ナフリーと従魔のカブが突然現れ、カブの放った魔力弾がラビリンス分身体の1体にクリーンヒットした。
「ん!?……やけにあっさり当たったな……」
「どうも、1度に操作する分身体の数を多くすると動きの精度が落ちる様ですニャン。……もっとも、それでも大概ですニャンが……」
「なるほどな……それなら、勝ち目もあるか……」
「ただ、まだ問題はありますニャン……」
……そう告げたナフリーの表情は、何処か切羽詰まっていた。
「な、何があったんだ?」
「……ラビリンスがケールの中枢システムを乗っ取って機神を名乗り、ダレス様とダルク様がラビリンスとは別の2体の魔王軍幹部と交戦中という状況ですニャン!」
「……取り敢えず、ダレスさんとダルクさんの所に行くぞ!」
ぶっちゃけ、機神とか俺にはどうしようもないので、その辺は茜を筆頭にした勇者達に任せる事にする。
という訳で、俺はダレスさんとダルクさんの手助けに向かう事にした。
「……こういうすぐに諦める性格が原因で、俺は勇者になれねぇんだろうな……」
「……それでも、ダレス様とダルク様を助けに行くだけご立派ですニャン!」
「……ありがとうな……」
「いえいえ、それ程でもないですニャン……」
そうしてナフリーに慰められながら、俺はダレスさんとダルクさんのもとへ向かうのだった……
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(ササザキ ミツエ視点)
「ピョ~ンピョンピョンピョン!……あちこちで私の分身体が壊されてますピョンが、流石にここは大丈夫みたいですピョンね!」
「ハァ……ハァ……まさか、僕の居場所を捕捉するとは思いませんでしたよ……」
外が騒がしくなった後も書物庫で資料を漁っていたあちきと兼人さんのもとに、突然大量のラビリンス分身体が現れたでありんす。
そして今、兼人さんはラビリンス分身体に追い詰められていて……
「おっと、まさか死神が勇者の肩を持つとか言わないですピョンよね?」
「基本的に、死神は現世のアレコレに介入出来ない筈ですピョン!」
「軽い人間関係ならまだしも、寿命を迎えていない者を殺したり、器物を破壊したりするのは掟で禁止されている筈ですピョン!」
……そうでありんす。
死神であるあちきは、ここで兼人さんを助ける事は出来ないでありんす。
何せ、掟を破った死神は即刻その存在を否定され、消滅してしまうんでありんすから……
……と、ここで兼人さんが口を開いて……
「……そこまでミツエさんに釘を刺さなくても、別に僕は逃げも隠れもしませんよ……」
「ふ~ん、他の皆さんと違って物分かりが良いんですピョンね?」
「ええ。……僕は他の勇者の方々と違って戦闘能力を持っていませんし、ここから逃げる方法も思いつきませんし……」
「なら、遠慮なく殺させて貰いますピョン。……まあ、手間をかけさせなかったお礼として、一撃で殺してあげますピョンよ!」
……マズいでありんす……
このままじゃ、兼人さんが……
「……兼人さん、それで良いんでありんすか!?……勇者として召喚された貴方が、こんな簡単に諦めたりして……」
「そう言われても、今の僕にはどうしようもありませんしね。……まあ、強いて言えば……もう少し人の役に立ってから死にたかったですが……」
人の役に立って死ぬ……
やっぱり、兼人さんも昔のあちきと同じで罪のない人のために命を投げ出せる人なんでありんすよね……
なのに、肝心の人を守る力は得られず、勇者として手に入れたスキルも使い所が殆んどない……
……そんな彼の最期が、こんなのってないでありんすよ!
「……兼人さんは、そんな簡単に命を投げ出す人だったんでありんすか!?……ここで死んでも無駄死にでありんすよ!?」
「……分かってますよ。……だから、賭けに出る事にしたんです……」
「賭け、でありんすか?」
「ええ。……ミツエさんなら分かりますよね?」
……兼人さんは、自分が無駄死にする様な事はしない筈でありんす。
でも、こんな状況で助太刀なんて期待出来ないでありんすし……
……いや、1つだけあるじゃないでありんすか。
兼人さんが賭けられる要素が……
「あ~……いったい何に賭けてるのか分からないでありんすが、所詮この体も分身体ですピョン。……例え今、お前に自爆されたとしても私自身が受けるダメージは皆無ですピョン!」
「ええ、そうでしょう。……でも、どうせ僕なんて居ても居なくても勇者パーティーの戦力に大きな差はありません。……だったら、ここで僕の命をベットして未来の希望に賭けた方が何倍も意義があると思うんですよ!」
「いや、何を意味の分からない事を言ってるんですピョン!」
ラビリンスは、兼人さんの言葉が理解出来ないらしいでありんす。
でも、あちきにはその意図がはっきり分かったでありんす!
「……第1の賭けは、僕の勝ちみたいですね……」
「ハァ?……何を言ってるんですピョ……」
ースパッ!
「……ン?」
「「「「「「ピョン~!?」」」」」」
兼人さんの目前に居たラビリンス分身体の上半身と下半身が、呆気なく切断されたでありんす。
そして……
「ふぅ……やっぱり呆気ないでありんすね……」
「し、死神ぃぃぃぃぃ!……お前、自分が何してるか分かってるでありんすかぁぁぁぁぁぁ!?」
……ラビリンスを斬った下手人は、何を隠そうあちきでありんした。
「……生憎、時間が勿体ないので説明は省かせて貰うでありんす!」
ースパッ!スパッ!スパパパパパッ!
「「「「「「「「ピョン!?」」」」」」」」
あちきは消滅までの限られた時間の中で、その場のラビリンスを大鎌で斬り捨てて行ったでありんす。
幸いにも、ラビリンス分身体はそこまで強くなかったでありんすが、あちきの肉体は時間が経つにつれてどんどんと薄くなっていたでありんす。
「ハァ……ハァ……そろそろ限界間近でありんす!」
「……ええ、ありがとうございます。……さて、次は第2の賭け……僕が、ミツエさんを好きになれるかですね……」
あちきは兼人さんの作戦が分からないでありんす。
だから、何であちきを好きになる必要があるのか、この賭けがどう未来の希望になるのか等、分からない事だらけでありんすが……
「……で、どうでありんすか?」
「ええ……思ったより、僕は自分が思っているより単純だったみたいです……ちゅっ……」
「んっ……」
突然された兼人さんからのキス。
しかし、残酷にも時間切れはやって来て……
「……そろそろ、消える感じですか……」
「……あちきは……この選択を後悔していないでありんす。……だから、気に病む必要は……」
「いえ、大丈夫ですよ。……お陰で、この本が使えます……」
兼人さんが持っていたのは、1冊の本。
そして、その直後にあちきの意識は途切れ……
『……僕が払う代償と引き換えに、愛する者を甦らせてください!』
そんな声が聞こえ、あちきの意識は再び戻ったのでありんした……
ご読了ありがとうございます。
種明かしは次回!
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