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110.ケール攻防戦 機神

久しぶり?の更新です。

(俯瞰(ふかん)視点)


それは、突然巻き起こった。


ーゴゴゴゴゴ……ガチャン!ギコン!ガコン!


ケールの中心部……つまり、システムの中枢が置かれている建築物が、突如として変形を始めたのだ。


やがて、それは身の丈50mはあろうかという巨大な人の形となり……頭部らしき部位には、兎の耳を連想させる機構が形成された。


そして、次の瞬間……


『ピョ~ンピョンピョン!……只今より、ケールのシステムは私が乗っ取らせていただきますピョン!』


ケールの街中に設置されている音声放送用スピーカーから、そんな声がケール全体に拡散された。


「な、何だって……」


「そ、それじゃあ私達はどうなる!?」


「ケールはもうおしまいだ……」


放送の直後、ケールのあちこちから今の状況を嘆く声が上がり始めた。


……だが、こんな状況でも諦めない者達は居た。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(浅山 茜視点)


「……え、本気で言ってる?」


……その放送を聞いた私は、只々呆然としていた。


さっき、私が追うのを中断しなければ……


きっと、こんな事にはならなかった。


「さ~て、勇者アカネはここからどうするつもりですピョン?」


「早く降参すれば、比較的楽に死なせてあげますピョンよ?」


「……絶対に嫌だよ!」


……何とか3体の分身体は破壊したけど、残り2体はキツいかな……


そもそも、私の攻撃って結構大振りで相手によっては避けやすいし……


……きっと、ケールの防衛システムの方が私よりも分身体のキル数は多いんだろうね……


「……あ、もしかして残り2体って思ってますピョンか?」


「いいや、思ってないよ。……どうせケールの乗っ取りが完了したから、他の場所に居る分身体も合流させるつもりでしょ?」


「残念ながら半分正解半分不正解ですピョン。……正解は……っとその前に、ケールの中心部には自動人形(オートマトン)の製造工場があるって知ってましたピョン?」


「……それがどうし……って、まさか……」


え、本気で言ってる?


そ、そんなのマズいってレベルじゃ……


「……あの老いぼれのせいで未だにケールのシステムを完全には掌握出来ていませんピョンが……少なくとも、完全掌握出来たシステムは少ないながらも幾つかありますピョン!」


「……そ、それが自動人形(オートマトン)製造システムだとでも?」


「正解ですピョン。……じゃあ、そういう訳で……」


「「「「「「「「「「「「第2ラウンド、開始ですピョン!」」」」」」」」」」」」


……私の前に現れたのは、数え切れない程のラビリンス分身体だった。


しかも、私の前だけじゃなくてあちこちに飛んでってるし……


「……こ、これは厳しいね……でも、さっきの言い方だとまだシステムは完全掌握出来てないんだよね?」


「そうですピョンね~。……あのプルスレゼスとかいう老いぼれ、ケールの中心部に行く途中で始末しておけば良かったですピョン……でも、あの時は一刻も早くシステムの掌握をする必要が……」


「ふ~ん……なら、私も頑張らないと!」


プルスレゼスさんの話は聞いてる。


ケールの技術者を1人で纏め上げる、変人のお爺さんだっけ……


その人が何とかシステムの完全掌握を阻止してる以上、私も頑張らないと……


と、その時……


『う~ん……私が想定してた以上に抵抗者が多いですピョンね~。……今の私は、いつもの迷兎将軍 ラビリンスとは訳が違うんですピョンよ?』


「……なら、何だって……」


『……"迷兎機神(・・・・) ラビリンス(・・・・・)"……それが、今の私ですピョン!』


……機神、か……


確かに、ケール全体を掌握したのだとしたらその称号も正しいかもね……


……でも、まだ勝機はある。


「だったら……プルスレゼスさんが何とかしてくれてる間に、私達がその機神とやらを倒すだけだよ!」


「ピョンピョンピョン……やれるものならやってみなさいですピョン!」


こうして、私は目前に広がるラビリンス分身体の大群へと攻撃を仕掛けた。


……私は死なないつもりだけど、もしかしたら……


ああ、最期にシトラスちゃんに会いたかったな……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(俯瞰(ふかん)視点)


"迷兎機神 ラビリンス"を名乗る巨大な人型機構の内部にて……


ーカタカタカタカタ……


「ハァ……ハァ……ゴフッ!……"ケールの住民に危害を加えてはいけない"、という命令を常時システム中枢に入力する事で、何とか被害を出さずに済んでいるのであ~る……」


ラビリンス分身体が大量に製造された現状であっても、ケールの住民に犠牲者は出ていなかった。


というのも、プルスレゼスが自身諸共ラビリンスに取り込まれた空間から、システムに直接指示を入力し続けていたからだ。


「ラビリンスは分身体同士で感覚を共有しているのであ~る……つまり、ケール産のラビリンス分身体以外も、この指示に引っ張られるのであ~る!」


当然、ラビリンス分身体の1体が幻影を惑わされたとしても、他の個体が幻影を見る訳ではない。


だが、こうした指示にはどうしても引っ張られてしまう。


その効果もあって、現状ラビリンスは標的(ターゲット)を勇者パーティーのメンバーに絞っていた。


「……とはいえ、この時間稼ぎも長時間は保たないのであ~る……だから、誰か頼んだのであ~る……」


ーカタカタカタカタ……


プルスレゼスは外の誰かに希望を託しつつ、継続してシステムに直接指示を入力し続けた。


……例えこの身が滅びようとも、このケールという街を守るために……



同時刻、魔物の群れの最奥にて……


「……おい、ラビリンス!……少し来るグルァ!」


「ん?……どうかしましたピョン?」


突然、ルウフがラビリンス分身体の内の1体を呼び止めた。


「……何故、未だにケールの者を1人も殺せていないグル?」


「うっ……いや、さっきまでは一刻も早くシステムを乗っ取る必要がありましたピョンし……」


「では、今はどうしたグル?」


「……システムの中枢が設置されている……今、巨大な私の分身体になりつつあるあの建物に居るプルスレゼスとかいう老いぼれに、"ケールの住民に危害を加えてはいけない"って命令を常時入力され続けてるんですピョン!……その結果、ケールの住民に危害を加えようとしただけで動きがフリーズして……」


「グルァ……やはり一筋縄では行かないグルか……」


ルウフは落胆した。


もっとも、それで侵攻の手を緩める程ヤワな男でもないが……


と、その直後……


「隙ありっす!」


ーピカッ!……ザシュッ!


「グルッ!?」


「キィィッ!?」


突然、ルウフめがけてレーザービームが飛んで来た。


「だ、大丈夫ですピョンか!?」


「か、肩が大きく抉られてるっキィィ……」


レーザービームは、ルウフの左肩を大きく抉り取っていた……


それこそ、左腕の使用は困難な程に……


「グルルルル……本官を狙ったのは誰だグルァ!」


「私っす!」


「ついでに私もデス!」


ルウフに自身を狙ったのは誰だと問われ、姿を現すダレスとダルク。


そんな彼女達に、ルウフは淡々と言葉を紡ぐ。


「……確かに本官は左腕を使えなくなくったグル……だが、その程度で本官を倒そうなど片腹痛いグルァ!」


「……お前、途中で私のレーザービームに気付いて避けたっすよね?……まあ結局は避け切れなかったみたいっすけど、反応出来ただけ凄いっすね……」


「……どうしマス?……不意打ちで仕留め損ねてしまいマシたが?」


「……やるしかないっすよ……そのために出て来たんすから……」


一見するとダレスとダルクの不意打ちが成功したかの様に見えても、優勢なのは依然として魔王軍陣営だった。


「……ふん、貴様等は本官が直々に討ち取らせて貰うグルァ!」


「あ、1人はオイラに殺らせろっキィィィィ!」


「……私がルウフを担当するっすから、ダルクはルササを頼むっす!」


「分かりマシた……」


そうして、他の者達が魔物やラビリンス分身体の対処に追われている片隅にて、発明家コンビと魔王軍幹部2人の戦闘が幕を開けた。


しかし、この勝負において現時点の発明家コンビが勝利出来る可能性は、限りなく低いのであった……

ご読了ありがとうございます。


ラビリンスの現状を分かりやすく説明すると、何かしようとしてる時に横から相反する命令が飛んで来て、エラーが起こっている様なものです。


気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。


後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。

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