11.チャラ男の提案
この流れで主人公とヒロイン (1人目) の仲を一気に進展させたい!
(俯瞰視点)
とある暗闇……
ーヌッチャ……ヌッチャ……
それは不気味な音を鳴らしながら、暗闇を這いずり回っていた。
ーヌチャヌチャ……ヌチャ……
それに自我はなく、ただひたすら周囲を這いずり回る事しか出来ない存在だった。
そして、それに立ち塞がる影が数匹……
「「「キシャァァ!」」」
影の正体は、小型犬サイズの蛇であった。
ーヌッチャ……ヌチャッ……プルプルプル……
小型犬サイズの蛇に睨まれながら、それは少し揺れ動く。
そして、次の瞬間……
ープルプル……ジュバッ!
「「「キシャァ!?」」」
ーどぷんっ……
小型犬サイズの蛇達は、形を変えたそれに呑み込まれてその生涯を閉じた。
ーヌッチャ……ヌッチャ……
そうして唯一その場に残ったそれは、再び不気味な音を鳴らして徘徊を再開したのだった……
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(浅山 藤四郎視点)
「下水道探索?」
「そ、藤四郎チャンも興味あるっしょ?」
「いや、別に……」
ナフリーを司や正義と会わせた数日後の夜、俺と茜とナフリーは正義に呼ばれてとある飯屋にやって来ていた。
なお、勿論だが正義の奢りである。
「まあまあ、お兄ちゃん。……話は最後まで聞いた方が断りやすいよ?」
「こ、断る前提なんですニャンね……」
ナフリーは困惑していたが、断る以外に選択肢なんて無いに等しい。
何が楽しくて異世界の下水道探索なんてしなきゃならないんだか……
「ま、断るなら引き止めはしないっしょ。……でも、聞くだけ聞いて欲しい訳よ。」
「……何かあるのか?」
「お、話が早くてマジ助かる~!……実はこの下水道、小型魔物の温床になってるらしいっしょ。」
「それを討伐しろと?」
「そろそろゴブリン退治も飽きてきた頃っしょ?」
「まあ、否定はしないな。」
確かに、最近はゴブリン退治も流れ作業の如くナフリーにやって貰っていた。
その甲斐あってか、最近はゴブリンの湧きも少なくなって来ていた頃だ。
「……ま、流石のゴブリンもナフリーちゃんに仲間が殺されまくってたら寄り付かなくなるよね……」
「こうなったら数日空けないと、寄り付かなくなったゴブリンは戻って来ないですニャン。」
「……ってな訳で、一緒に頑張るっしょ!」
「ああ、そうだな。……ちなみに司は?」
「……ちゃんと後から合流っしょ!」
「……後、前々から気になってたがその喋り方は何だ?」
「それに関してはノーコメントっしょ。」
……正義って性格は良いんだが、話し方といい態度といい、どうも掴み所が無いんだよな……
「……まあ一応受けるのは決定事項として、そろそろ本当の事情を聞かせてくれねぇか?」
「……本当の事情って、俺チャンは何の事だか……」
「別に何聞いても断らねぇよ。……何せ、これでも俺達は"勇者パーティー"の1つなんだからな。」
茜が勇者な以上、"勇者パーティー"というのも間違いないだろう。
……ジョブが勇者と支援職と武闘家?のパーティーとかバランスが悪いにも程があるが、雇う金が勿体ないので仕方がない。
「……なら、詳しい話は兼人チャンから聞くと良いっしょ。」
「いや、今聞きたいんだが?」
「そう言うと思って呼んでるっしょ。」
「……どうも、青谷 兼人です……」
「……やけに準備が良いじゃねぇか。」
正義が兼人を呼んでた辺り、こうなる事まで予想してたって事だよな?
チャラ男っぽいのに意外と頭も回るのか……
「えっと、まず今回の討伐対象なんですが……僕が聞いた話では、下水道に大量に住み着いていると思われる"ビッグスライム"だそうです。」
「ビッグスライム?」
何か、ちょっと不穏な空気が流れて来たぞ?
「ナフリーちゃん、知ってる?」
「はいですニャン。……ビッグスライムはご主人様程のサイズを誇るスライムの上位種で、放っておくと融合を繰り返して"キングスライム"に進化する厄介な魔物ですニャン。……でも、確か王都の様な大きな都市には魔物用の結界が張られていて、内部では魔物は湧かないと聞きましたニャンが……」
「……確かにそれは正しいですし、少なくとも大きな都市の外で育った人にはそう思われているそうです。……ただ、下水道の様な濁った魔力が沈殿しやすい場所は例外で、沈殿した魔力からスライムが発生したり、魔力に当てられた蛇等の小型生物が魔物化するケースもよくあるそうなんです。」
「そ、そうなんですニャンね……」
……つまり、それで下水道が小型魔物の温床になってる訳か……いや、俺レベルの大きさは小型じゃねぇだろ!?
「そういう訳で、定期的に冒険者ギルドがスライムを狩って進化しない様にしてるそうなのですが、今回は何故かビッグスライムが何体も発生しているらしく……」
「でも、その分報酬もホクホクっしょ。……ま、銅以上限定の依頼なのがマジ萎えなのを除けばなんだけど……」
「ん?じゃあ鉄の俺達は受けられねぇぞ?」
「あ、そこは問題ないそうですよ。」
「え?」
下水道探索が銅でない以上、俺達は依頼は受けられない、そう思った。
思っていたのだが……
「勇者及びそのパーティーは例外なく銅ランクになるように、王家の方で細工したらしくてですね……多分、明日にでも昇格してます。」
「マジか……」
あの王と第一王女……かは知らんが、着々とお膳立てされてるのが分かる。
ついでに、今回の一件からだいぶ厄介事の臭いがしているのも……
「……とにかく、今回の討伐依頼はお三方にも参加して貰います。……それとこれは余談ですが、本来スライムの討伐証明用納品物はスライムの核にあたる魔石なのですが、今回は特例で参加しただけで一定の報酬が望めるらしいですよ?」
「……つまり、そんだけ危険な依頼って訳か。」
「ただでさえ本来出現しないゴブリン上位種やオークの発見であたふたしてる最中に、ビッグスライムの大量発生ですからね……冒険者ギルドもなりふり構ってられないんでしょう。」
……兼人の言葉を聞いた瞬間、最近の冒険者ギルド運営がお通夜みたいな雰囲気だった事をふと思い出す。
全く気にしてなかったが、そんな事情があったのか……
「……ってな訳で、よろしく頼むっしょ。」
「……分かった。」
「OKだよ~。」
「分かりましたニャン。」
そうして俺達は下水道探索の依頼を受ける事にした。
……この依頼で待ち受ける困難など知らずに……
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(扇羽 司視点)
「ふむ……これが例の下水道か……」
ボクは今、厳重に立ち入りが禁止されている下水道への入り口にやって来ていた。
とはいえ、下水道と言っても日本のそれとは違い、ただ汚水を垂れ流しただけの通路という感じだった。
……中世の西洋で使われていた下水道と言えば正義君達に伝わるかな?
「……ここに大量のスライムが、しかも広大な王都中の下水道に広がっている……嫌な話だね。」
美しくない、本当に……
「でも、これも勇者の仕事だと思えば苦じゃない。」
ボクの頑張りで救われる人が居るなら……
「……弱者を守るのが強者の務め。ボクの美しさは民を守りきってこそ証明される!」
さあ、ビッグスライム達……
ボクの美しさの踏み台になって貰うよ。
「……だから、うん……【汚れ無き世界】もあるし、大丈夫……な筈!」
……結局、ボクは下水道に入るのが嫌なだけだった。
いやだって、普通あんな不衛生な所行きたくないし……
……ボク、誰に言い訳してるんだろ?
「まあ良いさ。……行ってみせるよ!」
……結局、ボクは依頼当日も克服出来ずに入り口で四苦八苦する事になるのだけれど、それはまた別のお話……
ご読了ありがとうございます。
下水道探索で1章を埋める話数を稼ぐ!
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。