107.変人プルスレゼス
……搾り出した結果、よく分からない話が出来ました。
(浅山 藤四郎視点)
自動飛車から下りると……
「うおぉ……な、何だここ……」
目の前に広がる光景に、俺は何も言えなくなった。
「何って……目的地の特殊工房っすよ?」
「工房って規模じゃねぇだろ……完全に大規模な工場じゃねぇか……」
ダレスさんが特殊工房って言うから、どんな工房かと思ったら……元の世界で大企業が所有してたレベルの工場よりもでけぇんだが!?
「……まあ驚くのは想定内デスので、さっさと入りマショう……」
「か、考えたら負けなパターンか……ケールってそんなんばっかだな……」
何かもう、ケールに来てから驚きっぱなしだぞ……
「だ、大丈夫ですニャンか?」
「ああ、大丈夫だ……」
本当にナフリーは優しいな……
「トウシロウ、もう驚くだけ無駄ですわよ……」
「……メアリー、何かもう目が死んでるな……」
メアリーは既に考える事を辞めていた。
「はへ~……私めは夢を見ているのですかな?」
「ロウルはん、現実や……」
「……エルリス、前来た時ってこんな建物あったかのう?」
「いや、無かった筈や……」
ロウルさん、エルリスさん、メサイアさんもまた、呆気に取られていた。
「え、これ外観見ただけでそこまで驚く程の建物っすか?」
「……まあ、まだ何とか行けるか……」
「では、こちらへ来てくれマスか?」
「わ、分かった……」
そうして俺達は、ダレスさんとダルクさんに先導される形で特殊工房へと入った。
そして、その中は……
「……マジかよ……」
見渡す限りよく分からねぇ機械が並ぶ吹き抜けホールの様な場所に出た。
しかも、外観通りの馬鹿デカい広さだ。
これには他の皆も……
「……ほんま、どの機械もよう分からへんわ~……」
「……妾も同じじゃ……」
「……私めにも何が何だか……」
「……考えるだけ無駄ですわ……」
「……あたしの常識がどんどん破壊されていますニャン……」
……という反応。
もう、俺からは何も言えなかった。
と、その時……
「おや、そこに居るのは先生であ~るか?」
ーフワフワ……
突然、上の階から何かに乗って何者かが現れた。
「ん?……あ、プル坊やんか……」
「えぇっ!?」
エルリスさんがプル坊……つまりプルスレゼスさんだと判断した相手は、とてもじゃねぇが偉い人とは思えなかった。
某7つ集めると願いが叶う玉が登場する漫画の某宇宙の帝王の軍隊が乗っていた半球状の乗り物に酷似した乗り物に乗った、薄汚れた白衣やアフロの白髪、それに加えて赤い丸眼鏡と長い白髭が特徴的な老人という容貌だったからだ。
「おっと、そこに居るのは例の勇者パーティーの一員であ~るな?」
「そ、そうだが……」
「あ、メサイア様も居るであ~るか?……やはり戻って来たであ~るか……」
「お、思ったより驚かんのう……」
何というか、前評判も納得というか……とにかくプルスレゼスさんの性格はとても濃かった。
何というかこう、自分が興味ある事しか頭にないって感じで……
「おっと、こうしちゃいられんのであ~る!……早くあの研究を完成させねば……いや、この発明が先であ~るか?……ううむ、悩ましいであ~る!」
ーフワフワフワ~……
「……ってな感じの変人なんすけど、何の用があったんすか?」
……変人だとは思ってたが、まさかダレスさんからも変人って言われる程の人か……
「……なあ、エルリスさん?……本当にあの人に用があったのか?」
「いや、ホンマに顔を合わせに来ただけやよ。……っちゅうか、弟子やった頃からあんな感じやから、ウチでも全然コミュニケーション取れへんねん……」
「……駄目じゃねぇか……って、プルスレゼスさんもうどっか行っちまったぞ?」
「構へんよ……話しても疲れるだけやし……」
結局、エルリスさんと話している間にプルスレゼスさんは何処かに行っていたのだが……エルリスさんはそれでも構わねぇみてぇだった。
……それじゃあ、俺達は本当に何しに来たんだよ……
俺はそう思わずには居られなかった……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(青谷 兼人視点)
「……ハァ……ケールでなら、何か元の世界に戻る方法が見つかるかと思ったんですが……現実はそう甘くないですよね……」
僕は今、ケールの書物庫で資料を漁っていました。
……目的は勿論、元の世界に戻る方法です。
と、その時でした。
「……兼人さん、どうしたんでありんすか?」
「……ミツエさんですか……」
背後からミツエさんが話しかけて来ました。
……というか、ミツエさんさっきから僕の事を眺めるだけ眺めて何もアクションして来ませんでしたよね?
いきなり話しかけて来て何の用ですか……
「元の世界に戻る方法を探してたんですが……やっぱり、そう都合の良い物はありませんね……」
「……兼人さんのスキルを使えば良い話じゃないんでありんすか?」
「僕のスキル、何故か未だに閲覧権限が上がらないんですよ……」
「そ、そうでありんしたか……」
本当に、何をしたら上がるんでしょう……
それこそ、魔王を倒すとかですか?
「……とにかく、僕のスキルで閲覧権限が上がらない以上、こうして地道に少しずつ調べて行くしかないんですよ……」
「そ、そうでありんすか……」
ミツエさんは僕の話に相づちは打ってこそいますが、どうも話に深く関わろうとしていない風に見えます。
……まあ、僕に好意を伝えて気まずいんでしょう。
「……僕はまだ調べ物をしますが、ミツエさんはどうしますか?」
「あ、あちきも一緒に居るでありんす!」
「ハァ……なら、邪魔しないでください」
「わ、分かったでありんす……」
……そうして僕達はその後何時間も書庫で調べ物をしましたが、最後まで目当ての情報が見つかる事はありませんでした……
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(浅山 茜視点)
「う~ん……やっぱりSF感が半端ない街だな~……」
私は今、ケールの街中を歩いてた。
……特になにもせずに……
と、その時……
「やぁ、茜君?」
「茜チャン、ナンパしてるんじゃなかった訳?」
……司ちゃんに正義君……
まさかここで会うとか……
「……へぇ~、2人もお兄ちゃんと別行動する事にしたんだ?」
「……茜君、何か隠しているのかい?」
「俺チャンもそう思うっしょ……」
……やっぱり、この2人の勘は鋭い。
私じゃ上手く取り繕えないね……
「いや、別に隠してる訳じゃ……」
「じゃあ、言ってくれるかい?」
「うぅ……ちょ、ちょっと気になる事があって……」
「それは何だい?」
「何っしょ?」
……言わなくちゃ駄目かな~。
いやまあ、こんな行動してても相手に疑念を抱かせるだけなのは分かってるけど……
「……他の皆には秘密にしてよ?」
「分かってるさ。……で、茜君はボク達に何を話してくれるのかな?」
「じ、実はその……大人のオモチャを探してて……」
「「え?」」
ほら、そんな反応するじゃん!
「こんなに科学と魔法が発展してる街なら、元の世界を越える大人のオモチャがあるんじゃないかって思って探してたの!」
「……そ、それは何というか……」
「……しょうもないっしょ……」
「うぐっ!」
悪かったね!
しょうもなくて!
「……わざわざ嘘をついてまで藤四郎君から離れたから、てっきり何かあるのかと思ってたのだが……」
「まさか、そんな事だとは思わないっしょ……」
いやまあ、思わせ振りな雰囲気出した私も私だけどさぁ!
そこまで言わなくて良いでしょ!?
「な、何だかすまなかったね……」
「ご、ごめんっしょ……」
「いいや、許さないよ!……2人には私へのお詫びとして、大人のオモチャを買うのに付き合って貰うから!」
ふっふっふ!
それが嫌なら泣いて詫び……
「それで茜君が許してくれるなら……」
「俺チャン達は構わないっしょ!」
「いや、嫌がらないの!?」
……そうして私は、大人のオモチャを買うのに司ちゃんと正義君を引き連れる事になっちゃったのでした……
……いや、何でそうなっちゃうかな……
と思った時には、完全に後の祭りだったけど。
ご読了ありがとうございます。
次回、ケール攻防戦行きます……更新がいつになるかは分かりません!
気が向いたらいいね、ブックマーク登録してくれるとありがたいですが、あくまでも気が向いたらで大丈夫です。
後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。