106.発明家コンビの経緯
アイデアが湧きません。
(浅山 藤四郎視点)
プルスレゼスさんの居場所を探してしばらく歩き回って数分が経過した。
「……で、俺達は何処に向かってるんだ?」
「……えっと、分からへん……」
「……え?」
「だって、プル坊の居場所が分からんのやもん……」
正直に言って、俺としてはエルリスさんには何処か心当たりがあるんじゃねぇかと思っていた。
思っていたのだが……それは間違いでしかなかった。
「……なあ、ダレスさんにダルクさん、2人はプルスレゼスさんの居場所って……」
「知らないっす!」
「知らないデスね……」
「……だよな……」
さっきも言っていたが、やはり2人はプルスレゼスさんの居場所を知らないらしい。
と、ここでナフリーが口を開いて……
「あの~……そもそも、本拠地……つまりデルレン商会のケール支部を確認した方が良いのではないですニャンか?」
「っ!……確かに、何で俺はそんな事に気付か……」
「いや、プル坊が大人しく職場に居る訳あらへん。……あの子の事やから、きっと副支部長に丸投げしとる筈や!」
「あ~……そうっすね!」
「そうデスね……」
……うん、プルスレゼスさんって大丈夫か?
いや、性格に難があるとは聞いてたが……まさかここまでとは……
……と、ここでダレスさんが何かを思いついた様な表情を浮かべて……
「……あ、そういやプルスレゼス様が居そうな場所に心当たりがあったっす!」
「っ!……何処だ!?」
「えっと、ここから少し離れた場所にある特殊工房っす!……で、確かそこまで行ける自動飛車の路線もあった筈っすから、それで行くっす!」
……自動飛車、それは多分宙を浮いている車両を指しているんだろうが……本当に科学だか魔法だか知らねぇが技術の差が外と違い過ぎる。
「……え、あれで行くんですの!?」
「あ、10人以上乗れるっすから、心配は無用っす!」
いや、ダレスさん……そういう事じゃねぇんだよ……
「ま、まあ行き先は決まった事やし、さっさと行こか……」
「そ、そうじゃのう……」
「そ、そうですな……」
……エルリスさん、メサイアさん、ロウルさんの3人は、最早考える事を諦めていた。
いやまあ、元の世界基準で見ても未来都市なんだから、パッと見は中世っぽいケール外の住民からしたら常識外も甚だしいよな……
……とまあ、そんな事を考えながら俺達は空飛ぶ車両に近付いた。
なお、車両とは言ったがこれはどちらかと言えば窓の付いた大型コンテナであり、本気でこんな物が飛ぶのかと心配にもなった。
だが……
ーフワフワ……
「ほ、本当に浮いてやがる……」
「う、浮いてますニャン……」
「浮いてますわ……」
「浮いてますな……」
「浮いてるなぁ……」
「浮いてるのじゃ……」
大型窓付きコンテナが浮かび始めるのを見て、俺、ナフリー、メアリー、ロウルさん、エルリスさん、メサイアさんは呆気に取られていた。
……というかエルリスさんやメサイアさんが驚いてる辺り、前にこの2人が来た時にはまだなかったって感じだよな?
……本当に未来都市じゃねぇか……
そして、そんな俺達とは反対に……
「そ、そこまで驚くっすか?」
「マスターに同意しマス……」
この光景が日常となっているダレスさんとダルクさんからすれば何に驚いているのか分からないといった様子で、価値観のギャップを感じた。
……というか、これ元の世界でも似た様な光景あるよな?
未開のサバンナやジャングルに住む人達が、都会の光景を見た時みてぇな感じで……
……って、そんな事を考えても何にもならねぇな。
「じゃあ乗るっすよ!」
「ああ、分かった……」
乗るまでに結構時間はかかっちまったが、そうして俺達は自動飛車とやらに乗り込んだのだった……
そして数分後……
「す、凄いですニャン……」
「圧巻ですわね……」
自動飛車の窓から見えるSF染みた光景を眺めながら、ナフリーとメアリーはそう呟いていた。
同時に、少し離れた場所では……
「……私め、こんな光景初めて見ましたぞ……」
「……なあ、ウチ等が前来た時ってここまでやなかったよな?」
「そ、そうじゃな……」
ロウルさん、エルリスさん、メサイアさんの3人は、何度めか分からねぇレベルで呆気に取られていた。
……さて、今なら話せそうか?
「なあ、ダレスさん。……ダルクさんの見た目がダレスさんそっくりなのって、何か理由があるのか?」
そう、俺が気になっていたのはダレスさんとダルクさんが瓜二つだという事の理由だ。
ただ、これまでずっと聞いていなかったのは、もしダレスさんの死んだ双子の姉か妹をモデルにしたとかいう重い過去があった場合、その後が気まずくなると思ったからだ。
そして、その答えは……
「ん?……単純に見た目を考えるのが面倒だっただけっすけど……」
「……え?」
それだけ?
いや、そんな事で自分そっくりの存在を生み出したりはしない筈……
そうして俺がフリーズしていると……
「えっと……何を考え込んでるんすか?」
「いや、死んだ双子の姉か妹が居たとかは?」
「いきなり何の話っすか!?……というか、私には姉も妹も従姉妹も居ないっすよ!?」
「えぇ……それで自分そっくりの存在とか作るか?」
言っちゃあアレだが、それなら影武者とかでもねぇ限り自分そっくりの存在とか生み出さねぇだろ!
「……本当デスよね。……マスターには重い過去なんて欠片もありマセん。……私をマスターそっくりに作ったのも、本当に見た目を考えるのが面倒になっただけデスし……」
「……大した理由もなく、自我を持つ存在の見た目を自分そっくりにするとか……本当にマッドサイエンティスト染みてねぇか?」
「いや、黙って聞いてりゃ酷い言い様っすね!?」
「マスターはそこまで言われる様な事をしているんデスよ……」
確かに言い過ぎだったかもしれねぇ。
元の世界でだって、ロボットの見た目を現実の人間と同じにしている映像を何度も見て来た。
だが、ダルクさんにはロボットと違って自我がある。
そんな自我があるダルクさんの見た目を自分そっくりにするとか……マトモとは言えねぇよな……
「うぅ……でも、双子みたいで良いっすよね?」
「ん?……マスター、先日は親子の様なものだと言っていマセんでしたか?」
「えっ、それはその……別に良いじゃないっすか!」
「……何かこう……もう考えるだけ無駄っぽいな……」
どうも聞いてる感じ、この2人に悲しい過去とかなさそうだな……
本当に、ダレスさんはダルクさんを作る際に見た目を考えるのが面倒になっただけで……ん?
「……ハァ、もう疲れたっす……」
「なぁ、ダレスさん?」
「何っすか?」
「そもそも、何でダルクさんを作ろうと思い立ったんだ?」
悲しい過去がないなら、尚更分からねぇ。
何せ、普通に考えたら悲しい過去を持っていない人物が自我を持つ存在を作り出すとか考えられねぇし……
「単純にひらめいたからっすけど?」
「本当にか?」
「本当っすよ!」
「……本当か~……」
結局、徹頭徹尾この2人に悲しい過去等なかった。
あったのは"ひらめき"で人造人間を作り出した発明家と、特に生み出された事に恨みを抱いていない人造人間という……何とも言えねぇ答えだけだった。
と、そうこうしていると……
「あ、そろそろプルスレゼス様が居るかもしれない特殊工房に着くっすよ!」
「あ、ほんまか?」
「本当っす!」
「ほな、下りる準備しよか~……」
結局、大した成果は得られなかったが、どうせ道中の暇潰しだった訳だし、これで良いだろう。
……そんな事を考えながら、俺達は停止した自動飛車から下りるのだった……
ご読了ありがとうございます。
ダレスとダルクには、マジで悲しい過去がありません。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。