105.ケールの概要
念のため言いますが、この作品の異世界言語は自動で日本語に翻訳されています。
(浅山 藤四郎視点)
「……で、この街は何なんだ?」
ぶっちゃけ、俺は混乱していた。
何せ、目の前に広がる光景が明らかに異世界ファンタジーの世界の街というより、SF小説等に登場する街にしか見えなかったからだ。
「あ、それは私が説明するっす!」
「た、頼むぞ?」
「コホン……まず、この街は何百年も前にドワーフが開拓した地下都市だったっす!」
「……ドワーフか……」
そういやラフロンスで出会ったベガンダさんもそうだったが、ドワーフは基本的に物作りが上手い種族だからな~……
こんな街を作れてもおかしくねぇのか?
「……そんなドワーフが集まる地下都市だったケールには、どんどん発明家を始めとした技術者が集まる様になっていったんすけど……その結果がこれっす!」
「いや、諸々飛ばし過ぎだろ!」
何で技術者が集まっただけでこうなるんだよ!
「え~……でもまあ、そうなる気持ちも分かるっす。何せ、この街の内外で文明のレベルに差があり過ぎるっすからね……」
「デスが、私達も深くは知らないのデス。……技術者が集まって数百年が経ち、こうなったとしか伝えられていないので……」
「……だからってな……というか、この技術を一般流通させねぇ理由が分からねぇんだが……」
「それは簡単っす!……単純にこの街の外には、ここの機械を整備出来る人間が居ないんすよ……」
「……なるほど……」
結局、ここにある機械だって整備する人間が必要になる。
だが、ケールの外にここの機械を整備出来る人間は居ないため、もし壊れたらどうにもならない……という理由で一般流通はしてねぇらしい。
「……というか、街内部だけで見ても一部の機械に関しては何回か整備方法が失伝しかけてるっすしね……」
「いや、それ洒落にならねぇぞ……」
「そう思うっすよね?……でも、現実問題としてはいつの時代も後継者不足を起こす技術者が出て来るもんなんすよ……」
「……ほんとこの街、よく保ってるよな……」
何かもう、想像以上にギリギリで保ってるな……
……ただまあ、部外者の俺が何か出来る訳でもねぇし、あんまり首を突っ込むのは止めておこう。
とまあ、そうして俺がこの街について一通り聞き終えると……
「あ、お兄ちゃん一通り聞き終わった感じ?……なら、私はちょっと向こうに行くね?」
「ん?……茜、何しに行くつもりだ?」
「何でも良いじゃん。……決して、向こうに居るお嬢さんをナンパしようなんて欠片も……」
「……ナンパなんだな?」
「うぅ……」
本当に茜はブレねぇな……
……いや、やっぱり駄目だろ。
「茜、好きな人が居るならそっちを優先すべきだと何度も言って……」
「……あ~もう!……そのくらい分かってるしナンパは冗談だよ!」
「本当か?」
「ほ、本当だよ?」
「……ハァ……茜が何しようと勝手だが、後で刺される様な事だけはするんじゃねぇぞ?」
何かもう、茜を信じるしかねぇか……
……不安しかねぇが。
「わ、私だってそのつもりだよ!……じゃあね!」
ータッタッタ……
「行っちまったか……」
……茜の様子、何か変なんだよな……
さっきのナンパも、俺には何かを誤魔化してる様にしか見えなかったし……
と、そこへ更に……
「……あ、僕も別行動をさせて貰います。……少し確認したい事がありまして……」
兼人も別行動をしたいと言い始めた。
そして、それに続き……
「……それ、あちきも同行したいでありんす……」
何と、ミツエさんが兼人に同行するらしい。
「ぼ、僕は良いですが……」
「じゃ、じゃあ決まりでありんすね!」
「……で、では行きますか……」
「そ、そうするでありんす!」
ータッタッタ……
そうして、兼人とミツエさんも何処かへと行ってしまった……
……ここまで来れば、この後に何が起こるかも分かってくる。
「……藤四郎君、ボク達も……」
「ああ、司と正義も別行動か?」
「そうっしょ!……って、やっぱこの流れだと分かっちゃう感じ?」
「そうだな……」
案の定、司と正義まで別行動すると言い始めやがった。
いやまあ、別に好きにすりゃ良いんだが……
……というか、何で俺に相談するんだよ……
「じゃあ、ボク達は行くよ……」
「また夜に合流するっしょ!」
ータッタッタ……
「……これで残るのは俺と俺の恋人達と発明家コンビの8人だけか……」
当初は13人居た筈なのに、気付けば8人……って、そんなに減ってねぇな……
「ほな、ここに居る皆はウチに同行してくれへん?……ちょっと野暮用があるんやけど……」
「あ、もしかしてプルスレゼス様の所デスか?」
「ん?……せやよ。……ま、プル坊が何処に居るんかは知らへんのやけどね……」
「まあ、プルスレゼス様はしょっちゅう研究場所を変えていマスからね……そもそも、決まった定位置が存在しないお方デスし……」
……何か、また知らねぇ名前が出て来やがった。
だがまあ、エルリスさんが【~坊】呼びしている事を考えれば、その人もまたエルリスさんの弟子なんだろう。
「……2人とも、トウシロウ達が誰それ状態になってるっすよ?」
「あ、言い忘れとったわ……プル坊ことプルスレゼスはんは、デルレン商会ケール支部支部長をやりつつケールの統括技師長も兼任しとる優秀な技術者や。……ただ、性格にかなり難があるっちゅう欠点もあるんやけどな……」
……デルレン商会ケール支部支部長兼、ケールの統括技師長って……大層な肩書きを持ってやがるな……
「……で、その人にこれから会うのか?」
「……ウチもあんま気乗りせぇへんのやけど、あれでもウチの弟子の1人で一番弟子やからな……会わへん訳にはいかんやろ……」
「それもそうか……」
……エルリスさんが会いたがらないってどんな人なんだよ……
そう思いながら、俺は他の皆と共にエルリスさんについていくのだった……
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(俯瞰視点)
ケールから少し離れた場所にて……
「ハァ……ハァ……指示されていました魔物集め、順調に進んでいますピョン……」
「ふむ、ご苦労だグル……」
そこでは、ラビリンスがルウフによってこき使われていた。
「……で、何を捕まえたんだっキィィ?」
ルササがラビリンスに対し、どんな魔物を捕らえたか質問した。
「えっと……アイアンリザード、メタルクラブ、タンクトータス、マグマワーム……等の魔物を大量に捕らえましたピョン……」
「うむ、上出来だグルァ!」
「あ、ありがとうございますピョン……」
ラビリンスはどうにか大量の魔物を確保した。
それこそ、自動人形の肉体でありながら疲れ果てる程には……
だが、ルウフはそんなラビリンスを欠片も気にせず言葉を続けて……
「では、次のステップに進むグル。……自動人形の肉体を100体揃えるグルァ!」
「……ピョン!?」
「何を驚く事があるグル?……この戦いは本官だけでなく、お前の進退もかかってるのだグルぞ?……ならば、出せる力全てを出し切るのが礼儀というものだグルァ!」
「……す、スパルタが過ぎますピョン……」
ルウフは根っからのスパルタだった。
勿論、彼の部下たるコマンダーウルフはそのスパルタに順応しているが、ラビリンスはそういう訳には行かなかった。
「既にお前は失敗続きの筈だグルァ!……いくら本体が未だに安全地帯とはいえ、今回まで失敗すれば後がなくなるグルぞ!」
「そ、そんなの分かっていますピョン……そう、分かって……」
「ならば全力を出し切るグルァ!」
「……100体、揃えれば良いんですピョンね?」
こうして、ルウフ、ルササ、ラビリンスの3人によるケール侵略作戦は着々と水面下で進んでいた。
そして、それがこれまでで最も勇者パーティーを追い詰めるとは……この時は誰も気付いていなかった……
ご読了ありがとうございます。
ルウフの強みは指揮能力の高さです。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。