102.読書青年の憂鬱
何かもう、ストーリー構成に悩んでいます。
(青谷 兼人視点)
「さて、そもそもあっしとミツエの出会いは今から100年近く前……」
「……その話、長くなる感じですか?」
困惑する僕をよそに、話を続けようとする死神長さん。
何かもう、自由な人ですね……
「長くなるでヤンスが……まあ、そう言うなら手短に済ませるでヤンスよ……」
「何か悪いですね……」
「……で、本題でヤンスが……今のミツエは力こそ生前と同じでヤンスけど、死神としての制約でそれを発揮出来ずに居るでヤンス……」
「そうらしいですね。……まさか、それも僕にどうにかさせるつもりですか?」
ミツエさんが死神の制約で魔王軍と戦えないのは聞いていましたが、まさかそれをどうにかさせるつもりとか言いませんよね?
「そのまさかでヤンスよ?」
「……至急、お引き取り願っても良いですか?」
「辛辣でヤンス!」
「妥当な判断ですが?」
これが死神のトップとか……
この世界の死神って大丈夫ですか?
「いやいや、話だけでも聞いて欲しいでヤ……」
「では端的に頼みますよ?」
「ハァ……端的に言うでヤンスが、要はミツエが"勇者としての気概"を取り戻せる様にして欲しいんでヤンスよ……」
「……それで、僕にどうしろと?」
ミツエさんが"勇者としての気概"を取り戻せる様にして欲しいって……僕がどうにかした程度で取り戻せるものなんですか?
「そこはまあ、そっちで考えて欲しいでヤンス……」
「……ふざけないでください!」
「ふ、ふざけてはないでヤンス……いやまあ、そう言われてもおかしくない言動をしてる自覚はあるでヤンスけど……」
「だったら、もう少し具体的な案を出して欲しいんですが……」
……とは言いましたが、多分死神長さんも案が出なかったから僕に丸投げしたんでしょうし……
「……そもそも、あっしが死神に勧誘した元勇者はミツエだけじゃないでヤンス。……ただ、ミツエ以外はもう完全に死神に染まってしまったでヤンスが……」
「それなら、もう諦めるしかないのでは?」
「それが勇者の台詞でヤンスか!?」
「……そもそも、どうしてミツエさんに"勇者としての気概"を取り戻させたいんですか?」
今更ですが、肝心の"勇者としての気概"を取り戻させたい理由を聞いていません。
やはり、端的に聞いたのは間違いでしたね……
「どうして"勇者としての気概"を取り戻させたいかでヤンスか……それは勿論、ミツエから死神の制約を無くすためでヤンスよ!」
「……え?」
「死んで勇者でなくなったミツエの魂は、この世界にとっては異物そのものでヤンス。……それを、無理矢理死神という役割を持たせて存続を許している状態でヤンス……」
「……つまり?」
何となく、死神長さんの言いたい事も分かってきました。
しかし、ちゃんと答えを聞いてみないと何とも言えません。
「ミツエの魂を、再び勇者という役割に戻すんでヤンスよ。……死神を始めとした神の使い以外で存続を許される異物こそが、勇者でヤンスから……」
「っ!?」
待ってください。
それなら1つ、確認したい事があります。
「……勇者以外がこの世界での存続を許されないのであれば、藤四郎さんは何なんですか?」
「彼は……勇者アカネの付属品として存続を認められているでヤンス……」
「そ、そうですか……」
茜さんの付属品……
藤四郎さんもなかなか危ない立ち位置に居ますね……
「……って、それよりもミツエの事を……」
「嫌ですが?」
「……まあ、あっしも無理な頼みとは承知で来てるでヤンスが……せめて善処するくらいは……」
「そう言われても、何をどうすれば良いのかすら分からないんですが……」
僕がいくら断っても、死神長さんは引き下がりませんでした。
と、その時……
「懐かしい気配がしたと思って来てみれば……何で死神長がここに居るのじゃ?」
「っ!?……め、メサイアさん!?」
「メサイア……久しぶり……って程ではないでヤンスね……」
突然、僕の部屋にメサイアさんが現れました。
……どうして皆さん、僕の部屋に無断で入って来るんでしょう……
「……ったく、黙って話を聞いて居ればミツエを勇者に戻すなどと好き勝手言いおって……ミツエを死神にした張本人が何を言っておるのじゃ?」
「生憎、魔王の居ない時代に"勇者"は存在出来ないんでヤンスよ……」
「……じゃとしても、今のミツエに"勇者としての気概"を取り戻せというのは酷な話じゃよ……」
「そうでヤンスか……」
いや、僕が何を言っても引かなかったのに、何でメサイアさんの言葉だと引くんですか……
「あの、2人とも僕の部屋から出て行ってくれないですか?」
「嫌でヤンス!」
「嫌なのじゃ!」
ーピキピキ……
「……もう、何でこうなるんですか!」
ービクッ!
「な、何かごめんなのじゃ……」
「ご、ごめんでヤンス……」
僕の心からの叫びを前に、何故か怯えた表情を浮かべたメサイアさんと死神長さん。
……多分、本心からの怯えじゃないですね……
「……まあ、調べるだけ調べてみますよ……」
「ほ、本当でヤンスか?」
「ええ。……ただ、未だに見れる範囲の権限が上がらないんですよね……いったい、どうするのが正解なんでしょうか……」
「……あっしは教えられないでヤンス……」
……もう、何も言いません。
僕は半ばヤケクソになりながらも、ミツエさんを"勇者"に戻す手段を探すのでした……
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(ササザキ ミツエ視点)
「……あちき、本当にどうしちゃったんでありすかね……」
タイプだったからって、いきなり告白とか……
多分、兼人さんも迷惑だったでありんすよね……
「……もう、消えて無くなりたいであり……」
「それはあかんで?」
「っ!?……え、エルリスでありんすか!?」
ど、どうしてこんな所ににエルリスが居るんでありんすか!?
「馬車の内外に居らへん思て探してみたら、まさかこんな何もない野原に居るとか……よほどカネヒトはんに告白した事を悩んどるんやな~?」
「わ、悪いでありんすか?」
「いや、ウチもトウシロウはんに告白したから気持ちは分かるんやけど、逃げてても何も解決せんで?」
「分かってるでありんすよ。……でも、今のあちきにそんな勇気はないでありんす……」
エルリスの言葉はもっともでありんしたが、今のあちきにそんな勇気はなかったでありんす。
「……ほな、せめてカネヒトはんの気持ちだけでも聞くとかせぇへんの?」
「それは聞くまでもないでありんす。……兼人さんは、恋愛そのものが分かっていないでありんす……」
恋愛を知らない者を好きになっても、相手が好きになってくれない以上は意味がないでありんす。
「……ウチはまだ幸せやったんかもな。……何せ、トウシロウはんは思いっきりウチやメサイアはんの事を好きになってくれたし……」
「……自慢でありんすか?」
「そういう訳やあらへんよ。……ウチが言いたいんは、何事も確認してみな分からへんって事やし……」
……つまり、兼人さんの気持ちを聞けって事でありんすか?
だとしたら、言い方が回りくどいでありんすよ?
「……まあ、その内確かめてみるでありんすよ……」
「ほんま、こないだまでのウチ等みたいやな……」
エルリス、それは言わないで欲しかったでありんす。
「うぐっ……恋って大変でありんすね……」
「せやよ?」
そんな事をエルリスと話しながら、あちきは頭を抱えて悩んだんでありんした……
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