101.先代勇者の恋騒動
何かもう、文章が変です。
(浅山 藤四郎視点)
「zzz……zzz……」
ーもみもみ……
「……んん?」
……何か、俺の手に何かが握られてる様な気が……
いや待て、確か昨日の夜は……
「ん~?……トウシロウはん、ウチのちっこい胸を揉むとか大胆やな~?」
「っ!?」
ーパチッ!
「あ、トウシロウが起きたのじゃ!」
目を開けた俺が自分の手を見ると、その手はエルリスさんの胸をがっつり揉んでいた。
いやまあ、色々とヤった後に一緒に寝たんだから、こうなってもおかしくねぇけど……
「……って、それはそうと何でメサイアさんは浮いてるんだ?」
「それがのう……寝るといつの間にか浮いておるんじゃよ……って、そんな事はどうでも良いじゃろ!」
「せやせや。……まあ、ウチは悪い気せぇへんかったけど……」
「そ、そうか……」
エルリスさんが、頬を紅潮させて俺を受け入れている。
少し前まで何を考えているか分からず不気味ですらあったが、今となっては俺の可愛い恋人の1人だ。
「むぅ~……トウシロウ、妾の胸も揉むのじゃ!」
「ハァ!?」
「エルリスだけ揉まれるのは何か負けた気がするのじゃ!」
「ほんま、メサイアはんは何でもウチに対抗したがるな~……」
エルリスさんだけ揉まれて自分が揉まれないのは負けた気がするって……
いや、そういう所も可愛いんだが……
「仕方ないな……」
ーもみもみ
「……一瞬、ヤバい声出そうになったのじゃ……」
「何か分からんが出しちゃ駄目な気がするから絶対に出さないでくれ……」
何故か、このタイミングではえっちな事を言ってはいけない気がした。
何故かは知らねぇが……
「……じゃあ、一旦部屋を出るか……」
「あ、着替えへんと……」
「妾は一瞬で着替えられるのじゃ!」
「……また対抗してら……」
メサイアさん、エルリスさんと仲が良いのか悪いのか分からねぇな……
いや、良いんだろうが……
とまあ、こんな感じで騒がしくしながらも、俺達は部屋を出たのだった。
そして、部屋を出た直後……
「あぁぁぁぁぁ~!……どうしてこのパーティーの男共は全員春が来てるんだよぉぉぉぉぉ~!」
「……この声、茜か?」
何かもう、この世界に来た時は取り繕えてた筈の茜の本性が、いつの間にか完全に垂れ流されてるじゃねぇか……
「あ、お兄ちゃん……昨日の夜はお楽しみだった様で何よりだね!」
「茜……怒ってるか?」
「怒ってないよ?……ただ嫉妬で八つ当たりするのを我慢してるだけで……」
「……何でそんなに荒れてんだよ……」
言っちゃあアレだが、茜の荒れっぷりが半端じゃなかった。
……というか、さっきこのパーティーの男全員に春が来たとか言ってたか?
「お兄ちゃんは言わずもがな、正義君も司ちゃんと付き合ってて……挙げ句の果てには兼人君までミツエさんに惚れられるとか……」
「……ん?」
「今、聞き逃したらあかん言葉言わへんかった?」
「妾も確かに聞いたのじゃ!」
兼人がミツエさんに惚れられたって言ったか!?
何がどうなったらそうなるんだよ!
「えっと、実は斯々然々で……」
俺達は茜から、何があったかを聞いた。
そして、出した結論は……
「……俺のハーレムにも言える事だが、丁度タイプの男に会うとかどんな天文学的な確率だよ……」
……という、身も蓋もないものだった。
だが、エルリスさんとメサイアさんは違う方向に驚いており……
「メサイアはん、ミツエはんのタイプって知っとったか?」
「いや、妾も初耳じゃ……」
2人は、ミツエさんのタイプについて驚きを隠せずに居た。
「え、知らなかったのか?」
「ミツエはん、生前は恋愛に関わる話なんてせぇへんかったし……」
「妾は何度か聞いたんじゃが……全部はぐらかされてしまったのじゃ……」
「……マジか……」
多分、ミツエさんの中で勇者として活躍する仮面は、恋愛なんてしない性格だったんだろうな……
……というか、そもそも100年前の日本に勇者なんて概念がない以上、俺達以上に勇者としての振る舞いは未知の領域だった可能性も高いし……
「……で、当の兼人とミツエさんはどこだ?」
「兼人君は部屋に籠りっきりで、ミツエさんに至ってはどこにも居ないよ……」
「そ、そうか……にしても何かもう、どんどん関係性がややこしくなってねぇか?」
このパーティー、試しに相関図とか作ったら絶対ぐちゃぐちゃになってるだろ……
と、俺が頭を抱えそうになっていると……
「あれ?……何か空気が重いっすね?」
「そうデスね。……いったい、何があったのデショうか?」
ダレスさんとダルクさんが、何も知らずにやって来たのだった。
更に……
「……やけに空気が重いですニャン……」
「確実に、何かありましたわね?」
「私めでも分かりますぞ……」
「ああ、茜君があの話をしたのかい……」
「それにしても重苦しいっしょ……」
少し遅れてナフリー、メアリー、ロウルさん、司、正義もやって来て、再びこの場が騒がしくなり始めた。
「ああ、実は斯々然々でな……」
面倒ではあったが、俺は今来た全員に事の経緯を話す事にした。
そして、聞き終えた皆の反応は……
「……このパーティー、恋愛でぐちゃぐちゃじゃないっすか……」
「私の尊敬する勇者ミツエ様がそんな事になっていたのデスか……」
「恋をするのであれば、ご主人様に恋して欲しかったですニャン……」
「ナフリー、貴女ブレませんわね……」
「そうですな……」
「……これ、ボク達も何か反応するべきかな?」
「別に何も反応する必要はないっしょ……」
……といった感じで、見事に各々が言いたい放題な状況になった。
と、ここでエルリスさんが口を開き……
「……ウチ、ほんまにミツエはんの事知らへんかったんやな……」
「エルリスが後悔する事ではないのじゃ。……妾も同じじゃからな……」
やはり、かつて旅を共にした仲間の心の奥底を知れていなかった事実は大きかったらしく、エルリスさんとメサイアさんはかなり意気消沈していた。
「2人とも、そこまで意気消沈……するよな……」
「まあ、そうだよね……私だって、シトラスちゃんの本心を知りたいのに知れてない現状は良く思ってないし……」
「いや、その例えは適切じゃねぇだろ。……あんまり会えてねぇ茜と違って、エルリスさんとメサイアさんはミツエさんと親友ってレベルで仲が良かったみてぇだし……」
「それもそっか……」
この後、俺達は何とかエルリスさんとメサイアさんを慰めたものの、この問題をどう解決するかの答えは出なかったのだった……
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(青谷 兼人視点)
ーパラパラパラ……
「……違う……違う……違う!」
僕は今、スキル【図書館】を使って、とある事を調べていました。
「……僕が役に立てるのは情報に関する事だけだというのに、僕が言うまでもなくエルリスさんやメサイアさんの口から伝えられてしまう……僕は勇者に選ばれた筈なのに、これではただの足手纏いじゃないですか!」
現状、僕は役立たずです。
そんな状況でミツエさんとの問題まで起こしたりしたら、本当に足を引っ張ってるだけになってしまいかねません……
と、そこへ……
「おや?……ミツエに告白されてどうしているかと思っていたでヤンスが……かなり悩んでるっぽいでヤンスね?」
「っ!?……し、死神ですか?」
「正確には死神長でヤンスよ。……ま、勇者からしたらどうでも良いかもしれないでヤンスが……」
「いや、無茶苦茶気になるに決まっているじゃないですか!」
僕の目の前に現れた死神長を名乗る存在は、黒いローブを羽織り大鎌を手にした骸骨という、イメージ通りの姿をしていた。
「ま、あっしの用は1つだけでヤンス。……勇者ミツエの英雄譚をハッピーエンドにする……その方法を提示するために来たでヤンス……」
「……え?」
死神長さんの話を上手く噛み砕けず、僕はただ困惑しました。
しかし、死神長さんはそんな事など気にせず、話を続けるのでした……
ご読了ありがとうございます。
この世界で一般的に語られている勇者ミツエの英雄譚は、ビターエンドで幕を閉じています。
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。