100.先代勇者と読書青年
祝100話!
ただ最近、アイデアの枯渇が激しいです。
(青谷 兼人視点)
「……今頃、エルリスさんとメサイアさんは藤四郎さんと楽しくヤっているでしょうか……」
僕は、覚悟を決めて藤四郎さんの部屋に向かった2人を思い出しながら、静かにそう呟きました。
すると、横に居たミツエさんも口を開いて……
「あの2人は変な所で躊躇して足踏みするタイプでありんすからね~。……藤四郎さんがその気になったから焦ったんでありんしょう……」
「確かに、あの2人らしいですね……」
あの2人の共通点は、大切な友人との死別を経験しているという事です。
だからこそ、当然藤四郎さんとの死別も怖くなってしまったといったところでしょうか。
「……とはいえ、これであちきの心残りが1つ解決したでありんす……」
「やっぱり、2人の事は気になってたんですね?」
「当然でありんすよ。……長命種でなかなか恋愛をしないエルリスは勿論、教義の関係で生前は恋愛すら出来なかったメサイアの事も同じくらい心配だったでありんす……」
「そうですか……」
やはり、ミツエさんはあの2人をとても気にかけていたみたいですね。
それこそ、2人に好きな人が出来たらここまで応援するくらいには……
「だから、あちきは2人に恋人が出来てとっても嬉しいんでありんす。……でも、同時に寂しくもあるでありんすね……」
「そりゃ、親友に恋人が出来たらそういう気分になるものですよ。」
「そ、そうでありんすか……」
そう呟いたミツエさんの表情は、寂しさからか暗く感じたのでした。
「……そういうミツエさんこそ、恋人は作らないんですか?」
「ん?……あちきは良いでありんすよ。……どうせ、こんなあちきを好きになってくれる人なんて……」
「ぼ、僕は綺麗だと思っていますが?」
「……お世辞じゃなさそうでありんすね……」
確かに、ミツエさんからは全体的に根暗な雰囲気が漂ってますけど………
……普通にミステリアスな美人って方向の暗さなんですよね……
「正直に言うと、僕は恋心がどういう感情か分からないんです。……ですが、そんな僕から見てもミツエさんは充分美人だと思いますが……」
「……そうでありんすか……」
「あれ、僕受け答え間違えちゃった感じですか?」
僕としては慰めの言葉をかけたつもりだったんですけど、何かどんどんミツエさんのテンションが下がっている様な気がします。
「いや、別にそんな事はないでありんすから安心して欲しいでありんす。……ただ、タイプの相手は脈なしって事が分かっただけでありんすから……」
「……え?」
今の話の流れで察するに、タイプって僕の……
「……って、ひゃぁぁぁ!?……こ、これは違うんでありんすよ!?」
「落ち着いてください!……ミツエさん、キャラ崩壊がえげつない事になって……」
「幾つも性格の仮面を持ってたら、時々こんな感じでこんがらがるんでありんすよ!」
「そ、そうなんですか!?」
何か、ミツエさんが僕への脈なし発言がどうでも良くなるレベルのキャラ崩壊を見せてるんですが……
やっぱり、本来とは違う性格を幾つも作るのってデメリットが大きいんですね……
「じゃあ、あちきはこれで……」
「いや、ミツエさんのタイプの話がまだ……」
「あちきのタイプは、1人静かに書斎で本を読んでいそうな好青年でありんす!」
ータッタッタッ……
「……それで僕ですか……」
タイプ自体は珍しいものではないですが……そんなありふれた特徴の人物にすら、これまでの人生で巡り会えなかったと考えると……ミツエさんの人生もかなり壮絶だったんでしょうね……
ただまあ、ミツエさんは走り去ってしまったので、もうここには僕しか居ませんが……
と、その時でした。
「……あ~あ、もうちょっとだったのにな~……」
「茜君、こればかりは兼人君の気持ちを優先するべきだとボクは……」
「司チャン、茜チャンの言葉は軽く聞き流すのがベストっしょ……」
「ちょっ!……酷くない!?」
突然、先程まで誰も居なかった筈の場所から、茜さん、司さん、正義さんの3人が現れたのでした。
「……言わなくても分かりますが、正義さんの魔法ですね?」
「そうっしょ。……何か話してたから3人で盗み聞きさせて貰ったけど、まさかミツエさんのタイプど真ん中が兼人チャンとか……」
「本当に……僕なんかを好きになるとか……よほど、恋愛に関しては出会いに恵まれなかったらしいですね……」
「……本当に兼人チャンは謙虚っしょ……」
謙虚とは言いますが……
相手は先代の勇者ですよ?
こんな足手まといの僕を好きになるとか……あり得ないとしか思えないですよ。
「むぅ~……そんなに言うなら私に譲って欲しいのに、私じゃ絶対に振り向いて貰えないってジレンマがぁぁぁぁぁぁ~……」
「茜君はブレないね……」
「司チャン、反応したら負けっしょ……」
茜さんは案の定、ミツエさんを譲って欲しいと言い出しましたが……ちゃんと自分が選ばれない事も自覚している辺り現実は見えていますね。
ただ、その言葉で茜さんと愛し合っているミツエさんを想像してしまって……
ーモヤッ……
「……ん?」
愛し合う茜さんとミツエさんを想像しただけなのに、何故か心がモヤッとしました。
「兼人チャン、どうかしたっしょ?」
「いえ……試しに、茜さんがミツエさん以外とイチャつく想像でもしてみましょうか……」
…………
……
…
……一応、茜さんがミツエさん以外の誰かと愛し合う姿を想像してみましたが……特にモヤッとはしませんでした。
つまり……
「……茜さんは関係ないですね……」
「え、私が何って?」
「あ、別に何でも……」
「嘘だよね?」
「……そういや、茜さんにはどんな嘘も通用しないんでしたね……」
いや、そもそも何で僕が茜さんにこんな嘘をつかないといけないんでしょうか?
「……ふむ、ボクが思うにこれはやはりアレだろうね……」
「アレっしょ!」
「……何か嫌な予感がするんですが……」
司さんと正義さんが満面の笑みを浮かべて僕を見ています。
……確実に、現状を楽しんでいる顔です。
「ま、今回はこれ以上何も言わないっしょ。……その代わり、兼人チャンは自分の力で答えを見つける必要があるっしょ……」
「答え、ですか……」
「……未婚の女性が好意を露にしたんだ。……ボクが彼女の立場なら、例え悪い結果でも何かしらの答えは欲しいものさ……」
……2人の言う通り、僕にはミツエさんの想いに何かしらの返答をする必要があります。
例え、それが相手をフるものだとしても……
「うぅ……私も誰かとイチャイチャした~い!」
「……茜さんを見てると、何か暗い気持ちが吹き飛びますね……」
「ボクも同感だね……」
「俺チャンもっしょ……」
「私でもその言葉が良い意味じゃないのは、何となく分かるよ?」
……茜さんの事はともかく、本当にどうしたら良いんでしょう……
そんな事を考えながら、僕は頭を抱えるのでした……
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(ササザキ ミツエ視点)
「ハァ……どうして、あちきはあんな事を……」
「おや、悩んでいるようでヤンスね?」
「っ!?……死神長様!?」
何で、現世に死神長様が居るんでありんすか!?
「あっしは何処にでも現れるでヤンスよ。……ま、それはそうとして……どうするでヤンス?」
「……どこから聞いてたでありんすか?」
「最初からでヤンス。……ま、あっしはミツエの考えを尊重するでヤンスから、せめて後悔しない方向に進むと良いでヤンス!」
ーフッ……
「……本当に、何しに来たんでありんすか……」
死神長様は、言いたい事を言い切ったら何処かへと消えてしまったでありんす。
結局、あちきはいつまでも自分の考えに答えを出せず、悩み続けるのでありんした……
ご読了ありがとうございます。
兼人、何とかしようと頑張っても活躍させられないんですよね……
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後、皆様がどんな事を思ってこの小説を読んでいるのか気になるので、感想くださるとありがたいです。